卵子凍結は「使わずに済む」ことも目標:グレイス杉山クリニックSHIBUYA岡田有香院長に聞く、受診から採卵・保管・使用まで

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概要

働く女性向けYouTubeチャンネル「lumily」が、グレイス杉山クリニックSHIBUYAの岡田有香院長に卵子凍結について聞いた回である。前回の続編として、受診から採卵までの具体的な手順、副作用、費用、保管のリスク、凍結した卵子が実際に使われる場面までを順に尋ねている。岡田院長は、卵子凍結は誰かに勧められてするものではないと話す。自分の体の状態とライフプランを踏まえて、本人がメリットが大きいと思えるなら行うもの、という立場だ。

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事前検査から採卵まで、通院は計4〜5回

岡田院長によると、卵子凍結の流れは、まず事前検査で1回受診し、生理が始まってからの約2週間に3〜4回受診するというものだ。事前検査では血液検査で感染症の有無を調べ、卵子の「在庫数」の目安になるAMHを測る。あわせてエコー検査で卵巣や子宮に病気がないかを確認する。

同院では、生理が始まって3日以内に一度来院してもらう。その日にホルモンの採血とエコー検査を行い、その周期に飲み薬などを中心とした治療を始めてよいかを判断する。問題がなければ1週間分の飲み薬と注射を渡し、患者が自分で注射をする。注射を始めて約1週間後から2〜3回受診し、そのあと採卵になる。この時期は2日に1回くらいのペースで通院する感覚になるという。

通院回数は合計4〜5回程度で、生理開始から採卵までは約2週間前後かかる。働く女性にとってはスケジュールの調整が大変だという聞き手の指摘に対し、岡田院長は、不妊治療のクリニックには働く女性の患者が多いため、夜7時ごろまで診療しているところが多いと答えた。

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自己注射と飲み薬の役割

注射はほとんどの人が自己注射で行っているという。自分で打つのが難しい場合はクリニックで注射してもらうこともできるが、その場合は通院がほぼ毎日になるため、自分で打つ人が大半だと岡田院長は話す。

薬はホルモン剤で、卵を育てる飲み薬のほかに、排卵を抑える飲み薬を使う。ある程度育った卵は自然に卵巣の外へ出てしまう(排卵してしまう)ため、それを止める必要があるからだ。飲み薬は1〜2種類で、服用期間はおおむね1週間から10日間だという。

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副作用:卵巣過剰刺激症候群と採卵時のリスク

副作用について、岡田院長はまず薬を使う目的から説明した。通常の生理周期では卵子は1〜2個しか育たない。卵子凍結では薬を使ってたくさんの卵子を育て、1回でまとめて採ることを目指す。1回に10個以上、多いと20個ほど採れる人の場合、卵巣は親指の先ほどの大きさからピンポン玉ほどまで大きくなる。

その結果、物理的な圧迫感やお腹の張り、便秘が起きることがある。ホルモンの影響でお腹に水がたまりやすくなり、歩くと響くような痛みが出る人もいる。こうした症状を卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と呼び、岡田院長はこれがもっとも起こりやすい副作用だとする。軽いものを含めると10%弱の人に見られるが、入院が必要になる重いものは1%にも満たないという。

ほかに、採卵では膣の側から卵巣に向けて針を刺すため、卵巣表面からの出血や卵巣の感染がそれぞれ0.1%弱の確率で起こる。岡田院長はこうしたリスクもゼロではないと説明した。

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採卵の痛みと麻酔、当日の仕事復帰

採卵は痛いのかという問いに、岡田院長は「痛くなくはない」と答えた。育った卵の数が多いほど、生理痛のような鈍痛が強くなる。そのため10個以上育っている人は、点滴による静脈麻酔を使って採卵することが多い。数が少ない場合は、局所麻酔や座薬だけで済ませる人がほとんどだという。

麻酔の方法はクリニックによって少しずつ違う。そのため、点滴での麻酔を選べるかどうかもクリニック選びで考えるポイントの一つになると岡田院長は話した。採卵後については、ほとんどの人が午後には仕事をしている印象だという。

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体外受精と同じ処置であり、日本では年間50万件行われている

岡田院長は、卵子凍結の一連の処置は、日本の不妊治療で体外受精を行う際の手順とまったく同じだと説明する。体外受精では卵子を体外に取り出し、精子と合わせて受精卵にする。その前段階の採卵は日本で年間50万件ほど行われており、1日に何千人もが同じ処置を受けている計算になるという。

岡田院長によれば、日本の不妊治療の件数は直近で中国に抜かれたものの世界第2位で、人口比では群を抜いて1位だ。それだけ多くの人が国内で不妊治療に取り組んでいるのが現状だという。

聞き手は女性の負担の大きさに触れた。岡田院長も、体外受精では女性が卵子を採るために3〜4回受診しなければならないのに対し、男性は採卵日に精子を提出するだけで済むと話す。体の構造上の問題として、負担の差は大きいと認めている。

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受診から凍結までの期間と回数は年代で大きく違う

初診から卵子凍結までの期間は年代によってかなり違うと岡田院長は言う。30代後半で初診に来る人は、受診の時点ですぐに始めたいと考えていることが多く、だいたい1カ月程度で卵子凍結をスタートしている。初診当日に始める人もいるという。

一方で迷う人は、数年単位で迷う。まずAMHなどの検査で自分の状態を知り、パートナー探しを頑張って、2〜3年後に難しければ凍結しようかと考えて来院する人もいる。岡田院長は、卵子の質は30代後半で一気に変わるため、30代後半に入った人は1カ月でも早く始めようとして来院することが多いと話す。

凍結の回数も年代で変わる。30代前半までは1回で終わる人がほとんどだが、30代後半になると平均2回程度になる。1回の採卵で採れる卵子の数は年代とともに減り、30代後半では1回あたり7〜8個ほどになる。そのため2回採卵して、全体で15個、できれば20個ほどの凍結を目指す人が多いという。

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採卵ができない人、卵が育たない人もいる

受診しても採卵ができないケースもある。たとえば子宮筋腫で子宮のこぶがかなり大きく、卵巣が膣側から針の届かない位置にある人がそうだ。また、もともと卵巣が腫れている状態で注射を始めると、卵巣がさらに腫れてねじれるリスクが高まるため、注射を始められないこともある。こうした病気がないかを確かめるために、事前検査で必ずエコー検査を行っているという。

さらに、注射を始めても途中で卵が育ちにくい人、育たない人もいる。岡田院長によればまれではあるが1〜2%ほどの確率で起きる。やろうと決めれば必ずできるわけではない、という点も院長は強調した。

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凍結した卵子はいつ使われるのか

凍結した人が妊娠を望んでクリニックを訪れるのは、パートナーが見つかったときである。ただし岡田院長によると、その時点で最初から凍結卵子を使う人は少なく、まずは自然妊娠を考える人が多い。自然妊娠が難しく不妊治療に進んだときに凍結卵子を使う人や、不妊治療をしても子どもを授からなかった場合に「最後の砦」として凍結卵子を使う人がもっとも多いという。

使用率について岡田院長は日米のデータを紹介した。日本では、凍結卵子を使った人は10〜13%程度とされる。これまで日本で凍結する年齢は40歳前後が多く、そこからパートナーが見つかる人が多くなかったため、使用率が低かったと言われている。アメリカでは30代半ばでの凍結がもっとも多く、直近のデータでは約38%が使われている。その中にも、自然妊娠したので使わなかったというデータがかなり多いという。

聞き手は「38%しか使われないのか」と率直な印象を口にした。これに対し岡田院長は、医療者の立場からすると使わないことも一つのメリットであり、自然妊娠できるならそれがいいと答えた。実際に卵子凍結をする人の多くも、それを目標にしているという。凍結すれば卵子を使えばいい、という考え方ではない。自然に妊娠したいが、それができなかったり、不妊治療をしても難しかったりする人を身近で見てきた人が、できる限り出産の可能性を高くしたいと考えて凍結を選ぶことが多い。岡田院長は、この点を理解したうえで凍結するかどうかを考えることがいちばん大事だと述べた。

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費用と助成金、保管料

費用は、事前検査から卵子の凍結を終えるまでで、同院では40万円だという。一般的にはだいたい30万円台から60〜70万円程度までと幅がある。同院はパッケージ料金で均一価格にしているが、凍結する卵子の個数に応じて費用が変わるクリニックも多いという。

東京都の助成金については、採卵の費用として20万円が出るため、およそ半分がカバーされるイメージだと岡田院長は説明した。これとは別に保管料がかかる。同院では初期費用が5万5000円で、ほかに年単位の保管料が発生する(字幕では金額が正確に聞き取れない)。

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取り違えや災害のリスク

保管中の卵子の取り違えを不安に思う人は多いと岡田院長は言う。日本では年間50万件の採卵が行われており、その人の卵子や受精卵を取り違えないよう、技術面を含めさまざまな工夫をしている。現状、そうした事故はほとんど起きておらず、卵子凍結でも同じ体制をとっている。処置や取り違えについては医療全体でダブルチェック、トリプルチェックを行っているが、それでも100%とは言えない、と院長は説明している。

地震や火災などで保管タンクがだめになる可能性についても、ゼロではないと答えた。そうしたリスクもすべて患者に説明しているという。

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よくある質問:自然妊娠しにくくならないか、子どもへの影響は

患者からよく聞かれるのは、卵子凍結のあとに自然妊娠しにくくなるのではないかという質問だ。たくさん卵を育てて採るので卵子が減ってしまうのでは、という心配である。これに対して岡田院長は、卵子凍結で採るのは、その生理周期で本来なくなってしまう卵子をできるだけ多く育てたものだと説明する。採ることで卵子の数が大きく減ることはあまりないという。実際に不妊治療のあとで自然妊娠する人も多く、その確率から考えても自然妊娠しにくくはならないと院長は話している。

凍結卵子から生まれる子どもに奇形などが出やすいのではという心配も多いが、奇形率は変わらないという。唯一言われているのは、使用時にパートナーの精子に問題があって男性不妊の要素がある場合だ。そのとき子どもが男の子なら、男性不妊の要素が引き継がれる可能性がある。それ以外はすべて変わらないと岡田院長は説明した。

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保管の期限は45歳まで

凍結卵子を使う推奨年齢は45歳までとされている。そのため、45歳までに保管し、それまでに使うというイメージになるという。使わなかったり保管の必要がなくなったりした場合は破棄することになり、だいたい45歳の誕生日で破棄すると案内しているそうだ。

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「勧められてやるものではない」

最後に、卵子凍結を勧めるかと聞かれた岡田院長は、誰かに勧められてやるものではないと答えた。まず自分の体を知り、その状況と自分のライフプランを照らし合わせて、卵子凍結をすることのメリットが大きいと思えるならやるべきだという。自分はこれまで「絶対にしたほうがいい」とも「しないほうがいい」とも言ったことはないと話した。

子どもを持つか持たないかについても考え方はさまざまで、どちらも本当にいいと院長は言う。そのうえで、持つ可能性があるかをまず考え、自分の年代や病気の背景がないかといった点も踏まえて最終的に決めていくものだとした。20〜30代の視聴者に向けては、仕事などで忙しいと思うが、自分の体について知り、少し立ち止まって将来のことを考えてほしいと呼びかけた。相談だけで来院してもよく、自分の体を知る目的で来る人がいちばん多いという。婦人科は行きづらいイメージがあるが、まずは来てほしいとも話した。

収録後、聞き手は次のように振り返っている。卵子凍結はなぜ必要なのか、どんな人がやるべきなのかを突き詰めていくと、自分の人生をどう生きたいかにつながる。自分が妊娠・出産を望んでいるのか、その可能性があるのかを改めて考えることが大切だと感じた。若いうちにまず婦人科で検査を受けること、20代前半から考え始めることで、人生の選択肢が広がり、後悔も少なくなるのではないかという。