ロート製薬とAnuaのアゼライン酸美容液はどう違うのか 皮膚科医・友利新が「溶かし方」から比較する

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概要

アゼライン酸は定番の美容成分として広く知られるようになったが、配合された製品の処方は大きく異なる。皮膚科医の友利新は、クリームしかなかったロート製薬のアゼライン酸がどうやって水のような美容液になったのか、また「効かない」とネットで物議を醸したAnuaのアゼライン酸美容液と何が違うのかを、皮膚科医の目線で解説している。結論として友利は、両者は方向性こそ違うが、どちらも「アゼライン酸をいかに完全に溶かして肌に届けるか」を考えた処方だという立場をとる。

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海外の処方薬と、日本のクリニック向けクリーム

友利によると、海外ではアゼライン酸を15%含むゲルが「フィナセア」という名前の医薬品として、ニキビの治療薬として実際に処方されている。日本ではこれを処方できないが、ロート製薬が20%のアゼライン酸を配合したクリーム「AZAクリア」をクリニックで販売している。

ただしクリニックの現場では、クリームはよく効くものの、重くてベタつくという声があったという。水のようにパシャパシャしたテクスチャーのものがあればよいと言われていたところに、ロート製薬から美容液タイプの新製品が出た、というのが今回の動画のきっかけである。

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アゼライン酸は「溶けにくい」成分

前提として友利は、アゼライン酸は水にも油にも溶けにくいという扱いにくい性質を持つと説明する。そのため医薬品やクリニック販売品の多くは、溶かすことを前提にしていない。細かく砕いた粒を油の中に浮かせるように配合しており、友利はこれを「スノードーム」のようなイメージだとたとえる。

この方法は粒として入れるため、ある程度高い濃度を配合できる利点がある。一方で、ざらつきがあったり、白浮きしたり、ベタついたりとテクスチャー面での難点があった。また、アゼライン酸自体はそれほど刺激の強い成分ではないものの、20%という濃度ではピリつきを感じる人もいた。クリームで良くなったという人もいれば合わなかったという人もおり、友利自身も「少量から使ってください」と話していたという。開発者は、なんとかしてアゼライン酸を溶かせないかと研究を重ねてきた。

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ロート製薬の新技術:非中和型の溶解

そこで登場したのがロート製薬の新しいセラムである。友利によれば、ここで使われているのは「非中和型」の溶解技術で、ロート製薬の特許だという。酸を溶かす方法としては、アルカリで中和して溶解させるやり方があるが、それとは異なる方法をとっている。

注目点として友利が挙げるのは、濃度が3%しかないことだ。20%のクリームから3%になったと聞くと、3%しか溶かせなかったのかと思うかもしれない。しかし友利が見せてもらった臨床データでは、ニキビなどに対して20%のクリームと同等の結果が出ていたという。さらに20%のクリームと比べて肌への浸透度が4倍高いというデータや、ニキビを減らすというデータもあると友利は紹介する。つまり「3%しか溶かしていない」のではなく「3%溶かせば20%のクリームと同等になる」ということで、友利はこれを「すごいこと」だと評価している。

なぜ非中和型を選んだのかについて、友利は推測として次のように述べる。アゼライン酸は酸性の状態のほうがアクネ菌やマラセチア菌の殺菌に効果的だと分かっているため、酸性を保つことでこれらの菌をターゲットにする狙いで開発したのだろう、という見立てだ。20%のものでは刺激を感じていた人も安心して使え、低濃度でも効果を最大限に出せる溶解法を見つけた点を、友利は「ロートさんの研究力」だとしている。

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Anuaの美容液は本当に「効かない」のか

続いて友利が取り上げるのが、ネット上で「効かないのでは」と言われてきた、Anuaを代表とするローションタイプのアゼライン酸である。

効かないと言われる理由について友利は次のように整理する。Anuaの製品は水酸化ナトリウムというアルカリを使ってpHを上げ、アゼライン酸をイオンの形に変えて水に溶かしている。科学的には、成分がイオン化して電気を帯びると、肌のバリア機能に弾かれて浸透しにくくなると言われてきた。だから「水酸化ナトリウムで中和すれば溶けはするが、肌には全然効果がない」というのが、これまでのネット上の噂だったのだろうと友利は見ている。

しかし友利は、いくらマーケティングがあるとしても、化粧品会社がそんなものを世に出すだろうかと疑問に思ったという。そこで調べていくうちに、ある論文を見つけた。

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pH3.9とpH4.9の浸透比較

友利が紹介した論文は、pH3.9で粒が残った状態のアゼライン酸と、アルカリを加えてpH4.9にし完全に水に溶かした状態のアゼライン酸とで、どちらが肌に浸透するかを比べたものだという。これまでの科学の常識からすればpH3.9のほうが浸透しそうだが、結果は完全に溶けているpH4.9のほうが浸透率が5倍高かったと友利は伝えている。

友利によれば、この論文では、アゼライン酸が肌に入っていくときの最大の壁は「溶けていないこと」であり、イオン化であれ何であれ完全に溶かすことこそが最大のメリットだと書かれているという。

また友利は、人間の肌は基本的に弱酸性であることにも触れる。水酸化ナトリウムで溶かしたアゼライン酸はアルカリ寄りになっているが、塗ると肌の酸性と混じって自然にpHが下がるとも言われているため、もともと「100%効かない」ということはないだろうと考えていたという。そのうえで論文を読み、pHの問題よりも、いかにしっかり溶かせるかが一番大事なのだと分かった、と友利は述べる。

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両社の処方に共通する考え方

この点から友利は、ロート製薬が3%でも「どれだけ溶かすか」に焦点を置いたのも、同じ理由だろうと考えている。Anuaもそれを知っていたうえで、20%ほど配合し、水酸化ナトリウムでイオン化してしっかり溶かす処方にしたのだろう、というのが友利の推測である。

ロート製薬はニキビの方向にシフトしているためこのやり方をとり、Anuaは他の美容成分も配合している。目指す方向は違うが、根本には「アゼライン酸を肌に浸透させるには溶かすことが大事」という理解がある処方なのではないか、と友利は率直な見解として語っている。

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3つのアプローチの整理

友利は動画内で紹介したアプローチを3つにまとめている。

  • クリーム:水にも油にも溶けないため、溶かすのではなく細かくして混ぜる。よく見るとざらざらした感じがある。
  • Anuaのようなアプローチ:アルカリで中和し、完全に溶かし切る。水にも油にも溶けないものがきちんと溶けるようになる。
  • ロート製薬の新技術:中和はせず、pHが低いままでも完全に溶かせる。

ロート製薬の方法について友利は、同社にしかできない特許技術だと思うと述べ、20%のクリームと同等であり、臨床データでニキビへの効果も示されていることから、ニキビに悩む人はこうしたものをクリニックで出してもらうのがよいとしている。一方Anuaの製品の強みは圧倒的な使いやすさだという。化粧水のようなさらさらした感触と肌へのやさしさに加え、皮脂を抑える成分や毛穴にアプローチする成分など他の化粧品成分と組み合わせることで、ベタつきや毛穴が気になる人が毎日使うイメージの製品ではないか、と友利は見ている。

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「どちらがいいか」への答え

どちらがいいのかとよく聞かれるという友利は、その違いは「成分を肌に効かせるためにどういう処方をとっているか」の違いだと答える。ロート製薬のように独自の非中和型の方法を開発した研究者も素晴らしく、中和してイオン化させる方法も、どちらも完全に溶かして効果的にしたいという思いは同じだと友利は考えている。

そのうえで友利は、ネットでは「こっちがいい、こっちがダメ」と言い過ぎる人が多いのではないかと指摘する。技術者は適当に作っておらず、処方には何かしらの意味がある。さらに、どれほど良いと言われても、結局は自分が使い続けられるかどうかが大事だという。ネットの意見に振り回されすぎず、自分が使って気持ちいい、実感できる気がすると思えるものを使い続けるのがよい、というのが友利の結論である。どちらの製品も、アゼライン酸をどれだけきちんと肌に届けられるかを考え抜いた成果だと友利は評している。

最後に友利は、アゼライン酸は優れた成分だからこそ多くのブランドが研究しており、今後も他のブランドが独自の技術で新たな溶解法を出してくるだろうと見通しを述べ、そうしたものが出てきたら紹介したいと話して動画を締めくくった。