FIREは本当に目指すべきか、そして初心者が避けるべき投資とは:頼藤太希氏・高山一恵氏に聞く

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概要

女性向けライフスタイルメディア「lumily」のお金特集第3弾で、MCの愛沢えみり氏が、株式会社Money&Youの頼藤太希氏と高山一恵氏を迎えた。2人は夫婦でファイナンシャルプランナーとして活動している。前半のテーマは、運用益で生活費をまかなって早期退職する「FIRE」は実現可能か。後半は、投資初心者が手を出さない方がよい取引や商品である。

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FIREについて2人の立場ははっきりしている。FIRE自体を勧めているわけではない。何を優先するかの問題として、必要額の計算方法とデメリットを示し、より現実的な選択肢として「サイドFIRE」を紹介した。後半では、レバレッジ取引と手数料の高い商品への注意を、自分たちの失敗談も交えて語った。

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FIREとは何か、なぜブームは収束したのか

FIREは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字で、経済的自立を達成して早期に退職することを指す。生きていれば生活費はかかる。その生活費を資産運用の収入でまかなえれば、働かずに好きなことができる。2人によると、この生き方はアメリカで生まれ、2019年ごろ日本に入って大きなブームになった。2〜3年前には「FIREしたい」という相談が多く寄せられたが、最近はほとんど来ないという。

ブームが収束した理由として、2人は2つを挙げた。1つは、ブームを機に株式投資を始めた人が多かったものの、2021年から2022年ごろに米国株が不調になり、なかなか資産を築けなかったこと。もう1つは、実際にFIREを達成した人の多くが、仕事をしない人生をつまらないと感じたことである。

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「FIRE卒業」をする人たち

FIREを達成した後、再び働き始めることを「FIRE卒業」と呼ぶ。愛沢氏は、株の運用だけで生活できるのは夢のような話で「勝ち組」のイメージがあったと話し、達成者が仕事に戻るという話に驚いていた。

相談に来る人の動機は、上司が嫌だ、早く仕事を辞めたいといったものが多い。ところが実際に辞めてみると、暇を持て余したり、社会と関わらないことで取り残された感覚を抱いたりする人が多いという。2人は、人に認められることや誰かと一緒にいることが幸福につながると指摘する。運用益で生活できても、人と関わらなくなれば寂しくなる。そのためFIRE卒業者は会社員に戻ったり、SNSやYouTubeで発信を始めたりする。後者についても、承認されたいという気持ちが背景にあるのではないかと2人は見ている。

後の場面で2人は、FIRE卒業者は結局「仕事をしない人生を体験したい」という「ないものねだり」をしただけだとも表現した。やってみてつまらなかったから、また働こうとなる。その意味では、仕事のありがたみを実感するためにFIREを目指すのはありだし、お金があれば精神的に安定するという利点もある、というのが2人の見方である。

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必要な資産は「生活費×25倍」:4%ルール

具体的な必要額の目安として、2人は図を使って「4%ルール」を説明した。資産を年4%で運用できるという前提に立つと、必要な資産は年間生活費の25倍になる。年間生活費が300万円なら必要資産は7500万円で、その4%が300万円だから、運用益の範囲で暮らせば資産を減らさずに一生生活できる、という計算である。

生活費を400万円とすれば必要資産は1億円になり、年間生活費が1000万円の人なら途方もない額になる。愛沢氏が「2億円あれば年800万円で生活できる」とよく耳にしたと話すと、2人はそれもこの計算式に基づくものだと答えた。生活費の水準次第で必要額は変わるが、一般に想定されるのは年300万〜400万円が多いという。

注意点として2人は、これは悠々自適の生活ではないと強調した。年300万円なら月25万円程度で、豪華な旅行などを含めた金額ではない。

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7500万円をどう作るか、そして節約の代償

では7500万円をどう作るのか。2人によれば、働いて得たお金を全力で投資に回すしかない。現役時代に極端な節約をして、浮いたお金を月15万〜20万円ずつ投資し、15〜20年かけてFIREを目指すのが典型だという。図では、月20万円あまりを4%で20年運用して目標額に届くという試算が示された。

愛沢氏は、普通の会社員が毎月20万円を投資し続けるのは、よほど稼いでいる人でなければ難しいと指摘した。2人も同意し、節約が楽しい人ならよいが、そうでなければかなり苦しいと話す。FIREそのものが目的化して、今の人生を犠牲にする。それがFIREの極端なバージョンだという。実際に相談者で達成した人を見ても、驚くほどの節約ぶりだったそうだ。

2人はさらに、急いでFIREを目指すと、達成後にお金をうまく使えなくなるという問題を挙げた。節約ばかりしてきた人は、お金を使って楽しむ人生を送ってこなかった。FIRE後にいざ使おうとしても、何に使えば自分の幸福度が上がるのかわからない。お金を貯める努力は誰もがするが、使い方にも訓練が必要で、実際に使ってみなければ「これは失敗だった」「これは自分にとって価値がある」と判断できない。だから貯めることと使うことのバランスが大事だ、というのが2人の考えである。

一方で、今は副業ができる時代なので、FIREは不可能ではないとも述べた。節約だけでなく副業で稼ぎ、お金にも働いてもらって将来これだけの額が入ってくる見込みが立てば、気持ちはだいぶ安心するという。

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FIREのデメリット:4%は保証されない、年金が減る

2人はデメリットとして、まず4%で運用し続けられる保証がない点を挙げた。運用利回りが2%にとどまる年もあれば、マイナスの年もある。そうなれば資金はどんどん減り、貯金を取り崩す必要も出てくる。

4%という数字の根拠について、2人はアメリカのトリニティ大学の研究に触れた。米国株のS&P500は年7%で成長してきたが、インフレ率が3%なので、差し引いて4%という考え方だという。ただ、これを日本にそのまま当てはめてよいのかという議論もあると付け加えた。

もう1つのデメリットは公的年金である。働かなくなれば会社で厚生年金保険料を納めなくなり、将来の年金額が減る。2人によると、この影響を過小に見積もる人が多い。年金は運用リスクなしに死ぬまで受け取れる、いわば保険であり、ありがたい存在だという。

示された図では、横軸が厚生年金の加入期間、縦軸が生涯の平均年収である。生涯平均年収400万円で40年加入した場合、年金は年171万円。加入が20年にとどまると126万円になり、毎年約45万円減る計算だ。愛沢氏は、メリットばかりが耳に入っていて、年金が減ることは知らなかったと話した。

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現実的な選択肢としての「サイドFIRE」

働かずに生活するフルFIREに対し、仕事を続けて一定の勤労収入を得ながら、残りを運用収入で補うのが「サイドFIRE」である。仕事を完全に辞めるわけではないが、収入を抑えた働き方にすれば必要な資産が減り、難易度が下がる。2人は、嫌々仕事をすることがなくなる生き方としてよいのではないかと勧めた。

試算では、年間生活費300万円のうち運用でまかなう部分を180万円とすると、必要資産は4500万円になる。これは毎月約12万4000円を4%で20年運用すれば達成できる額だという。

別の例として、月10万円の不労所得と月15万円の勤労所得を合わせ、月25万円でストレスなく暮らすモデルも示された。月10万円は年120万円なので、その25倍の3000万円があれば目指せるという。不労所得を得る手段としては、投資信託やETF、米国株・日本株、そして「不労所得の王道」として不動産投資が挙がった。

2人は、資産運用の力を借りるべき理由を2つ挙げた。1つは、労働収入だけに頼ると、けがや病気で働けなくなったとき収入が途絶えてしまうこと。不労所得はその際の支えになる。もう1つは、不労所得があれば嫌な仕事を断り、好きな仕事を選べるようになることだ。サイドFIREなら15〜20年ほどで目指せる可能性があり、30代後半から40代で到達するイメージだという。

愛沢氏は、フルFIREは一度経験する意味ではためになりそうだが、ずっと働いてきた人にとっては暇や寂しさが悩みになりそうだと感想を述べた。一方で、子どもが小さい今の時期に一緒に過ごすという考え方もでき、その時々の状況によるとも感じたという。そのうえで、自分が目指すならサイドFIREだと話した。2人は、FIREとは人生の選択肢を増やすための考え方だとまとめた。

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信用取引とレバレッジの怖さ

後半は、初心者が手を出さない方がよい投資の話に移った。前提として2人は、これまでの回で繰り返してきた「長期・積立・分散投資」を初心者の基本に据えた。

最初に挙がったのが株の信用取引である。2人は、「青汁王子」こと三崎社長が信用取引で大失敗し、20億円の損失を出したと話題にした。信用取引はレバレッジを使う仕組みで、自己資金をもとにお金を借りて大きな金額を取引する。株の信用取引では自己資金の3.3倍まで、FXは国内で25倍、海外のFXでは200倍まで取引できるという。不動産でも借り入れはするが、株やFXでレバレッジをかけるのは別物だと2人は話す。

利用者がいるのかという愛沢氏の質問に、2人は「いる」と答えた。生活費がかかって毎月の投資額を増やせない人ほど、短期間で資産を築こうとしてレバレッジをかけるという。口座開設時に年収などの審査はあるが、ハードルは低く、多くの人が利用できてしまう。1億円の資金で3.3億円分の取引をしていて株価が半分になれば、損失は自己資金を上回ることもある。愛沢氏は、株が持つ「大損するかもしれない」という怖いイメージは、このレバレッジから来ていたのかもしれないと話した。

2人は、事業の成長や不動産購入にはある程度のレバレッジが必要だと認める。そのうえで、株やFXにつぎ込むとお金をすべて失いかねないと警告した。

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プロでも失敗した:5分で1000万円以上の損失

2人は自分たちの失敗談も明かした。コロナショックのとき急激な円高が進み、FXでわずか5分ほどの間に1000万円以上を失ったという。株やFXには、こうした一瞬の急変動が起こりうる。その経験から、レバレッジはかけすぎてはいけないと身をもって知り、株は今はレバレッジなしで運用しているそうだ。

2人は、もともと資産が多い人がなぜ信用取引に手を出すのかにも触れた。お金が増えるともっと稼ぎたくなるのは人間の欲として普通のことで、市場はそこにつけ込んでくる。自分たちでさえ「もうちょっと儲けよう」と思ってしまうという。レバレッジが小さければ大損はしにくいが、一度始めると続けたくなる。だから最初から手を出さない方がよい。淡々と取引できるかどうかが大きいが、ほとんどの人はそれができない、というのが2人の見方である。愛沢氏は「パンドラの箱のようなものなので開けずにいく」と述べ、信用取引もFXもやらないと決めたと話した。

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海外の証券口座も避ける

2人は、海外の証券口座を開くこともやめた方がよいとした。海外ならFXで200倍といった無理なレバレッジがかけられてしまう。言語の壁があり、お金をすぐに引き出せるかという不安もある。仮想通貨を含めて詐欺も多いため、よくわからない会社や海外で口座を開くのは避けるべきだという。愛沢氏は、自分はSBIと楽天で続けると話した。

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手数料が高い「地雷商品」:毎月分配型とテーマ型ファンド

続いて2人は、手を出さない方がよい「地雷商品」を紹介した。運用ではいくら儲かるかに目が行きがちだが、大事なのは手元にいくら残るかだ。そのため手数料は安く、税金はかからない方がよい。世の中の商品には金融機関が儲かるように作られたものが多い、というのが2人の前提である。

その筆頭が毎月分配型・隔月分配型の投資信託だ。毎月お金が分配されるので不労所得のようなイメージがあるが、利益が出た分がそのまま払い出されるため資産は増えない。それにもかかわらず資産の1〜2%という高い手数料がかかり、元本を取り崩しているだけでも手数料を取られる。2人によると、NISAでは毎月分配型は資産形成に向かないとして除外されている。一方で隔月分配型は対象になっており、それは不思議だと指摘した。

次がテーマ型ファンドである。AIや半導体のように「投資したら儲かりそう」なテーマに特化したファンドを指す。2人が注目するのは、こうしたファンドが作られるタイミングだ。テーマ型ファンドは世間で話題になって誰もが知った段階で設定されることが多く、その時点は株価の頂点であることが多い。2人はNVIDIAも今は下がってきていると例に挙げ、設定時に買うと下がるしかない状態になりやすいうえ、手数料も高いと述べた。売りやすいように浸透したテーマで商品が作られる、という仕組みにも注意を促した。

愛沢氏が、自分は流行っていそうだと思ってNVIDIAを買ったと話すと、2人は個別株として買うのはまったく問題ないと答えた。NVIDIAは長期的にも業績がよく、半導体はさまざまなゲーム機などにも使われる息の長い分野だという。問題は、半導体関連企業にまとめて投資するファンドの手数料が高いことで、それならNVIDIAなどを自分で買った方がよい。テーマで選ばず、全世界への投資や分散投資の方が堅実に増やせる可能性が高い、というのが2人の結論である。

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同じ指数でも手数料で差がつく:ファンドラップとロボアドバイザー

2人は、手数料は見えにくいため、いくら取られるのかを理解してから買うべきだと繰り返した。運用成績は自分ではどうにもならないが、コストは自分で気をつけられる。例えば日経平均やS&P500に連動する商品は数多くあり、連動先が同じなら運用成績も本来は同じになるはずだ。それでも差が出るのは手数料の違いによる。銀行で買うかネット証券で買うかでも差がつくという。

手数料がもったいない例として挙がったのがファンドラップだ。富裕層がよく利用するサービスで、証券会社に利用手数料を払ったうえで、例えば1000万円などを預けて運用を任せる。ところが運用商品の手数料はこの利用手数料に含まれず、別途かかる。合わせると年3%ほどになり、1億円を預ければ毎年300万円を払う計算になる。

ロボアドバイザーも、利用手数料と信託報酬を合わせて1%程度かかるという。2人は、愛沢氏が保有している投資信託の信託報酬は0.12%程度だろうと比較し、自分たちの本でもロボアドバイザーについて注意を促していると話した。テレビや広告で目にすると良いものだと思ってしまいがちだが、よく考えてほしい。お任せにすれば手数料を払うことになるのだから、自分で知識をつけ、甘い言葉に惑わされずに判断してほしい、と2人は訴えた。

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学びながら実践する、子どもと一緒に考える

金融リテラシーが上がれば損をしにくくなる。それが勉強すべき理由だと2人は言う。ただ、勉強ばかりしていると行動できないので、勉強しながら実践し、実践しながら学ぶことが大事だとした。少しでも買ってみれば分かることがあり、つまずいた体験そのものが重要だという。

愛沢氏は、投資を教わってから大げさでなく人生が変わったと振り返った。お金や資産が増えること以上に、考える力が身につくという。視聴者には女性が多いので、子どもがいる人は一緒にお金の大切さや、お金が世の中をどう動かしているかを話してほしいと呼びかけた。

2人も家庭で、子どもが小さいころから折に触れてお金の話をしている。スーパーや遊園地に行って人が多ければ「儲かりそうか」と話題にし、メルカリの仕組みを考えると、どう売ってどう利益を出すかという商売の基本が分かるという。そうした話をすると子どもも興味を持つようになるそうだ。愛沢氏は、まずやってみれば気づきや学びとともに新たな疑問も出てくるので、これからも一緒に学んでいきたいと述べて回を締めくくった。