胡椒と唐辛子はなぜ両方「ペッパー」なのか ゆる言語学ラジオ「うんちくエウレーカクイズ」6問

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概要

ゆる言語学ラジオの企画「うんちくエウレーカクイズ」は、視聴者から寄せられた雑学を問題にし、答えを聞いて「へえ」と思えるうえにクイズとしても楽しめるものを出題するコーナーである。今回もスタッフが出題役を務め、堀元見と水野太貴が回答した。扱われたのは胡椒と唐辛子の名前、使い捨てプリンター、マジック:ザ・ギャザリングの名訳、犬のMRI研究、日本モンキーセンターの所在地、明治時代の犬の名前の6問である。回が進むにつれて堀元が次々に正解し、水野は正解の手前まで行きながら答えにたどり着けない、という構図になった。

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胡椒と唐辛子はなぜ同じ「ペッパー」と呼ばれるのか

最初の問題は、コショウ科の胡椒とナス科の唐辛子が、英語ではどちらも「ペッパー」(唐辛子はホットペッパー、チリペッパーなど)と呼ばれる理由を問うものだった。

二人はまず、植物や動物の名前は見た目に引っ張られることが多いと話した。例に挙がったのはシロアリで、アリではなくゴキブリの仲間だが、見た目がアリに似ているからそう名付けられたという。堀元に「一応言っとけ」とけしかけられた水野が「形が似ているから」と答えたが、二人とも認めるとおり胡椒と唐辛子はまったく似ておらず、不正解だった。

続いて水野は、胡椒は大航海時代に非常に貴重で、銀と同じ価格で取引されたと聞いたことがあると述べ、歴史的な経緯に目を向けた。唐辛子の原産地は南米で、トマトやトウモロコシと同じく新大陸の作物だという話になる。出題役が「めちゃくちゃいいルートを行っている」と伝えたところで、堀元が答えにたどり着いた。コロンブスはインドで胡椒を手に入れるつもりで航海したがアメリカ大陸に着き、そこで見つけた唐辛子を胡椒として持ち帰った、という答えで、これが正解だった。

解説によれば、胡椒はインド原産、唐辛子は中南米原産である。コロンブスの航海の目的の一つは高価な胡椒を海路で運ぶことだった。胡椒があるはずのないアメリカ大陸で、胡椒と同じく辛みを持つ唐辛子を見つけ、これをペッパーと呼んで持ち帰ったため、両者が同じ名前で呼ばれるようになったという。

この問題をきっかけに、人間はなぜ栄養のない香辛料を好むのかという話題が出た。片方が臭み消しのためではないかと言うと、もう片方はジョセフ・ヘンリックの『文化がヒトを進化させた』で読んだ説を紹介した。香辛料はもともと食べ物を腐らせないための処理に使われ、香辛料がかかった食べ物は安全だという選択圧がかかった結果、栄養と関係のない香辛料の味を人間が好むようになったのではないか、という説明である。ヘンリックは、人類が地球上でこれほど繁栄したのは文化と遺伝子の進化が相互にサイクルを回したからだと主張しており、香辛料とそれを好む味覚もその共進化の例だとしているという。紹介した側はこの説に説得力を感じたと話す一方で、進化はもっと長いスパンで起きるものという印象があるので本当にそうなのかという疑問は少しあるとも述べた。その点は本の中で詳しく論じられているので、興味があれば読んでほしいと話を締めた。

5:14

「使い捨てプリンター」と呼ばれたキヤノンの機種

2問目は、キヤノンが2010年に発売した家庭用インクジェットプリンター「iP2700」が「使い捨てプリンター」と呼ばれた理由を問うものだった。堀元は問題を聞くなり「純正インクが高すぎるから」と答え、ほぼ正解とされた。正式な答えは、プリンター本体よりも別売りのインクを全色揃えるほうが高くなるから、である。

堀元は、液体の値段を比べたネットミームのグラフを知っていたからすぐ解けたと説明した。飲料水は安く、石油はそれより高く、売買時の人間の血液はさらに高いが、それをはるかに上回るのがプリンターのインクだ、というグラフで、堀元はこれが好きでよく引用していたという。

ここから堀元は、エプソンが品川プリンスホテルの中で運営する水族館「アクアパーク品川」の話をした。一等地にあり、ショーなどにもかなりお金がかかっているように見えるのに、入場料は高くない。なぜこの価格で実現できるのかと考えた結果、インクで稼いだお金を注ぎ込んで企業イメージを上げているのだろうという結論に至ったという。家庭用のカラーインクを買うたびに負けた気持ちになっていた堀元は、あの水族館に行くとインク代が無駄ではなかったと報われた気持ちになると話した。出版社勤務の水野は、印刷代の高さは日々感じているが、それは本の印刷の話だと応じた。

堀元は同じ現象として、ブログプラットフォームのnoteに毎月数十万円規模の手数料を払っていることへの苛立ちも挙げた。noteに呼ばれたイベントの楽屋に天むすのような手の込んだおにぎりが用意されていたので、手数料を取り戻すつもりで6個食べた。その結果、本番では満腹でうまく話せなかったというオチがついた。

8:04

マジック:ザ・ギャザリングの「一生に一度はしたい翻訳」

3問目はカードゲーム「マジック:ザ・ギャザリング」のカードに書かれた英文「The quick onyx goblin jumps over the lazy dwarf」と、その日本語訳(「歴戦経る」で始まり、素早い黒い小鬼がドワーフたちを跳び越える様子を描いた文)を示し、ある翻訳家が一生に一度はこのような翻訳がしたいと言った、この訳の素晴らしさは何かを問うものだった。

二人はまず、原文のリズムを日本語でも再現した訳ではないかと考えた。水野はその種類の名訳の例として、俵万智の短歌「『この味がいいね』と君が言ったから七月六日はサラダ記念日」の英訳を挙げた。英訳は二つあり、そのうち一つは五七五七七に近いリズムで読めるように訳されているという。水野によれば、この短歌にはサ行の音が多い。もともと俵万智が実際に作った料理はサラダではなかったが、音の心地よさを狙ってサラダに変えたので、英訳でもS音を残す工夫がされているという。堀元は、手料理でサラダをそこまで褒めるのは不自然だと思っていた謎がこれで解けたと話し、実際の料理名をそのまま入れたら台無しになると冗談を言った。

ただ、このカードの日本語訳は原文よりも明らかに長く、原文にない要素も加わっている。堀元はその長さの違いに注目した。アルファベットと日本語の文字の数の違いを考えたとき、アルファベットに対して五十音程度の尺だと思いつき、原文がAからZまでを使い切っていて、日本語訳も仮名を全部使っているのだと答えた。実際に文字を数えたわけではなく、長さから推測したと本人は説明している。これが正解だった。二人が確かめると、原文にはquickのQ、onyxのX、lazyのZも含まれていた。

解説によれば、原文はアルファベット全26文字を使ったパングラムであり、日本語訳もそれにならっていろは歌として訳されている。特に後半は原文にない内容だが、全体の雰囲気を保ったまま文字を使い切っている点が素晴らしいという。二人は、それまでは原文に沿って訳しつつ、最後に文字を合わせるために要素を足したのだろうと話し、ドワーフという表記の選び方も字を使い切るための工夫ではないかと推測した。

補足として、カード名は「Now I Know My ABC's」にあたるもので、効果は「あなたのアップキープの開始時に、あなたがコントロールするパーマネントのカード名にアルファベット26文字すべてが含まれている場合、あなたはこのゲームに勝利する」だという情報も寄せられていた。二人は、そういう効果のカードなら説明文もABCを全部使いたくなると納得した。

水野は関連する雑学として、ゲームデザイナーのリチャード・ガーフィールドがマジックの対戦中にカードを使ってプロポーズしたという話を紹介した。プロポーズ用のカードがなかなか引けず、3戦目でようやくプロポーズできたという。堀元も一つ足すとして「マジック:ザ・ギャザリングはチューリング完全である」と言ったが、チューリング完全をうまく説明できず、いつもここで失敗する雑学だと自嘲した。この時点で堀元が3点を獲得していた。

14:35

犬のfMRI研究で左右の脳を取り違えた理由

4問目は、人間の発する単語を犬に聞かせながらfMRIで脳を調べた研究に関するものだった。犬も人間と同様に単語の意味を左脳で、イントネーションを右脳で処理していることが分かったとして2016年に『サイエンス』誌に掲載され話題になったが、後に右脳と左脳の画像を取り違えていたことが判明した。なぜ取り違えたのかが問われた。

堀元は最初、MRIは上から見るか下から見るかで左右が変わるので、その取り違えではないかと答えたが不正解だった。続いて水野が、動物の脳はMRIで調べればいいと言われるが、動物は機械の中でじっとしてくれないので、しっかりしつけないと動いて画像がずれてしまうという話を聞いたことがあると話した。それを聞いた堀元が、人間は仰向けでMRIに入るが犬はうつ伏せで入るので向きが逆になっていたと答え、正解になった。解説によれば、人間は普通仰向けでfMRIに入るが、犬は座った状態、つまりうつ伏せに近い状態だったという。

水野は、動物実験の話はたくさん読んでおり、鈴木俊貴先生とも「MRIは簡単に撮れると言うが、頭を固定しなければならず難しい」という話をしてきたのにと悔しがった。堀元は競技クイズを題材にした漫画『ナナマルサンバツ』で主人公が記憶の「ページをめくる」場面を引き合いに出し、水野は答えのあるページを飛ばして本を閉じてしまっていると評した。

18:27

日本モンキーセンターは「犬山」にある

5問目は、霊長類の飼育展示種数が約60種800頭で世界最多とされる日本モンキーセンターが「よりにもよって」どの市にあるかという問題だった。水野は知識として答えを知っていたが、問題を聞いて初めて面白さに気づいたと話した。堀元は、猿の施設なのに場所がずれていることが面白いのだろうと推測して「犬市のような名前」と答え、ほぼ正解とされた。正解は愛知県犬山市で、「猿山が犬山にある」という犬猿の組み合わせになっている。

水野はさらに、愛知県には猿が投げる山と書く猿投山(さなげやま)という山があり、そこに作れば話が合ったのに、よりによって犬山にあると付け加えた。

水野はアクセントの話も続けた。東京の人と愛知の人では「犬山」のアクセントが違い、愛知では「犬」の部分にアクセントが置かれる。そのため水野には一般的な「犬の山」のように聞こえてしまうことがあるという。水野は記憶が正しければと断ったうえで、NHKのアクセント辞典には東京式のアクセントに加えて現地のアクセントも載っていると紹介した。例として長野県の伊那市を挙げ、全国に放送局があるNHKならではの配慮だと述べた。NHKは言葉を画一化する方向に向かっていると思われがちで、そういう側面がないとは言わないが、地元のアクセントをきちんと載せる方針は素敵だと水野は評価した。

堀元は、沖縄出身の母がテレビでのシーサーの発音にずっと不満を持っていたという話をした。めったに怒らない母が、シーサーとサーターアンダギーの発音にだけは厳しく、堀元の発音も訂正されたという。水野は沖縄のアクセントがどうなっているのか、研究があれば知りたいと話した。

22:45

地名の読みはなぜ揺れるのか

地元のこだわりの話から、地名の読みの揺れに話題が移った。堀元によれば、実家の隣の町は「水車町」の読みが二通りに割れていて、行政の中でも統一されておらず、二つの読みの郵便局と役場が同居していた。2年ほど前にようやくどちらかに正式に決まったが、どちらに決まったかは忘れてしまったという。

水野は愛知の鶴舞を例に挙げた。電車の駅は「つるまい」だが、公園は「つるま公園」が正式で、一般にはみな鶴舞(つるまい)公園と呼んでいるという。この公園は上から見るとモンスターボールの形をしているとして、ポケモンGOのプレイヤーが集まる場所として一時有名になったと水野は話した。

秋葉原ももとは「あきばはら」だったという話も出た。水野は、語の中の音の位置が入れ替わる「音位転換」(子どもがトウモロコシをトウモコロシと言ってしまうような現象)が起きた可能性もあるとしつつ、明確なきっかけとして「あきはばら」という駅名の駅が設置されたことがあったらしいと説明した。一方で、利用実態がなければ駅名にはしないはずなので、もともとそう呼ぶ人もいたのではないかという見方も示され、駅の登場で読みが決定的になったのかもしれないと話がまとまった。

堀元は自分の会社で起きた例を紹介した。番組を制作する堀元の会社ではNotionを使っており、公式のタスク管理ボードでは個々のタスクを「カード」と呼ぶ。堀元は公式用語どおり「カードを移動させる」と言っていたが、ある一人が「チケットを動かす」「チケットを切る」と言い始め、周囲もそれに倣った結果、今ではチケット派が多数になったという。水野は、それは一人が連呼したからではなく、聞いた人が「カードよりチケットのほうがしっくりくる」と感じたから広まったのだろうと述べ、言語変化は誰かが流行らせようとして起きるものではないと話した。堀元も、ラジオ番組「加藤千恵の信頼できない語り手」で加藤千恵がメールを「カード」と呼ぶと言い続けているのに相方が従わず平行線のままである例を挙げ、説得力がなければ一人が使っても広まらないと同意した。

26:28

明治時代、飼い犬が「カメ」と名付けられた理由

最後の問題は、4人から寄せられた定番の雑学で、明治時代には飼い犬の名前としてポチやクロのほか「カメ」が一般的だった理由を問うものだった。

二人のうち一方は、牛鍋屋で残った牛肉をご飯にかけたものを犬が食べたことから、それを「カメチャブ」と呼ぶようになった、という関連する雑学を聞いたことがあると話したが、犬がカメと呼ばれた理由にはなっていないと認めた。回答としては「四足歩行の仲間だから」や、水野の「骨を噛むから(カム)」などが出たがいずれも不正解だった。

続いて堀元が、当時の日本には犬が少なく、外国人が持ち込んだ犬に「come(来い)」と呼びかけていたのが「カメ」に聞こえたのではないかと答え、正解となった。実は水野はこの雑学を知っており、堀元の答えを聞いた瞬間に「それだ」と反応したが、自分では思い出せなかった。堀元は知識なしに雰囲気で当てたという。

解説によれば、西洋人が犬を呼ぶときに「come」や「come here」と言うのが「カメ」に聞こえ、当時の日本人は犬の名前そのものがカメなのだと思い、飼い犬にもカメと名付けるようになった。和犬と区別するために、洋犬にカメと名付けることが多かったという。

結局この回は堀元がほとんどの問題に正解し、水野は知っていた問題でさえ答えを出せずに終わった。水野が「悪問揃いでした」と言うと、堀元は「当てられなかった問題を悪問と呼ぶのはやめなさい」と返した。最後に、問題は概要欄の専用フォームから送ってほしい、お便りフォームに送られたものは普通のお便りとして読むので問題としては採用されない、という案内があって回が締めくくられた。