ボトックスは脳に届くと危険なのか――友利新氏が2本の論文から安全性を検証する
友利新公式チャンネル(内科・皮膚科医)SNSで「ボトックス注射は危険なので打たない方がいい」という投稿が話題になった。皮膚科医の友利新氏はこの動画で、投稿の根拠とされた2本の研究を読み、何が事実で、どこに誤解があるのかを解説している。友利氏は、論文の内容自体は事実でも、そこから「美容目的のボトックスは危険だ」とは言えないと考えている。そのうえで、不安があるなら無理に打つ必要はないとも述べている。
話題になった投稿の主張
友利氏によれば、投稿の主張は次のようなものだった。ボトックスにはボツリヌストキシンという毒素が含まれており、2008年の研究で、この毒素が脳に到達することが示された。その結果、頭がぼんやりする、物忘れしやすくなるといった異常が多数報告されている。こうしたことを美容外科は教えてくれないので、基本的にボトックスは打たない方がよい、というものである。
友利氏は、美容医療に関わる立場の人間がこれを否定しても説得力に欠けると受け取られるかもしれないと前置きしたうえで、根拠となった論文の中身を順に説明している。
2008年の研究:毒素が脳に届いたことは事実
1つ目の根拠は2008年に発表された研究である(友利氏は発表者を「アントヌッチさん」と紹介している)。友利氏は、ボトックスの毒素が脳内に到達したという点は事実だと認めている。
この研究では、ラットの顔の筋肉にボツリヌストキシンを注射した。すると毒素が神経を逆向きにさかのぼる現象(逆行性の軸索輸送)が起き、脳の方まで届いたことが確認された。
「脳に届く」と「脳に障害が起きる」は別の話
友利氏は、神経をさかのぼって脳に届くと聞けば怖く感じるのは自然だと理解を示す。ただし、脳に届くことと脳障害が起こることはイコールではなく、まったく別の話だと強調する。
例として友利氏が挙げるのは、睡眠薬など身近な薬である。こうした薬はすべて脳に届いて効果を発揮する。お酒を飲んで気分がふわっとするのも、アルコールが脳に届いて作用しているからだという。友利氏は、薬やアルコールがボトックスと同じ作用をするわけではないと断ったうえで、大事なのは「脳に届いたか」ではなく「そこで何が起きるか」だと述べている。
この観点から友利氏は2008年の研究を読み直す。論文に書かれているのは、ラットで毒素が神経を通じて到達したところまでである。脳が萎縮した、認知機能が低下したといったことを示した研究ではない。さらに友利氏は、この動物実験はかなりの量を投与した条件での結果であり、人の顔への通常の施術とは条件が違うという点も押さえておくべきだと話している。
2018年の研究:無許可サロンでの高濃度注射による中毒
2つ目の根拠は「ボトックス中毒患者の脳画像に明らかな異常が報告されている」という主張で、これにも元になった論文がある。2018年に発表されたもので、中国で美容目的のボトックス注射を受けた人が全身性のボツリヌス中毒を発症した9人の患者のデータである。友利氏自身は、ボトックス中毒の発症例を実際に見たことはないという。
「やはり美容目的で打った人が中毒になっているではないか」と受け取られそうな話だが、友利氏が注目するのは注射を受けた場所と中身である。患者たちが施術を受けたのは医療機関ではなく美容サロンで、それも無許可のサロンだった。そこでは超高濃度に精製されたボトックスが注射されていた。非正規のルートで入手した、本物かどうかも分からない製剤を、技術のない人が分からない量だけ注射した。その結果ボツリヌス菌による中毒が起こり、中毒患者の脳画像に異常が現れた。友利氏は、これは普通の美容施術とは前提条件がまったく違うと指摘する。なお、論文の最後には、9人の患者は治療によって回復したと書かれているという。
友利氏の結論はこうである。誤った使い方をしたり高濃度で注射したりすれば、中毒などの危険は確かにある。しかし承認された薬剤を、きちんとした医療機関で、用法・用量を守って使っていれば、それほど怖いものではないのではないか。
優れた薬剤だが、使い方を誤れば危険もある
ここまで聞いて「大丈夫なのか」と安心する人が多いだろうと前置きしつつ、友利氏はボトックスの位置づけを改めて説明する。ボトックスは効果の強い薬剤で、理解したうえで正しく使えば素晴らしいものだという。シワを抑えるだけでなく、斜頸やけいれんの抑制など、さまざまな用途がある。
一方で、使い方を間違えれば先に述べたような危険がある。打ちすぎると抗体ができて効かなくなることもあるという。
不安なら打たなくていい
友利氏は、シワなどはあっても生きていける、とはっきり言う。ボトックスを怖いと思いながら打つくらいなら、打たなくていいというのが友利氏の考えだ。全員にボトックスを勧めるわけではない。シワやエラに悩んでいる人にとっては良い手段だが、心配や不安があるなら無理をする必要はないとしている。
問題の投稿については、誤解の多い内容だったかもしれないとしつつも、自分にその美容施術が本当に必要かを考えるきっかけにはなったのではないかと評価している。また、美容医療に携わる人でも「絶対に安全」と考えている人はそれほど多くないだろうとも述べている。
友利氏が大切だとするのは、リスクとベネフィットを比べ、自分の中でベネフィットの方が大きいと判断したときに施術を受けることである。今回の論文の内容を知ってもなお心配なら受けなくていいし、この程度の論文なら自分は大丈夫だと思えるなら受けてもいい。これはボトックスに限らず、薬など何を使う場合でも同じだという。
友利氏自身は、これらの論文の一部を以前から知っており、それを踏まえたうえで今後もボトックスを続けたいと考えている。毎回打つたびに痛いと感じるが、自分にとってはやった方が良いと感じているからだという。動画は、最終的にはやらなくてもかまわないので、各自で判断してほしいという呼びかけで締めくくられている。
皆さん、こんにちは。友利新です。今日はボトックスの安全性についてお話ししたいと思うんですよ。
SNSでボトックス注射が危険だと提唱されてる方がいて、2008年の研究で、ボトックスはボツリヌス毒素っていうものが入ってるんですが、これが到達することによって、頭がぼーっとしたりとか、疲れやすくなったりとか、そういったことが起こっちゃう異常が多数報告されていますよと。こういったことは美容外科では教えてくれないことだから、基本的にはボトックスは打たない方がいいっていうのが話題になっていたんですね。美容外科医がこれを言うのはどうなのかなっていうところもあったと思うので、真実をお話ししたいと思います。
まず1つ目の、2008年にボトックス毒素が脳内に到達することが証明されたっていうところは事実になります。これは2008年にアントヌッチさんっていう方が発表した研究で、動物、ラットにボトックス毒素を打った時には神経から逆走する現象、逆行性の軸索輸送というものになるんですが、それが起こったっていう論文を発表したんですよ。顔の筋肉に打った時に神経から逆走して脳の方に行ったよっていうのが確認されたっていうところが、論文の中身になっています。
神経から逆流して脳に到達していくっていうことを聞くと、多分皆さん怖いって思っちゃうかもしれないんですが、脳に到達することっていうのと脳障害が起こるっていうのはイコールではないんですよ。全く別の話になってくるんですね。麻酔薬とかもそうだし、睡眠薬とか鎮痛剤、全て脳に達して効果を発揮するんですよ。お酒を飲んで気分がふわっとするっていうのは、アルコールが脳に届いて作用してるからっていうところもあるんですね。薬とかアルコールがボトックスと同じような作用をするわけではないんですけれど、何が言いたいかっていうのは、脳に届いただけじゃなくて、そこで何が起きるかっていうものが実際に大事だっていうところになります。
2008年の動物実験、ラットの神経、到達したまではちゃんと書いてあるんですが、脳が萎縮したとか認知機能が低下したとか、そういったことを示した研究ではまずないってこと。顔とかの筋肉に行ったものが奥の方に到達したっていうのは、基本的には脳に直接結構な量を打っているっていうところになるので、そこの違いは持っといた方がいいのかなと思います。
あともう1つが、ボトックス中毒患者の脳画像で明らかな異常が報告されているっていうところなんですが、これの根拠となる論文もあるんですよ。これは2018年に発表された論文になります。中国で美容目的でボトックス注射をしている人が全身にボトックス中毒を発症してる。私もボトックス中毒の発症っていうのは見たことないんですが、9人の患者さんを対象にしたデータになります。
じゃあ、やっぱり美容目的で打った人がなってるじゃん、みたいな感じだと思うんですが、怖いなと思ったのが医療機関じゃなくて美容サロン。それも無許可の美容サロンで、超高濃度に生成されたボトックスを打ってるんですよ。だから何が言いたいかっていうと、普通のところじゃないんですよね。非正規のルートで、ちゃんとしたボトックスなのかも分からない、技術もないような方が、よくは分からない量を入れた。それによってボツリヌス菌の中毒が起こって、その中毒の人の脳に出てきたよっていうところなので、そもそも前提条件が違うんですよね。
それだけを聞くと、美容施術でやったっていうところに思っちゃうかもしれないんですけど、全然そこも違うっていうところを思っといていただきたいなと思います。ちなみに9人の患者さんっていうのは、治療で回復をしてるっていうところを最後に書いてあります。間違った使い方だったりとか、高濃度を入れるとか、そういったことをすると中毒が起こったりとか怖いことはあるんですけれども、承認されている薬剤で、ちゃんとした医療機関で、用量用法っていうんですかね、そういうのを守っていれば、そんなに怖くないんじゃないかなというふうには思います。
ここまでいくと、大丈夫ねっていうふうに思う方も圧倒的に多いと思うんですけれども、私が言いたいのは、ボトックスっていうのは非常に強い効果があるし、理解して正しく打つっていうことは素晴らしいことだし、それによってしわを止めるだけじゃなくって、斜頸だったりとか痙攣を抑えたりとか、いろんな効果があって素晴らしい薬剤ではあります。でも使い方を間違っちゃうと、さっき言った危険性もあるし、やりすぎちゃうと抗体ができちゃって効かなくなっちゃうっていうところもあったりもするんですね。
しわだったりとか、そういうのって別にあっても生きていけるじゃないですか。ぶっちゃけて言うと、ボトックスが怖いなと思いながら打つんだったら、私は別に打たなくていいと思うんですね。なので、全員にやっぱりボトックス絶対やりなさいではなくて、しわに悩んでいるとか、エラで悩んでいるとか、そういう人にはボトックスっていうのはとてもいい手段ではあるけれども、心配だったり不安があるんだったら、別に無理してやる必要性は私はないと思うんですよ。
もちろん誤解が多い投稿だったかもしれないけれども、この美容が自分に本当に必要なのかっていうふうなことを考えるきっかけにはなる投稿だったのかなとは思います。携わっている人たちも、絶対っていうふうに思ってる人ってそこまで多くはないと思うんですよね。リスクとベネフィットを考えて、自分の中でベネフィットの方が高いなと思った時にやるっていうことがとても大切だし、ただ今回、内容を知った上でそれでも心配だった人はやらなくていいし、そういう論文だったら自分は大丈夫だなって思うんだったら、やってもいいと思う。
ちなみに私は、この論文は知っているものもあったし、それを踏まえた上でも今後はやっていきたいと私自身は思っています。ボトックスだけじゃなくて、いろんなもの、薬にしても何にしても、リスクとベネフィットをしっかり考えて使うっていうのがいいんじゃないかなと思います。
はい、ということでいかがだったでしょうか。心配だったのかなと思うので、この動画を撮ってみましたが、本当に最終的には別にやらなくてもいいですよっていうこと。だって痛いもん。私も毎回打つたびに痛いなと思うんですよ。だけど、やっぱりやった方が自分的にはいいなって感じているので、ご自身での判断でよろしくお願いします。ということで、今日も最後まで見ていただいてありがとうございました。また次の動画でお会いしましょう。さよなら。
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