「着たい服がなかった」からゴルフ場の景色を変える:内柴有美子がHERG1を立ち上げた理由
MAKE IT NEXTゴルフウェアブランド「HERG1(エルグワン)」の代表取締役兼デザイナーである内柴有美子が、ナビゲーターのSean Kawakamiと対談した。内柴は20歳でミラノへ渡り、現地で9年間過ごしたメンズデザイナーである。対談の中心にある問いは、デザイナーが自由度の高いファッションではなく、なぜ機能性が求められるゴルフウェアを選んだのかということだ。内柴の答えは、ゴルフ場で見かける男性たちの服装に対する違和感と、「制限があるから面白い」という考え方に根ざしていた。
社名「YUUUUU」に込めた「結う」
内柴が経営する会社の名前は「株式会社YUUUUU(ユーウ)」で、Yの後にUが続く。冒頭でナビゲーターがその意味を尋ねると、内柴は日本語の「結う」、つまり結ぶという意味だと説明した。デザイナーとして、ものや言葉を通じて人との繋がりを結びたいという思いを込めており、自分の名前である「ゆみこ」「うちしば」の音も少し入っているという。
ナビゲーターが「Uがまだ5つあるから足りないのでは」と冗談めかすと、内柴は「もの」と「こと」を結うという意味もあると補足した。ナビゲーターは、本当は「結う」対象がもっとたくさんあってもいいということだと受け取っている。内柴によると、名刺交換の際には「裏を見てください」と伝えるのが会話のきっかけになっているそうだ。
20歳で単身ミラノへ、語学は「苦しい思い」から
内柴は20歳でイタリアに渡り、国立ミラノ美術大学の大学院デザイン科を卒業した。その後はイタリアのブランド数社でメンズのデザイナーを務め、ミラノで9年間を過ごしている。
ナビゲーターが最初からの計画だったのかと尋ねると、内柴はそうではなかったと答えた。ファッションを学ぶにしても、ビジネスの側ではなく作る側に行きたいと考えていた。ヨーロッパならイタリアのミラノかロンドンが候補になるが、当時はイタリアのブランドがとても好きだったのでミラノを選んだ。ファッションの専門学校と美術学校のどちらで学ぶかも検討し、じっくり長く学べる美術大学を選んだという。進学先は街の中心にあるブレラ美術館に併設された美術大学で、ナビゲーターは歴史的な街並みの中にある荘厳な建物だと応じている。
二人はミラノの話でも盛り上がった。ナビゲーターは仕事でミラノを訪れることがあり、世界中のデザイナーが集まって作品を見せ合うミラノサローネの時期は、街全体が幕張メッセのようなお祭り騒ぎになると語った。内柴によると、こうしたイベントは1週間ほど続く。
渡航当時、内柴はイタリア語ができなかった。大学の受験にはイタリア語が必要だったため、まずはミラノの語学学校に通った。受験までの期間は3か月から半年ほどだったという。内柴は語学について、「生きていくためには、苦しい思いをしないと学べない」と考えていたと話す。トマトを「ポモドーロ」と言うことも知らず、英語で言えば「Apple」から始めるような状態だったが、学生時代には通訳のアルバイトをするまでになっていた。
帰国後、雇ってもらえずフリーランスに
内柴は2015年に帰国し、東京を拠点に活動を始めた。天然繊維と合成繊維の素材開発を強みとして、高品質なアウター、メンズのセットアップ、百貨店のプライベートブランド、企業ユニフォームの企画やブランディングを手がけている。
ナビゲーターが当時は企業に勤めていたのかと尋ねると、内柴はフリーランスとして、さまざまな会社が立ち上げたいブランドのデザイナーを務めていたと答えた。日本に帰国した人の多くは、まずどこかの会社に入るのではないかという問いに対しては、「雇ってくれないです」と答えている。海外生活が長い人は当時、敬遠されたというのだ。ナビゲーターは、日本企業には今も同化や均質を重んじる傾向があり、新しい存在や良い意味での異端を扱いにくいと感じるのではないかと述べた。
ただ、内柴はフリーランスになった結果を前向きに捉えている。複数の企業と契約したことで、さまざまなジャンルの仕事ができた。合成繊維だけでなく、コットンやリネンなどの天然繊維も扱えたことがとても勉強になったという。ナビゲーターが、一つの企業で決められた仕事をするよりかえって良かったのではないかと問うと、内柴もそう思うと同意した。
評価された理由は「日本人であることの本質」
ナビゲーターは内柴の受賞歴も紹介した。2012年にイタリアファッション協会主催のコンテストでファイナリストとなり、2017年には百貨店バイヤーズのメンズ部門で新人賞を受賞している。さらに2018年から2020年にかけては、フィレンツェの国際展示会ピッティ・ウオモに選出された。ナビゲーターが「日本人でこういう方がいるんですね」と言うと、内柴は「たくさんいると思います」と返している。
ナビゲーターは、番組を見ている挑戦者へのヒントとして、何が評価されたのかを振り返ってほしいと求めた。内柴の答えは、自分が日本人であることの本質と、ものを作るときのコンセプトの本質に焦点を当てられたからではないか、というものだった。
ナビゲーターはさらに踏み込んだ。海外では現地のスタイルや文化に合わせることを求められる一方、日本人としてのアイデンティティを保とうとする気持ちもある。ただ、デザインで日本らしさを強く出しすぎると、エキゾチックになりすぎてしまう。このバランスをどう取ったのかという問いである。
内柴は、当時の教授から教わったことだと答えた。教授は「同じじゃないから、同じにしなくていい」と言ったという。同学年でファッションを学ぶ日本人は内柴一人だけで、それは差別化できる強みなのだから生かしなさい、というのが教授の助言だった。
「言われてみればわかる」をつくる
ナビゲーターは、料理やデザインの世界では着物の生地を持ってきたり帯を巻いたりすればよいという話ではないと指摘した。現地の市場に受け入れられるよう配慮しながら違いを出す必要があり、この姿勢はデザインに限らずさまざまな業界で求められているのではないか、と問題提起している。
内柴は当時の具体的な方法を説明した。シルクなどイタリアが得意とする素材を使いながら、日本のアイデンティティを表現する。たとえば日本建築の曲線や直線をデザインに落とし込むといったやり方である。これはコンセプトの部分なので、外見にはっきり現れていなくてもよい。内柴は、「言われてみればわかる」という状態をつくることがとても大事で、意味のあるものにしなければならなかったと語った。
ナビゲーターはこれを、絶妙な和魂洋才が求められる領域だと表現した。和の要素が目立ちすぎると際物になってしまう。市場で売れるためにはリアルクローズでなければならない、という見方である。
「何を解決したいのか」というプレゼン
内柴によると、コンテストではコンセプトをプレゼンする機会がある。審査員の前で、まずなぜこれを作ったのかを納得させなければならない。完成品が良いのはもちろんだが、何を解決したくてこのプロダクトに至ったのか、そしてブランドとして何をしたいのかを説明するという。
ナビゲーターはこの「何を解決したいのか」という部分に注目した。業務管理システムやソフトウェアなら理解しやすいが、デザインの世界でこの問いに答えるのは難しく、レベルの高い問いだと感じたという。ナビゲーター自身はコンサルタントの立場から、デザイン会社にも「どんな社会的問題をこのデザインで解決しているか」と問いかけることがある。ただ、それは投げかける側にも勇気がいる質問だと述べている。
ゴルフ場で見た「スーツならかっこいいのに」
では、HERG1は何を解決しようとしているのか。内柴はゴルフ場での体験を語った。普段スーツを着ているときはかっこいい年配の男性が、ゴルフ場では「らしさ」が出ていないと感じることが多かったという。
ナビゲーターが「言葉を選ばずに言えば、かっこ悪いということですか」と確認すると、内柴は笑いながら具体例を挙げた。派手な花柄、クラシックで古めかしい雰囲気、よれたポロシャツなどである。内柴はその理由を、選び方が分からないか、あるいは興味がないのだろうと推測している。
そのうえで内柴は、「そういう男性たちがたくさんおしゃれになれば、ゴルフ場の景色も変わると思う」と述べた。景色が変われば、若い人や女性も抵抗感なくゴルフ場に来られるようになり、ゴルフ人口が増え、ファッションももっと楽しめるようになる。これが内柴の描く流れである。ナビゲーターが「問題解決の鍵はおじさんたちにあったということか」と尋ねると、内柴はその層の人口が多いからだと答えた。
なぜゴルフウェアだったのか
HERG1は2020年に立ち上げられた。ゴルフを選んだ理由の一つは、内柴自身が帰国後にゴルフにはまったことである。一度ラウンドに出て、楽しさと悔しさを味わい、それから練習に通うようになった。今も仕事の合間に練習やレッスンに行っているという。腕前を聞かれると、「まあまあ。うまいかどうかは別」と笑って答えている。
もう一つの理由はファッションへの思いだ。服はその日の気分を上げてくれるものなので、着るものは大事だと内柴は考えている。仕事柄ゴルフウェアもたくさんリサーチしたが、着たい服が見つからなかった。そこで思い当たったのが、自分が手がけてきた合成繊維の素材開発である。撥水加工やナイロン、ポリエステルといった素材の知見はゴルフにぴったりだと考えた。
内柴はゴルフの特徴として二点を挙げた。まず、ゴルフはスポーツの中でも着替えが少ないため、おしゃれが楽しめる。次に、仕事をしている人が社交やビジネスとしてゴルフをすることが多く、メンズファッションとの親和性が高い。
「制限があるから面白い」
ナビゲーターは、デザイナーとしての葛藤についても尋ねた。デザイナーにとって理想なのは、自分のやりたいデザインを自由に作り、それが市場に受け入れられることではないか。アートとデザインは同じではないが、アートに近い自己表現が受け入れられれば嬉しいはずだ。一方、ゴルフのようなスポーツでは機能性が求められ、機能を突き詰めるほどデザインの領域は狭まる。ワンピースやフリル、フレアパンツを自由に作るほうがデザイナーらしいのではないか。それなのになぜゴルフを選んだのか、という問いである。
内柴は、まさにそこが面白いと思ったと答えた。「制限があるから面白い」というのが内柴の考えだ。大きく分ければゴルフウェアはポロシャツとパンツしかない。その枠の中でどう表現するかが面白いのだという。
内柴は持参したウェアを紹介した。パンツ、ニットポロ、定番のスタンドカラーの鹿の子ポロシャツ、リゾートシリーズの開襟シャツ、ペーパーヤーンを使った普段着寄りのポロシャツなどである。開襟シャツもゴルフウェアとして提案しているという。内柴は、ポロシャツだけでもこれだけのバリエーションが作れるうえ、メンズとレディースの両方を手がけているので、「まだアイデアには困っていない」と語った。
違いは「素材と配色」、そしてオフィスにも着ていけること
ナビゲーターは、最近はおしゃれなゴルフウェアも増えていると指摘し、競合との違いを一点だけ挙げるなら何かと尋ねた。内柴は最初に「素材と配色」と答え、そのうえで改めて一点に絞るなら「オフィスにも着ていけること」だと言い直した。オフィスで仕事をして、そのままゴルフに行ける服をイメージしているという。
その背景には、コストと価値に対する考え方がある。機能性を持たせると素材が高くなり、1枚あたりのコストがかなりかかる。だからこそ、ゴルフでしか着られないのはもったいないと内柴は考えた。街やオフィスでも着られ、出張にも着ていける服であれば価値が高まる。ケアが楽ですぐ乾き、動きやすいことも利点に挙げている。さまざまなシーンで着られれば、服の価値は2倍、3倍になると内柴は話した。
ナビゲーターは、これがHERG1の掲げる「ボーダレス・タイムレス」だと確認した。汗をかいたら洗濯かごに入れるだけの服ではなく、そのまま街にも出られる。ジャケットを羽織ればオフィスにいても違和感がない。グリーンでも会議室でも着られる服だという整理に、内柴も同意した。
「デザインも全部数字ですよ」
対談の最後に、内柴はあるエピソードを紹介した。デザイナーには数字が苦手な人が多いと思うが、内柴は銀行の担当者から「何を言っているんですか、デザインも全部数字ですよ」と言われたことがあるという。
ナビゲーターが、クリエイターもデザイナーもミュージシャンも数字に強いほうがよいのではないかと問うと、内柴は「絶対そうだと思います」と答えた。前編はここで終わり、ブランド経営と数字の話は次回以降に持ち越された。
明日を作るビジネスアスリートへ送る時代の羅針盤。MAKE IT NEXT COMPASS。ナビゲーターのショーンです。
地図なき時代を生き抜くための思考法。MAKE IT NEXT COMPASS。ナビゲーター、ショーンです。さて、今回は、ライフスタイルとコミュニティを届けるをテーマに起業をされ、アパレル業界にイノベーションの未来を切り開く、ゴルフウェアブランドHERG1代表取締役兼デザイナー、株式会社YUUUUUの内柴さんをお迎えしております。初めまして。
初めまして。よろしくお願いします。
株式会社YUUUUUは、Yの後にUがこれ何個並んでるんですかね? これ、何か意味があるんですか? ユーウってことですよね。
はい。「結う」って、結ぶの「結う」です。日本語の「結う」ですね。私、もともとデザイナーなので、物だったり言葉だったりを通して、人とのつながりを結う、結ぶっていう意味と、有美子、内柴もちょっと入ってますね。
でも足りないですね。Uがまだ5つありますからね。
物とこと。
なるほど。物を結うと。だからもっと本当は、このUがたくさんあっていいようですね。
はい、そうです。そういう意味の「結う」。
これ、もうすでに名刺交換した時に、まずここで会話。
「裏見てください」って言います。
ですよね。ライフスタイルとコミュニティを届けるということをテーマに起業っていうふうにご紹介差し上げましたけども、まず内柴さんのプロフィールを伺いながら、その辺りの経緯を伺っていきたいんですけども。まず20歳からイタリアに渡られて、国立ミラノ美術大学、大学院デザイン科を卒業されます。イタリアのブランド数社でメンズのデザイナーを務めて、9年間ミラノで過ごされました。これは、もともとこういう計画で学校に行かれたんですか?
いや、こういう計画ではなかったんですが、ファッションを勉強したいなと思い、ビジネスの方じゃなくて作る方に行きたいと思って。ヨーロッパでしたらイタリア、ミラノかロンドンになるんですけど、その当時、私はイタリアのブランドがすごい好きだったので、それでミラノに行きたい。じゃあ、ファッション専門学校で勉強するのか、それとも美術学校で勉強するのかっていうところで、美術大学の方を選んで、じっくり長く学びたいというところで。ブレラ美術館ってご存じですか? ミラノの。
結構大きいですよね、ブレラ美術館。
そうです。街の本当にど真ん中にある、あそこの美術大学なんですよ。
そうですか。もう本当に美しい歴史的な街並みの中に、本当に荘厳な建物でね。あんなところに行けるって。そうなんですね。私もミラノは、本当にミラノ、ローマ大好きで、この前もパレルモ、ミラノ、ローマが好きなのにパレルモ行くっていうのもあるんですけども。ちょっとローマ、チビタから船に乗ってパレルモに行ったりしたんですけども、本当にミラノは、お仕事の関係でもファッションウィークですとか、デザインウィークって言うんですかね。街中が。
ミラノサローネ。
ミラノサローネ。そうですね、家具とかね。本当に世界中からデザイナーが集まって、腕を競い合う、作品を見せ合う。街中がお祭り騒ぎですよね。街中が幕張メッセみたいな感じですね。
はい。もう楽しい。
1週間でしたっけ? 1週間ぐらいですよね。
はい、続きますね。
当時、じゃあもうミラノにいらっしゃって。
はい。学生の時は通訳でバイトしてました。
そうですか。イタリア語はもともとおできになったんですか?
いや、できなくて。でも受験するのにイタリア語が必要だということで、とにかく行ってみようと思って。
すごいですね。
当時、ミラノの語学学校にまずは行って、3か月。受験まで3か月、半年ありました。とにかく語学は勉強しようと思ってですね。やっぱり生きていくためには、苦しい思いをしないと語学は学ばない、学べないと思ってですね。行ったら、もう本当にトマトをポモドーロっていうのも知らなくて。
本当ですか?
はい。英語で言うAppleから勉強したぐらいの感じで。
すごいですね。でもそこから、やっぱり突き動かしていくというか、言葉の壁を乗り越えて、ご自身がやりたいというミッションを達成していかれて、ファッションデザイン科を卒業されて。これ、最初はイタリアのブランドで、アパレルのデザイナーを務められてますよね。そこで今度は、学校、実践での場で、企業で、イタリアで、これミラノですよね。企業で働かれて、2015年に帰国される。
はい。
東京拠点に、天然繊維、合成繊維の素材開発を強みにして、高品質アウター、そしてメンズセットアップ、百貨店のプライベートブランド、企業ユニフォームの企画、ブランディングを手がけられたってことですけども、この時はまだ企業に勤められてる?
フリーランスで、いろんな会社さんがやりたいブランドのデザイナーとして。
どこか会社に入るっていう、日本に帰ってこられて、大抵の方はおそらくどこかにまず一旦身を置こうかっていう。
雇ってくれないです。やっぱり海外が長い人って嫌がられてたんですよ、その当時。
ちょっと分かる気がしますね。
何か、生意気だからみたいなことなんですかね。
そうですか。これ、日本文化、本当にいまだにあるかもしれないですね。新しい、あるいはいい意味での異端ですけど、どうしても日本企業って、いまだに同化、均一っていう方に重きを。
ちょっと難しいと思われて。
でも、ある種デザインをやるフリーランサーとして、じゃあ複数の企業と契約をされて、結果そっちの方が良かったんじゃないですか?
はい、そうなんですよ。
ですよね。
やっぱりジャンルもいろいろできますし、それこそこの合成繊維っていうのと天然繊維、コットンとかリネンとかの、いろんなことができるので、すごい勉強になりました。
逆に、複数の企業から、様々なプロジェクトに、多様性のあるプロジェクトに関わることができるので、一つの企業でこれをやれって言われるよりも、かえって良かったと。
はい、そう思います。
それで、2012年、ちょっと3年ぐらい戻るんですが、2012年、イタリアファッション協会主催コンテストのファイナリストになられて、2017年、百貨店バイヤーズメンズ部門新人賞。2018年から2020年まで、フィレンツェの国際見本市、ピッティ・ウオモに選出されてらっしゃる。これ、輝かしい受賞歴ですね。日本人でこんな方いるんですね、やっぱりこういう方。
いや、たくさんいると思います。
そうですか。でも、こういうふうに内柴さんをご紹介すると、また天才の方をご紹介してる番組だなっていうふうに思われるのも、これはしょうがないんですけども。一方で、ここに出ていただく方のある種のミッションとして、やっぱりそういうことを目指してる方がたくさんいる中で、少しいろんなヒントをいただきたいんですけど。ご自身で振り返って、海外のコンテストや見本市で評価を受けたっていうのは、どんな点が評価を受けて、このような受賞歴になったんだなって、振り返ってどうですか?
自分が日本人であることの本質とか、あと物を作る時のコンセプトも本質だと思うんですけど、そこにフォーカスしてできたからなのかなと思いますね。
なるほど。海外に行くってことは、ある種同化を迫られるじゃないですか。つまり、向こう側のスタイル、やり方や文化を含めて、向こうにある程度合わせてアジャストしていかなきゃいけない部分と、いや、私は日本人なんだから、ここはアイデンティティとして確たるものを持って、染まらないぞっていうところのせめぎ合いがあると思うんですよね。デザインの世界でも、あんまりこっちをやっちゃうと、エキゾチックすぎてしまってっていうのがあるじゃないですか。どうですか、そのせめぎ合い。向こう側にマーケティングして合わせていくっていうことと、自分が日本人としてっていう部分の。
それは多分、当時の教授に教えてもらったと思います。同じじゃないから同じにしなくていいよと。逆に、例えばファッションを学ぶ同じ学年の中でも、日本人って私1人しかいなかったんですけど、やっぱり差別化できる強みがあるんだから、それを生かしなさいっていうのは、その当時の教授が言ってました。
ですよね。でも、料理の世界でもデザインの世界でも、じゃあそれを着物の生地を持ってくればいいって話じゃないじゃないですか。帯を巻けばいいってことではない。ちゃんと当地のマーケットに受け入れてもらえるような配慮があり、そこで違いを出していくってことは。なぜ聞いてるのかって、これ、それがこれからすごくいろんな業界でも望まれてると思うんですよね。デザインのみならず。
そうですね。当時は、イタリアの素材、シルクとか、イタリアで有名な、得意とするものを使って、日本のアイデンティティっていうのをどう表すかというと、例えば日本の建築の曲線とか直線とか、そういうのをデザインに落とし込むみたいな。
なるほど。
やっぱり、そこってコンセプトの部分なので、それが外側に現れてなくてもいいんですけど、言われてみれば分かるっていう。その「言われてみれば」を作るのってすごい大事で、やっぱり意味のあるものにしなきゃいけなかったので。
非常に絶妙な和魂洋才を迫られる領域だと思うんですよ、デザインの世界って。あまりにも和が目立ってくると、これは何て言うんでしょうね、キワモノになっちゃうというか。ちゃんとマーケットが取れて売れていくっていうことになってくると。
リアルクローズじゃなきゃいけないので。
ですよね。やっぱりそこが、おそらく内柴さんのデザインというか、コンセプトというか、デザインの魂として伝わる部分があったんでしょう。これ、出される時って、今みたいにプレゼンをされる機会があるんですね。
そうです。はい。
このコンセプトは。
プレゼンです。
そうですか。じゃあ、今もうすでにHERG1のアパレルの一部を持ってきていただいてますけども、このようなものをデザインされて、ちゃんと審査員の前なりで。
なぜこれを作ったのかということを、やっぱりまずそこで納得させなきゃいけない。このアウトプットしたものがいいのはもちろんなんですけど、やっぱり、なぜこれを作ったのかと、何を解決したくてこのプロダクトに至ったかっていうこと。あと、ブランドとして何をしたいのかっていうのをプレゼンします。
今さらっとおっしゃいましたけど、何を解決したいのかって。例えば最近の業務管理システムとか、ソフトウェアの話であれば分かりますよ。デザインの世界で何を解決したいのかっていう問いに答えるって、すごく難しいというか、何て言うんでしょうね、高いレベルの問いだなと思って。それをされますか?
でも、日々思いませんか?
私は、コンサルっていう立場なので常にそれを言い続けるんですけど、そのデザインの会社さんとかに、何の問題を解決して、どんなソリューションを持ってますかというか、どんな社会的問題をこのデザインで解決してますかっていう質問っていうのは、すごく投げかける側も勇気がいる質問ですね。
やっぱり、それで作ったのがこれ。
だから、やっぱりそれがちゃんと伝わったってことなんでしょうね。
私、ゴルフ場で、「あれ、あの方、スーツを普段着てたらかっこいいのに、ゴルフ場だとちょっとらしさ出てないな」って思う男性のおじ様方が。
言葉を選ばずに言うとかっこ悪いってことね。
言っていいんですか? スーツ着てるとかっこいいんですよ。
かっこいい。
普段仕事してる時は。ゴルフだと「あれ?」って思うことが多くって。
それは、何が「あれ?」って思うことが多いんですか?
いきなり派手な花柄とかですね。何て言うんですかね、ちょっとクラシックっていうか、古めかしい感じとか。ちょっとよれっとしてるポロシャツとか。でもきっと選び方が分からないんだろうな、もしくは興味がないのかなと思ってですね。そういう男性たちがたくさんおしゃれになれば、ゴルフ場の景色も変わると思うんですよ。
なるほど。じゃあ問題解決っていうのは、ゴルフ場の景色を変えるってことですね。
はい。そしたら若い方とか女性の方ももっと増えると。抵抗感なくゴルフ場に来られると思います。
そうするとゴルフ人口が増えて。
増えて。
もっともっと。
もっとファッションも楽しめて。
楽しめてっていうことなんですね。問題解決はおじさんたちにあったってことですかね。
やっぱり人口多いですから。
そうですね。お父さんのみならずお兄さんも、今の内柴さんのお話を受けて、ちょっと自分のゴルフウェアを引っ張り出してみて、「あれのことかな」と思って、HERG1のウェブサイトをクリックしていただくということですかね。
ありがとうございます。
それで2020年にゴルフウェアブランドHERG1、エルグワンを立ち上げられましたと。これはゴルフウェアブランドですけども、なぜゴルフ?
一つは、私が帰国してからゴルフにはまったっていう。ゴルフっていうか、1回ラウンドに行って、楽しくて悔しくて、それで練習に通うようになるんですよ。結構、仕事の合間とかに、練習に行ったり、レッスンに行ったりするっていう。
じゃあ、結構お上手?
まあまあ、やってますというところで、うまいかどうかは別。
私も多分、一時期、やっぱりみんなやるんで、ビッグバーサ買わなきゃいけないのかなと思って揃えたりしましたけども、この10年ちょっとやってないんですけども。やっぱりゴルフのマーケットは依然大きいし、はまる人ははまりますし、その1人だったってことですね。
はい。
そのご自身の、これ趣味ですよね、ゴルフは。
はい、趣味です。
それではまっていきました。そして。
やっぱりファッションが好きなので、着るものって大事じゃないですか? やっぱり服って、その日の気分を上げてくれるので。仕事柄、たくさんリサーチします。でも、なかったんですよ。着たい服がなくて、見つからなくて。そこからふと思ったんですけど、この合成繊維って呼ばれる、撥水したりとか、ナイロンとかポリエステルの素材の開発もやってたので、こういうことってまさにゴルフにぴったりで。しかもゴルフって、唯一、スポーツであまり着替えが少ない。
確かに。
なので、おしゃれが可能。かつ、仕事をしてる人が社交としてゴルフをやったり、ビジネスとしてやったりっていうユーザーなので、メンズのファッションの方と親和性が高いなと思って。
なるほど。これ、ちょっと質問なんですけれど、デザイナーじゃないですか。デザイナーが、デザイナーとして最もありたいっていうのは、自分がやりたいデザインを自由に作って、それがマーケットに受け入れられたらば、それが一番良いというか。自己表現としての、アートイコールデザインにはならないんですけど、限りなくアートに近い自己表現として寄っていったものが受け入れられたら嬉しいじゃないですか。
はい。
スポーツだとかのもの、特にゴルフとかっていうのは機能性って求められるじゃないですか。機能とデザインっていうのは、お互いにせめぎ合うところがあるじゃないですか。つまり、機能性を求めていくと、デザインの領域って多分狭められていって、機能性、機能性って言われていくと、究極には本当にハードなスポーツウェアになってるわけじゃないですか。デザイナーとしては、もっとそういう機能性とか置いといて、もっと自由な世界でワンピースを作ったり、フリルが付いてるあれを作ったり、フレアなパンツを作ってって、こうやりたいのがデザイナーなんじゃないかなと思うんですけど。一方で、機能性のある分野に行くってことは、ちょっと自分のデザインというか柔軟性を狭めると思ったんじゃないんですかと思うんです。なぜゴルフに行ったんですか?
とはいえ、そこが面白いところだと思ったんですよね。制限があるから面白いと思って。
それを聞きたかったですよね。だから、制限があるから面白いって言うのかなと思って。
はい、そうです。だってポロシャツとパンツですよ、大きく言うと。この中で。
そうなんですよ。今、お持ちいただいてるものって、ちょっとご説明していただいていいですか? これ今、パンツと、ちょっとポロシャツがあるんですけど。
パンツとニットポロと、うちの定番のスタンドカラーのポロシャツですね。鹿の子ポロ。あとはリゾートシリーズの、こういう開襟シャツだったりとか。
これもゴルフウェア?
はい、ゴルフウェアとして提案してます。こういう、ちょっとペーパーヤーンを使った、もう普段着寄りのポロシャツ。
いいですね。
こういう感じです。
いいですね。
とかも、ポロシャツでもここまでいろいろバリエーションが作れると思ってですね。プラス、レディスもやってますから、メンズとレディスでも本当にたくさん作れるので、まだアイデアには困ってないです。
そうですか。
はい。
せっかくなんで、もうちょっとこの辺り聞きますけど、最近やっぱりゴルフウェアもだいぶおしゃれになってきてるものも出てきてますよね。ウノピとかね、出てきちゃうんです、男性も女性も。どうですか? コンペティターとかがあると思うんですけども、うちはここが一番違うっていう、一点言うならば。
一点言うなら、素材と配色ですかね。
素材。
一点言うなら、オフィスにも着ていける。
じゃあ、そのままオフィスで仕事して、ゴルフ行けちゃう感じですね。
そうです。そういうイメージで。
そっか。
やっぱり、こういう機能性を持たせると素材も高くなりますし、1枚に対するコストがすごいかかるんですけど、やっぱりゴルフだけで着るのってもったいないなと思ったんですね。だったら、街でも着られたり、オフィスでも着られたり、あとは出張に着ていける。つまりケアが楽なので、すぐ乾くとか、動きやすいとか。なので、いろんなシーンで着られたら、この服の価値が2倍、3倍になるなと思ったんですよ。
なるほどね。これが御社が言ってる、ボーダレス、タイムレスっていうことですよね。
そうです。
本当は内柴さんに言ってほしかったですけどね。確かに、ある目的だけに着るものじゃなくて、汗かいたからポンと洗濯かごに入れて家に持って帰るんではなくて、そのまま街にも着ていけるし、これだったらちょっとジャケット。
そうですよ。そうです。
ジャケット着たら、オフィスで着ててもおかしくない。
はい、そうです。
ですよね。だから、そういう領域。
ボーダレス。
ボーダレスね。それとタイムですね。どこにいても、グリーンにいても会議室でもいいってことですね。
そうです。
いいですね。
デザイナーさんって、数字が不得意な方が多いと思うんですけど、銀行さんに言われたんですよ。
言われた?
「何言ってるんですか? デザインも全部数字ですよ」って、私におっしゃったんですよ。
すごいですね。クリエイターもデザイナーもミュージシャンも、数字に強くあった方が良くないですか?
絶対そうだと思います。はい。
NEXT。
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