年金は「老後の積み立て」ではなく保険である:FP塚越菜々子さんに聞く、自分の年金と老後資金の調べ方

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概要

年金はいくらもらえるのか、そもそももらえるのか。払わずに自分で貯金したほうが賢いのではないか。ライフスタイルメディア「lumily」のYouTubeチャンネルで、MCの愛沢えみりさんがこうした疑問を投げかけた。ゲストは、保険や金融商品を売らないファイナンシャルプランナーの塚越菜々子さんである。塚越さんの立場ははっきりしている。年金は老後のための積み立てではなく、人生のリスクに備える保険だという。老後資金の不安は、自分の年金額と今の支出を具体的に把握すれば整理できる、とも話す。

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「お金の整理」で悩みが軽くなった経験

対談は愛沢さんの体験から始まった。愛沢さんには子どもが2人いて、3人目を迎えるかどうか迷っていた。3人目となると車も部屋も規格外になる。「3人目 悩む」と検索してたどり着いたのが、FPの目線で3人目のお金を解説した塚越さんの動画だった。感情論ではなく、こう考えるならこれくらいのお金が必要になる、こうなる可能性が高い、と合理的に説明されていて、悩みがかなり消えたという。不安のほとんどがお金のことだったと気づいた、と愛沢さんは振り返る。

塚越さんは、3人目の判断にはお金以外の要素もあると認める。そのうえで、お金の部分だけでも先に整理できれば悩みはすっきりしやすいと応じた。

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売らないFPとしての立場

塚越さんは学校を卒業後、税理士事務所で法人の経理を担当していた。結婚して子どもを産んだとき、お金のことを誰にも教わってこなかったと気づき、強い不安を覚えたという。その問題を自分で解決していく過程で、同じように悩む人の力になりたいと考え、FPとして独立した。保険や金融商品は販売せず、相談だけを受ける「独立系」と呼ばれる形で活動している。

相談者は、共働きで子どもがいる女性が圧倒的に多い。内容は子育てのお金、老後のお金、住宅などである。塚越さんによると、悩んでいるのに今の家計の現状がわかっていない人が実は多い。老後は今の延長線上にあるだけで、特別なものではない。だから今が見えていないと、老後はもっと見えなくなるという。友人とはなかなか話せない話題であり、知らないから聞けないということもある。相談するのはまったくおかしなことではない、と塚越さんは言う。

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年金は「3つの機能」を持つ総合保険

愛沢さん自身、年金は取られるから仕方なく払っているもので、正体はよくわかっていなかったと打ち明けた。塚越さんはここが最も大切な点だとして、年金は老後のためのものではなく、人生のリスクに備える総合保険だと説明した。正式にも「年金保険」なのだという。老後のための積み立てだと思っていると、払っている間は恩恵がなく、取られる一方に感じてばかばかしくなる。だからこの認識の違いが重要だ、というのが塚越さんの見方である。

塚越さんは年金を「3つの機能、2つのお財布」と整理する。3つの機能は次のとおりだ。

  • 老齢年金:老後に稼げなくなったり、思ったより長生きして蓄えが尽きたりするリスクへの備え
  • 障害年金:けがや病気、生まれつきの障害などで、自分の意思とは関係なく稼げなくなった場合への備え
  • 遺族年金:不慮の事故などで家計を支える人が亡くなり、子育てで思うように働けない遺族への、国の生命保険としての給付

塚越さんは、交通事故で道を歩いていただけなのに歩けなくなるといった例を挙げた。障害年金と遺族年金は年齢で受け取りが決まるのではなく、その状態に該当したときに受け取れる。若くして障害を負っても、若くして遺族になっても、条件に該当すれば一生受け取れると塚越さんは説明した。知らずに驚く人が多いという。

また、保険は大勢で集まるほど一人ひとりの負担が小さくなる。年金は日本に住む人が基本的に全員加入するため、少ない負担で手厚い保障を受けられる仕組みになっている、と塚越さんは話す。「もらえないなら払わない」と考えて未納のままけがや病気になると、1円も受け取れなくなる。保険として捉えることが大切なのはそのためだという。

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国民年金と厚生年金という「2つのお財布」

2つのお財布とは、国民年金と厚生年金のことだ。国民年金は基礎年金とも呼ばれる1階部分で、基本的に全員が加入する。保険料は収入にかかわらず一律である。厚生年金は2階部分にあたり、会社員や公務員のほか、一定時間働くパートの人も加入する。保険料は給料に応じて決まる。厚生年金に加入すると国民年金の分も自動的に払われる。そのため厚生年金加入者は2つのお財布を持つことになり、何かあったときに両方から受け取れる。

塚越さんによれば、パートでも例えば週20時間以上働いて雇われていれば加入できる。厚生年金の保険料は半分を会社が負担するので、自分が払う額より多いお金がお財布に入り、手厚い。一方、フリーランスや自営業の人は厚生年金に入れず、国民年金のお財布に自分で保険料を納めるだけになる。お財布が1つしかないなら、その分を自分で蓄える必要がある。

では会社員でいるべきなのか、と愛沢さんが尋ねると、塚越さんは否定した。年金の手厚さを重視するなら会社員がよいが、人生の選択として会社員が正しいわけではない。年金が少なくなっても、自分が実現したいことのために国民年金だけ払い、あとは自分で頑張るという選択もいい。大事なのは知ったうえで選ぶことで、知らずに手放すのは危ない、というのが塚越さんの考えだ。塚越さん自身もFPになるまでは何も期待せずに払っており、勉強して初めて驚いたのが年金だったという。

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ねんきん定期便で「年金との付き合い方」を確認する

老後の年金額は、それまで年金とどう付き合ってきたかで人によって変わる。その履歴を確認できるのが「ねんきん定期便」だ。毎年誕生月の前後にはがきで届き、国民年金と厚生年金のそれぞれに何か月払ってきたかが書いてある。国民年金だけの人は厚生年金の欄がゼロか、ごく少なくなる。昔会社員で今はフリーランスという人なら、会社員時代の分もきちんと記載されており、その分は老後に受け取れる。ところが見方がわからず、見ていない人が多いという。

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公的年金シミュレーターの実演

塚越さんによると、年金の額は自分で計算できる。ねんきん定期便にはQRコードが載っていて、読み込むと試算サイトに移動する。個人情報の入力もログインも不要で、スマホでその場で試せる。「公的年金シミュレーター」は、はがきの履歴からそれまでの加入状況を読み込み、今後の働き方や年収をスライダーで増減させると年金額を自動で表示する。

番組ではその場で操作した。自分の年齢を入れると過去の分の入力が必要になってわかりにくいため、今年20歳になる人として生年月日を2006年4月1日に設定した。20歳から60歳まで厚生年金に加入し、その間の平均年収を500万円とすると、65歳から年間約190万円を受け取れるという結果が出た。

受け取り開始は60歳から75歳の15年間で自由に選べる。働いていて年金がなくても暮らせるうちは受け取らなくてもいい、と塚越さんは言う。一方で、受け取らないまま亡くなるのはもったいないと考える人は、適当なところで受け取り始めてもいい。受け取りを遅らせると年金は増え、5年遅らせると1.42倍になる。増えた額はその後ずっと受け取れるので、長く働いて受け取りを遅らせる戦略が立てられる。

条件を変えた試算もいくつか示された。平均年収を990万円にすると、65歳からでも年278万円、月20数万円になる。年収500万円に戻して70歳まで働き、受け取りを75歳にすると年380万円、月30万円ほどになった。一方、厚生年金に加入していない国民年金のみの場合は、現在だと年85万円程度、月7万円ほどにとどまる。

その場合でも、受け取りを65歳から70歳にずらして増やしたり、NISAやiDeCoで自分で備えたりできる、と塚越さんは説明した。お財布が何個あるか、いつ受け取るかによって戦略は大きく変わる。年収を少し上げようか、60歳ではなく65歳まで働こうかと、具体的に考えられるようになる。

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「年金は破綻する」という不安への見方

愛沢さんは、国の状況次第でもらえなくなるのではとずっと思っていたと話した。塚越さんは、年金は法律で定められた公式で計算されており、もらえなくなることはないと答えた。少子高齢化は20年前からわかっていたことで、そうなっても破綻しないための機能を組み込んだ制度がその頃に完成し、今も運用されているという。

状況は変わるため、5年に1回、年金のお財布の「健康診断」が行われている。塚越さんによれば、2024年の健康診断の結果は、前回2019年より良くなっていた。少子化は確かに進んでいるが、それでもきちんと回っているという。

塚越さんはさらに、年金は経済の合わせ鏡だと述べた。年金が破綻するのは日本経済が破綻するときであり、年金だけを心配しても仕方がない。少子高齢化は重要な問題だが、経済がきちんとしていれば年金もきちんとする。年金だけを心配するのは違う、というのが塚越さんの答えだ。もらえないと思うと多く貯めなければならず、今使えるお金がなくなってしまう。政府を盲信する必要はないが、そこそこ疑いつつも「まあ大丈夫だろう」と思っているほうが暮らしやすい。政府を疑ってもお金が入ってくるわけではない、と塚越さんは個人的な考えとして語った。

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「老後2000万円問題」は一つのパターンにすぎない

話題は老後2000万円問題に移った。塚越さんの説明では、この数字の出どころは総務省の家計調査だ。65歳以上の夫婦が月にどれくらい使っているかという数字と、夫婦が平均的に受け取っている年金額を比べ、その不足額を20〜25年分積み上げると2000万円になる、という計算だった。平均的な不足額を平均的な年数積み上げた数字だという。

しかもモデルは、夫が厚生年金に加入し、妻はずっと専業主婦かそれに近い扶養内だった夫婦である。夫が会社員とは限らないし、妻が会社員の家庭も多い。20歳から60歳まで一度も社会保険に入らず専業主婦だった人は今は少なく、少なくとも結婚前は働いていることが多い。そのため、この数字に当てはまらないケースが実は多い、と塚越さんは指摘した。

さらに、家計にかかるお金は年によって違う。塚越さんによれば、同じ計算をその数年後に行うと「老後0万円問題」になり、不足しなかった。そんなはずはないのだから、それくらい意味のない数字であり、どこかの家の話でしかない。物価が上がっている分、かかるお金は少し増えているかもしれないとも付け加えた。

政府が2000万円という数字を出した意図について、塚越さんは「足りないから自分で何とかしろ」と言ったわけではなかったと見る。貯蓄だけでなく資産形成も自分で進めれば選択肢が増える、と伝えたかっただけのようだという。ところが数字がセンセーショナルに響き、「2000万円必要だからこの商品を買わなければ」と販売に使われるなど、誤った方向に広がった。それでも、多くの人が自分にいくら必要かを考えるきっかけになった意味はある、と塚越さんは評価した。

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年金は物価に合わせて増える

物価が上がったら年金だけでは足りなくなるのでは、という質問もよく受けるという。塚越さんの説明では、年金は物価が上がれば自動的に増える仕組みになっている。インフレが進んでも一定は年金も増えていくため、年金を払っている限り、インフレのせいで老後貧乏になることはない。愛沢さんは、ニュースでは年金が減ってつらいという話題が取り上げられがちで不安だったと話した。塚越さんは、実はここ数年、年金は毎年増えていると応じた。

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老後の生活費の目安

次に、総務省の家計調査から一般的な老後の支出が紹介された。65歳以上で無職の単身世帯は、月におよそ15万円かかっている。ただしこれには家賃がほとんど含まれていない。今の高齢者は持ち家率が高く、ローンも家賃もない人が多いからだ。家を買わない人は、15万円に家賃を上乗せして考える必要がある。都内ならワンルームでも10万円ほどするため、合計で25万円、広い部屋ならさらに必要になる。

一方で、この15万円には娯楽費や外食費も含まれている。これがなければ生きていけないという金額ではないので、自分にとって何が必須かを見ておくべきだと塚越さんは言う。電気代のようにあまり減らせないものもあるので、今いくらかかっているかが老後もおおむね続くと考えるとよい。

65歳以上の夫婦世帯は月25万6000円で、これも家賃は含まない。そのうち食費が月7万6000円である。愛沢さんは意外と多いと感じた。年を取ればあまり食べなくなると思いがちだが、料理が面倒になったり買い物に自由に行けなくなったりすると、買ってきたもので済ませることが増える。そのため食費は意外と減らない、と塚越さんは説明した。携帯電話や電気・ガス・水道も手放せない。

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自分の家計を「2つの山」で把握する

塚越さんは視聴者に、自分の家計にいくらかかっているかがパッと出てくるかと問いかけた。意外と言えないはずだという。今の自分が見えていなければ老後もわからない、とはそういう意味だ。逆に今の支出をはっきりさせれば、これは老後も続く、これは子どもが独立したらなくなる、と見分けられる。そうすれば老後に必要な生活費の規模も計算できる、と塚越さんは話す。

把握のしかたは細かくなくていい。引き落とされる固定費はなるべく丁寧に拾う。食費などは、絶対に必要なものと、外食費のようになくなっても仕方ないものの2つに分ければ十分である。塚越さんは「レシートは2山に分ければOK」と伝えているという。そのうえで、車検や固定資産税のように年1回払うものを拾い、ならして月平均を出す。

これをやると意外と金額は大きくなる。塚越さんの顧客には、派手な暮らしをしているわけではないのに、ならすと月38万円、年450万円ほどかかっていた夫婦がいる。ゆとりのある暮らしではあるが、それくらい必要になるケースもあるという。娯楽費、旅行、帰省、身の回りのメンテナンスに加え、老後に家にこもるわけにもいかないので交際費もかかる。子どもがいれば支出はさらに増える。

愛沢さんが、自分にとってはパンドラの箱かもしれず、開けるのが怖いと話すと、塚越さんはこう答えた。今困っていないなら使っていい。大切なのは使いすぎかどうかではなく、絶対に減らせない支出がいくらかを把握し、そこに備えることだ。どこが必須でどこがゆとりなのかが自分でわかっていればそれでいい。ある程度家計を見ている人でも、丁寧に見ると漏れがあることが多いので、一度しっかり見ることが大切だという。

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今からできる老後準備

最後に、今からできる準備を尋ねられた塚越さんは、順番に3つを挙げた。まず、お金もかからずすぐにできる年金の試算をして、足りそうかどうかイメージする。足りない場合は、iDeCoやNISAを使って早くから資産形成を始める。早く始めれば少ない金額でも大きな資産を作れる。貯蓄がそもそもできていない場合は、家計の見直しから始める。

ただし塚越さんは、必ずしも投資が必要なわけではないとも付け加えた。自分の人生にどれくらい必要かを計算しておくことが大事なのだという。無理に老後へお金を回して今使うお金がなくなるのも違うし、あの世に行くときにお金を持っていても仕方がない。そのバランスを取るためにも、早く知っておくことが大切だと話す。

お金と向き合うのは責められているようで怖い、と感じる人は多い。しかし塚越さんは、それはどう生きたいかの道しるべを得るためのものなので、怖がらずにやってみてほしいと語った。逆算が大事で、早くから始めれば準備にかけられる時間が長くなる。急な角度の坂を登るより、緩やかに登るほうが楽だという例えで、早めに動くことの重要性を強調した。塚越さんは単発の相談も受けている。自分で試算してから来る人もいれば、何をすればよいかわからず先に相談に来る人もいるという。