制度から変えても組織は変わらない:小杉俊哉が語るパーパスから社員までの「順番」とエンパワーメント

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概要

組織改革はなぜうまくいかないのか。評価制度や成果主義から手をつける企業が多いが、小杉俊哉はそれでは組織は変わらないと言う。この対談で小杉は、パーパスから社員に至る流れを「人材マネジメントバリューチェーン」として示し、どこから変えるべきかを説明した。後半では、支援型リーダーシップと社員の自立のどちらが先か、エンパワーメントと権限委譲や丸投げはどう違うかを掘り下げている。聞き手はSean Kawakamiである。

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支援型リーダーシップにおける「支援」とは

字幕は、リーダーシップの歴史をめぐる話の途中から始まる。小杉によれば、歴史上のリーダーの多くは権力を背景に人を従わせてきた。名君と呼ばれた人物もいたが、例外だったからこそそう呼ばれたのだという。

これを受けて、Kawakamiは小杉の言う「リーダーシップ3.0」における支援の意味を確認する。支援とは何でも助けてあげることではなく、人が動けるような環境を整えることだという点で、二人の認識は一致した。Kawakamiは、小さな寺で典座(調理役)を務めた経験も紹介した。寺の仕事にはマニュアルがあり、与えられた通りにやればうまくいくようになっているという。

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宗教と長寿企業:変わらない目的、変わるビジョン

Kawakamiは宗教組織についての仮説も示した。企業は環境に適応して変わらなければならない。一方で宗教は、悟り、救済、神との合一といった、いつまでもたどり着かない超越的なパーパスを持っている。だから時代に流されず、組織が追い求めるものが揺らがないのではないか、という見方である。

小杉は日本の地方企業を例に答えた。日本には何百年も続く長寿企業が多く、そうした企業でもパーパス、つまり基本理念や「なぜこの会社があるのか」は変わっていないという。ただし、ビジョンは変わる。環境、テクノロジー、競合、クライアントが変われば、ビジョンも変えなければならない。

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パーパス、ミッション、ビジョンの整理

Kawakamiは、ミッション、ビジョン、バリュー、パーパスと言葉が多すぎて、ほとんどの人が混乱していると打ち明けた。自身が一番よく聞かれて困る質問でもあるという。小杉は自著『人材マネジメント戦略』に書いた内容として、次のように整理した。

まず会社存立の目的がある。これをパーパス、あるいはミッションと呼ぶ。最近はパーパスという言い方が増えているが、両者は同じものと考えてよい。「なぜ我々はここにいるのか(why we are here)」「何のためにこの会社はあるのか」を示すもので、基本的には会社をつくるときに定め、本来は普遍で変わってはいけないものだという。最近はパーパスを見直す企業も増えている。小杉はその理由を、ホームページに書いてあるだけで社員に聞いても誰も知らないため再定義する、というケースだと説明し、それでも基本的には変わらないものだと述べた。

一方、ビジョンは3年後や5年後にどうなっていたいかを示すもので、環境が変われば変わらなければならない。小杉はパーパスを不変の北極星にたとえ、ビジョンをそこへ向かう道筋の数年先の道標と位置づけた。むしろビジョンを変えなければ時代に取り残され、必要とされない存在になる可能性があるという。

Kawakamiは最近、ある企業から提案書のカタカナが多すぎるので全部日本語にせよと言われたという。北極星、展望、使命感といった言葉を使ってもしっくりこなかったが、この説明でようやく腑に落ちたと語った。

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人材マネジメントバリューチェーンの順番

小杉は人と組織を扱う立場から、ビジョンの下に続く流れを示した。企業にサプライチェーンやビジネスシステムがあるように、人や組織にもバリューチェーンがあると意識する必要がある。小杉はこれを「人材マネジメントバリューチェーン」と呼ぶ。

ビジョンの次に来るのはリーダーシップで、ビジョンをどのように具現化するかのあり方を指す。小杉によれば、創業経営者には「1.0」でやっている人が多い。外からプロ経営者が入ってきた場合は徹底的な変革が求められるため、「2.0」が必要になるかもしれない。リーダーシップのスタイルは組織の状況によって変わるという。

リーダーシップの次が戦略である。ビジョンをどのようなリーダーシップで、どう戦略的に実現するかを定める。小杉は、この順番を間違えてはいけないと強調した。90年代以降は中期事業計画至上主義の会社がほとんどだったが、今は逆に戦略至上主義の会社が増えていると小杉は見ている。しかし戦略が先に来るのではない。北極星があり、ビジョンがあり、リーダーシップを挟んでようやく戦略がある。

戦略の後には、組織形態や人材ポートフォリオ、人材配置が来る。その後にようやく人事制度が来る。人事制度は、上流の方向性と矛盾せず、それを担保するものでなければならない。つまり、方向性に従って働けば評価され、昇進し、個人としても満足してハッピーになれる仕組みである。小杉は評価制度を含めて「人事システム」と呼び、制度だけの話ではないと付け加えた。そして最後の最後にいるのが社員である。社員がクライアントや市場に価値を提供することで、企業は付加価値を生み、回っていく。

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バリューは「組織風土」の裏側にある価値観

では、バリューはどこに位置づくのか。Kawakamiが「結果論か」と尋ねると、小杉はこう説明した。バリューとは、このバリューチェーン全体を通じて流れているものの裏側にある価値観である。価値観だけを取り出してあれこれ議論しても意味がない。連綿と受け継がれてきた流れの裏側に「当社ではこういう価値観が大切だ」というものがある、ということだ。

日本語で何が一番近いかと問われると、小杉は「組織風土」と答えた。風土の裏側が価値観であり、両者は表裏の関係にある。価値観は言語化されていないかもしれず、空気のように流れて組織を支配しているものだという。

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制度だけ変えた成果主義、風土を直接いじる風土改革

この枠組みから、小杉は二つのやってはいけないことを挙げた。

一つ目は、人事制度から変えようとすることだ。制度はチェーンの一部にすぎない。リーダーシップは今と同じで、そもそもリーダーシップがあるかどうかもわからず、組織形態も変わっていない。その中で人事制度だけを変えれば社員は戸惑う。小杉は、これが2000年代初めの成果主義の失敗の本質だと述べた。変えるなら全部変えなければならない。

二つ目は、組織風土改革である。小杉は、これはまずうまくいかないと断言した。すべてのベクトルを合わせた結果、振り返ってみると「うちの会社もずいぶん風土が変わったね」となるのが風土改革だという。風土は結果でしかない。風土を変えようとしてそこにメスを入れても、アレルギー反応やハレーションを起こすだけだと小杉は言う。Kawakamiはこれを、形を追い求めた結果と、結果としての形はまったく違うものだ、と言い換えた。

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どこから手をつけるか:一気に変えることとトップのコミットメント

Kawakamiは、情報共有がされない、ガバナンスが効いていないといった問題があると、企業はまず組織や人事評価をいじろうとすると指摘し、どこにメスを入れるべきかと尋ねた。

小杉は社名を伏せたうえで、成果主義に失敗したある企業の例を挙げた。その企業では、辞めた人が内情を暴露する本を出し、人が辞め、混乱を極めて業績も悪くなった。小杉が現在の人事トップと話すと、その人物は、先人がやろうとしたこと自体は間違っていなかったが、制度から入ったのが間違いで中途半端だった、と振り返ったという。そして、やるなら全部のベクトルを合わせなければならないという小杉の考えに全面的に共感した。その会社は今、一気に変える取り組みをしているという。

小杉はもう一つの条件としてトップのコミットメントを挙げた。バリューチェーンではビジョンの次にリーダーシップが来る。社員はトップを見ているので、「これは本気ではない」と思われたら変わりようがない。言行不一致もそうで、口ではこう言っていても全然違うことをしていると思われたら、誰も動かない。どこから手をつけるかという問いへの小杉の答えは、「一気にやる必要がある」だった。

Kawakamiも成果主義の時代を振り返った。独立採算の事業部制を導入した会社で、稼いでいる事業部門の人がR&D部門の人に廊下ですれ違いざま「あなた方は税金で食べていていいね、呑気で」と言ったり、「うちが食べさせているのがわかるか」と言ったりするような風土が生まれたという。制度を入れたことで、逆に悪い風土ができてしまったわけだ。小杉は、以前はそれなりにそろっていたベクトルが制度変更で分断され、バリューチェーンが切れて組織風土がぐちゃぐちゃになり、何が大切な価値観なのかわからなくなったのだと解説した。

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有事こそ意思決定を現場に:米軍の例

Kawakamiは、危機のときには権威主義的に一気に進めるカリスマ型のリーダーシップのほうがよいのではないか、平時と有事ではリーダーシップが違うのではないか、と問いかけた。

小杉は、13年前に書いた『リーダーシップ3.0』で、アメリカ軍を支援型組織に分類したと明かした。米軍は普段、司令官の指示のもとで末端の兵士まできちんと動く。ところが、ある国で戦争状態になったとき、司令官の指示を仰いでいる間に現地の兵士たちが殺されてしまった。その反省から、兵士にウェアラブルコンピューターを身につけさせ、司令官が持つ情報をすべて与えたうえで、現場の一人ひとりが判断する仕組みにした。有事だからこそ意思決定を分散させたのだという。Kawakamiは、危機の大きさを一番感じているのは現場だからだと受け止めた。小杉は、旧日本軍はまさに現地のことが上に何も伝わっていなかったと付け加えた。

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国と企業は違う

では、今多くの国で強権的な1.0型の支配型リーダーが権力を握っているのはなぜか。小杉は、国と企業は別物だと答えた。国はどうしても統合しなければならず、安定、統合、主権をいかに守るかが問われる。情報戦、安全保障上のリスク、経済競争の激化、国内の社会分断などを抱える中で、今は戦時中のような状態になっている。そのためカリスマ性を持って支配するトップを人々が求めているのだろう、というのが小杉の見方だ。

産業界については、オーナー系や創業経営者が1.0でやっていてうまくいっている限りは、それでよいと小杉は言う。ただしリスクは必ずある。小杉は、最近ある企業で不祥事を機に長年成功してきたトップが退任した例に触れた。そうした組織では後継者が育たず、みんながイエスマンになる。どうせ提案しても上がひっくり返すと思えば、誰も自律的に働かない。トップが明らかに間違えていても、「王様は裸だ」と言える人はいない。

Kawakamiは、究極的にはリーダーシップがなくても自律的に成長していく組織が理想ではないかと述べた。この人がいなければ組織が育たないという状態は不健康ではないか、という問いに、小杉は「不健康です」と応じた。その人がいなくなったらどうするのかという点で、サステナビリティが非常に危うい。カリスマ的な変革者が会社を引っ張る姿は美しいが、組織としては脆弱だという。

19:37

「それは星野さんだから」という壁

Kawakamiは、星野リゾートの星野佳路との長い対談に触れた。外資系企業などの高い報酬を蹴ってまで星野リゾートに来る人がいて、星野自身は細かい意思決定には関与しないと語っていたという。Kawakamiは、それは普通の会社では無理ではないか、個人の自立性が高く、組織として自律的に変化していく土台があるから成り立っているのではないか、と問うた。この話をすると、多くの経営者から「それは星野さんだからでしょ」と言われてしまうという。カリスマがいなくても、そのDNAだけを受け継いで次の世代に移っていける企業もある。そうなれない会社はどうすればいいのか、というのがKawakamiの問いだった。

小杉はまず企業の環境を説明した。技術革新は連続的に起き、生成AIも入ってきた。市場の変化は高速化し、日本企業でもついに人材の流動化が進んだ。専門知も分散している。国に求められるのが統合だとすれば、企業に求められるのは適応である。変化が遅く、経営者が30年前に経験したことが今も通用するノウハウの時代なら、トップの指示でもうまくいった。しかし今は「ノウホワット」「ノウホワイ」、つまり何をやるか、なぜやるかを一人ひとりが考える時代である。一人ひとりが学習し、価値を提供していく必要がある以上、自立の側に圧倒的に分があると小杉は述べた。そして、社員が自律的に動いている長寿の地方企業も多く、その理由の一つはトップが支援型であることだという。

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自立と支援はどちらが先か:X理論・Y理論

Kawakamiは「意地悪な質問」として、自立と支援のどちらが先なのかを尋ねた。

小杉は動機づけ理論のX理論・Y理論を持ち出した。X理論は性悪説で、人は見張っていないと怠けると考える。「本当は任せたいが、俺が見張っていないとダメなんだ」と言う経営者はこの立場だ。Y理論は性善説で、人はもともと工夫し、自分で責任を取って働くものだと考える。自立した人間がいるから任せるのか、任せるから自立的に動くようになるのか。これは卵と鶏の問題に見えるが、小杉は結論はすでに出ていると言う。経営者が任せるから、人材は自立的に動くようになる。まず権限を渡してやらせ、失敗もさせ、その後に支援が来る。いったんそのやり方が根づけば、先輩社員や上司がみなそうしているため、新入社員もそれに倣うようになるという。

Kawakamiはさらに食い下がった。任せて失敗し、支援してまた失敗し、それでも育たない。会長や顧問になったのに社長に戻ってくる例もちらほらあり、「社員では無理だ」という声もよく聞く、と。

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状況対応型リーダーシップの4類型と、その限界

小杉はこれに答えて、まず状況対応型リーダーシップを紹介した。ポール・ハーシーとブランチャードによるもので、研修もあるという。社員をやる気の高低と職務遂行スキルの高低で4つに分け、それぞれに接し方を変える。

  • やる気は高いがスキルが低い人:一般的には新入社員である。やる気はあるので、「これをやれ」とハウを与える指示型で接する。
  • やる気もスキルも低い人:外資系なら解雇の対象になるが、日本企業は新卒で採用しており、アメリカのようなレイオフの概念もなく、労働法上も解雇は厳格だ。そのため上司がコーチとなり、その人が働けるようにする。小杉はコーチを、指示よりも関わりの深い役割と位置づけた。
  • やる気は低いがスキルは高い人:長く勤めてきたシニアに多い。年下の上司に仕えることになったケースなどで、年下の上司が年上の部下を持つことは今では日本企業でも普通になっている。この層に対しては支援型で接し、仕事ができるように支援する。
  • やる気もスキルも高い人:権限を渡し、どんどん仕事を委任していく。小杉は、これは放置ではなく委任だと念を押した。

いきなり全員に自立を求めるのは難しいので、相手によって自分のリーダーシップを使い分けるべきだ、というのが小杉の説明である。

ただし小杉は、この手法を13年前の著書には入れなかったという。理由は二つある。一つは、コーチ、支援、委任といった要素はどれも自身の言う3.0のリーダーシップに必要なもので、言葉の上で理解が混乱しかねないこと。もう一つの、より大きな理由は、企業のトップがこれをやると問題が起きることだ。Kawakamiは「人事部長のようになってしまう」と応じた。小杉によれば、人によって言うことがまったく違うので「えこひいきしている」「軸がない」「ぶれる」と言われてしまう。だから組織の上に立つ人はやってはいけない。部下が一担当者であれば使ってよいが、部下が事業部長や管理職ばかりという立場の人には向かないという。

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リスナーの質問:「自分で考えろ」が放置に見えてしまう

番組には、神奈川のメーカーで課長をしているリスナーから質問が届いた。部下に自律的に動いてほしいが、「自分で考えろ」と言うと放置に見えてしまう。支援型リーダーとしてどうバランスを取ればよいのか。また、そもそも自立を望んでいない部下にどう接すればよいのか、という内容だ。小杉も、これはよく受ける質問だという。

小杉は1999年の本に書いた「エンパワーメント・フレームワーク(小杉モデル)」で答えた。エンパワーメントという言葉は日本でも普通に使われているが、まったく理解されておらず、使いこなしている人はいないと小杉は感じている。辞書を引くと「権限委譲」と訳されているが、これが混乱の一番の原因だという。

このモデルは、仕事の本質である「ホワット・ホワイ(何を、なぜ)」と「ハウ(どうやって)」の2軸で4つに分ける。

  • 権限委譲:ホワット・ホワイ・ハウをすべて渡す。業務の引き継ぎで前任者が書類、クライアント情報、注意事項まで後任者に渡し、速やかに立ち上がれるようにするのがこれにあたる。これはエンパワーメントではない。
  • 丸投げ:何も与えず「あいつに任せたから聞いてくれ」と人に投げる。
  • 指示命令:ハウだけを与える。新入社員にはこれでよく、何のためにやるのか、何を目指すのかを共有しなくても、目の前の仕事の指示を与えていけばよい。
  • エンパワーメント:何のためにやり、何を目指すのかを十分に共有したうえで、ハウはすべて任せる。
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エンパワーメントの条件:後出しじゃんけんなし、報酬は仕事、報告は見守りのため

小杉はエンパワーメントの条件も挙げた。目標と目的を明確にすること。使えるリソースを明確にすること。制限や制約条件があるなら最初にはっきりさせること。予算がいくらまでか、このクライアントは自分が担当するといった条件を後から持ち出す「後出しじゃんけん」はなしにする。誰を使ってよいか、自分の時間の何%を使ってよいかも明確にする。

結果に対する報酬については、金銭的なものでないほうがよいとされていると小杉は言う。デシのパズル実験に触れ、ニンジンをぶら下げるモチベーション2.0ではなく、モチベーション3.0の内発的動機が人を動かすと説明した。日本で昔から言う「仕事の報酬は仕事」がこれにあたる。「このプロジェクトがうまくいったら切り出して部門にし、お前に部門長をやってもらう」「軌道に乗ったら次はこういう仕事をやってほしい」といった期待を示す。まずは「よくやった」と承認することもセットになる。ボーナスでは一時的な喜びで終わってしまうという。

最後の条件は報告義務を課すことだ。任せているのになぜ報告させるのか、と意外に思われるかもしれない。しかし小杉の言う報告は、日報のような管理のためのものではない。頻度が高くても週報、あるいは隔週報や月報でよく、物によっては四半期報でもよいという。目的は見守るために情報を提供させることにある。うまくいっていれば一切口出しする必要はなく、存在を消していてもよい。イエローサインが出たときに支援できるようにするための、まさに支援型リーダーのツールだと小杉は位置づけた。

この流れで、Kawakamiはマネジメントとリーダーシップの違いも尋ねた。小杉の定義では、マネジメントは組織上の役割をきちんと果たすために管理すること。リーダーシップは、組織上の役割や役職に関係なく、個人の名前で周りを巻き込み、一定の方向に動かすこと、あるいは何かを始めたり変えたりすることである。報告はマネジメントの意味での管理、つまり一挙手一投足を管理するためのものではない、という整理になる。

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先にデメリットが来るというハードル

字幕の終盤は断片的だが、小杉は、この変革ではまずデメリットが先に出てくることが最大のハードルだと述べている。その先にはよい未来が待っているが、そう話すと「いつ頃儲かりますか」と聞く経営者がいるという。

続いて、会社に仕方なくいる人ほど悩みが多く、夢や目標を見失った「難民」のようになっているという話や、人材の流動化はすでに普通に起きていることで、社員が自立意識に目覚めたから辞めるわけではない、という趣旨の発言が交わされる。この部分は議論の途中で字幕が途切れており、結論までは示されていない。