ベビーシッターは「贅沢」ではない――キッズライン経沢香保子さんが語る両立の工夫と補助制度

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概要

仕事と子育ての両立は可能なのか。ライフスタイルメディア「lumily」のチャンネルで、キッズライン代表の経沢香保子さんに聞き手が率直に尋ねた。経沢さんは、世間が言う意味での両立は「無理でした」と答えた。そのうえで、保育園・家族・ベビーシッターを組み合わせて自分にできる範囲で回してきた経験、知られていない補助制度、キッズライン創業の経緯、シッターの具体的な使い方を語った。

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「いわゆる両立はできなかった」――環境を先に整える

経沢さんの答えは、人によるが自分は無理だった、というものだ。お弁当作りやお受験のための時間づくりといった、世間がイメージする両立はできなかった。ただ、自分にできる範囲でやったのは良かったと振り返る。

最初に挙げた工夫は住まいだった。子どもが入れた保育園の目の前に引っ越し、送迎を2〜3分で済むようにした。誰にでもできることではないと経沢さん自身も認めている。住まいは実家の近くのマンションで、母親にも手伝ってもらった。そのうえで、ベビーシッターを徹底的に探した。

シッターは生後すぐから利用していた。保育園は生後3カ月以降と決まっていることが多い。経沢さんは3回出産しており、2人目と3人目のときは休めたので自分で見られたが、休めない時期もあった。そういうときはとにかくシッターに来てもらうと考え、多くの候補を探した。相性が合いそうな人に一度来てもらい、その中から3〜5人ほどを「お抱え」として決めた。そして、何時から誰に来てもらうかというシフトを、仕事と育児が両立できるように先に組んだという。

産後の休みは子どもごとに違った。1人目のときは、本人が病気で入院していたことなどもあり、ほとんど休まなかったという。2人目では1カ月ほど休んだかもしれないと語った。3人目のときは、前の会社(トレンダーズ)が100人ほどの規模になっており、社長がいなくても回る状態だったので比較的楽だった。フレックスで段階的に復帰したという。

家庭内の分担も具体的だった。たとえば朝は特定の曜日を経沢さんが担当し、夜は別の曜日を夫が担当する。夫婦ともに無理な日は、特定の曜日をベビーシッターに任せ、泊まってもらうこともあった。聞き手が「すごく具体的」と驚くと、経沢さんは、それくらいしないと仕事をしながらの子育ては時間的に難しいと応じた。

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「いざという時」では間に合わない

経沢さんが大事だと強調したのは、余裕を持ったスケジュールを組むことだ。忙しい母親ほど、いざという時にシッターを呼べばいいと考えがちだが、実際にその時になっても30分後に来てもらえるとは限らない。だから、最初からある程度目星をつけておいたほうがいいという。

キッズラインでは、妊娠した段階でシッターと面談し、気に入った人を「お気に入り」に多く登録しておく利用者が多いと経沢さんは話す。妊娠中から今後のスケジュールを決めておくという考え方に、聞き手は「これは私が教えてほしかった」と反応した。

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年間100万円規模になることも――2つの補助制度

ベビーシッターは高いという印象があるが、今は国や自治体の補助がたくさん出ていて、実は安く使えると経沢さんは言う。年間100万円ほどの補助を受けている人も結構いるという。シッターを使った後に戻ってくるお金が年間100万円と聞き、聞き手は驚いていた。経沢さんが挙げた制度は2つある。

1つ目は、こども家庭庁のベビーシッター割引券だ。企業に勤める人向けで、会社が申し込んで割引券を購入し、社員に配る。社員はシッターを使うたびに1枚あたり4,400円の補助を受けられる。経沢さんによれば、年間61万円ほどまで使えるという。

2つ目は、東京都在住者向けの補助だ。こちらは仕事でなくてもよく、美容院に行きたい、カフェで一人で休みたいといった目的を問わない。補助額は1時間あたり、平日の昼間は2,500円まで、夜間は3,500円までだという。聞き手は経沢さんに「本当ですか」と3回ほど聞き返したと明かした。たとえば昼間に6時間預ければ、2,500円×6時間分が補助される。時給2,500円程度のシッターを選べば、ほぼ自己負担なく使える計算になる。

ただし、東京都内のすべての自治体が対象ではない。経沢さんは19自治体と述べ、該当するかどうかを調べてほしいと呼びかけた。導入する自治体は増えていて、多くの人が対象になっているという。年間144時間まで使えるので、月に12時間の計算になる。毎週水曜日のこの時間は来てもらう、といった形で、自分がほっとできる時間を決めてもいいと提案した。

聞き手が、これは国や都がもっとアピールすべきだと言うと、経沢さんが先頭に立って広めている、このチャンネルでも広めてほしいという流れになった。経沢さんは、この東京都の制度を保育園の一時預かりのようなものだと説明する。母親が困ったときにいつでも使っていい制度だという。仕事で使った分と、そうでない分で制度を併用すれば、ごく少ない負担でシッターを呼べるという。

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金額以上に「使っていいんだ」という安心

聞き手は、補助の存在を知るだけで気持ちが楽になると語った。シッターに預けることを悪いことのように感じたり、罪悪感を持ったりする人でも、これだけ補助があるなら使っていいのだと思える。経沢さんも、気持ちの面と、実際にお金が戻ってくるという経済面の両方が大きいと応じた。

経沢さんは特に、シングルマザー、両親が遠方にいる人、仕事が非常に忙しい人に使ってほしいと話す。専業主婦でワンオペがつらい人や、子育てのやり方が分からない人も同じだという。シッターの中には子育ての愚痴を聞いてくれる人や、やり方を教えてくれる人もいて、心の支えになるはずだと語った。国も応援しているのだと知ってほしい、というのが二人の共通した思いだった。

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経費にならない現状と、少しずつの前進

聞き手が、シッター代は経費にできるのかと質問した。経沢さんの答えは、今はできない、というものだった。ただし、弁護士の女性がシッター代をめぐって最高裁まで争った事例があり、今後変わる可能性はあるという。また、以前は会社側も認められなかったが、今は会社が社員のシッター利用を負担した場合は経費にできるようになったと説明した。

聞き手は、運転手などは経費になるのに、働く女性に必要なシッターがなぜ経費にならないのか疑問に思っていたと話した。経沢さんは、国は保育園を作り、福祉として支出もしているので、さらに経費として認めるのはハードルが高いのだろうと見る。シッターを補助の対象にすること自体にも強い反対があったが、個別保育の重要性が認められるようになってきたという。

前進の例として、経沢さんは補助金の課税をめぐる経緯を挙げた。以前は補助された金額が給与として計上され、後で確定申告が必要になることがあった。これが大騒ぎになり、その扱いはなくなった。少しずつ前進しているので、いつかシッター代が経費になる日まで頑張りたいと経沢さんは語った。

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何が大変だったのか――葛藤と「ママはママの人生」

経沢さんが逆に聞き手へ、何が大変だったかを尋ねる場面もあった。聞き手は、追われながらこなすことだと答えた。初めての経験であることに加え、とにかく時間を取られる。スケジュールを決めることは妊娠中にやるべきだったと振り返った。生まれてからは赤ちゃんの事情にすべて合わせて動くことになり、自分の都合はなくなる。こんなに預けて仕事をするべきなのか、これが母親として正解なのかと葛藤する日もある。そのなかで、補助など使えるものを使うことが必要だと感じたという。

これに対し経沢さんは自身の経験を語った。経沢さんの子どもたちはベビーシッター、祖母、保育園に育てられたようなものだが、ママが嫌だと言われたことは一度もないという。経沢さんは以前、テレビのコメンテーターとして日曜の朝早くから家を空けることがあった。娘は朝起きるとテレビに映る母親に「ママおはよう」と言い、帰宅すると「おかえりなさい」と迎えてくれた。娘は、ママにはママの人生があると思っていたようで、自分も大人になったら楽しく仕事をしたいと話しているという。

経沢さんは、恋人同士でも長く一緒にいる関係があれば、お互いに自立した関係もあるように、子育てにも多様性が認められるべきだと考えている。シッター中心の子育ても、専業でしっかり関わる子育ても、その人がやりたい形が認められるべきだという。昔は「うちのママはなんで仕事をしているの」と言われる時代もあったかもしれないが、今の子どもは分かっていると経沢さんは感じている。20万世帯以上の子育てを見てきた経験から、ママが楽しそうな家庭が一番幸せだと述べた。ママが喜んでくれることが、自分の活動の原点だという。

聞き手は、母親になっても一人の人間として自分の人生を生きる軸の中に、子育てや働き方があるのだと共感した。1人目は怖いものだが、だんだん慣れていく。SNSで理想的な子育ての情報を見ると比べてしまうので、率直に話せるコミュニティがあればいいとも語った。経沢さんは、産んだだけで人口を増やしているのだから「全てのママは神」であり、どんな生き方をしていても、それだけで偉いと思ったほうがいいと応じた。

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キッズライン創業のきっかけ――入会金10万円の壁

キッズラインを立ち上げた理由について、経沢さんはこう語る。1社目がある程度成功し、人生はもう成功したからいいかなと思った時期があった。しかしまだ41歳だった。1社目から女性活躍推進をテーマにしてきたなかで、この先どう生きるかを考えたとき、自分が一番困ったのは育児だったと気づいたという。

保育園は素晴らしい制度だが、子どもが病気になると預けられない。仕事と育児を両立できず、当時は会社を辞めるかどうか悩んだ。そのときにベビーシッターというものを知った。しかし、いろいろな会社に連絡すると入会金が10万円もかかった。誰が来るか分からない段階でまず会員にならなければならず、初期費用も高かった。それでも申し込んだところ、来てくれたシッターの時給は1,000円以下の人も多かった。経沢さんは、自分は高い料金を払っているのに、使う人が少ないからシッターの収入が低いのだと考えた。

結局、経沢さんは自分でネットに「ベビーシッターをやってくださる方」と募集を書き込んだ。会社で面接し、履歴書や保育関連の資格を確認した。相性が合いそうな人には家に来てもらい、子どもとの相性を見て、3人ほどを自分のお抱えとして雇ったという。

ここから構想が生まれた。ネットで探す仕組みがあれば、みんな使いたいのではないか。ただ、自分でネットに書き込んで面接するのは多くの人にとって難しい。そこで、面接・研修済みのシッターが写真やスケジュールとともにプラットフォームに登録し、利用者はオンラインで頼んだ分だけ払う仕組みを考えた。入会金はいらない。シッターは自分で決めた時給で稼げ、利用者は安く頼める。昔はアナログだったシッター探しを、スマホで24時間好きな人を探せるようにする。それがキッズラインの特徴だと経沢さんは説明した。ママも助かり、シッターも稼げて、社会にも良い。だからこれを人生の次の挑戦にしようと考えたという。

現在はむしろシッターが足りていないと経沢さんは言う。使いたい利用者のほうが多く、東京では時給3,000円、4,000円でも引く手あまたなほど需要があるという。保育や看護のスキルを持つ人にぜひ登録してほしいと呼びかけた。

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実際の使われ方――「6時から9時」が人気

利用頻度はさまざまだ。毎日使う人もいれば、週1〜2回の人もいる。月に1回、夫とデートするために頼む人もいる。経沢さんによれば、よくある使い方は次のようなものだ。

  • 忙しい朝の保育園への送り
  • 夕方の保育園のお迎えから、夕食、入浴、寝かしつけまで(18時〜21時の3時間が特に人気。少し余裕を持って4時間頼む人もいる)
  • 週1回これを頼み、その日を自分のリフレッシュの日にする
  • 子どもの病気のときに急に頼める人を確保しておく
  • リモートワーク中、昼間に子どもを見てもらい仕事に集中する

経沢さんは、港区の保育園のお迎えは今や半分がベビーシッターだと話す。昔は少なかったが、今は保育園側もシッターのお迎えに慣れ、運用が整っているという。

1日中預ける人もいる。経沢さんによれば、東京都では待機児童になった場合、1時間150円でシッターを使えるため、長時間利用する人もいる。子どもが一人で長時間シッターと過ごすことを不安に思う人もいるが、1対1の個別保育なのでしっかり見てもらえる。自分だけを見てくれるので自己肯定感の面でも良い、と言う利用者も多いという。

費用の目安は、3〜4時間の利用が多いため、1回1万〜1万5,000円ほどだ。週1回使えば月3万〜5万円ほどになるが、先に述べた補助でおおむね賄えると経沢さんは説明する。

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事前のZoom面談で相性を見る

同じシッターに頼むべきか、毎回違う人でいいのかという質問には、両方のやり方があると経沢さんは答えた。同じ人に週何回か頼む人もいれば、5人ほどお気に入りを決めて定期的に頼み、忙しい週だけ追加でお気に入りの誰かに来てもらう人もいる。

経沢さんが勧めるのは、何人かと事前に面談しておくことだ。今はZoomで面談でき、お気に入りを決めておけばすぐ来てもらえる。面談で聞くべきこととしては、家のルール、してほしいこと、子どもの特徴、避難場所などがある。こうした確認事項はキッズライン上でマニュアル化されているという。聞き手も、いきなり初対面で会うと違和感を覚えることがあるかもしれないので、事前に話して相性を見られるのはいいと応じた。

サービス上では自宅近くのシッターが検索で表示され、プロフィールを見て良さそうな人にメッセージを送ったり「いいね」をしたりできる。見るだけなら無料だと経沢さんは言う。聞き手は、これだけ多くのママがシッターを必要としていると分かるだけでも安心感がある、と語った。経沢さんは最後に、行き詰まることがママにとっても子どもにとっても一番大変なので、見るだけでも何かが変わるかもしれないと締めくくった。