英語は全部聞き取らなくていい:仮説を立てて「止めて確認する」能動的リスニング
MAKE IT NEXTショーン川上がナビゲーターを務める「MAKE IT NEXT」の英語コーナー「English Mode」第2回のテーマは、情報を受け取る側、つまりインプットである。ゲストは前回に続き、アルク書籍編集部の永井薫。ショーン川上の著書『英語力の核心』の編集を担当した人物だ。ネイティブの速い英語を前にしたとき、全部を正確に聞き取ろうとするのではなく、仮説を立てて能動的に聞き、迷子になる前に会話を止めて確認する。これが二人の議論の中心になった。
テストのリスニングと会話のリスニングは違う
ショーン川上はまず、日本人はリーディングやリスニングが得意なのではないかと問いかけた。永井は、TOEICやTOEFLのようなテストのためにリスニングを学ぶことと、コミュニケーションのなかでのリスニングは少し違うと答え、ショーン川上もこれに同意した。テストで問題を解けることと、目の前の相手の話についていけることは別の力だという認識が、この回の出発点である。
「センスメイキング・リスニング」という考え方
ショーン川上は、永井と議論しながら本に書いた考え方として「センスメイキング・リスニング」を紹介した。本人が造語だと断っている言葉である。ヒントになったのは、組織心理学者カール・ワイクが組織内のコミュニケーションについて論じた内容だという。
ショーン川上の説明によれば、人や組織は不確実で曖昧な、予期しない状況に直面したとき、いま何が起きているのかを事後的に意味づけし、それによって初めて次の行動の足場を作っていく。だから場合によっては、何が起きているかを正確に掴むこと(accuracy)よりも、「こうではないか」という妥当性(plausibility)のある仮説を立てるほうが大事になる。その仮説をもとに見たり聞いたり感じたりして検証し、「やはりそうだった」「違った」と確かめていく。ショーン川上はこれを、情報の入力に能動的に関わる姿勢だと位置づけた。
仮説があれば聞き取れる:トイレの場所を尋ねる例
ショーン川上が挙げた身近な例が、「Where is the bathroom?」とトイレの場所を尋ねる場面だ。ただ尋ねるのではなく、周囲をさっと見回して、「エレベーターの裏あたりか、少し出て左のあたりだろう」と仮説を持ったうえで聞く。仮説があるかないかで、聞こえ方が大きく違うという。
英語が全部聞こえなくても、「behind the elevator」と言われれば「エレベーターと言った、後ろと言った」と拾える。「make a right」「make a left」も、自分の仮説に沿って相手の発言が処理されるので理解しやすくなる。自分で意味(sense)を作り(make)ながら、積極的にリスニングに関わる。ショーン川上は聞き手にそう勧めており、ただじっと聞いていても聞き取れないではないか、映画なら別だが、と話したという。この話をすると「初耳だ」と言う人が多かったそうだ。
止めて、もう一度言ってもらう勇気
ショーン川上は、自身がフランス語、イタリア語、中国語を学んでいる経験も語った。本人は「まだまだ」と言うが、じっと待っていると話はどんどん流れていき、やがて冒頭で何を言っていたかもわからず、まったく追いつけなくなるという。
だからこそ、いかに会話を止めてもう一度言ってもらうかが大切だとショーン川上は言う。「今こうおっしゃいましたが、こういうことですか」と勇気を持って止める。もう一度聞いてもわからなければ、in layman's terms、つまり一般向けにかみ砕いて話してもらう。あるいはplain Englishで、もう少しやさしい英語で言ってもらう。そう頼む勇気がとても大事だというのがショーン川上の考えである。
「止める」のが苦手なのは英語の問題ではないのかもしれない
これに対して永井は、止めることが日本人には少し難しいのではないかと指摘し、意識を変える必要があると述べた。ショーン川上は、それはもしかすると英語の問題ではないのかもしれないと応じた。聞き返せないのは語学力ではなく、会話への向き合い方の問題だという見方である。
一語だけ確認すればいい:ゲート番号の例
聞き返し方の具体例として、ショーン川上は空港のゲート番号を挙げた。番号がはっきり聞き取れなかったなら、「Did you say Gate 32?」のように、聞き取れなかった一点だけを尋ねればよい。「30」台まで聞こえていたなら、聞こえた番号を挙げて確認し合える。全部を聞き直す必要はなく、一つ聞けば済むという話である。
永井流:好きな作品で、自分より少しだけ上に挑む
ショーン川上は、自らも英語を学んできた永井に、どう克服してきたのかを尋ねた。好きなドラマや映画を見るのがリスニング力向上に効くという人もいる。
永井は、それももちろん効果があると認めたうえで、自分の力よりも少しだけ上のものに挑戦してみることを勧めた。それが自分を訓練することになると考えており、これは自身の実体験に基づく意見だと述べている。
クラッシェンの「Comprehensible Input +1」
永井の話を受けて、ショーン川上は本でも取り上げた言語学者スティーブン・クラッシェンの考え方を紹介した。クラッシェンは80年代から「Comprehensible Input +1」を唱えてきたという。自分が心地よく処理できる範囲(コンフォートゾーン)に「+1」だけ上乗せしたものをインプットしていくと、筋肉のように力が増強されていく、という考え方だ。
ショーン川上によれば、学習負荷をかけるときに「+2」ではだめだという。まったくわからないところまで行くと、どれだけインプットしても意味がない。理解できるものよりほんの少し上を続けていけば、筋トレでいきなり200キロを上げるのではなく少しずつウェイトを増やすように、インプットを最適化できる。ショーン川上は、自分の興味関心と理解レベルに少しだけプラスしたものに取り組むのがよいのかもしれないとまとめ、永井もこれに同意した。
今回のTakeaway:迷子になる前に止める3つのフレーズ
最後にショーン川上は、本のなかから今回のテイクアウェイを紹介した。ネイティブスピーカーが長く話していると、聞き手は途中で迷子になる。その前に止める、というのが要点である。
一つ目は「Wait — you said you changed the gate to 30?」。「待って、ゲートを30番に変えたっておっしゃいましたよね」と、話が速すぎたときに止める言い方だ。ショーン川上は、ここでは「Did you say」ではなく「You said」、つまり「おっしゃったんですね」という形になっている点に触れた。
二つ目は「Sorry, could you slow down a bit?」。少しスピードを落としてもう一度言ってもらうための表現で、ショーン川上はどの英会話フレーズの教科書にも載っているものだと紹介した。
三つ目は「Let me just make sure I understand.」。自分がきちんと理解できているか確認させてほしい、という意味である。ショーン川上はこれをとても大事だと強調した。このとき、相手の言ったことを自分の言葉でまとめて返す。多少稚拙な英語でも、要点を押さえていれば構わない。「例えばこういうことですよね」と言ったあとに、相手から「Right, that's what I said.」と返ってくれば、理解が合っていたとわかる。
この3つを覚えておけば、放っておくだけのリスニングではなく、能動的に関われるリスニング、つまり能動的な情報の入力になるのではないか、とショーン川上は締めくくった。今回は情報を自分に取り込む側の話だったが、次回はいよいよ自分からどう発信するか、アウトプットについて話を聞きたいと予告して番組は終わった。
Good to have you with us. Welcome back to the show. You watch MAKE IT NEXT on 81.3 J-WAVE and radio. Where we take English further in special partnership with incorporated. MAKE IT NEXT presents Englishのお時間です。番組厳選の役立つ英語フレーズ、そして英語学習のヒントをアルクさんとの協力でお届けしてまいります。
1回目に続いてゲストは英語教育出版社アルクの編集部、私の本で大変お世話になりました永井さんです。よろしくお願いいたします。よろしくお願いします。
今回はそのインプット。インプットっていうのは、お勉強する時のインプットというよりも、情報を取るリーディングとかリスニングに関しての。意外とでも日本人はリーディング、リスニングは得意じゃないんですか? TOEICとかTOEFLのテストとかっていうには。
やっぱりリスニングをリスニングの目的のために学ぶっていうのと、コミュニケーションにおけるリスニングっていうのもちょっと違うかなっていうふうには思いますね。はい、そうですね。おっしゃる通りですね。
私も、これは永井さんと一緒にいろんな議論をしながらこの本の中に書かせていただいて、その中に、造語ではありますけども、センスメイキング・リスニングという方法というか考え方について、ご紹介させていただいていまして。そもそも組織心理学者のカール・ワイクという学者の方が、組織の中におけるコミュニケーションのあり方について論じたことが1つヒントにはなってるんですけども。
要するに、人とか組織が非常に不確実、曖昧な状況に直面をした時に、今何が起きてるのかを事後的に意味づけをして、初めて人間っていうのは次の行動の足場を作っていくというプロセスを踏むんだと。ですから、場合によってはその正確さ、何が起きてるのかっていうことを正確につかむよりも、accuracyよりも妥当性、こうじゃないかなっていうふうに仮説を立てて、そしてその仮説をもとにいろんなものを見たり聞いたり感じたりして、それを検証していく。「ほら、やっぱりね」、あるいは「違ったな」っていう、能動的に情報の入力に関わる。
もちろんシンプルなところで言うと、「今何とおっしゃいました?」「でもこれってこういうことじゃないですか?」って、勇気を持って止めちゃう。はい。会話を。はい。会話を止めるとか。
あるいは、もっとシンプルなことだとすれば、「Where is bathroom?」って聞くのに、ただ聞かないで、ぱっと見回した時に、おそらくお手洗いのあるような場所っていうのは、エレベーターの裏、あるいはちょっと出て左か、あの辺りだろうなという仮説を持って聞く、聞かないで大きく違うじゃないですか。はい。そうすると英語は聞こえなくても、「Back the elevator」、あ、エレベーターっつったな、後ろっつったなとか、make a rightとかmake a leftっていうのも、自分の仮説に則って相手の発言が処理されていくので、理解しやすいことがあるので。
いわゆる自分でセンス、つまり意味をメイクしていきながら、積極的にリスニングに関わっていく。それをやったらいいですよってお話を差し上げていて。ただじっと聞くっていうのも、だって聞き取れないじゃないですかと。映画だったら別ですけど、っていう話をしたんですよね。はい。そしたら結構、「それは初耳だ」っていうことをおっしゃる方が結構多くて。
こっちも、本当に個人的にまだまだですけども、フランス語、イタリア語、中国語をやってみていて、じっと待ってたら流れてっちゃうんですよ、もう。遠いところまで。はい。もうやがて最初の頃の冒頭で何言ったか、全然追いついていけないようなレベルになってくので、いかに止めてもう1回言ってもらう。でももう1回言ってわからなければ、in layman's terms、もっと一般向けにちょっと話をしてくれるとか、あるいはplain Englishで言ってくれる、もう少しやさしい英語で言ってくれるっていう勇気がとても大事だなって思うんですけどね。
そうですね。やはりその止めるっていうのが、日本人にはちょっと難しいかなっていうふうにも思いますよね。ちょっと意識を変えるっていうのが必要かなっていうふうには。そうですね。それ英語の問題じゃないのかもしれないですよね。そうですね。
ですからゲートの番号が、Gate 36が聞き取れなかったら、「Did you say Gate 32?」って聞けばいいってことですよね。そうですね。だから1個聞けばよくて、それが30まで聞こえたんだったらば、「Gate 36? No?」って、これは確認し合えるので、いいんですよね。そうですね。
どうですかね、その本をプロデュースしてらっしゃるお立場、ご自身も多分、永井さんね、ご自身も勉強されてらっしゃった方だと思いますけど、どんなふうにその辺り克服をされて。ヒントとしては、そのリスニング力を上げるためには、例えば自分が好きなドラマを見たりとか映画を見たりとか、そういうのが効くよっていう方いらっしゃいます。
これもちろん効くと思います。ただ、ご自分の力よりも少しだけ上のものにトライしてみる。それが自分を訓練することになるんじゃないかなっていうふうに、私自身の実体験ですけれども、思ってます。
これ、まさにこの本でも書かせていただいたんですけども、言語学者さんなのかな、スティーブン・クラッシェンっていう人が、もう80年代から、インプットする時にはComprehensible Input +1っていう、1個だけ、インプットする自分が心地よいコンフォートゾーンの中で処理できるプラス1っていうのをインプットしていくと、筋肉のように増強されていくよと。インプット、自分に学習負荷をかける時にはプラス2だとダメなんですってね。はい。
つまり自分がもうさっぱりわかんないってところまで行くと、どんなにインプットしても意味がないと。そうですね。だからcomprehensible、自分が理解ができるのとちょっと、というところをずっとやっていくと、やがて少しずつ筋肉が、急に200kg上げなくて、少しずつ少しずつウェイトを増やすようにやると、そのインプットの最適化っていうのができますよって言ってるのがクラッシェンっていう人で。ほんのちょっとだけ自分の興味関心、理解レベル、ちょっとプラスっていうのはやった方がいいかもしれないですね。そうですね。はい。
じゃあ、今回のテイクアウェイはですね、本の中からちょっとご紹介しましょうね。長いリスニング、相手がネイティブスピーカーが長くお話をしていると、途中で迷子になるじゃないですか。迷子になる前に止める。
例えばこういうふうに言って。「Wait — you said you changed the gate to 30?」「Wait — you said you changed the gate to 30?」待って待って待って、ちょっとあなた、お話しすぎた、早すぎた。ゲート30番に変わったっておっしゃいましたよねって言って、これはyou said、Did you sayとは言ってません。You said、おっしゃったんですねって言ってます。
それから、あまりにも早かったら、これはもうどこの英会話フレーズの教科書にも載ってるやつですね。「Could you slow down a bit?」「Sorry, could you slow down a bit?」ちょっとスピード落としてもう1回言ってもらえませんか?
それから、「Let me just make sure I understand.」「Let me just make sure I understand.」ちゃんと私が理解できているか確認をさせてください。これとっても大事で、その時に自分が、自分の言葉で相手が言ったことをまとめてあげる。多少稚拙な英語でも構わないです。それはもう要を得ていれば。そうすると、例えばこういうことですよねって言った後に、「そう、Right, that's what I said.」が相手から来たら、そうなんだなってわかりますよね。
なのでこの3つ。「Wait — you said you changed the gate to 30?」それから「Sorry, could you slow down a bit?」「Let me just make sure I understand.」この3つぐらいを覚えておくと、もうちょっとほったらかしのリスニングではなくて、能動的に関われるリスニング、情報の入力になるのではないかと思います。
今回、その情報の入力、情報を自分に入れるという意味でのお話しましたが、次回、今度はいよいよ自分でどう発信するかっていう方の話も伺いたいと思います。はい。MAKE IT NEXT. MAKE IT NEXT. MAKE IT NEXT.
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