AI翻訳で商談はできても、友達はできない――アルク取締役・天野智之が語る祖業の休刊とAI時代の語学
MAKE IT NEXT株式会社アルク取締役の天野智之が、ナビゲーターのSean Kawakamiと対談した後編である。組織の若返りとデジタル化という方針のもとで、天野はどのような「英断」を下したのか。創業者の理念を現代にどう引き継ぐのか。そしてAI翻訳が普及した今も、英語を学ぶ意味はあるのか。看板雑誌の休刊という具体的な決断から話は始まり、視聴者から届いた二つの質問に答えながら、AIにできるのは「伝える」までだという論点にたどり着く。
ENGLISH JOURNALの休刊という決断
Kawakamiは、若手を積極的に採用して英語教育の知識や経験を継承する「若返り」と、デジタル化を進めるという方針を前提に、具体的にどんな英断を下したのかを尋ねた。天野がまず挙げたのは、長年続いてきた月刊誌ENGLISH JOURNALの休刊である。天野はコロナの影響も大きかったと前置きしている。Web媒体としては残っているが、月刊誌としては休刊した。
Kawakamiはこの雑誌を当時よく読んでいたという。海外のニュースをこれほど上手にまとめ、しかも英語教育の素材として編集した雑誌はほかになかった。英語を教えていた頃には教材として使っていたと振り返る。
休刊を発表したとき、社外からの反響は大きかった。天野の知り合いには教育現場の教員が多く、「ENGLISH JOURNALをやめてしまうのか」「終わってしまうのか」と嘆く声がたくさん届いたという。社内の担当者の受け止め方は人それぞれだったと天野は話す。そのうえで、ファンがそれだけいたことはありがたかったと語った。
月刊誌と通信教育というビジネスモデルの限界
Kawakamiが、事業として駄目になっていたわけではなかったのかと確認すると、天野は「ENGLISH JOURNAL単体では収益は厳しくなっていた」と答えた。月刊誌は毎月新しい号を作らなければならない。新しい号が出れば前の号は古くなって戻ってきてしまうため、回転させ続ける必要があり、コストが常にかかり続ける。天野はこれを出版業の特性として説明した。
Kawakamiはこれを、毎回ゼロに戻る構造だと言い換えた。ゼロから作って売り、またゼロから作る。この回転は経営の目で見ると厳しい。一方デジタルであれば、コンテンツはデータベースとして蓄積され、検索されることで昔のコンテンツも新しいコンテンツとして読者に届く。ただ、物を作ってきた出版の側からすれば寂しさもあるだろう、とKawakamiは付け加えた。
ロングセラーの「ヒアリングマラソン」も同じ流れにある。天野によれば、現在はアプリとしてヒアリングマラソンが提供されているが、もともとはいわゆる通信教育だった。eラーニングがなかった数十年前、学校に通わなくても自宅や会社に教材が届き、自分で学習し、先生が採点してくれる。そうした通信教育として一世を風靡したサービスだったが、ビジネスモデル自体がオンラインに置き換わっていったという。アプリ「booco」を使ったデジタル化の話も出た。Kawakamiは、伝統ある知識を若い世代に引き継ぎながらデジタル化を進めるには、経営として既存事業の整理は避けられず、資本効率を上げる必要がある、その中でいくつもの英断があったのだろうとまとめた。
創業者・平本照麿と「地球人ネットワークを作る」
話は、天野が行った創業者・平本照麿との対談に移った。アルクは1969年に英語教育の出版社として創業し、平本は現在90歳ぐらいだと天野は話す。天野は20代の頃に平本と初めて会い、何度も食事をともにして話を聞いてきたという。
ここで天野は、これはあくまで自分が聞いて理解した範囲の話だと断ったうえで、創業の背景を説明した。平本は戦中生まれで、大変な苦労をした世代だという。戦後の復興と高度経済成長の中で、1964年には東京オリンピックがあり、海外から多くの人が日本に来るようになった。これからの日本人は国際化しなければならない。日本人が外に出ていく、あるいは外国の人々を受け入れていく。そう考えて会社を興したのだという。天野は、50年以上経った今でも同じことが言われている気がする、とも付け加えた。
アルクが掲げるミッションは「地球人ネットワークを作る」である。天野は、時代背景を知らずに聞くとピンと来にくい言葉だと認める。今の時代に「ネットワークを作る」と聞けば、NTTのような通信会社を連想してしまう。それでも当時の文脈では、言語を学ぶことよりも、戦後の混乱期の中で人と人が仲良くなることを指していたのだろうと天野は解釈している。
Kawakamiは「英語を教えるって言ってないですもんね」と応じた。天野も、2026年現在でもあまり聞かない「地球人」という言葉を使っていることに触れた。グローバルタレントとも違う、日本人でもアメリカ人でもない「地球人」という壮大な考え方だという。Kawakamiはこれを、手垢のついた「グローバル人材」とはまた違うものだと表現した。
「語学を楽しく」というパーパス
天野はこのミッションを今どう解釈しているのか。天野によれば、SNSやオンラインで世界の人とつながれるようになり、時代背景はだいぶ変わった。それでも、日本人なのか何人なのかという薄い壁はまだ感じるという。言葉が通じること、会話ができることは、その壁を取り払う重要な役割を持つ。だからミッションとしては引き続き掲げているという。
ただ、ミッションだけでは現代の人にはピンと来にくい。そこでアルクはパーパスとして「語学を楽しく」という言葉を使っている。とはいえ「楽しい」は漠然としていて、人それぞれの主観による。天野はその幅を自社サービスの例で説明した。TOEIC専門アプリ「Santaアルク」は、AIでスコア予測を出し、学習者に合わせてパーソナライズした問題を出題する。予測スコアが700点から720点、730点と上がっていくことを楽しいと感じる人もいる。そういう積み上げが苦手で、ゲームのような楽しさを求める人もいる。コーチングで厳しく指導され、成長を実感することを楽しいと感じる人もいる。目的も、海外でのビジネス、旅行などさまざまだ。
Kawakamiは、とことん厳しくされるのが好きな人もいれば、手厚く励ましてもらわないと困る人もいるとして、多様な受け取り方ができる言葉だと評価した。天野は、楽しんだ先に旅行でもビジネスでも友人関係でもよいので世界の人とつながり、輪を築いていく。そこにつなげることを意識してサービスを作っているつもりだと話した。
視聴者質問①:祖業をやめる決断ができない
視聴者から質問が届いた。静岡県浜松市の52歳、製造業の二代目見習い経営者からである。父から継いだ会社の主力製品の市場が年々縮んでいる。撤退して新規事業に張るべきだとは分かっているが、長年支えてくれた職人と会社の歴史を思うと踏み切れない。歴史ある商品に区切りをつけたとき、社員にどう説明したのか、という質問だった。
天野はまず、自分の場合は会社全体ではなく事業ごとの判断だったと断った。質問者の場合は会社全体の方向性の話かもしれず、もっと大きな話だろうという。そのうえで、当時の社員がどう受け止めたかは別だが、と前置きして自分の考えを述べた。新しい方向性を示し、その道の中でこの事業はどうしても成り立たないので閉じる。そう説明して閉じていったつもりであり、一定の理解は得られたと思っているという。
さらに天野は、区切りをつけることで働く人も次に進めると話す。自分が担当する事業がこの先どうなるのか、定年まで働けるのかと不安を抱えている社員もいる。続けることが無理なら、新しい方向に一緒に進むのか、あるいは閉じるのでそれぞれの人生を歩んでもらうのか。そういう決断も重要だと天野は考えている。仕事以外の人生も長い、というのが天野の見方だ。
Kawakamiは顧問先でも同じ局面によく立ち会うとして、自身の考えを重ねた。大きな方針と方法と工程があるとき、事業を畳む、始めるというのは「方法」にあたる。その前に、今後どうなっていくのかという長いビジョンとしての方針を伝える必要がある。そのうえで、これは終わりではなく新しい物語のスタートとしての終わりなのだと語る。経営者は時に語り部のように、来年、再来年、3年後、5年後、10年後にどうなっていくのかを伝えるべきだという。そうしなければ、終わることにしか焦点が当たらない。将来「成功の花火」を上げるときに一緒に楽しめるよう、ここにいてほしいと伝えることが大事だとKawakamiは話した。
当時30代だった天野の説明に、シニアの社員はどう反応したのか。天野は、反応はそれぞれだったと答えた。この過程で会社を去る判断をした人もいて、残った人とは違う意見を持つ人も多かっただろう。一方で、そこで区切りをつけて次のステップに進んだ人も多く、それで良かったと思っている人もいるのではないかと話した。
変えるときに強みを見誤らない
対談を一冊の本にしたら、あとがきに承継と変革のバランスについて何を書くか。Kawakamiのこの問いに、天野は全ての会社に当てはまるかは分からないと前置きして答えた。アルクは一定規模に成長し、57年続いている会社である。ファンも、サービスを気に入っている利用者もいるし、働いている社員もいる。だから判断は慎重にした方がいいという。
変えなければならないことは、社内の人間もみな分かっている。ただ、方向性を間違えると問題が起きる。天野はこう例えた。足が速いことが強みの人に、今は足の速さが流行らないから重いものを持てる力をつけようと言えば、まったく違う方向に行ってしまう。それではその人が培ってきた能力や会社のブランドを捨てて、ゼロからやり直すことになる。それなら今の社員でやるより、人を集めてゼロから立ち上げた方がおそらく早い。
すでにあるものをどう活かすかを考えなければならない、と天野は言う。今AIが流行っているから何が何でもAIだ、というのも合う合わないがある。強みと向き合うことの大切さは、天野自身がここ数年で学んだことだという。
世代間ギャップ:「なぜその制度ができたかを考えろ」
Kawakamiはシミュレーションを持ちかけた。20代の若者が「40代後半から60代はテクノロジーを分かっていないのに伝統に縛られ、ルールだ、制度だ、慣習だとうるさい。こんな会社にはいられない」と訴えてきたら、どう助言するか。
天野の答えは「まずなんでその制度ができたか、慣習ができたかを考えろ」だった。天野自身も20代の頃、当時の会社で同じことを言っていた立場だったという。なぜこんなに面倒なのか、なぜこんなに手続きが多いのか、と。もちろん無駄はあったと天野は認める。それでも経緯を考えれば、さまざまなトラブルがあり、これを追加しなければ事故が起きる、という理由で手続きが設定されてきたはずだ。見直しは必要だが、若い人は過去の経緯をきちんと学ぶべきで、そのうえで変えていけばいい。ただ否定するのはよくないという。経験を積むと、あのとき先輩が言っていたのはこういうことだったのかと分かることが多い、とも話した。
天野はここで英語教育の変遷にも触れた。アルクの57年の歴史の中で、英語そのものは変わっていない。57年前も「Hello, how are you?」は「Hello, how are you?」だった。アルクの場合、教材は紙からCD-ROMの音声になり、オンラインでダウンロードして聞けるようになり、eラーニングが登場し、オンライン英会話ができるようになった。テクノロジーは発展したが、学んでいる内容は同じで、変わったのはデリバリーの仕方だけだという。Kawakamiは、明治時代から変わっていないと応じた。
逆の立場からの相談も想定された。62歳の社員が「最近の20代、30代はテクノロジー、デジタル、AIばかりで、仕事のやり方が分かっていない。嫌ならすぐ辞め、退職代行会社から電話が来て明日から来なくなる。どう付き合えばいいのか」と訴えてきた場合である。天野は「これは難しいですね」と言い、この問いについては答えを持っていないと率直に認めた。もっと若い人に寄り添うべきだという考えは持っている。ただ相談者によっては、気にせず自分の道を行った方がいいのではないかと言ってしまいそうだ、と話した。
知らないことを否定しない
二つの相談を受けて、Kawakamiは、どちらの世代にも「知らないことを否定する癖」があるのではないかと指摘した。AIを分からない側は、ろくでもない、人間の仕事を奪うものだと思ってしまう。しかし勉強していけば、それが違うと気づくはずだ。逆に、伝統や文化を知らない若い世代にも同じことが言える。Kawakamiは、最近昭和の歌が流行っているのは、知ってみたら面白かったからではないかと例を挙げた。知らないからもういい、とお互いに切り捨てるのはやめた方がいいという。
天野も、会社にいて感じることとしてこう話した。世代差は分かりやすいが、同世代でも性格やバックグラウンドは違う。よくよく話を聞くと、単にコミュニケーションを取っていないだけのケースが多い。なんとなく「この人はこうだよね」と勝手に結論を決めてしまっているという。
Kawakamiは、「地球人ネットワークを作る」とはこういうことかもしれないと述べた。乗ったこともない車、行ったこともない国、読んだこともない本を「大したことない」と否定するのを全員がやめれば、世の中はずっと良くなる。まず知ってみることが大事だ、というのがKawakamiの考えである。
視聴者質問②:AI翻訳があるのに英語を学ぶ意味はあるか
二つ目の質問は、福岡のIT企業に勤める29歳、ニックネーム「TOEIC万年600点」からだった。海外との商談もAI翻訳でほぼ困らなくなり、英語学習のモチベーションが保てない。それでも学ぶべき理由は何か、学ぶなら何から始めればよいか、という内容である。
天野は、学ぶ意味はもちろんあると答えた。30年後、50年後はドラえもんの世界のようにシームレスに言語が変換されるかもしれず、そこは分からない。しかし5年、10年、20年のスパンで考えれば、英語はあくまでコミュニケーションツールだと天野は言う。これは英語業界では共通認識だという。英語は日本語と同じく人と話すためのもので、点数が何点かは関係ない。友達と話したいから学ぶのであり、コミュニケーションは一定程度必ず必要になる、と天野は考えている。
天野はさらに、これはAIの時代に限った話ではないと続けた。昔から、本で独学した人も、カセットテープを繰り返し聞いて覚えた人もいた。AIがなくても身につけた人はいたし、翻訳や通訳という手段も以前からあった。Kawakamiも、日米修好通商条約のときの通訳はどうやって勉強したのだろうと応じた。天野によれば、結局、学ぶ人は学ぶ。コミュニケーションのために英語を使う人は学び続けるし、それでいいと考える人はポケトークのようなサービスを使ってきた。そうしたサービスは10年以上前からある。AIで便利になるかもしれないが、状況は変わらないのではないかと天野は見る。「ポケトークがあるのになぜ学ぶのか」と10年前、20年前に問うのと大差ないという。商談の場では相手の目を見て話さなければならない、とも天野は付け加えた。
天野は知人の体験談を紹介した。その知人は1か月ほど海外出張に行き、ポケトークのようなサービスを使って話した。商談はできた。しかし1か月いて、友達は一人もできなかったという。
「伝える」と「伝わる」は違う
Kawakamiは、アルクから本を出した際に受けたインタビューでも同じ質問をされたとして、そのとき話した考えを繰り返した。コミュニケーションは「伝える」「伝わる」「動く・動かす」「成果を出す」と段階を踏む。AIを使えば「伝える」まではできる。
「伝わる」とは腑に落ちることであり、「なるほどね」と思える状態だ、とKawakamiは説明する。そのためには論理的な理解と心理的な理解の両輪が揃わなければならない。AIを使えば論理的な理解には至る。御社がこれをやりたい理由は分かる、というところまでは届く。しかし腑には落ちない。人は、相手の喋り方や態度が嫌いだから受け入れない、ということが起こる。この部分はAIにはできないとKawakamiは言う。さらにその先の「一緒に動く・動かす」「成果を出す」もAIにはおそらくできず、せいぜいサポートにとどまる。友達ができなかったのは、この後半部分が欠けているからだというのがKawakamiの解釈である。
Kawakamiはコンサルタントとしての実感も語った。英語に加えフランス語や中国語も多少できるKawakamiのようなコンサルタントは、以前は重宝された。今は英語ができることがそれほど強みにならなくなっている。声がかかる段階も変わった。以前は「これから海外事業をやろうと思っている」という相談だったが、今はパートナーとある程度話を進め、契約関係まで整った段階で依頼が来る。誰が進めたのかと聞くと、社内に英語ができる人はほとんどいない。ほぼデジタルツールでやり取りしてここまで来たのだという。Kawakamiは時代が変わったと認めつつ、握手しハグをして「伝わる」関係を作り、一緒に事業を進めて成果を出すところまではそれでは無理だと話した。「伝える」は上手に、エレガントに、プロフェッショナルにできる。それでも「地球人ネットワークを作る」ところまでは届かない、とKawakamiは述べた。
天野とアルクの「ネクスト」
最後に番組名「MAKE IT NEXT」にちなみ、天野個人とアルクの次の挑戦が問われた。天野がずっとやりたいと思っているのは海外でのチャレンジである。コロナで短期的に状況が変わった面はあるという。アルクのミッションがあり、クライアント企業の中には海外で活躍する人々もいて、アルクはその語学サポートをしている。だからこそ自分たち自身ももっと挑戦しなければならない、と天野は考えている。天野には留学経験があり、出張ベースの海外業務も多少はある。しかし国をまたいだビジネスはやっていない。そのため、海外でビジネスに挑戦したいという思いが強い。アルクとしても国内だけでなく海外でやっていけることを示し、クライアント企業や学習者と一緒に挑戦していきたいし、そうすべきだと話した。
Kawakamiが、アルクというプラットフォームでどう外貨を稼ぐかという問いは面白い、と水を向けると、天野は分かりやすい方向性を二つ挙げた。一つは日本語である。アルクは英語だけでなく日本語教育も手がけており、日本に来る外国人の増加に伴って、日本語事業は国内ですでに大きく成長しているという。日本語については自分たちがネイティブなので、外に出ていく可能性は大きいと天野は見ている。英語やほかの言語も世界各地で学ばれており、アルクのサービスを日本人以外にも使ってもらえるグローバルなサービスにしていくべきだとも話した。
もう一つは数字の話である。日本は少子高齢化だが、世界の他の国々では人口が増えている。経済力も上がり、これまで教育を受けられなかった子どもたちが教育を受けられる経済水準になりつつある。国によるが、教育を必要とする世代はグローバルではむしろ爆発的に増えている、と天野は説明する。日本国内にいると縮小市場に見えるが、日本にこだわらなければ、競合は増えるにせよ可能性はある、というのが天野の見方だ。
Kawakamiの提案:グローバル事業支援のハブとしてのアルク
Kawakamiは、ブレストレベルの思いつきとして聞いてほしいと断ったうえで、一つの案を出した。アルクの背後には、グローバルに事業を展開している、あるいはしようとしているクライアント企業群がある。その企業群のグローバル事業支援を、アルクがハブとなって担うのはどうか。
Kawakamiの理屈はこうだ。アルクはBtoCに見えがちだが、英語を学びたいと考える個人の主なモチベーションは、企業の動きにあることが多い。企業のグローバル事業が活性化すれば、個人の学習意欲にも火がつく。アルクが企業同士をつなぐハブになってグローバル事業を支援すれば、そこには必ず語学教育の市場が生まれ、さまざまな市場が広がっていくのではないか、とKawakamiは考えた。
天野は、夢物語ではあるがチャレンジする価値は十分にあると応じた。Kawakamiは、天野の世代でグローバルなアルク、いわば「アルク2.0」の足掛かりを作ってほしいと期待を述べ、対談を締めくくった。
周りの反応が、「アルクの社長をやるんですか」っていう周りの反応に驚いてしまった感じはありますね。
あのアルクですか? 躊躇するよりも飛び出しちゃって、チャレンジしてから考えようかなと。もう人と会話ができないっていう辛さがすごくてですね。最初の半年ぐらいはもう辛くて辛くて。
そう、でも本の温かみっていうことと、バーになってるデジタルっていうもの。いや、そうじゃない。VSじゃなくて、アだよっていうところで繋げていかなきゃいけないってことですよね。
方針としては、要するに若手をどんどん入れて、この業界と言いますか、英語教育っていうところにおける知識とか経験っていうものを継承させるという意味での若返りと、デジタル化って方針じゃないですか? 具体的な方法としては、何か英断を下したことがやっぱりあるわけですよね。
やっぱりこれも先ほど申し上げたように、コロナの状況もすごくあるんですけど、ただ長年続いてきた、まさに看板とおっしゃっていただいたENGLISH JOURNALという月刊誌を閉じなきゃいけないという。
それは見てましたし、当時、あんなに上手に海外のニュースを取りまとめて、しかもそれを英語教育誌として取りまとめてる雑誌はなくて。当時から英語を教える、教えてくれる時に教材としてたんですよね。あれを閉じるっていうのは、閉じるっていうか、雑誌を閉じるってこと?
そうですね。Web媒体としては残ってはいるんですけど、やはり月刊誌としてのENGLISH JOURNALというのは休刊。
これ、早速来たなっていう感じしたんですかね、社内的には。あれは仕方ないなっていう。
担当の者の感じ方はそれぞれだったと思うんですけど、これも結構外からの声もあってですね。私も閉じるっていう発表をした時に、教育現場にいらっしゃる先生方とか、私も知り合いの方がたくさんいらっしゃいますけど、「ENGLISH JOURNALやめちゃうんだ」とか、「終わってしまうんだ」っていう、すごく衝撃の声と言いますか、本当にそういう声はたくさんいただいたので。ただ、月刊誌というビジネスモデルが、ビジネス上なかなか継続していくのが難しい状況ではあったので。そこはただありがたいなと、そういうファンの方々がいらっしゃったというのは。
そうですね。英断で、会社の中の主力と言われていた、しかも事業的にダメになってたわけではなかったんでしょ? ENGLISH JOURNALそのものが。
ENGLISH JOURNAL単体では、やはりちょっと収益は厳しくはなっていた状況ですね。毎月新しく作らなければいけなくて、出版業の特性上、どうしても特に月刊は、今月号が出てしまうと先月号は古くなって戻ってしまうっていうので、どんどん回転させなければいけないので、すごくコストが常にかかり続けるんですね。
そうですよね。出版事業そのものが労働ではあるので、利益効率っていうことで言うと、毎回ゼロに戻るわけですからね。またゼロから作る、売る、ゼロから作るって、この回転がなかなか経営として見てると厳しいのかなっていう感じには。
そうですね。
デジタルであると、だんだんそれが溜まっていきますから、データベースになっていくので。検索をされることによって、昔のコンテンツも新しいコンテンツとして伝わるという意味では。ただ、これ出版をやってる人側からすると、物を作ってる側からすると、なんかこれ寂しいかもしれないですよね。このヒアリングマラソンもそうだったんですかね。これはもう新規の販売は。あれもすごいロングセラー。
そうですね。いわゆるヒアリングマラソンも、今アプリとして一応ヒアリングマラソンがあるんですけど、まさにヒアリングマラソンはいわゆる通信教育と言われる。本当に数十年前は、eラーニングとかがなかった時代は、まさに学校に通わなくてもご自宅に教材が届いてだったりとか、会社に教材が届いて、自己学習をして、また先生が採点してくれてっていう、いわゆる通信教育というところで一世を風靡したサービスだったんですけど、やっぱりそのビジネスモデル自体がどんどんオンラインに置き換わっていって、というところかなとは。
そうすると、先ほどの組織を若返らせて、古い、古いというか伝統ある知や知識というものを引き継いでいく若者を育てるってことと、デジタル化っていう中で、従前にあった事業の整理整頓はしなきゃいけないと。やっぱり経営なので、資本効率を上げなきゃいけない。使うお金をいかに効率的に回すかって考えなきゃいけないってことの中で、いろんな英断があったと。
紙とか、いわゆる通信教育って、今ちょっと懐かしい響きしますけどね。通信教育、通信講座って。これはアプリを使って、これはbooco、ブッコっていうんですか、これ。
ブーコです。
ブーコですか? ブーコ。デジタルの置き換えをしてって。あれなんですって、その創業者の平本さんとの対談もされたんですか?
そうですね。
いかがでしたか? 創業者、平本さん。平本照麿さん。
当時、1969年に英語教育の出版社を作るって、これまたすごい創業だったと思うんですけど。改めて、創業者の、今おいくつで?
多分90歳ぐらいだと。
そうですか。いかがでしたかというか。
そうですね。私、平本さんとの初めての話は、私が20代のところにお会いさせていただいて、何度もお食事とかもご一緒させていただいて、お話をお聞きしてたんですけど、やっぱり一時代を築かれた方ですし。すごいなと思うのが、これはあくまで私が聞いて、私が理解した範囲でのお話ということで聞いていただければと思うんですけど、平本さんご自身は、いわゆる戦時中生まれの方で。
そうですよね。
大変苦労されたんだと思うんですけど、その後、この戦後の復興、復旧の中で、高度経済成長の中で、これから、それこそ東京オリンピックが1964年にあって、海外の方々がどんどん日本に来て、これからの日本人はどんどん国際化をしなきゃいけないっていう。今でも、50年以上経った今でも同じこと言われてる気がしますけど、まさにそういう時代で、「よし、これからは日本人が外に出ていくんだ」、もしくは外国の方々を受け入れていくんだっていうので創業されていて。
まさにミッションとしても「地球人ネットワークを作る」という壮大なミッションを掲げてる会社なので、あの時代、その時代背景を知らずに聞くと、「地球人ネットワークを作る」ってなかなかピンときづらい気がするんですよね。
「地球人ネットワークを作る」っていうこのタグラインって、アルクさんの出版物等でよく目にするタグラインで分かるんですけど、ふと言われると。当時にその「地球人ネットワークを作る」って、すごいスローガンですよね。
そうなんですよ。なので、本当に今の時代聞いてしまうと、メイキングみたいなこと言うと、もうNTTさんかみたいな。通信のように聞こえてしまうと思うんですけど、多分当時は、このグローバルの文脈の中で、どちらかというと言語を学ぶではなくて。
そうですね。人と人、もう戦後の混乱期の中で、人と人とが仲良くなる、すごい言葉だなとは。英語を教えるって言ってないですもんね。
そうなんですよ。しかも私たち、2026年現在でも、ちょっとあまり聞かない「地球人」っていう言葉を使ってるっていう。
地球人って何っていう。グローバルタレントでもなさそうだし、何だろうって思いながら、その地球人がネットワークを作っていく。そのネットワークを作るっていうコーポレートスローガンって。
すごいですよね。本当に日本人でもなくアメリカ人でもなく、地球人っていう、そのすごい壮大な考え方を持ってる。
なんか、手垢のついたって言っちゃっていいのかな。手垢のついたグローバル人材とはまた違いそうですよね、地球人って。
そうですね。
そう考えると、なんかすごいですね。天野さんは、この創業者が作った「地球人ネットワークを作る」っていうコーポレートスローガンですよね。今で言うとパーパスとか言うのかな、ミッションなのか。ミッション、ビジョン、バリューのどこに当たるか分かりませんが、とにかくそのパーパス、これをどんなふうに今解釈されてるんですか?
そうですね。私は今、とはいえ時代が変わってきて、今それこそ本当に世界の人と繋がるという意味では、SNSだったりとか、オンラインでもどんどん人たちと繋がれる時代にはなってきたなとは思っているので、だいぶ時代背景は変わったとは思ってます。
ただ、根底にある、我々日本人なのか何人なのかみたいなところの薄い壁みたいなのはまだまだ感じるなと思っているので、そこの部分は我々も引き続きミッションとして。言葉が通じるっていうことだったりとか、会話ができるっていうことは、壁を取り払う一つのすごく重要な役割だと思うので、そこは一つあります。
ただ、我々も今「地球人ネットワークを作る」っていうのは会社のミッションとして掲げてるんですが、先ほど申し上げたように、このミッションだけ聞くと、現代の人たちにはなかなかピンときづらいところがあるので、そこに我々、さらにパーパスとしては、実は「語学を楽しく」っていうような言葉を今使っているんですけど。じゃあその中で、「楽しく」もすごくベーグな言葉なので、楽しいってやっぱり人それぞれ、主観なので。
そうですよね。
我々のサービスでいくと、SantaアルクというTOEICの専門のアプリがあるんですけど、AIを使ってスコア予測が出たりとか、自分にパーソナライズされたような問題が出てくるんですけど。そういうふうにどんどんコツコツやっていって、自分の予測スコアが今700点だったのが720点、730点って、点数が上がっていくことに楽しいと感じる方もいらっしゃいますし。
そういうのが苦手で、やっぱりゲームみたいな、もっといわゆる楽しい、歌って踊ってじゃないですけど、を楽しいと感じる方もいらっしゃいます。コーチに厳しく言われて、そこで成長して楽しいと感じる方もいらっしゃいます。楽しいのもそれぞれですし、海外でビジネスやりたい方もいれば、旅行行きたい方もいれば、目的もそれぞれなので。
そうですよね。楽しさって確かに、なんかもうものすごくサディスティックにやられるのが好きな人もいるし、いやいや、もう本当によちよちしてもらわないと困る人もいるし。いろんな楽しみ方があるから、その「語学を楽しく」っていうのも、出し方としてはすごく。
そうですね。なので、いい意味を含めて「語学を楽しく」。ただ、その楽しんだ先に、旅行でもビジネスでも友人関係でもいいんですけど、世界の人と繋がってネットワークを築いていくっていうところに繋げていくっていうのを、すごく今意識してサービスを作っているつもりでは。
なるほど。番組をご覧の方から質問が一個来てまして、52歳、二代目見習い、製造業経営者、静岡県浜松市。「祖業をやめる決断ができません。父から継いだ会社の主力製品の市場が年々縮んでいます。撤退して新規事業に張るべきだとは分かっているんですが、長年支えてくれた職人と会社の歴史を思うと踏み切れません。天野さんは歴史ある会社の商品を、ある意味、終わらせたという時に、どんなふうに社員にお話をされたんですか。どんな説明をしたんでしょうか」と。これはあるでしょうね。日本企業、長寿企業が多い国ですからね。
すごくお気持ちを察するに余りあるという。
そうですよね。
すごいなと。しかも私の場合には、このアルクという会社全体ではなく各事業ごとではあったので、今のご質問の方は、もしかしたら会社全体の新方向性みたいなお話かもしれないんで、すごく大きなお話だなと思うんですけど。ただ、私として、当時の社員の方々がどう捉えたかはまた別だとは思うんですけど、私が一応考えていたこととしては、新しい方向性を示した上で、その道の中でこれはどうしても成り立たないので閉じなきゃいけないとかっていうのを説明して、閉じていったつもりではあるので、そこは一定理解していただけたかなと思いますし。
とはいえ、働いてる方々も、そうやって区切りをつけることで次に進めるっていうのがあるので、逆にある意味そこで。皆さんも、この事業、自分がやってるけどどうなっていくんだろう、今後自分が定年まで働けるのかなって心配な方々もいらっしゃると思うんで。
事業を続けていくのがやっぱり無理であれば、新しい方向性に一緒に歩むものなのか、一度閉じるからその人それぞれの人生をまた歩んでいただくというか、そういう決断もすごく重要なんじゃないかなっていうふうに思ってます。それ以外の人生も長いと思うので。
そうですね。本当に天野さんのお考え、私も本当にそうだなと思うのと、私も顧問先の会社さん、そういう会社がたくさんありまして、同じような局面に会う時に、おっしゃった通りで。大きな方針と方法と工程っていうのがあった時に、事業を畳むとか始めるっていうのは方法じゃないですか? その前に今後どうなるんだろうねっていう長いビジョンの方針っていうのを伝えた上で、その方法としてこれがあるんだと。
これは終わりではなくて、新しい物語のスタートのための終わりであって、終わりの終わりではないと。つまり新しいことが始まる、まず始まりなんだっていうことを、やっぱり経営者って、時には物語を語る語り部のように、しっかりこの先何が起こるんだ、この後っていうのを伝えるのがとっても大事で。そうじゃないと終わってしまうことにしかフォーカスは当たらないじゃないですか。
やっぱり、これは一つ終わるんだけど、この後にこういうことがあって、こういうことがあって、来年、再来年、3年後、5年後、10年後にはこうなっていくから、その時の未来を楽しむというか、成功の花火を上げる時に楽しめる一人でいてくれ、みたいなことっていうのがとても大事だなって、すごく思います。
そういう意味では、まだまだその当時お若かった、今でこそですけど、まだ30代の頃にそういったことを。当時も多分、結構シニアの方もたくさんいらっしゃったと思うんですよね。皆さんは天野さんの声に対して、「仕方ない、そうだよね」っていう感じだったのか、うっていう声もあったのか。
多分それぞれだったと思いますし、この過程の中で当然会社を去っていかれる判断をされた方々もいらっしゃるので、当然今残ってる方々と違う意見を持っている方々っていうのもたくさんいらっしゃったとは思いますし。申し上げたように、とはいえ逆にそこで区切りをつけて、次のステップに進んでいかれる方々もたくさんいらっしゃったかなと思うので、そこは逆に良かったと思っていただけてる方もいるのかなと思います。自分自身のキャリアもその後も続くので。
これ、今日の天野さんの対談を一つの本にした時に、一番最後のページになってくる時に、その会社経営、あるいは組織の承継、引き継いでいくことと新しくするイノベーション、変革とかっていうことのバランスって、後書きあたりにどんなことを書かれますか?
そうですね。これは全ての会社に当てはまるかは分からないんですけど、このアルクという会社は、やはり一定規模、大きくなった会社だとは思うので、事業がちゃんと立ち上がった会社を引き継いで。これだけ57年続いている会社なので、それなりにファンの方だったりとか、サービスを気に入っていただいてる方々がいらっしゃるサービスだと思う。すごく判断としても、ここに働いてる方々、使ってる利用者の方々っていうのもいらっしゃるので、そこの判断は慎重にした方がいいなとは私は思ってます。
当然変えなきゃいけないってみんな分かってて、中にいる人たちも分かっているんですけど、ただその方向性を間違えると、本当はこの人は、例えば足がすごく速いのが強みなのに、「今、足が速いのは流行らないから、もう全然重いものを持てる力をつけよう」って、全然違う方向に行ってしまうと、今まで培ってきたその人の能力だったり、その会社のブランドみたいなものを本当にゼロからやるっていうことになるので。
そうすると、今のこの社員でやるよりも、もうゼロから立ち上げた方が、多分それだったら早いんですよね、その人員を集めて。やっぱりここにすでにあるものがあるので、このあるものをどう活かせるかっていう考え方をしないと、ただ単に変えるぞ、今AIが流行ってるから何が何でももうAIだっていうのも、合う合わないもあると思うので。そこは見誤っちゃいけないなっていうのは、私もここ数年ですごく自分自身学んだことですし、やはりこの強みっていうところはしっかり向き合わないといけないなと。単に「よし、変えるぞ」みたいなだけでは。
もう一つ、ちょっとシミュレーション的な話をしたいんですけど。今、私がここにいますと。20代の若者ですと。ちょっと説していただきたいんですけど、「最近の40代後半、50代、60代、もうテクノロジーのこと全然分かんないくせに、昔の伝統に縛りついて、あれがルールだ、制度だ、慣習だって、もう本当にうざいんですよ。もうこんな会社いてらんないんですよ」っていう若者がいたとしたら、天野さん、どんなアドバイスをされますか?
まず、なんでその制度ができたか、慣習ができたかを考えろって言いますね。これ、私もそれこそ20代の頃、当時働いてた会社でまさに同じようなことを言ってた立場なので、自分自身、「なんでこんなに面倒くさいんだ、なんでこんな手続き多いんだ」って言ってましたけど。もちろん無駄はあったと思います。無駄はあったと思いますけど、過程を考えると、多分いろいろとトラブルがあって、「これを追加しなきゃいけないよね。こういうことをしないと事故が起こっちゃうよね」っていうので、多分手続きとかが設定されてきたので。
当然見直さなきゃいけないですけど、なぜそこにたどり着いたかは、一度若い人は若い人で過去の経緯をきちっと学ぶべきだと思います。その上で変えていくのはいいんですけど、ただ否定して、もう良くないなと言いますか。結局やってみて、自分が経験を積むと、「あの時にあの先輩が言ってたことってこういうことだったんだな」って、結局分かることは多いなと思いますし。
あと英語教育をやってて、私もこの変遷を今まで見てきてすごく思うんですけど、アルクもそうですけど、この57年という歴史の中で英語自体は変わってないはずなんですよね。「Hello, how are you?」はずっと57年前も「Hello, how are you?」なんですよ。ただ、それが紙だったのがだんだんCD-ROMの音声になって、アルクの場合ですね。それがオンラインでダウンロードして音声を聞けるようになって、だんだんeラーニングが出てきて、オンライン英会話ができるようになってみたいな。テクノロジーは発展してるんですけど、やってることは「Hello, how are you?」、みんな同じことを学んでるんですよ、結局は。
確かに、デリバリーの仕方が変わっているだけで、やってることは、この基礎は一緒だよねっていう。
より便利になって。
明治時代から変わってないんですからね。
そうなんですよ、そこは。
なるほどな。じゃあもう一つ、もう一人の面談ですよ。62歳。「もう最近の20代、30代の世代も、何でもかんでもテクノロジー、デジタル、AI。違う、分かってないよと。仕事のやり方が全く分かってないと。全員とは言わないけれど、もう嫌だったらやめちゃうしね、すぐね。どこかの代理会社が電話してきて、明日から来ないっていうし。もうどうやってお付き合いしていいか分からんよ」という面談に対して、社長は。
これは難しいですね。私も今、答えは持ってないです。これに関しては答え持ってないなと思います。私も、これも同じような答えで、多分もっと若い人にも寄り添うっていう考えは私は持ってるなと思いますけど。その相談者によって、私はもう「じゃあそこ気にしないで、あなたの道行った方がいいんじゃないの」って言っちゃいそうな気もします。
すいません、なんか予定にない。私、今天野さんのお話を聞きながら思ったんですけど、どちらの世代も、知らないことを否定するなっていうか、知らないっていうことに対してダメだっていう癖があるじゃないですか。
人間って分からないことを否定するというか。こちらから言うと、AIのこと分からないから、もうろくでもない、新しい人間の仕事を奪うあれやこれだって思ってしまうし。かたや、それは分からないからじゃないですか? 勉強していくと、「あれ、これなんか違うな」って思ってくるはずで。こちらから見ても、その伝統や文化や、言ったら最近昭和の歌がすごい流行ってますけど、あれ、分かってくれたから面白かった。
分からない、あるいは知らないっていうことを否定してしまうというか、否定っていうのは、ダメだって思っちゃう、受け付けないっていう。その知らないから。知れば面白いのに、知らないってことで「もういいです」っていうのを、お互いにやめた方がいいよねって本当に思います。
本当ですね。
知らないから、「それってやめた方がいいですよ」って。「嘘つけ、知らないだけでしょ」っていうのは結構ないです?
そうですね。
ですよね。
これ、私、会社にいてすごく思うんですけど、世代間ももちろん分かりやすいですけど、別に同世代であっても、皆さん性格もバックグラウンドも違うんで。よくよく話を聞いてると、結局コミュニケーション取ってないだけのケースって多いなと思うんですよ。勝手になんとなく「この人これだよね」みたいなので、もう結論を勝手に決めちゃってるケースは多いです。
だから、「地球人ネットワークを作る」ってそういうことかなってちょっと思うんですけど、知らないことによって否定をしてしまっている、本来自分に身につけてしまってる態度ってあるじゃないですか。知らない、乗ったこともない車を否定するみたいなやつですよね。行ったこともない国を否定するとか、読んだこともない本を「あの本、大したことないよ」って言ってしまうっていうのを全員やめると、すごくいい世の中になるのかなって。いや、知ってみようと。
まずは知ってみようということが大事で、地球人ネットワークって、そういうことをやっていくとすごく広がっていくのかななんて思いましたけど。
ちょっとこれ番外編になってきてっていうか、私も本を書いた立場から言わなきゃいけないことがあるテーマなんですけど、これ天野さんに聞かなきゃいけないんですけどね。AI時代における英語学習。もうこれ、メール質問から入りましょう。
29歳、ニックネーム「TOEIC万年600点」。面白いですね、これ。TOEIC万年600点っていうのもすごいな。IT企業、福岡。「もうズバリ聞きます。AI翻訳があるのに英語を勉強する意味ありますか? 海外との商談もAI翻訳ではほぼ困らなくなりました。正直、英語のモチベーションが保てません。語学のプロである天野さん、それでも学ぶべき理由をどう考えますか? もし学ぶなら何を始めればいいんですか」と。もうかなり挑戦的な、私の読み方にもなってるかもしれませんが。どうですか? これは、これもよくあるね。
もちろんだと思います。もちろん30年とか50年後は分からないです。本当にドラえもんの世界のように、もうシームレスに言語が出てくるとちょっと分からないですけど、ただ向こう5年、10年、20年みたいなスパンでいくと、私は英語はあくまでコミュニケーションツールだと思っているので。これって英語業界にいる人の間ではすごく共通認識というか、英語ってあくまでコミュニケーションツールだから、人と話すためのものじゃないですか? 日本語もそうですけど。
なので、別に点数が何点とかは関係なくて、人と話したいから、友達と話したい。コミュニケーションがあるので、一定、私は必ずコミュニケーションが必要だと思ってます。なので、そこの部分での言語学習は必要だと思ってますけど、これはもうAIの時代に限らず、これもさっきの話みたいに、昔から結局、本があれば、昔も字で英語を学んでた方っていらっしゃるわけですよね。
自己学習で、変な話、勝手にとか、カセットテープで繰り返し聞いて覚えた人とかっていると思うので、別にAIがなくてもできてた方とか。あと、それこそ翻訳、通訳みたいなのはあるので。
日米通商条約の時に通訳してた人って、どうやって勉強してたんだと思いません? 本当に今考えると何もなかった時代にね。おっしゃる通り、言語変わってないですからね。
そうです。だから結局、学ぶ人は学ぶので、一定数、コミュニケーションとして使う方っていうのは学び続けると思いますし。それでいいって思われる方は、すでに、商品名出しちゃってはあれですけど、ポケトークのようなサービスはすでにもう10年以上前からあって、それを使ってる方々もいらっしゃるので、そこはより便利になるかもしれないですけど、変わらないんじゃないかなと。
10年前に、20年前に、ポケトークがあるのになんで学んでるのっていうのとあまり変わらないかなと。結局、商談の現場では目を見て話さなきゃいけないし。これ、私の知り合いがすごくいいことを言ってたんですけど、海外出張に行った時に、それこそこのポケトークのようなサービスを使って話したら、商談はできたと。商談はできたのに、1か月いて友達一人もできなかった、みたいなことを言ってたんですよ。
本当でしょうね。絶対そうですよね。私、これアルクさんという、本当に光栄なプラットフォームで本を出させていただいた中でも、あとアルクさんに行った時にインタビューを受けまして、同じ質問をアルクさんに受けまして、言ってたことをそのまままた繰り返しちゃう感じになるんですけど。コミュニケーションっていうのは、結局、伝える、伝わる、そして動く、動かす、成果を出すっていうふうになった時に、伝えるまではできると思うんですよ。
伝わるっていうのは腑に落ちる感じですよね。「なるほど。いい。なるほどね」っていう感じですね。ここには何が必要かっていうと、その論理的な理解と心理的な理解の両輪が揃ってないと、伝わるにはならないと。多分AIを使うと論理的な理解にはなるんでしょうと。言ってることは分かる。「なるほどね、御社でこれやりたくて、これでこうで、分かる」と。ただ、全然腑に落ちないですよね。
心理的に嫌いだから、あなたのことが、っていうことが起こるわけですよ。あなたのしゃべり方が嫌いだから、態度が嫌いだから、となるわけです。これってAIにはできないですよね。だから伝えるはできると思うんですけど、伝わるは人間が関与しなきゃいけない。さらにその先にある、一緒に動くとか動かすとかっていうフェーズは、AIには多分できないですよね。
さらに成果を出すっていうのも、AIは知らんのですよ。それはサポートするかもしれん。だから後半部分は、私はっきり言うんですけど、後半部分はAIにできません。だから伝えるはできる。だからお友達ができないのは、こっちがないからですよね。
そうですね。
だから本当にコンサルやってて、最近びっくりして危機を感じるのが、昔、英語、ちょっとフランス語、中国語を勉強してやってるんで、ちょっとできる感じなんですけど、重宝されたわけですよ。された、過去形なんです。英語ができるコンサルタント、重宝されたんですよね。今、あんまり英語ができるからって別に大したことはないっていうのか。
あと、声をかけてもらう時のステージが、もうだいぶ先に進んでるんですよね。「これから海外事業をやろうと思ってる」っていうのは、ちょっと前のお声がけだったんですよ。もう今は、「パートナーとある程度やって、そして契約関係含めてもつれちゃってるんで、これからどうしたらいいですか」。「だいぶ進んでますよ、これ。誰がやられたんですか?」。「英語できる人、一人もいないですよ、会社の中に」。一人もっていうと語弊がありますが、ほぼできない。
ほとんどデジタルツールでやり取りをしてて、ここまで来てるって、時代は変わったなと思うんですけど。やっぱりさっき言ったその伝わるっていう、握手してハグして、そしてその後一緒にやって成果を出すのは、AI、無理っすね。
そうですよね。
だから、それでは地球人ネットワークを作るところまで行かなくて、伝えるはできますよね。
そうですよね。もうとっても上手に、エレガントにもいけるし。本当にプロフェッショナルにできると思います。
最後になりましたけども、天野さんが、これ個人的に、あるいはアルクという会社でもいいです。どちらでもいいし、両方しゃべっていただいて構わないですけど、番組はMAKE IT NEXTなので、次に、ネクスト。どんなふうにご自身のキャリア、だけじゃなくてもいいですよ。人生そのものもですけど、天野さんのネクスト、アルクのネクスト、それぞれ教えていただけますか?
そうですね。私自身としては、一つすごく自分のキャリアで申し上げると、一個やりたいことがずっとあってですね。このアルクでもそうなんですけど、コロナがあってっていうので、ちょっと状況が変わってしまったところも短期的にはあるんですけど、海外チャレンジはものすごくしたいなと思ってるんですね。
ミッションを掲げ、あと我々、クライアント企業様がいらっしゃって、まさに海外にどんどん出ていって活躍されてる方々の語学サポートとかをしているので、我々自身もチャレンジをもっとしていかなきゃいけないと思っているんですね。私も留学経験はありますけど、海外ビジネスはやっていないので、出張ベースとかそういうのでは多少ありますけど、海外とか、もう国をまたいでビジネスチャレンジはしたいっていうのは、すごく思いがありますし。
アルクとしてもそうなんです。国内だけではなくて、自分たち自身が海外でもやっていけるんだっていうのをやっていかないと。一緒に、クライアント企業の方々だったりとか、学習者の方々と一緒に我々もチャレンジしていくみたいなところが、すごくやりたいですし、やるべきだと。
面白いっていうプラットフォーム。これ、大変言い方が失礼かもしれません。面白い題材でもありますよね。これをグローバルビジネスにしていくにはって言った時の、一つのお題目としては、さてこれをどうグローバルにして、つまり外貨を稼ぐっていうことを、このアルクというプラットフォームでどうすれば外貨を得られるかっていう問答って、すごいチャレンジングで面白いですよね。
そうですね。もうすでに、二つ分かりやすいので申し上げると、一個はアルクって英語だけじゃなく日本語とかもやっています。まさに海外の方、日本に入ってくる海外の方が今増えてるので、日本語の事業は国内でももうすでにすごく成長してるんですね。我々、日本語に関しては我々がネイティブなので。
そうだ。
我々が外に出ていくっていうのは、一つすごく可能性が大きいと思っていますし、当然英語だったり他の言語だって各地で皆さん学ばれているので、我々のサービスを日本人だけじゃなくて他の方々にも使っていただけるような、グローバルなサービスにしていくっていうのは、すごくやるべきだと思ってます。
あともう一つ、これは単純に数値上のお話ですけど、数字上でいくと、日本は少子高齢化ですけど、世界の他の国々は人口が増えていて、さらに経済力も上がって。今まで教育を受けられなかったような子供たちが世の中にはいると思うんですけど、そういう子供たちがどんどん教育を受けられるような経済水準になってくるので、爆発的に教育を必要とする世代は、今逆にグローバルでは増えてるんですよね。国によりますけど。
っていうことを考えると、市場としては日本国内にいるとシュリンク市場のように見えちゃいますけど、グローバル市場は大きいので、可能性は逆に日本にこだわらなければ、もちろん競合も多くなっちゃいますけど、可能性としてはあるんじゃないかと。
本当にブレストレベルで、たかが私のレベルで聞いていただきたいんですけど、これだけグローバルに事業をしている、あるいはしようとしている、したことのある、グローバルに足掛かりを持ってる企業群っていうのが後ろに抱えてらっしゃるじゃないですか。彼らのグローバルビジネスサポートっていうことを、アルクさんがハブになってできるっていうのもすごく面白いな。
なぜかと言うと、BtoCに見えがちですけど、このCって誰か、英語を学びたいと思うCの人たちの主なモチベーションって、Bの動きだったりするわけじゃないですか。Bがより活性化すれば、グローバル事業が活性化すれば、Cのエンジンがかかるっていうふうに考えると、アルクさんって多分そのハブになれているとすれば、アルク自体がグローバルビジネスを支援するということも。
さながらネットワーク同士でハブになってあげれば、グローバル事業支援を。そうすると、そこには必ず言語の教育市場が生まれ、いろんな市場が生まれていくんだろうなって、なんとなくちょっと思ってお話を。すいません、生意気なこと申し上げました。
いえいえ。すごく夢物語ですけど、でも面白そうですね。チャレンジする価値はすごくあるな。
本当にぜひ、グローバルなアルク、まずアルク2.0っていうのを、ぜひ天野さんの世代で足掛かりを作っていただけると、楽しみにしております。本日のゲスト、株式会社アルク取締役、天野智之さんでした。本当にありがとうございました。
ありがとうございました。
Make it next. Make next. Make next.
記事公開 · 更新
