UGREEN MagFlow Pro 10000mAhを分解し、「アクティブ液冷」の構造と効果を確かめる

YouTubeで開く ↗
概要

電子工作系YouTuberのイチケンが、内部で液体を循環させて冷やす「アクティブ冷却」を搭載したマグネット式モバイルバッテリー、UGREEN MagFlow Pro 10000mAhを分解した。イチケンは普段モバイルバッテリーのレビューをしないようにしているが、この製品は冷却機構が珍しいため取り上げたという。モバイルバッテリーとしての使い勝手よりも内部構造に注目し、この液冷がどのように熱を運んでいるのか、宣伝どおりの構成になっているのかを確かめている。

8分で読めます

充電を始めると内部で液体が動き出す

充電を始めると、本体の中で何かが動き始める。液体を循環させるポンプが作動しているためだ。イチケンは、以前分解したREDMAGICのスマートフォンにも似た冷却機構があったと振り返っている。

商品説明によると、この製品はアクティブ冷却に加えて銅箔とアルミシェルでも放熱している。UGREENは、これらの冷却によってワイヤレス充電時の温度が他社製品より10℃程度低い約36℃に収まると主張している。液冷部分の消費電力は0.02Wと記載されており、ごく小さな電力で動くとされる。

基本仕様と、ワイヤレス充電で生じる損失

充電ケーブルは本体から1本出ており、ストラップとしても使える。これとは別にUSB-Cポートが1つある。どちらも入出力に対応し、バッテリー本体の充電にも他の機器への給電にも使える。USBの出力は最大45W、入力は最大30Wである。本体側面にはディスプレイがあり、残量と充電状態を表示する。

背面にはQi2対応のワイヤレス充電ポートがあり、最大25Wで出力できる。ワイヤレス側は出力専用で、ここからバッテリー本体を充電することはできない。イチケンが実際にQi2で充電したところ、25Wをきちんと出力できていた。このときバッテリー側の出力はおよそ29Wで、差し引き約4Wが失われている計算になる。コイルを介して送電するため、有線ほど効率は高くないという説明である。

バッテリーは5000mAhのセルを2本直列につないだ構成で、容量は39.2Whだ。イチケンは、最近のモバイルバッテリーには2直列構成が多いと指摘する。USB機器の多くはUSB PDに対応し、9V、15V、20Vといった電圧で充電する。バッテリー電圧が低いほど昇圧の比率が大きくなり、内部の変換回路での損失も増えやすい。セルを直列にして電圧を少しでも上げれば、そのぶん充電に回せるエネルギーを増やせる、というのがイチケンの解説である。

発熱測定:最高約41℃、表面には6℃の温度ムラ

イチケンは、ワイヤレス充電で25Wを連続出力したときの温度をサーモグラフィで測定した。動作を安定させるためにQi2のトリガーデバイスを使い、室温は25℃とした。

結果は、表面の最高温度が約41℃だった。UGREENが公表する36℃より高いが、イチケンはこれを実験環境の違いによるものと説明している。UGREENはiPhone 17で測定しており、iPhoneを充電する場合は常に25Wで充電し続けることはないはずなので、数度程度の差は出るだろうという見方である。

温度分布にはかなりムラがあった。最も熱い部分が41℃、中央部分が35℃で、約6℃の差がある。イチケンは、最も熱い部分にはバッテリー電圧をワイヤレス給電用に変換する回路などが入っているのだろうと予測した。コイルのある面ではコイル部分がよく発熱していた。今回のトリガーデバイスは電力を外部の電子負荷で消費する仕組みなので、この面の熱は純粋にコイル部分で生じた損失によるものだという。

価格に対する評価

イチケンが購入した時点の価格は18,980円で、動画の時点では14,180円まで下がっていた。それでもイチケンは、約40WhのバッテリーでQi2の25W出力に対応し、アクティブ冷却機構が付いていることを考えても高いと評価している。性能は平均以上だが、それ以上にコストが高く、コスパは正直良くないという。コスパを重視するなら、UGREENの別のQi2対応モバイルバッテリーを選んだほうがよいと勧めている。

外周はアルミフレーム、ベースは樹脂

イチケンは超音波カッターで分解を始めたが、切っている最中に違和感があった。確認すると、筐体の外周1周がアルミでできていたため、途中から削って開ける方法に切り替えた。

分解してみると、樹脂製のベースに充電回路が収まり、その周りをアルミフレームが一周し、上から蓋がかぶさる構成だった。イチケンは、アルミは熱をよく伝えるので樹脂より放熱に有利だと見ている。モバイルバッテリーはUSB充電器と違って温度が40℃程度にとどまり、金属でも人が触って耐えられる。また商用電源に直接つながらず、電圧も高くて20V程度なので、外装にアルミを使っても問題ないのだろうという見解である。

本体から出ているUSBケーブルは、内部でフレキシブルプリント基板の変換基板にはんだ付けされ、コネクタを介して内部の基板につながっていた。

メイン基板とシリコン放熱シート

内部の中心は、バッテリーセルとプリント基板が一体になった、いわゆるモバイルバッテリー本体部分である。その裏面にQi充電用の送電コイルがある。プリント基板には充放電の制御回路、電力変換回路、Qiコイルの駆動回路などが載っているため発熱は多めで、サーモグラフィで熱くなっていたのもこの部分だった。

プリント基板は2枚を組み合わせた構造で、その間にシリコン放熱シートが挟まっていた。熱を全体に分散させる狙いがあるようだとイチケンは見ている。Qiコイルの導線は外装に沿って通っており、サーモグラフィで部分的に発熱していた場所と一致した。イチケンは、25Wも送電するとそれなりに発熱するだけの電流を流す必要があるのだろうとコメントしている。

役割不明のフレキシブル基板

基板の一面には、役割のわからないフレキシブル基板が1枚あった。樹脂フレーム側にもこの基板を収めるためのくぼみが彫られているので、何らかの役割はあるはずだが、イチケンには特定できなかった。わかる人はコメントしてほしいと呼びかけている。

液冷モジュールとの間にあった断熱スポンジ

バッテリーとプリント基板のモジュールの上に、アクティブ液冷モジュールが載る。サーモグラフィで発熱していたのはちょうどプリント基板の部分なので、そこで生じた熱を液体に移し、長い流路で冷やす設計なのだろうとイチケンは推測する。

ただし、液冷モジュールとバッテリー基板モジュールの間には、空気を含んだスポンジが貼られていた。空気は熱をよく遮るため、イチケンは、基板で発生した熱を液冷モジュールへうまく逃がせない構造になっていると指摘する。

最後にかぶさる蓋の裏面には、比較的厚い銅箔が貼られていた。スポンジの空気層を挟みつつも基板の熱を液冷モジュールに伝え、その熱を銅箔の範囲で広げて外装へ逃がす、という役割だとイチケンは説明している。

宣伝画像と実物の違い

イチケンはUGREENのイメージ画像と実物も見比べた。画像からは、「アルミニウムシェル」として内部にアルミ板が1枚入っているように見えたが、実物にアルミ板はなかった。外骨格がアルミ製なので、それをアルミニウムシェルと呼んでいたのだろうとイチケンは推測する。液体冷却槽は画像どおりだった。銅箔は画像ではベイパーチャンバーのように見えるが、実際には銅箔だった。ただし、画像には「イメージ図」と明記されているとイチケンは付け加えている。

放熱設計について、イチケンは自分で試したわけではないので断言はしないと前置きしたうえで、液冷部分をなくし、銅箔やグラファイトシート、シリコンギャップフィラーなどを組み合わせてより広い面積で放熱したほうが、熱はよく伝わる気がすると述べている。一方で、実際はそれほど単純ではなく、見た目の目新しさ、技術的なアピールポイント、マーケティングといった要素も絡んだ結果、この構成が選ばれたのだろうとも話している。

液冷モジュールの流路とポンプ

液冷モジュールを詳しく見ると、ポンプは一か所にあり、それ以外はすべて流路だった。裏から見るとわかりやすい。動かしてみると、液体の流れが速い流路と遅い流路がある。ポンプを出た先に合流部があり、そこで速い流路が1本のまま遅い流路になっているようだ。その後はどちらの流路も一本道が続き、最後に蛇行してからポンプに戻る。

ポンプの真下には、熱くなる部品の多いプリント基板がある。サーモグラフィで見ると、ポンプを出た直後の液体は温度が高く、流路を通って左端へ進むにつれて下がっていた。充放電中はこの面もかなり温かくなっていたので、イチケンは意外と熱は逃げているのだろうと見ている。

ポンプの種類は不明だが、イチケンはピエゾ素子だろうと推測する。ポンプからは3本の端子が出ており、1本を共通にして残り2本の電圧をそれぞれプローブで測ると、ピークで100V近い電圧が出ていた。この動作電圧の高さも、ピエゾ素子と考える根拠になっている。

液体の中の「白い部分」

流路内の液体も観察している。白く見える部分は最初は気泡だと思われたが、本体を立てると下へ移動した。そのためイチケンは気泡ではないと判断し、緑色に見える部分も液体で、白い部分はそれより重い別の液体ではないかと考えている。

結び:パッシブからアクティブ冷却へ

イチケンは、モバイルバッテリーの冷却は従来のパッシブ方式からアクティブ方式へ移っていきそうな雰囲気があると述べ、Ankerも強制空冷式のモバイルバッテリーを発表していることに触れて締めくくった。ただし今回の製品については、断熱性の高いスポンジを挟んだ構造や、銅箔などによる単純な面放熱のほうが有利かもしれないという見立てを示しており、液冷が熱設計としてどこまで効果を上げているのかは、イチケン自身も断定していない。