英語学習は「目的地」を決めることから始まる:ショーン川上とアルク・永井薫が語る、続く学習者の条件
MAKE IT NEXTJ-WAVEの番組「MAKE IT NEXT」とラジオNIKKEIが、英語教育出版社アルクと共同で始めた新コーナー「English Mode」の第1回である。番組が選んだ英語フレーズと英語学習のヒントを届けるという趣旨で、初回のゲストはアルク書籍編集部の永井薫さん。ナビゲーターのショーン川上さんの著書『英語力の核心』の編集を担当した人物だ。
この回では、二つの問いが扱われた。この数十年で日本人の英語学習はどう変わったのか。そして、学習が続いて上達する人と、教材を渡り歩いて身につかない人とを分けるものは何か。二人が出した答えは、英語を「いつ、どこで、誰に」使うのかを先に決めること、つまり学習の目的地を定めることだった。
編集者として迎えたゲスト
ショーンさんは冒頭で永井さんを紹介し、自分の拙い原稿を高い水準まで磨き上げてくれたのが永井さんだったと感謝を述べた。本の売れ行きを尋ねられた永井さんは、売れていて反響も届いていると答えている。
ショーンさんは永井さんに、自著の編集担当としての立場に加えて、アルクの社員としての立場からも話を聞きたいと切り出した。アルクの創業は1969年である。日本で「国際化」という言葉が広まり、やがて「グローバル時代」と言われるようになった流れを踏まえ、ショーンさんはこの10年から20年の英語学習の変化を尋ねた。最近はAIの登場で新しい変化も起きているのではないか、という問いかけも添えている。
「憧れの英語」から「ワールド・イングリッシュ」へ
永井さんによれば、以前の日本の学習者は、イディオムのような決まった言い回し、いわゆるセットフレーズを重視していた。英語圏の人たちが話す英語を、憧れを持って学んでいたというのが永井さんの見方である。
ところが今は「ワールド・イングリッシュ」の時代になった。アメリカやイギリスの文化、社会、歴史に根ざしたイディオムを使うこと、またそれを学ぶことからは、少し距離が生まれてきていると永井さんは感じている。
ショーンさんはこれを受けて、言語としての英語の「機能」に重きが置かれるようになったのではないか、むしろ機能させなければ意味がないという方向に舵が切られたのではないか、とまとめた。永井さんもこれに同意し、理由を説明した。ネイティブしか知らないような格好いい言い回しを使っても、相手に通じなければコミュニケーションは成り立たない。だから今の時代にはそぐわない。それぞれのバックグラウンドを大切にしたうえでの英語でかまわない、という流れを感じるという。
英語力は「希少価値」から「通貨」へ、そして超過利潤が消えた
ショーンさんは自分の経験から、英語の価値の移り変わりを語った。ショーンさんはコンサルティングの仕事で英語を現場で使ってきた。独立後は「それなら英語も教えてほしい」と頼まれ、企業を中心に朝活・夕活・週末活といった形で英語を教えてきたという。
ショーンさんの見立てでは、変化はいくつかの段階を経てきた。1990年代には、英語というスキルそのものに希少性があった。英語ができる人は「すごい」と見られ、外国語ができるコンサルタントは重宝された。ショーンさん自身、言い方は良くないがと断ったうえで、報酬を高めに設定できたと振り返っている。
次の段階では、TOEICのようなテストが現れ、英語力がスコアで量的に示されるようになった。ショーンさんは、可視化された英語力がまるで通貨のように流通し始めたと感じたという。このくらいのスコアなら自分の年収もこのくらいを求めてよいだろう、という感覚が生まれたというのである。
さらにその後、学習者全体の平均水準が大きく上がった。ショーンさんはこれを経済用語の「レント」、つまり超過利潤が消えた状態と表現した。生産性や希少性が高いために高い報酬を得られていた、その上乗せ分がなくなり、英語力が平均的なものになったという説明である。
日本は「伝わればいい」の段階に遅れて着いた
ショーンさんが最近いちばん強く感じているのは、「伝わればいいじゃないか」という方向へ一気に振れたことだという。文法は正しいほうがよく、発音も美しいに越したことはない。それでも、伝わればそれでよいという考え方が広がった。
ショーンさんはこれを第3フェーズとも第4フェーズとも言えるとし、日本にこの段階が来るのは遅かったと述べた。香港、シンガポール、インドでは、人々がそれぞれのローカル・イングリッシュで不自由なく英語を使っている。日本はそこからだいぶ遅れて、ようやく最近同じ地点にたどり着いたのではないか、というのがショーンさんの認識である。
英語が上達する人と「英語学習マニア」の違い
続いてショーンさんは、長く学習書を出してきたアルクの立場から何が見えるかを尋ねた。アルクの本で学んでうまくいった人がいる一方で、あれもこれもと手を出し、ショーンさん自身の言い方では「学習ADHD」のような状態で教材や学校を渡り歩き、結局身につかない人もいる。英語マニアではなく「英語学習マニア」とでも呼ぶべき人がいないか、という問いである。
永井さんは、そういう人もいると認めた。そのうえで、そうした読者にも買ってもらわないと困る、1冊で身についてしまったら商売が上がったりだ、と冗談まじりに返している。
一方で永井さんは複雑な気持ちも明かした。今も英語学習に関心を持つ人が多く、本が売れ続けているのはありがたい。しかし、これだけ自分たちが頑張ってきたのに、日本人の英語を何も変えられていないのではないか、という残念な気持ちもあるという。
続く人は「どうなりたいか」がはっきりしている
それでも、続く人と続かない人を見比べると違いがある、と永井さんは言う。英語を使って自分がどうなりたいのか。どんな人に対して、どんな場面で、どんな目的で話したいのか。それがはっきりしている人は、やはり続くように思うという。
ショーンさんはこれに自分の考えを重ねた。教養や趣味として英語を学ぶ人は、続けること自体に意味がある。あるステージに達すると違う景色が見え、新しい深みや高みを自分の中に築いていけるのだから、それはそれでよいとショーンさんは考えている。一方、先ほど話した機能性を求める人、たとえば仕事で使わなければならない人や留学に行かなければならない人は事情が違う。目的をもう少し具体的に持てば近道があるのに、とショーンさんも強く感じているという。
第1回のTakeaway:Set your destination
ショーンさんは、今後このコーナーで学習方法のヒントを共有していくとしたうえで、第1回のTakeawayを永井さんの話に沿ってまとめた。英語を「いつ、どこで、誰に」使うのかを決めること。地図にたとえるなら、目的地をできるだけ細かく設定しておくこと。そうすれば学習は効率的になり、焦点も絞れてくるという。
英語では次のフレーズで示された。
- Set your destination.(まず目的地を決めよう)
- When, where, and who?(いつ、どこで、誰に?)
- A map only works once you know where you're going.(地図は行き先が分かって初めて役に立つ)
ショーンさんは今回の内容を、英語を学ぶうえでの態度、つまり「初期設定」をどうするかという話だったと位置づけた。次回は自著『英語力の核心』からもヒントを取りつつ、インプットをどう進めるかについて永井さんに話を聞く予定だと予告して、第1回を締めくくった。
thanfor next. Jadi engish falsip
MAKE IT NEXT presents、新コーナーです。English Mode。英語教育出版社の老舗、株式会社アルクとの共同企画で、番組厳選の役立つ英語フレーズ、語学学習のヒントをお届けしてまいります。第1回のゲスト、大変お世話になった方です。この英語教育出版社アルクの書籍編集部の永井薫さんです。永井さん、こんにちは。
こんにちは。
私の本当に拙い原稿を高い次元まで磨き上げてくださったのが永井さんで、本当にお世話になりました。
こちらこそお世話になりました。ありがとうございます。
どうですかね? 売れてますかね?
売れてますね。とても反響いただいてますね。
本当に永井さんのお力なくしてはここまで来なかったわけでして。
今回、第1回目、このEnglish Modeというコーナーをアルクさんと一緒に立ち上げるにあたり、まず永井さんをお迎えして、もちろん私の本の編集担当としての永井さんという立場と、アルクさんが会社できてきたのが1969年。日本の国際化とかという言葉が届き、やがてグローバル時代とかいう。どうですか、この20年、10年ぐらいの中での英語学習の変化や、最近だとAIの登場によって、また新しい変化ができたと思うんですけども。
そうですね。私は今だと、そのイディオムですとか、そういったセットフレーズって言うんですかね。今の時代だとちょっとその、英語の人たちの英語という、そういう考え方での英語を私たち憧れを持って学んでたかなと思うんです。ただ今だとワールド・イングリッシュになりまして、それであまりそういったアメリカとかイギリスの文化とか社会とか歴史に根付いたイディオムを使うっていうこと、そういうことを学ぶっていうのが、ちょっとそこから離れてきてるかなっていうふうには思います。
もっと英語というものの、言語としての英語の機能といったところにもっと重きが置かれて、機能すればよろしいと。
そうですね。
むしろ機能させないと意味がないじゃないかっていう方に、舵が切れていったって感じでしょうか。
そうですね。あと自分がそういったネイティブの人しか知らないような、ちょっとかっこいい言い回しを、そういうのを使っても相手に通じないと、コミュニケーションって成り立たないですよね。ですから、それはちょっと今の時代はよろしくないと。そのバックグラウンドを大切にした上での英語でオッケーだよという、そういう流れは感じます。
私はコンサルティングという仕事を通じて、現場で使う、あるいはやがて独立をして、「それだったら英語も教えてよ」って言って、企業さん中心に英語を朝活、夕活、週末活ということで教えてきた中で、やっぱり感じる変化っていうのは、当初90年代、まだ英語というスキル自体に希少性があったっていう時代があって。「あの人すごいよね」っていう。我々も外国語ができるコンサルタントっていうのは非常に重宝された。「すごいね」。変な話ですけども、ちょっとチャージが高くできたっていう。
やがてTOEICとかっていうテストが出てきたことによって、スコア、量的にどうなんだってことによって、見えるようになった英語力が、英語力が通貨のようになったなって感じ始めましたね。このぐらいのスコアであれば自分の年もこのぐらい言っていいだろうっていう。英語力が可視化されて通貨のようになっていった、流通していくんだなって。
そしてやがて、ある程度のいわゆる平均値がぐっと上がったことによって、経済用語で言うところのレントが消えたっていう。つまり、希少性が高いがゆえに高く取れたっていう、その幅が消えて、結構平均値になっていった。最近一番思うのは、もういいじゃない、その文法、もちろん正しく喋ればいいし、発音も美しければそれに越したことはないんだけども、伝わればいいじゃないっていうところに一気に振れていったのが最近だなっていうのは思うんですけど。
ここの第4フェーズって言ったのか、第3フェーズなのか、来るの遅かったなって、そこ思います、日本は。だってね、香港に行ってもシンガポールに行ってもインドに行っても、みんなそれなりの英語を、それぞれのローカルイングリッシュで、何不自由なくと言いますか。
そうですね。
だいぶそこに日本が遅れて、やっと最近そうなったかなって感じるんですけど。アルクさんっていうのは、もうずっと英語学習をサポートする出版物をずっと出してらっしゃるじゃないですか。
そうですね。
どうですかね? その本読んでよかった、うまくいった、さすがやっぱりアルクの書籍はいいねっていう人と、常に、なんて言うんでしょうね、ものに手をつけて、学習ADHDな状態で、こっちもいいかな、あっちもいいかな、あの学校もいいかなって言って、結局身につかない。差があるとしたら、何かありますか? その学習者の続く人、英語が上手になっていく人の共通点と、ずっと、なんて言うんでしょうね、英語マニアじゃなくて英語学習マニアみたいな人、いません?
そうですね。いらっしゃいますね。そういった方にも言っていただかないと、私ども。
そうですよね。そうですよね。
そうですね。これでもうこの1冊で身についちゃったっていうことであると、うちの商売も上がったりかなとは思うんですけれども。ここまでやってきて、まだまだ英語学習に興味のある方がたくさんいらっしゃる、それから売れ続けているというのは、ありがたい話である一方、こんなに私たち頑張ってきたのに、何も日本人の英語を変えられてないのかなっていうような、ちょっと残念な気持ちはありますね。
なるほど。そっか。
ただ、続く人と続かない人っていうのを見ていきますと、自分が英語でもってどうなりたいか、あるいはどういった人に対して、どういった場面で、どういった目的を持って話したいか。それがはっきりしている人っていうのは、やはり続くように思います。
例えば、教養、趣味の領域でお勉強されていかれる方々っていうのは、それはずっと続けていかれること自体にとても意味があるし、あるステージに行くとまた違う景色があって、また新しい深みや高みっていうものを自分の中で作っていかれる方だから、良いとして。さっきの機能、機能性を追求される、仕事で使わなきゃ駄目だとか、留学に行かなきゃいけないんだとかいうような方にとっては、もうちょっと具体的に目的を持てば近道はあるのになというのは、私もとても感じるところなんですよね。
これからこのEnglish Mode、その辺りの学習方法ね、その辺りのヒントもこの番組から皆さんに共有していきたいんですけども、第1回目ということで言うと、テイクアウェイは、今まさに永井さんにおっしゃっていただいた、こんな感じになるのかな。その英語っていうのは、いつ、どこで、誰に使うか。そして地図で言うならば、目的地、できれば地までね、入れていただけると、より英語の勉強が効率的になるし、焦点が絞れてくるっていうことになるのかなと思います。
これで言うと、Set your destination. ですかね。When, where, and who? でしょうか。A map only works once you know where you're going. これが第1回目のテイクアウェイ。
永井さん、第1回目ありがとうございました。次回は、今回まず英語を学ぶ上での態度と言いましょうかね、初期設定どうあるべきかっていうことだったと思うんですけど、次回、私のこの『英語力の核心』からも少しヒントを得まして、インプット、どうするのかなというお話を伺いたいと思います。Next。じゃあ2回後、またよろしくお願いします。
こちらこそよろしくお願いします。
MAKE IT NEXT。
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