脂肪肝はお酒と肥満だけの病気ではない:腸内細菌と果糖・砂糖という見落とされやすい原因

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概要

脂肪肝といえば、お酒をよく飲む人や太っている人の病気だと思われがちだ。腸内細菌の研究をしている下川先生は、この動画でそのイメージ自体が危ないと話す。飲酒も肥満もない人に脂肪肝が増えており、その背景には腸内でアルコールをつくる菌や、果糖・砂糖の摂りすぎがあるという。聞き手の三浦氏との対話から、脂肪肝の定義、見落とされやすい原因、対策の順に内容を整理する。

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血液検査だけでは脂肪肝かどうかは分からない

下川先生はまず、健康診断の受け方を問題にする。コレステロールは血液検査ですぐ分かり、肝臓の数値も血液で測れる。しかし肝臓に実際に脂肪が溜まっているかどうかは腹部エコーで確かめる必要があり、多くの健診ではこれがオプション扱いになっている。

そのうえで下川先生は、脂肪肝が今かなり増えていると強調する。男性ではおよそ3割が該当すると言われているという。健診で腹部エコーを受けておらず、肝臓の数値が少し高めと言われた人には、次の健診で腹部エコーを追加するよう強く勧めている。「肝臓の数値がちょっと高いですね」と言われた段階で、面倒がらずに精密検査を受けてほしいという立場だ。

血液検査ではγ-GTPなど肝臓に関わる数値が「C判定」「D判定」のように評価される。一方、エコーで肝臓のおよそ5%以上に脂肪がついている状態を脂肪肝と呼ぶ、と下川先生は説明する。

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脂肪肝の先にあるもの:線維化と肝硬変

下川先生によれば、脂肪肝はそれだけならまだ入り口の段階にすぎない。肝臓に占める脂肪の割合が増えると線維化が進み、最終的には肝硬変になる。肝硬変の「硬」の字が示すとおり、肝臓がどんどん硬くなっていく状態だ。

下川先生は、肝臓は全身の臓器に影響しているため、肝臓自体の病気だけでなく他の部位のがんなどにも影響すると話す。肝硬変で亡くなるというより、脂肪肝は「生活習慣が危ない」ことの証明であり、結果的に他の病気で亡くなるケースが非常に多いという。そのため「太っているから脂肪肝と言われちゃった」程度の受け止め方ではいけない、というのが下川先生の主張だ。

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名称が「MASLD」に変わった理由

脂肪肝の呼び名はここ数年で大きく変わった。以前は「NASH」「NAFLD」など「非アルコール性」を冠した名称が使われていたが、現在は「MASH」「MASLD」になっている。

下川先生の説明では、「脂肪肝」という病名には大酒飲みか肥満の人というイメージがつきまとい、アメリカでは差別的だと受け取られる面もあったことが名称変更の一因だという。新しい名称MASLDは「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」を意味する。下川先生は、名前そのものを覚える必要はないとしたうえで、この名前は代謝機能、つまり血糖値なども含めて複合的に障害が起きている状態を示していると説明する。従来のイメージに当てはまらない人に脂肪肝が増えていることも、名称が変わった背景にあると下川先生は見ている。

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原因1:腸内でアルコールをつくる菌

本来は、外から摂ったアルコールを分解する際に肝臓へ負担がかかる。しかし下川先生によれば、お酒を飲まなくても、腸内細菌がアルコール(エタノール)をつくり出しているケースがあることが分かっている。

下川先生が手がける腸内フローラ検査(KINS PRIME)は、受検者が3,000人近くになるという。中心は40代前後で、30代や50代も含まれる。そのデータでは、およそ15%の人がこのタイプの菌を持っていたと下川先生は話す。この菌がお腹の中でエタノールを出すため、飲酒していなくても肝臓の血管内のアルコール濃度が非常に高くなってしまうという。

下川先生は、これを裏づける研究も紹介した。脂肪肝の人から、腸内でアルコールを出す菌をラットに移植すると、健康だったラットが脂肪肝になる。さらに、その脂肪肝ラットの腸内細菌を健康なラットに移植しても脂肪肝になる。ところが、移植するときにその菌だけを殺しておくと、脂肪肝にならなかったという。

この菌の名前はクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)である。下川先生によれば、同社の腸内フローラ検査では、新しい結果表示から悪玉菌としてこの菌を表示するようになった。検査を受けた人は、この菌がいるかどうかを確認してほしいと話している。

三浦氏が「お酒を飲む人ほど体内でこの菌が増えるのか」と尋ねると、下川先生は、飲酒によってこの菌がいるわけではなさそうだと答えた。100人中15人なので非常に多いわけではないが、その人の腸内環境にこういう菌がいるかどうかの問題だという。お酒を飲まない人でもこの菌がエタノールを出し、脂肪肝になりうる。三浦氏は「せっかく飲めないのにもったいない」と反応している。

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原因2:果糖と砂糖

もう一つの見落とされやすい原因として、下川先生は果糖と砂糖を挙げる。脂肪肝というと飲酒や高脂質の食事が思い浮かぶため、糖とは結びつけにくい。しかしそのイメージのずれこそが危ない、と下川先生は話す。

例として挙げたのは、毎日の野菜ジュースや乳酸菌飲料だ。これらには果糖ぶどう糖液糖が入っていることがある。下川先生は最近、知人の妻の話を聞いたという。その人は痩せ型でお酒もほとんど飲まないのに脂肪肝になっていた。尋ねてみると野菜ジュースをよく飲んでいた。下川先生は「それが原因かは分からない」と断ったうえで、お酒を飲まない代わりに砂糖や果糖入りの飲み物を飲んでいたことに注目している。

「毎朝野菜ジュース、乳酸菌飲料」という習慣は、言葉だけ見ると健康的に思える。そこに「甘いものが時々食べたくなる」という嗜好が加われば、太っていなくても脂肪肝になる人はいる、と下川先生は言う。体重が170cm・70kgくらいの、痩せてはいないが普通の体格の人でも脂肪肝は珍しくないという。

下川先生は、糖のなかでもブドウ糖ではなく果糖と砂糖の2つが最も影響しやすいと話す。糖質を全部カットせよということではなく、この2つを日頃どれくらい摂っているかを把握してほしいという立場だ。健康のためにプラスと思って続けていることがマイナスになっているのが一番ばかばかしい、とも述べている。

脂肪肝の増加が肥満の増加に比例しているなら話は分かりやすい。しかし実際には、肥満と比べても脂肪肝の増え方が大きいと下川先生は感じている。その理由として、痩せている人でも果糖や砂糖を口にする機会が非常に多いこと、そして腸内に「酒をつくる」菌がいて腸内環境が悪化していることを挙げ、「なっているのではないか」という推測として語っている。

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フルーツは問題ないのか

果糖の話をするとフルーツは駄目なのかと聞かれるが、下川先生はフルーツは問題なく、むしろヘルシーな側だと答える。キウイ、柑橘類、皮付きのりんご、ブルーベリーなどは積極的に食べてよいとした。ただし発言の一部は聞き取りにくく、どの果物を控えめにすべきかについては明確には語られていない。

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カロリーが同じでも果糖・砂糖で差が出る

三浦氏は、飲み物の影響はカロリーの違いによるものではないかと尋ねた。下川先生は、極端に高カロリーで肥満になるなら関係するとしたうえで、次の研究を紹介した。

A群とB群が毎日同じカロリー(例えば2,000kcal)を摂る。違いは、A群だけが果糖や砂糖入りの飲料を毎日飲むことだ。この条件で、果糖・砂糖入り飲料を飲む群は脂肪肝になりやすさが約2倍になったという。下川先生はここから、多少のカロリー差よりも、果糖・砂糖が入っているかどうかの影響が大きそうだと述べている。

飲む頻度についても数字を挙げた。糖入り飲料を週1回しか飲まない人でも脂肪肝のリスクは14%上がる。週2〜6杯では26%、毎日「健康のため」に飲んでいる人では53%上がるという。

一方で、脂肪肝の人に糖の摂取を減らしてもらうと、状態はきちんと戻るとも下川先生は話す。脂肪肝は治らないものではない。ただし線維化が進んで肝臓が硬くなると戻りにくくなる、という留保もつけている。

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痩せ型の脂肪肝のほうが危ない

三浦氏が自分のような体型の人は気をつけなければと話すと、下川先生は、実は痩せ型の脂肪肝の人のほうが危ないと応じた。脂肪肝ではBMIが高いほど悪いというわけではなく、痩せ型で脂肪肝になり、その後脂肪肝炎などへ進む人のほうが、死亡リスクが2.22倍高いというデータがあるという。もちろん肥満のほうがよいという意味ではない、と下川先生は付け加えた。

痩せ型の人が脂肪肝と言われて「太っていないのになぜ」と軽く受け流すのは危ない、というのが下川先生の警告だ。

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対策1:肥満がある場合は減量

肥満が原因の場合、減量の効果ははっきり出ると下川先生は言う。10%以上減量すると脂肪肝炎(MASH)が消える可能性が大きく上がり、線維化していた部分も一部改善するなど、数値が明確に変わるという。減らした分だけ肝臓は良くなりやすい、というのが下川先生の説明だ。

BMIが35あるような肝臓疾患のある人には、話題になっているマンジャロのような作動薬を使うことにも言及した。下川先生は「若い女の子がマンジャロを飲んでいる場合ではなく、こういう人が飲むべき薬だ」と述べる。体重が落ち、インスリン抵抗性が改善し、肝臓の数値も下がるなど良いことが多いという。

一方で痩せ型の人は、減量という分かりやすい手段が使えない。もともと痩せている人がさらに10%痩せれば別の問題が起きる。そのため、知らないうちに腸内の菌がアルコールを出していたり、果糖・砂糖を摂りすぎていたりして脂肪肝になっているパターンが一番よくない、と下川先生は話す。

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対策2:週150分の早歩き

食事に加えて、運動も重要だと下川先生は言う。目安は1週間に150分の早歩きだ。強さは少し息がはずみ、友人と笑顔で話せるかどうかくらいだという。三浦氏は当初「1日150分」と聞き違えて驚いたが、週単位で毎日歩くなら1日20分ちょっとになる。下川先生によれば、この程度でも改善が見られるというデータがある。

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対策3:コーヒーは「おまけ程度」

最後に挙げたのがコーヒーである。下川先生によれば、脂肪肝の発症にはそれほど影響しないが、悪化はわずかに防ぐらしい。毎日コーヒーを飲む人は、線維化する比率が35%ほど低いというデータがあるという。

ただし下川先生は、コーヒーを飲んでいるから大丈夫という考えは駄目だと念を押す。あくまで「おまけ程度」で、脂肪肝と言われた人のうち、コーヒーは好きだが飲む習慣がない人は飲んでもいいかもしれない、という位置づけだ。

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結び:イメージ外の人こそ危ない

下川先生は最後に要点をまとめた。脂肪肝は今増えており、飲酒や肥満、高脂肪食というイメージに当てはまる人だけでなく、当てはまらない人も危ない。全体のおよそ15%の人は、飲酒の有無にかかわらず、腸内でアルコールを出すクレブシエラ菌を持っている。果糖や砂糖の入った飲料を1日に何度も、あるいは毎日飲む習慣があれば脂肪肝のリスクは上がっていくため、特に習慣的に飲んでいるものの原材料表示を確認してほしいという。果糖ぶどう糖液糖は麺類などさまざまな食品に入っている、とも付け加えた。

対策としては、週150分の運動、気休め程度のコーヒー、そしてBMIが35を超えるような人にはマンジャロのような薬の活用を挙げた。また、アッカーマンシア菌も効くかもしれないという研究が最近進んでいるとも触れたが、これはまだ研究段階の話として紹介されている。健康診断の結果をどう受け止めればよいか迷っている人に向けて、動画は締めくくられた。