激安QDDモーター「RobStride 04」を分解する:ヒューマノイドの関節を支える仕組みの中身

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概要

電子工作系YouTuberのイチケンが、4足歩行ロボットやヒューマノイドロボットの関節に多く使われているQDD(Quasi Direct Drive)モーターを入手し、実際に動かしたうえで分解した。この動画は二つの問いを扱っている。一つは、なぜロボットの関節に従来のモーター方式ではなくQDDが選ばれるのか。もう一つは、約4万円で買えるモジュールの中に何が詰まっているのか。話者はQDDを「フィジカルAIの要素技術の一つ」と位置づけ、原理の説明から基板部品、センサー、減速機構までを順に確認していく。

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入手したモーターの概要

QDDモーターは、モーターに低い減速比のギアを組み合わせたもので、日本語では準ダイレクトドライブモーターと呼ばれる。話者によると、Unitreeなどの4足歩行ロボットが登場したころから急速に広まり、最近ではヒューマノイドロボットの関節に多数採用されている。

今回入手したのはRobStrideの「04」というモデルで、同社のラインナップでは最もトルクが強い。ピークトルクは120Nm、減速比は9対1である。AliExpressで3.9万円で購入しており、話者は「このモーターが約4万円で手に入るのはかなり激安」と評している。

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関節に必要なトルクと、二つの従来方式

話者はまず、中国のヒューマノイドロボットの動画を例に挙げる。ジャンプして着地したり、人に押されても衝撃を受け流したり、動作によっては人間より俊敏に動いたりする。その動きを支える要素の一つが関節のモーターだという。

自分の体重を支えながら関節を動かすには大きなトルクが要る。しかし関節に収まるサイズでモーターを作ると、単体のトルクは小さくなってしまう。トルクを稼ぐには、モーター自体を大きくするか、ギアで減速してトルクを増幅するかのどちらかしかない。この二つの方向に対応するのが、ハイギアードモーターとダイレクトドライブモーターである。

ハイギアードモーターは、高速回転するモーターに1対100のような大きな減速ギアを組み合わせたもので、産業用ロボットで長年の定番になっている。大きさの割に強いトルクが出せる一方で、弱点もある。減速比が大きすぎるため逆駆動性(バックドライバビリティ)がなく、外から関節を押してもほとんど動かない。着地のような急な衝撃が来ても逃げ場がなく、ギアの歯が割れることがある。さらにギアボックスの摩擦が大きいため、モーター電流から今かかっているトルクを推定しにくく、別にトルクセンサーが必要になる場合もある。話者は、位置合わせが主な産業用アームなら問題ないが、常に外乱が加わる4足ロボやヒューマノイドに使うには注意が必要だと述べる。

ダイレクトドライブモーターは、ギアを使わずにモーターの回転をそのまま関節の回転にする方式である。話者はロボットアームから取り外したモーター(厳密にはダイレクトドライブ用ではないが、動きが分かりやすいとして紹介)を指で回してみせた。ギアがないので摩擦もガタもなく、軸はスルスルと回る。つまり逆駆動性があり、電流を見れば出ているトルクがほぼ正確に分かる。話者は「制御的には理想のモーター」と評する。ただし、必要なトルクをすべてモーターだけで出すため大型化して重くなり、体重を支えるヒューマノイドには「少し辛い」。なお、このモーターは軸の先にギアボックスを付ければハイギアードモーターになるとも補足している。

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ロボットの関節に求められる三つの条件

話者は、動き回るロボットの関節に必要な要素を三つに整理する。

  1. 重さの割に大きなトルクが出せること。軽さは何より重要で、体を支えて動くにはトルクが欠かせない。
  2. 衝撃に強いこと。これは逆駆動性と結びつき、たとえばジャンプの着地時に関節で衝撃を逃がせるかどうかに関わる。
  3. トルクを把握できること。関節のトルクから地面を押す力を推定し、その力を調整するために必要になる。

この三つが同時に求められる。ハイギアードモーターは逆駆動性がないため衝撃への強さで不利になり、ダイレクトドライブモーターは質量あたりのトルクで要件を満たしにくい。

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QDDモーターの考え方と限界

三つの要件を同時に満たすのによく使われるのがQDDモーターだ。話者の説明では、種類にもよるが、モーターを平たい形にしてトルクを稼ぎ、ギアは10対1程度の低い減速比に抑える。軸は手でギリギリ回る程度の逆駆動性があり、衝撃を受けたときに受け流せる。電流からトルクが分かるという性質もほぼ保たれる。話者によれば、QDDはMITのロボット「チーター」の研究から広く知られるようになり、今では4足歩行ロボットを中心に、ヒューマノイドでも広く使われている。

一方で話者は、QDDも万能ではないと強調する。トルク密度はハイギアードモーターに及ばず、負荷のかかる姿勢を長く保つとモーター自体がかなり発熱する。そのため機体や関節によっては、減速比を上げたり、別の方式と使い分けたりしているという。

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実際に回してみる

分解の前に、話者は実機を動かしている。取扱説明書によると、ピークトルク120Nmで動かせるのは10秒程度で、長時間の定格トルクは40Nmである。話者は「120Nmで長時間動かすとモータードライバーが焼けたりするのでしょうね」と推測を添えた。入力電圧は48V、制御はCAN通信で、モーター制御用のコントローラー類はすべて内部に入っている。48V電源とCANをつなげばすぐ使える仕様で、今回はESP32マイコンとCANトランシーバーで動かした。

正転・逆転とも問題なく回り、加速度を300程度に上げるとかなり速く回った。停止状態での保持も強く、手で軸を動かそうとしても回らない。話者は「120Nmあるだけあってトルクはかなり強力」と述べ、モーター部分を深く考えずにとりあえずロボットを作れる点を高く評価している。

ただし、無負荷で10分ほど回しただけで筐体は40℃程度まで温まった。話者は、ロボットに組み込めばもっと発熱するだろうとして、冷却が非常に重要になりそうだと見ている。

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外装と放熱、アウターローター構造

最初に外側のプレートを外すと、裏には熱伝導用のシリコンマットが貼られていた。外側のプレートと内部の巻線を熱的に結合し、熱を外へ逃がすためのものである。話者は先ほどの温度上昇を踏まえ、「熱的には結構厳しいのでしょうね」と推察する。

出力軸を回すと内部のローターも回転し、減速比の分だけローターのほうが速く回る。電機子側は固定で、永久磁石が付いた回転子が外側を回るアウターローター型(回転界磁型)のモーターだった。話者によれば、ドローン用モーターによく使われるタイプである。アウターローター型は回転子のイナーシャが大きくなるが、インナーローター型よりトルクが強いため、QDDではこちらが有利なのだろうと話者は見ている。さらに分解すると、ベアリングと遊星歯車(プラネタリーギア)が現れ、内部は電気系と機械系に大きく分かれていた。

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ステーターとローター

モーターは3相で、固定子は極数の非常に多い多極モーター、鉄心は積層構造である。話者の解説では、極数が多いと鉄心自体はそれほど大きくならず、トルクに寄与しないコイルエンド部分も短くできる。その代わり、出力軸1回転あたりに必要な電気角が増えるため、鉄心での鉄損が増え、制御周期も短くする必要がある。

回転子の内側にはネオジム磁石が接着剤で貼り付けられ、位置合わせには樹脂スペーサーが使われていた。遠心力で磁石が外側に押し付けられる構造なので、磁石が飛んでいくことはなさそうだという。回転子にバランス取りの形跡は見当たらなかった。話者はその理由として、バランス取りが不要なほど精度よく作られている可能性と、この程度の重さと回転数ならそもそも不要という可能性を挙げる。一方で、ローターに穴が4つ開いており、その深さでバランスを取っている可能性もあるとしている。

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ドライブ基板とマイコン

モーター駆動用の基板には、マイコン、センサー、通信IC、パワー半導体がすべて載っている。基板はもともと防湿コーティングされていたが、ギアの潤滑用グリスがべったり付着していた。エタノールで拭き取ったところ、コーティングも一緒に取れてしまった。話者は、エタノールで防湿コーティングが取れる経験はあまりないと話している。

マイコンはGigaDeviceのGD32F303で、ARM Cortex-M4コアの32bitマイコンである。DSP命令とFPUを備えるため、モーター制御にはかなり使いやすいだろうと話者は評している。

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インバータ回路と放熱設計

3相インバータには、Oriental SemiのシリコンMOSFETが各相2並列で使われていた。話者によれば、このMOSFETはかなり高性能で、耐圧100V、パルスドレイン電流560A、連続ドレイン電流140Aである(オン抵抗は字幕上「4.3Ω」と読み上げられている)。モーター自体の放熱が厳しそうなので、なるべくオン抵抗の低い素子を選んでいる可能性がある、と話者は推測する。

パワー半導体の熱は、基板への放熱と、熱伝導シリコンマットを介したアルミ筐体への放熱の二経路で逃がす。ただ、発熱源はインバータだけでなくモーターのコイルもあるため、長時間の高負荷動作ではしっかり放熱しないと厳しそうだという。電流検出には各相にシャント抵抗が使われており、話者はモーターをきちんと制御するには電流の測定精度がかなり重要になると指摘する。

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基板上の謎の金属ブロック

基板上には金属の塊のような部品が実装されていた。話者は、プリント基板の銅箔の実質的な抵抗を下げる目的もあり得るとしつつ、今回は熱容量を大きくして蓄熱に使っているのではないかと考えている。

その理由として話者が挙げるのは関節モーターの使われ方だ。ロボットの関節では瞬間的に負荷がかかる場面が多く、インバータ周辺も瞬間的に発熱する。シリコンパッド経由で筐体に逃がす構造は定常的な熱抵抗こそ低いが、過渡熱抵抗はどうしても大きくなる。金属片で熱を一時的に蓄え、放熱のタイムラグを吸収する設計ではないか、というのが話者の見立てである。

コンデンサーについても触れている。MLCCを多数実装できるパターンがあったが、実際には実装されていなかった。反対面には電解コンデンサーがあるが、MLCCよりESRやESLが大きいため、瞬間的な負荷がかかったときの挙動は「要検証」だとしている。一方で、定格48Vに対して制御系を含めた最低動作電圧は24Vなので、48Vで使う限り瞬間的な負荷で制御系が落ちることはないだろうと話者は見ている。

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通信・センサー系IC

基板の反対面には主に通信とセンサーのICがある。MOSFETのゲートドライバーはTexas InstrumentsのDRV8353、CANトランシーバーはNXPのTJA1042で、GigaDeviceのマイコンが内蔵するCANコントローラーと組み合わせて使う構成である。

残りの2つは磁気センサーで、InfineonとAMSの製品が使われていた。話者は、AMSの非光学式アナログミックスドシグナルセンサー部門が2026年にInfineonに買収されたため、実質的にどちらもInfineonの磁気センサーだと説明している。

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2つの磁気センサーとバーニア原理による角度検出

基板中央にあるのはAMSの磁気式ロータリーポジションセンサーで、組み立てるとちょうどローターの軸上に来る。ローターのその部分には磁石が付いており、話者が磁石を当てて確かめると磁極がはっきり分かった。これでローターの向きを検出している。

回転軸から外れた位置にあるもう一つの磁気センサーは、ローターに付いた樹脂歯車の先にあるもう一つの歯車の角度を見ている。この歯車の軸も磁石でできている。2つの歯車は歯数が異なるため、回転数に応じて磁気パターンがずれていき、そのずれから現在の位置が分かる。話者はこれを「バーニア原理」と説明する。起動時に出力軸の角度が分かれば、どこまで回すと関節が壊れるかも判断できるので、起動時の関節角度の検出などに使っているのだろうと推測している。

光学式のアブソリュート角度センサーを使わない理由についても、話者は推測を述べる。光学式は高価で、内部にグリスが飛び散るような汚れた環境では使いにくいだろうし、QDDモーターに入れるスペースがないことも関係しているかもしれない。磁気式なら数百円程度で回転角検出を構成できるため、コストと使用環境の両面から採用したのだろうという。

話者は電気系をまとめて、半導体は基本的に中国メーカー製で、一部の通信やセンサーに欧米メーカー製が使われていると整理した。

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機械系:遊星歯車とベアリング

減速機には遊星歯車機構が使われている。サンギアはローターと一体、キャリアが出力軸で、遊星ギアが3つ付き、リングギアは固定子側と一体になっている。各所に多数のベアリングがあり、C&UとS&Fの製品が使われていた。基本はC&Uで、出力軸部分には大径のものが2つ使われている。話者は、こうした機械部品は重要な要素だが、基本的には中国国内で入手できるもので構成されていたと述べている。

分解して分かったこと

話者の結論では、このQDDモーターはアウターローター型モーターと遊星歯車機構を組み合わせ、小型ながら大きなトルクと逆駆動性を両立した作りになっている。そうしたモーターが数万円で手に入ることに話者は驚きを示し、何よりつなげばすぐ使える点を評価して、ロボット製作を考えている人の参考にしてほしいと締めくくった。

一方で、動画の中で解決されないまま残った点もある。無負荷でも40℃まで上がる発熱を実機でどう冷やすか、MLCCが省かれた電源まわりが瞬間的な負荷にどう反応するか。これらについて話者は、冷却の重要性と「要検証」という指摘にとどめている。