卵子凍結を考える前に、20歳で自分の体を知る:岡田有香院長に聞く助成金・AMH・年齢と出産の確率

YouTubeで開く ↗
概要

働く女性向けのYouTubeチャンネル「lumily」で、聞き手の愛沢えみりさんが、グレイス杉山クリニックSHIBUYA院長の岡田有香医師に卵子凍結について聞いた。SNSやニュースで「選択肢を広げる手段」として語られることが増えた卵子凍結について、岡田院長は凍結するかどうかより先に、若いうちから自分の体の状態を知り、そこからライフプランを考えることが大事だと繰り返し語っている。

9分で読めます
1:53

岡田院長の経歴

岡田院長は産婦人科医として11年目になる。聖路加国際病院で産婦人科全般に携わり、がん患者の卵子凍結などにも関わった。その後、杉山産婦人科で不妊治療を学び、現在はグレイス杉山クリニックSHIBUYAの院長を務めている。愛沢さんと院長は同い年で、対談では二人とも自分自身の状況を例に話を進めている。

2:41

東京都の助成金と、卵子凍結を選ぶ人の増え方

卵子凍結を選ぶ女性は増えているのか。岡田院長によると、東京都の助成金が始まってから「少し増えた」程度で、爆発的に増えたわけではない。助成金の開始前後を比べると、院長の感覚ではおよそ20%の増加だという。もともと卵子凍結を考えていた人が、助成金をきっかけに実際に踏み切ったケースが増えたと院長は見ている。

助成金は前年10月に始まり、対象は18歳から39歳の女性である。注射や飲み薬を始めて卵子を凍結するまでの費用に最大20万円、その後に毎年かかる卵子の保管費用に年間2万円が出る。申請するには、まず東京都のホームページから説明会を必ず受講し、そのうえで実際に凍結すると決めたら自分で申請する流れになる。愛沢さんが、すでに卵子凍結をしている人が保管料だけ助成を受けられるかを尋ねると、院長は対象外だと答えた。助成はこれから凍結する人に向けた制度である。

5:02

どの年代の人が来ているのか

岡田院長のクリニックで実際に卵子凍結をしている人のうち、約6割は36歳から40歳だ。一方、相談に来る人には30代前半もかなり多く、20代より30代が中心だという。

何歳まで凍結できるかについて、院長は日本生殖医学会の推奨として39歳までと説明している。18歳からでも可能だが、早く凍結すればそのぶん保管費用が長くかかる。そのため、いつ凍結するかは自分の体の状態を見て考えてほしいと院長は話す。

6:06

20歳になったら婦人科へ:エコー検査とAMH検査

卵子凍結を考えるにあたって何から始めればよいか、と愛沢さんが尋ねると、岡田院長はまず、凍結するしないにかかわらず20歳になったら婦人科を受診してほしいと答えた。エコー検査で婦人科の病気がないかを確認し、あわせてAMH(抗ミュラー管ホルモン)という卵子の在庫数の目安を示す血液検査を受ける。同年代より卵子の在庫がかなり少ないとわかれば、妊娠そのものを早めに考える必要が出てくる。院長は、検査結果を自分のライフプランを考えるきっかけにしてほしいという。

院長のクリニックでは、保険診療の婦人科診療に加えて、エコー検査とAMH検査を「プレコンセプションケア」として行っている。いつか妊娠を考える人のための体のチェックという位置づけだ。

10:50

AMHが示すもの

AMHの検査で「卵子が何個ある」と数が出るわけではない。院長によると、卵子は生まれる前にしか作られず、生まれた後は減っていく一方である。AMHの値は35歳前後で2〜3程度が平均的だが、0台の人もいる。値がとても低い人は卵子の在庫が人より少ないため、閉経が早まる可能性が高く、院長の言葉では妊娠できる期間が人より短くなるイメージになる。

AMHが低ければ、卵子凍結をしても十分な数が採れない人もいる。また、数値に問題がなくても、年齢的に妊娠・出産が難しくなっていく時期はある。院長は、こうした点も含めて将来子どもが欲しいかどうかを考えてほしいと話した。

院長は、クリニックで使っているAMH検査の指標も示した。同じ年代でも数値の幅はかなり大きく、この値によって1回の卵子凍結で採れる卵子の数がある程度決まる。比較的若い年代でAMHが平均的な4程度なら、1回で採れる卵子は平均12〜15個ほど。平均値は年代とともに下がり、採れる数も変わる。36〜38歳で平均的な2前後なら、1回の採卵で最終的に7〜8個程度になると院長は説明した。若くても値がかなり低い人は、1回で2〜3個しか採れない場合もある。院長は、「卵子凍結をどうしようか」の前に、まず自分の体のことを知るところから始めてほしいと述べている。

9:37

エコー検査で見つかる病気:子宮筋腫と子宮内膜症

エコー検査で最も多く見つかるのは子宮筋腫で、子宮にこぶができる病気だ。院長によると約3割の人が持っている。もう一つは子宮内膜症で、生理痛があると発症しやすく、こちらも約3割の人にあるとされる。どちらかに当てはまる人は、合わせると半数ほどになる。

愛沢さんは、妊娠を望んで検査を受けたら病気が見つかって驚いたという話はよく聞くが、半数に可能性があるとは知らなかったと話した。院長は、20代後半から30代前半はこうした病気が出てきやすい年代だと付け加えている。

見つかった場合の治療は、悪化させないことが中心になる。主に低用量ピルを使う。院長は、生理痛は本来ないのが普通で、痛みがある人は背景に病気がある場合が多いと説明する。妊娠を希望する時期までは低用量ピルを飲んで悪化を防ぎ、実際に妊活を始める前にやめる。院長はこの進め方がよいと考えている。

13:09

男性も検査を

院長が示した資料には男性向けの案内もあった。院長によると、100人に1人は精子がない「無精子症」で、男性もチェックしておくとよい。女性の卵子と違って精子は新しく作られるため、生活習慣の影響が大きく、改善の余地がある。ただし、何歳でも問題ないわけではない。男性も35歳ごろから少しずつ精子の質が落ち、45歳からはがくっと下がると言われているという。院長は男女ともに若いうちから自分の体を気にかけてほしいと話した。

14:57

卵子凍結をするのはどんな人か

実際に卵子凍結をするのは、卵子の質が落ちてくる30代半ばから後半の人が多い。年齢に関係なく、子宮内膜症など不妊になりやすい病気がある人や、AMHが同年代の平均より低く採れる数が少なめの人も凍結を選ぶ、と院長は説明した。

卵子凍結は不妊治療とは別のものだが、年代が上がると不妊になる確率は高くなる。そのため、将来不妊になったときの治療の負担をできるだけ減らしたい人や、子どもを持てない可能性をできるだけ減らしたい人が来院するという。

16:05

妊活を始める年齢と、子どもを授かれる確率

院長は、不妊治療をしても全員が子どもを持てるわけではないと強調し、欲しい子どもの数と妊活開始年齢の関係を示す表を紹介した。数字はいずれも、不妊治療の最終段階である体外受精まで含めたものだ。

子どもが1人欲しい場合、35歳までに妊活を始めれば約90%が授かれる。30代後半、39歳ごろに始めると4人に3人は授かれるが、4人に1人は難しい。40代に入ると半分が難しくなる。子どもが2人欲しい場合は、31歳までに1人目の妊活を始めれば90%が2人授かれるというデータだという。

現在36歳で子どもが1人いる愛沢さんの場合、2人とも授かれる確率は75%で、4人に1人は2人目が難しい計算になると院長は説明した。愛沢さんは、ぼんやりと2人欲しいと思っていたが、この数字を20代で知っていれば違ったと振り返った。2人欲しいなら31歳で妊活を始めれば90%だったという事実を知っているかどうかで、判断がだいぶ変わったと感じたという。

院長自身はこのデータを知っていて、将来2人欲しいと考え、30歳で1人目の妊活を始めた。その頃は仕事がとても楽しい時期で、データを知らなければ30代後半から1人目を考えていた可能性が高いと院長は話す。だからこそ20代の人にもこの情報を知識として持ち、動いてほしいと述べた。愛沢さんは、女性は特に逆算して考える必要があると感じたと応じている。

19:43

なぜ逆算が必要なのか:卵子の質と年齢

逆算が必要な理由として、院長は卵子の質と数を挙げた。示されたのは、同じ10個の卵子を凍結した場合に、赤ちゃん1人を出産できる確率を年代別に示したデータだ。20代では約80%、30代前半までは約75%とあまり変わらない。その先は約5年でこの割合が半分以下になり、40歳では10個の卵子から赤ちゃんが生まれる確率は30%、その後はゼロに近づく。院長は、この10年間の変化がとても大きいと患者に説明しているという。

愛沢さんの年齢に近い35歳前後では、10個で約70%、20個で約85%だ。これは凍結した卵子を融解して受精させ、最終的に赤ちゃんになる確率である。

愛沢さんは、「35歳まで」という話は神話のように聞いていたものの、20代は仕事が忙しく楽しく、目の前のことに全力で、自分の体と向き合えなかったと話した。卵子が減っていく実感もなかったという。精子が新しく作られる男性との違いも大きいと、二人は確認し合った。

22:24

パートナーがいる人・いない人

卵子凍結を考えて来院する人には、パートナーがいない人だけでなく、パートナーはいるが将来どうなるかまだわからない人も多いと院長は言う。子どもを持つかどうかは二人の将来の問題で、相手の意思もある。本人は子どもが欲しくても、パートナーがあまりその方向を向いておらず、結婚もまだ考えていない場合、女性だけで進めるのは難しい。そこで、自分だけで決められる卵子凍結によって出産の可能性をできるだけ高めたいと考えて来院する人もいるという。

23:41

卵子凍結と受精卵凍結の違い

パートナーがいて、その人との子どもでよいと決まっている場合は、卵子と精子を合わせた受精卵の状態で凍結する方法がある。院長によると、卵子凍結のデータより高い確率で出産に至れるため、より確実だ。院長のクリニックでも、この条件に当てはまる人には受精卵凍結を勧めている。

採れた卵子がすべて良い受精卵になるわけではなく、その割合も年代で大きく変わる。院長の説明では、20個の卵子から良い受精卵になるのは、30歳前後で8個ほど、35歳を超えると6個ほど、40歳を超えると2〜3個ほどになる。受精卵凍結をすれば、実際に何個の受精卵ができるかもその時点でわかる。この点も、院長が受精卵凍結をより確実な方法として勧める理由の一つになっている。

25:09

日本の不妊治療の現状

最後に院長は、日本の不妊治療の件数が、直近で中国に抜かれたものの世界第2位であり、人口比ではずば抜けて1位だと紹介した。それだけ多くの人が国内で不妊治療に取り組んでいるのが現状だという。そのうえで院長は、できる限り出産の可能性を高めたいという人の手助けになりたいと語り、対談を締めくくった。