「やばい」「可愛い」から一歩進むための言語化の技術:三木恵が語る観察と自問の習慣

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概要

思いをうまく言葉にできない、急に話を振られると何も出てこない、つい「やばい」「可愛い」で済ませてしまう。ライフスタイルメディア「lumily」のYouTubeチャンネルで、愛沢えみりが話し方スクール「はずむす」代表の三木恵に、人間関係がうまくいく言語化のコツを聞いた。三木は約1年前にも「話し方のコツ」をテーマに出演しており、今回はその続編にあたる。

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三木の主張の中心は、言語化がうまくいかない原因は語彙力の不足ではなく観察の不足にある、というものだ。対談では、その観察力を鍛える具体的な習慣や、感想・好きなものの理由・仕事の強み・LINEでのやり取りといった場面ごとの言葉にし方が語られた。

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「やばい」もすでに言語である

愛沢は冒頭で、自分は言語化が苦手で「やばいとか楽しいとか可愛いとかで済ませがち」だと打ち明けた。三木はこれに対し、「やばい」も言語なのだから、それはそれでいいのではないかと応じた。「やばい」だけで通じ合える場面もあり、そこに込められた感覚や感情も大切だという。

愛沢は、子どもとのコミュニケーションでは理由や状況をきちんと言葉で説明した方が親子関係がスムーズにいくと実感しており、言語化のポイントを改めて知りたいと考えていた。そのうえで、「それも素敵ですよね」という三木の一言で気持ちが明るくなったと話し、言葉から受ける影響の大きさを感じたという。苦手意識が強い人は、まず「それでもいい」というところから始めると楽かもしれない、と愛沢は受け止めた。

三木によれば、言語化の土台は自分の感情や考えであり、それを「やばい」でも「楽しい」でも外に出すこと自体にハードルを感じると、言葉はますます出なくなる。「説明が下手だ」という意識があると緊張して出てこなくなるので、まずは今の言葉でよしとし、その先に何かを足せたらいい、くらいの方がお互いに楽しいのではないかと三木は言う。言語化というと「正しい言葉を使う」イメージが強くなりすぎているのではないか、とも指摘した。三木の著書でも言語化をステップ1から7に分けて解説しており、ステップ1は言葉にすること自体に前向きな気持ちを作るところから始めている。その前向きさは、極端に言えば「寝不足だったら誰でも言葉が出てこない」というレベルの話から始まる、と三木は説明した。

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言語化できない人の共通点は「ざっくり捉えすぎ」

言語化が苦手な人の特徴を問われた三木は、いろいろなタイプがいるとしたうえで、強いて共通点を挙げるなら「物事をざっくり捉えすぎている」ことだと答えた。言葉にしたい自分の気持ちそのものや、説明したい物事を大づかみに捉えている状態である。

三木の説明では、言葉とはそもそも情報の一部分を切り取ったものだ。対象をよく見ていなければ、どこを切り取ればよいか分からず、言葉にならない。だから言葉にする前に、自分の内面や周りの情報を解像度高く捉えること、つまりしっかり観察しておくことが土台になるという。

日常会話では観察する前に答えを求められることもある、という愛沢の問いに対して、三木は、普段から観察する習慣がないと言葉が出てくるまでに時間がかかるのだと答えた。突然質問されると答えにくいのは、日頃の観察意識が少ないからであり、観察力を養えば会話もスムーズになっていく人が多いという。

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語彙力と言語化力は別物である

三木は、語彙力と言語化力が混同されがちだと考えている。語彙力とは言葉の手札をどれだけ持っているかということだが、大人として普通に仕事をしていれば、言葉自体は十分な数を知っているはずだと三木は見る。うまくいかないのは、自分が感じた物事と手持ちの言葉の組み合わせであり、その原因は、感じた物事や言葉そのものへの観察が足りず、両者を結びつけられないことにある、というのが三木の考えだ。言語化ができないのは語彙力がないからではなく、観察力を磨いた方がよいケースが多いという。

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名詞と動詞に注目し、「絵に描ける言葉」にする

観察力の磨き方として三木が勧めるのは、名詞や動詞に注目することだ。「すごい」「やばい」「可愛い」「楽しい」はいずれも「い」で終わる形容詞で、物事の様子を表す言葉だが、大体ふんわりしている。「すごい」は何にでも使えて便利な反面、中身が見えない。そこで、何がすごいのか、どこがすごいのか、何をしているのがすごいのかを考え、物事の名前や動作など、目に見えたり絵に描いたりできる情報に注目するのが最初はおすすめだという。

三木はこれを「絵に描けるかどうか」という基準で説明した。「すごい」は絵に描けないが、「足が速い」なら描けそうだ。「可愛い」は描きづらいが、「可愛い猫ちゃん」なら描ける。「やばい」も描けないが、「暑くてやばい」なら太陽を描ける。自分が絵に描けるような言葉を使えば、相手も頭の中でイメージしやすく、伝わりやすくなる。それだけで結構変わると三木は言う。

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言語化できないことの弊害:「雑に扱われる」

言語化できないままだとどんな弊害があるか。三木が生徒、特に20代・30代から多く受ける相談は、「自分の考えをうまく言葉にできないと雑に扱われる」というものだ。じっくり考えて言葉が出ずにいると、考えていないと思われるのか、周りから軽んじられるという。具体的には、大事な仕事を任せてもらえない、他の人と比べて冷たく扱われる、といった話をよく聞くそうだ。

意見を言わないからなのか、という愛沢の問いに、三木は、「この子は言わないから好きにしていいんだな」と思われることもあるようだと答えた。ただし三木自身は、そうした扱いをする側にも物申したい気持ちがあると付け加えている。

本人への影響として三木が挙げたのは自己肯定感の低下だ。雑に扱われると「私はダメなんだ」と感じ、ますます人前で話すのが苦手になり、自信を失い、仕事に行きたくないという状態にまでなりかねないという。

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感想の主役は対象ではなく、それを体験した自分

映画やレストランについて「すごい良かった」「美味しい」で終わってしまう、という悩みについて、三木は、感想を言うときに対象そのものを説明しようとすると難しくなるのだと指摘した。映画について話そうとすると「やばい」「すごい」になってしまう。しかし感想の主役は映画ではなく、映画を見たその人自身である。聞き手は映画の事実や説明を聞きたいのではなく、えみりさんが映画を見てどうだったかを聞きたいのだから、映画を通して体験したことを話すのがよいという。

愛沢が、自分が感じたことを言おうとしても「感動した」「泣けた」になってしまうと言うと、三木は、それは自分の心の動きなので「やばい」より一歩前進していると評価した。そのうえで次は、どの瞬間に感動したのかを考える。2時間の映画で最初の1分から感動することはないはずなので、どのあたりで感動したのか、そのとき何が起きていたのか、自分の体がどうなったのか(鳥肌が立った、涙がぱっと出てきたなど)をつなげていくと、その人にしか言えない感想になるという。

映画の説明は感想とは違う能力なのか、という問いには、何のために説明するかによると三木は答えた。レビューサイトに載せる文章なら商業的な目的があり、それに合わせた言葉選びが必要になるかもしれない。しかし感想なら話し手自身が感じたことでよく、心が動いたポイントや印象に残ったシーンを話してもらえれば聞いた人は嬉しいはずだという。感情が乗ると共感が生まれたり引きつけられたりするが、感情だけでは「嬉しい」「楽しい」は伝わりにくい。だからシーンを通して感情を伝える、シーンに自分の気持ちを託す、というのが言語化なのではないか、と三木はまとめた。

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速さよりも深さ:AIの時代だからこそ

ゆっくりになってしまってもいいのか、という愛沢の問いに、三木は「いいと思います」と答えた。最近は、とにかくぱっと話せることが言語化力だという風潮もあるが、三木はそれをあまり良くないと考えている。ぱっと話せても浅かったり、本音と違ったりすれば意味がないからだ。

さらに三木は、今はAIがすごいので、速さでAIに勝つことは「多分じゃなくて絶対無理」だと述べた。早く出すことはAIに任せるとして、人間は時間がかかっても深い意見や心の底からの気持ちを出せる方がいいのではないか、という見方である。正解を話そう、正しく話そうとするのではなく、自分の言葉で感情をシチュエーションに託して話す。その自分の言葉が正解なのだと三木は語った。

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今日からできる習慣:指差しで物の名前を言う

今日からできる習慣として三木が紹介したのは、自身のYouTubeチャンネルでも取り上げている簡単な方法だ。シチュエーションに感情を乗せるには、見た映画のワンシーンなどを言葉にする必要がある。これは視覚の情報を言葉に変換する作業で、三木はそこに「パイプ」のようなものがあると説明する。普段そうした変換をしていないとパイプがだんだん詰まり、見たものについて「これ何だっけ」と言葉が出てこなくなる。

それを防ぐために、見たものを指差しながら「マグカップ、テーブル、本、台本」と口に出していく。時間は、やりすぎると疲れるので、楽しい範囲で1日1分程度で十分だと三木は言う。

愛沢はこの方法を三木のYouTubeで見て実際に試していた。最初はあまりできず、「あれ、これ何だっけ」となったが、続けるとすらっと言えるようになっていくと感じたという。子どもと一緒に見たものを言葉にしていくと、子どもとのコミュニケーションにもなる。以前は「あの白いの」「三脚じゃなくて、カメラ乗せるやつ何だっけ」となっていた、知ってはいるのに出てこなかった言葉が、カメラ、三脚、ライト、植物、葉っぱなどと出てくるようになったと愛沢は話した。

三木によれば、「そんなのできる」と言う人は多いが、意外とできなかったり、もっと適切な言葉が出てこなかったりする。普段は周りに情報が多すぎるため、何でもないものはスルーして捉えている。だからこそ改めて指差し、意識を向け、言葉にすることを繰り返すと、視覚からインプットしたものを言葉にするのがどんどんスムーズになるという。周りのものなら何でも対象にできるので場所を選ばず、出かけた先の慣れない状況でやると「あれ何て言うんだろう」というものに出会えて面白い、という話も出た。三木自身も子どもが小さい頃によく一緒にやっていたそうで、子どもの方が吸収が早く、親の方が学ばされると二人は話した。

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情報を足していくと、最終的には実況中継になる

指差しに慣れてきたら、一言情報を追加するのがおすすめだという。「白いマグカップ」「丸いライト」「ゴールドのハンガー」、色でなくても「1.2mくらいの三脚」など、何でもよいのでぱっぱっと出していく。難易度が上がる分、練習になる。

さらに情報を足していくと、最終的には実況中継になる。「私は今、愛沢えみりさんとYouTubeの収録をしています」というように、見えるものを加えながらやっていることを全部言葉にしていく。三木はアナウンサー時代にラジオのリポートがあり、これをかなり練習したという。ラジオではいきなりリポートをやらされたが、その土台には物の名前を言うことから段階的に積み上げる練習があった、と振り返った。

これを習慣化すると、即興で求められる言語化でも言葉が出やすくなると三木は言う。例えば仕事のプレゼン後の質疑応答で答えがすぐ浮かばなくても、周りにあるものに触れてつないだり、「先ほど誰々さんがこうおっしゃっていましたが」と話している間に自分の答えを考えたりできるようになるという。

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「なぜ好き?」ではなく「いつ・どこで・誰が・何を」で問う

このブランドが好き、この人が好き、と思っていても理由を聞かれると答えられない。好きを深く言語化するにはどうすればいいか。三木は、理由を聞く言葉は「なぜ」だが、この「なぜ」は厄介な聞き方だと指摘した。抽象度が高く、どのようにも捉えられるため、考えが迷子になる原因になる。そこで、絵に描けるような具体的な聞き方で自分に問いかける。具体的には「いつ・どこで・誰が・何を」の4つで自問自答する習慣をつけると、自分にしか言えない話ができるようになるという。

三木は撮影スタジオの壁を例に挙げた。前回来たときも素敵だと思ったが、「なぜ素敵なのか」と考えると難しく、「なんか可愛い」とまた形容詞に戻ってしまう。そこで「何が可愛いと思ったのか」と問いかけると、「キルティングのようなぷっくりした感じが可愛いと思った」と具体的になる。さらに、そのキルティングの感じがシャネルのバッグのようで素敵だと思ったのだ、憧れ感も感じたのだ、と浮かんでくる。そうすると「私ならではの理由」になっていく、と三木は説明した。

何が好きなのか、どこが好きなのか、ものによってはいつ好きだと感じたのか。この4つを頭の中で自分に質問していくことが深める「きっかけ」になるという。日頃から好きなものに出会ったら「何が好きなんだろう」と問いかける癖をつけるとよい、と三木は勧めた。

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仕事の強みは「周りにどんな影響を与えるか」で言語化する

仕事でよく聞かれる「自分の強み」も抽象的で難しい。三木は、まず具体的にすることが最初だとしたうえで、それだけでは足りないと言う。例えば「明るい笑顔が強みです」は接客業ならそれでよいが、社内のエンジニアなら、ないよりはあった方がいいとしても強みとしてはずれている感じがする。つまり仕事の強みは自分1人で決まるものではなく、職場やお客様との関係の中で決まるものだ、と三木は考える。だから強みは、それが周りにどんな影響を与えるかに注目して言葉にする必要がある。

「明るい笑顔でお客様に心地よくお買い物をしていただけるのが私の強みです」なら当てはまりそうだが、「明るい笑顔でプログラミングするのが強みです」とはならない。その場合は、お客様や同僚に効果的な影響を与えている別の強みを言葉にした方がよい、と三木は言う。

愛沢が自分の場合を尋ねると、三木は「周りの方にどんなポジティブな影響を与えているか」を考えるよう促した。愛沢は、大変なときでも率先して行動する姿を見てもらい、頑張ろうと思ってもらえる力になっているのではないかと話したが、言語化は難しいと言った。三木はそれを素敵だと評価し、周りの人は愛沢の姿に勇気づけられているのだろうから、「周りを勇気づける力」が強みだと言えるのではないかと提案した。愛沢は、観察と同様に自分と向き合うことも大切だと受け止め、三木は言語化は自己理解と強く結びついており、自分が自分を理解していると他人からも理解してもらいやすくなると応じた。

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LINEで冷たく見えないために:相手と長さを合わせる

LINEで冷たく見えたり誤解されたりしがちな人へのコツとして、三木が最初に挙げたのは、言語化というより単純なことで、相手とメッセージの長さを合わせることだ。長文に一言で返すと相手が悲しくなるかもしれないし、逆に突然長文が来ても驚くし、長すぎて大変だと感じる。まずは相手に合わせることが最初の一歩としてよいという。

愛沢はこれを深いと受け止め、人間は機械ではないので、熱量や思いを相手と合わせることは、自分が何を伝えたいかより大事かもしれないと話した。三木も、自己理解は絶対に大事だが、同時に相手を理解しようとすることとセットだと述べた。二人は、絵文字の使い方なども相手はよく見ていると話し、愛沢は、長文が来ると苦手でプレビューだけざっと見ることもあるが、そうなると内容が入ってこないと明かした。愛沢自身は相手の状況を考えて送ることに気をつけており、突然自分の思いだけを送ることはしないという。三木も、相手が準備できている状態でなければ、どんな内容でも届かないと同意した。

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職場に溶け込むには、その場の話題に乗る

言語化とは少し離れるが、コミュニケーションの観点から三木が付け加えたのは、職場に溶け込めないという相談への考え方だ。同じ属性の人たちの中には、よく使われる言葉やよく出る話題があるはずなので、そこに乗っかり、それに対して自分の気持ちを言語化するようにする。これはLINEで長さを合わせる話にも通じるという。

例えば食べるのが好きな人の集まりで近くのランチの店の話が多いなら、自分もその話題に乗っていく。自分のことを言語化しようとして、いきなりサッカーの話題を振っても相手はぽかんとしてしまい、言語化以前の問題になる。三木はこれも最初に話した「観察する」ことに含まれるのではないかと述べた。

愛沢が、うまく話そうとするよりも、観察して自分の言葉で伝えようとする方が近いのかもしれないと言うと、三木は、言語化とは自分の中身としっかりつながることと、相手とつながろうとすることだと考えていると答えた。

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急には変わらないが、少しずつ確実に育つ

締めくくりに愛沢は、相手とつながろうとする気持ちがあれば自然と言語化できていく気がするとしつつ、そのためにも指差しで一つずつ言葉にするトレーニングから始めれば、突然の質問や会話でも自分の言葉で伝えられるようになっていくのではないかと話した。三木は、急には変わらないが、これだけでも少しずつ確実に育まれていくので、ぜひ取り組んでほしいと呼びかけた。意外とこれがすらすらできる人は言語化が上手な人だと思う、というのが三木の最後の言葉だった。