歯周病菌が脳に入り込み老化を進める:友利新が語る認知症と口腔ケア

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概要

認知症は脳そのものの変化だと考えられがちだが、身近な細菌がその進行に関わっているかもしれない。医師の友利新は、歯周病菌が脳に侵入して脳の老化を進めるという最近の研究を紹介し、認知症対策として40〜50代から口のケアを始めるべきだと説く。

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原因として名指しされるのは歯周病菌

友利氏によれば、認知症を進める原因かもしれない菌は歯周病菌である。歯周病というと歯茎が腫れる、歯茎から血が出るといったイメージが強く、認知症と結びつけて考える人は少ない。しかし最近の研究で、口の中の歯周病菌が脳に侵入し、脳の老化を進めることが分かってきたという。

同氏は、日本人の約8割が程度の差はあれ何らかの歯周病にかかっていると言われていること、また2040年には65歳以上の3人に1人が軽度認知症(MCI)になる可能性があると推測されていることを紹介した。

友利氏が普段から主張しているのは、老化とは炎症、特に慢性炎症が進むことだという考えである。口の健康を放置することは全身の慢性炎症、つまり老化を放置することと同じであり、それが歯周病で起きているというのが同氏の見方だ。最近は口をきれいにすることが認知機能を高めるとも言われてきているという。

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なぜ口の中の菌が脳まで届くのか

歯周病を起こす菌は多種あるが、中心となるのはP.g.菌と呼ばれるポルフィロモナス・ジンジバリス菌である。この菌はジンジパインというタンパク質分解物質を分泌する。

本来、脳には血液脳関門というバリアがあり、細菌や不要なものが入らないよう守られている。ところが重度の歯周病があると、ただれた歯茎からジンジパインが入り込んだり、飲み込んだ唾液に含まれたジンジパインが腸に達して腸のバリアを弱め、そこから血液に乗ったりする。ジンジパインは血管の内皮細胞を緩め、バリアの透過性を高めてしまうため、血液脳関門をすり抜けて脳内に侵入する、と友利氏は説明する。

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脳内でジンジパインが起こす3つのこと

脳に入ったジンジパインが起こすこととして、友利氏は次の3つを挙げた。

  1. アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβを増やす
  2. 神経細胞を破壊するタウタンパクを活性化させる
  3. 脳の免疫細胞を異常に活性化させ、脳に慢性炎症を起こす

結果として、不要なものが沈着し、神経細胞を破壊するものが増え、慢性炎症が常に起こる状態になるという。

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研究が示すもの

友利氏はいくつかの研究を根拠として紹介した。まず、アルツハイマー病患者の脳組織を調べた研究では、健常な人ではほとんど見られないP.g.菌が高頻度で検出されたという。

次にマウス実験である。P.g.菌を投与してマウスを歯周病にすると、5週間で記憶テストの成績が大きく落ち、記憶を司る海馬にアミロイドβが沈着することが分かったとされる。P.g.菌は酸素がなくタンパク質が豊富な場所を好むため、脳はこの菌にとって非常に住みやすい場所であり、血液脳関門を突破すればそこに住み着くようになるのかもしれない、と同氏は推測として述べている。

疫学的なデータも示された。台湾で50歳以上の約2万8000人を10年間追跡した研究では、歯周病がある人はない人に比べてアルツハイマー病のリスクが1.71倍高かったという。また、歯周病が進むと歯を失うことにつながるが、60歳以上を5年間追跡した日本の研究では、歯が20本以上残っている人に比べ、あまり残っていない人では認知症のリスクが1.8倍に上がったとされる。これらのデータから、歯周病がある人、歯周病で歯が少なくなった人は認知症リスクがかなり上がると友利氏はまとめた。

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飲み込む力と認知症

歯周病とは直接関係しないが、友利氏は嚥下能力にも触れた。年を取ると物を飲み込む力が弱まり、誤嚥性肺炎などを起こしやすくなるが、嚥下能力の低下も認知症リスクの高さにつながるという。そのため、飲み込む力をしっかり保つことも認知症予防の一つになるのではないか、というのが同氏の考えである。

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40〜50代から始める理由

認知症はまだ先の話だと思う人に対し、友利氏は、アミロイドβが溜まり始めるのは発症の20〜30年前だと言われている点を強調する。70〜80歳で発症するとしても、その20〜30年前は40代や50代にあたる。だからこの年代から口のケアをすることが大事だという。

一方、この年代は歯周病になりやすい条件も重なる。女性は更年期で唾液が減り、男性も50代以降は唾液が低下する。唾液が減ると歯周病菌が繁殖しやすくなる。さらに歯茎が痩せて隙間ができ、物が詰まりやすくなること、昔治療した詰め物が劣化することも歯周病を招きやすい。これを放置すると、30年後にリスクとして表れてくると同氏は警告する。

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具体的な対策

今後の脳機能を守るために歯周病をなくすことが重要だとして、友利氏は1〜2か月に1回は歯医者で定期検診を受けること、歯磨きに加えてデンタルフロスなどを使い、歯周病を寄せつけないケアをすることを勧めた。歯周病は糖尿病などさまざまな病気との関係も言われているが、とりわけ認知症が気になる人はぜひケアをしてほしい、と締めくくった。