福島の工場で始まった国産充電器の少量生産:CIOのセル方式ラインを工程ごとに見る

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概要

CIOが進める国産USB充電器プロジェクトは、福島県のアサヒ電子での生産段階に入った。アサヒ電子はこのプロジェクトの製造を受託するEMSである。動画の撮影時点では量産に向けた条件出しの最中で、当日はアサヒ電子が「プリプロダクション」と呼ばれる少量生産を実施していた。CIOの担当者によれば、この一連の流れに問題がなければ本格量産に進む。

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試作段階の量産は中国でも行われていた。今回の動画では、イチケンがCIOの担当者に話を聞きながら生産ラインを順に見て回る。テーマは、日本と中国の生産で何が違うのか、どれくらいの台数を作れるのかである。

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ベルトコンベアではなく「セル方式」

最も大きな違いは生産方式だ。担当者によると、中国の工場はベルトコンベアで製品を次々に流すコンベア形式だった。アサヒ電子ではこれを「セル方式」に変えている。作業者を一列に長く並べるのではなく、区画ごとに役割を決め、それぞれの区画で担当の工程を進める。区画には「キッティング」などの役割名が掲げられており、各セルの作業が終わると次のセルへ製品を渡していく。セルは工程の数だけ用意されている。

担当者はセル方式の利点を汎用性の高さだと説明した。ベルトコンベア式ではラインをきちんと確立する必要があり、別の会社の製品を作る日には、その分の人員を一度にそろえなければならない。決まった人数を割り当てないと回らない仕組みである。セル方式なら、少人数で少数生産にも対応できる。人数が多い日は各セクションに満遍なく配置すれば生産できる。

一方で、効率ではベルトコンベア式が上回ると担当者は認める。配置できる人数が多く、一気通貫で生産できるからだ。セル方式は区画ごとに作業者が決まっているため、区画を2倍用意することはできても、基本的には区画内の作業量が上限になる。担当者は目安として、ベルトコンベア式なら難易度にもよるが1日1000〜2000台、あるいはそれ以上作れると述べた。今回用意された場所では、アサヒ電子側から1日最大500〜700台程度が限界と聞いているという。これを受けてイチケンは「月産1万とかそのぐらいになるんですかね」と見積もったが、この点について明確な回答はなかった。

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キッティングとトレーサビリティ

最初の工程はキッティングで、部品の受け入れを担う。アサヒ電子で組み立てる部品は大きく3つに分かれる。充電器本体となる基板、製品のケース、TFTディスプレイである。キッティングでは部品を開梱し、その日の生産分が正しくそろっているかを確認してから次の工程へ渡す。今回の試作量産では生産台数は数十台だという。

イチケンが目を留めたのは、中国のラインでは見かけなかったバーコードリーダーだった。担当者によれば、これはトレーサビリティのためのシステムである。基板の底面や製品の筐体にはQRコードが付いており、それを読み取ってシステムに登録することで、どのQRコードに対応する部品を使ったかを記録している。

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組み立て前にTFTを検査する

次のセルには、TFT液晶が正しく表示されるかを確認するジグが置かれていた。これもアサヒ電子が製作したものだ。部品のなかでTFTは特に別送されてくるため、ここで受け入れ品質を確認してから次の工程に進む。担当者はこの検査を「IQL」と呼び、受け入れ段階で問題がないことを確かめるジグを作るというアサヒ電子からの提案で始まったと説明した。

イチケンは、組み立てた後にTFTの故障が分かれば、それまでの工程がすべて無駄になると指摘した。担当者もこれに同意し、工数やコストに加えて、分解すると廃棄しなければならない部品が多く出る点を挙げた。部品が分かれた状態で確認してから次へ進むほうが、最終的に無駄を減らせるという考え方である。

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ATEとケースへの組み込み

続くATE装置では、TFTを取り付けた状態の基板に通電し、問題がないかを自動で確認する。合格すれば次の工程に進む。イチケンは、この部分は中国で見たものとほぼ同じだと述べている。

その後ろのセルで、基板をケースに組み込む。ここでもスキャナーでQRコードを読み取る。ケースに収めると基板のQRコードは読めなくなるため、この工程で新たにQRコードを印刷して製品に貼り、基板と対になるコードとして読み込ませてから次の工程に流す。

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ポッティング材は重さで管理する

ポッティング材の充填は中国でも行われていたが、アサヒ電子のセルには秤が置かれていた。担当者によると、充填にムラがあると放熱に影響が出る。そのためCIOはこの製品の理想値を5〜7g程度と定めている。7gを超えるとポッティング材が漏れ出してしまうので、多すぎず少なすぎないよう重量計で測り、品質を担保している。イチケンは、少なすぎれば熱が伝わらず、多すぎればシリコンがはみ出して外観が汚れるということかと確認した。

秤を置くのは、作業者によるばらつきを抑えるためである。担当者は、目視で経験に頼って作業すると細部にブレが出ると説明した。そこで注入後にもう一度重さを測り、公差内に収まっていることを確かめてから次の工程に移る。さらに、アサヒ電子から改善案も出ている。ポッティング材の吐出量自体は一定なので、所定のグラム数に達するまでの秒数を計算し、タイマー式で自動化するという案だ。担当者はこの改善を現在進めているところだと話し、イチケンはそれを「作りながらいろいろ改善している」状態だと受け止めている。

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超音波溶着とファームウェア書き込み用ジグ

超音波溶着の工程は、イチケンによれば中国のものとかなり似ている。ここで溶着すると製品として組み上がり、次はエイジング工程に入る。

その近くには、ファームウェアを書き換えるためのジグもあった。担当者の説明はこうだ。途中で仕様が変わった場合、製品をいったん中国に送り返して書き込み直すのは手間がかかる。また、日本で組み立てた製品の品質を担保しているのはあくまで日本国内である。そのため、変更や書き換えが前提になるものには日本で対応できるよう、このジグを用意した。イチケンが「仕様変更なら最初の中国側で書き込むファームウェアを変えるのでは」と尋ねると、担当者は、このジグは「何かあった時」のためのものと考えてほしいと答えた。

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エイジング:4時間の高負荷試験と不良率の基準

ライン上にはエイジング工程のスペースがあったが、撮影時は何も置かれていなかった。担当者によると、時間の都合もあり、プリプロダクションの段階でここに設置するには配線工事などが必要だった。そのため装置はいったん1階に置き、そこで通電確認をしてから製品を上の階に戻している。本格量産時にこの場所で行うとボトルネックにならないか、あるいはボトルネックになるからこの場所に置くのかは最終協議中だという。担当者は最終的にはこのあたりに設置される見込みだと述べ、イチケンは天井から電線が来ていることからそう推測した。

1階のエイジングマシンは、イチケンによれば中国で見たものとほとんど同じである。接続ケーブルにはCIO自社のケーブルが使われていた。1台ずつつなぎ、合計でおよそ4時間かけて通電確認などを行う。担当者は、全数を長時間テストしなければ、負荷をかけたときに壊れる可能性があると説明した。CIOとしては特に、フル負荷をかけて長時間テストする仕組みにしているという。テストした台数に対して不良が何件出たかを確認し、目安として1000分の3程度を合格ラインとしている。これを上回った場合は原因をすべて究明し、生産工程を洗い出して問題がないかを確認する手順を踏む。

工場内を歩くなかで、イチケンはホコリやチリを取るテープが備えられていること、作業者が専用の服や帽子を着用していることにも触れている。

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絶縁耐圧試験からユーザー目線の試験へ

エイジングの後は絶縁耐圧試験に進む。担当者はこれを一般的な試験だと位置づけ、ショートや落雷など様々な状況で過電圧にならないかを確認する工程だと説明した。その後もう一度ATEを通して製品としての確認を行い、そこから実際のユーザーの使い方に沿ったテストが始まる。

この後半のセルは、イチケンの目にもまだ仕様が固まっていないように見えた。担当者も、どの機材を置いてテストするかはアサヒ電子と詰めている最中だと認めている。

予定されている試験の一つがコイル鳴きの確認である。充電器特有の甲高い音が出ないかを、負荷をかけて確かめる。ただ、開けた空間では音が聞き取りにくく、周囲に音が漏れることもある。そのため、静かな環境をどう確保して確認するかを検討中だという。

次の実機試験では、充電器をスマートフォンなどにつなぎ、正しく認識されて充電できるかを確かめる。担当者は、ATEなどで通電を確認することと、実際のデバイスに正しく給電・充電できることは別の問題として扱っていると説明した。顧客は実機で充電するからである。対象機器は主にiPhone、Android、PCを想定している。イチケンは、最近はパソコンもUSBの65Wで充電するものがあると補足した。

続いてBluetoothの試験がある。電波を遮断する暗箱に充電器を入れ、ペアリングを確認する。担当者によると、アプリで画面が切り替わるか、設定が反映されるかといった、ユーザーが実際に使う場面に沿ったテストを想定している。

最終段階に近い工程が異音確認である。イチケンの説明では、完成した充電器を叩いてカラカラと音がしないかを確かめる。担当者は、組み立てが甘いと部品が外れることがあり、物理的な問題に対する最終的な担保をここで行うと述べた。

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出荷工程も一人単位でまとめる

最後は包装と出荷である。担当者によると、中国では内容物をブリスターに入れるなどの作業を、一人ひとりが分担して行っていた。アサヒ電子では、セットになった内容物を軸に一人がすべてを詰め、確認者がチェックしてから梱包する。そのため、この工程も圧縮された形で進められる見込みだという。

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本格量産まであと数週間、残る課題

イチケンは今回の見学を振り返り、セル生産への切り替えやトレーサビリティの導入など、中国での試作から変わった点が多いと述べた。

担当者は、製品がユーザーに届く前の最後の工程に来ており、あと数週間で本格量産が始まると話した。一方で、見学で示されたとおり、詰め切れていない部分もまだ残っていると認めている。コイル鳴き試験の環境、試験機材の選定、エイジング装置の最終的な設置場所などである。今後は毎週のようにアサヒ電子へ出向き、詰めながら進めていくという。