電子ごみのアートで資本主義は変えられるか 長坂真護がアトリエで語った原点とサステナブル・キャピタリズム

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概要

PIVOTの佐藤が美術家・長坂真護のアトリエを訪ね、「ごみを使ったアートで資本主義を変えられるのか」を聞いた。長坂は、西アフリカ・ガーナのスラム「アグボグブロシー」に先進国から流れ着いた電子機器の廃棄物を回収し、作品の素材にしている。作品の売上を現地の雇用に回す仕組みを、本人は「サステナブル・キャピタリズム」と呼ぶ。この回は作品を一つずつ見ながら、パリ同時多発テロの現場で味わった無力感、ガーナへ向かった理由、廃棄衣服からダイヤモンドを作る試みまでをたどった。

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ごみを清掃し、先進国に戻し、収益をスラムに返す

長坂は毎日このアトリエで制作している。活動の流れは次のとおりだ。アグボグブロシーには先進国の電子機器の廃棄物が大量に投棄されている。長坂のチームがそれを清掃して回収し、先進国に持ち帰る。回収物は絵の具のように画面に使うこともあれば、作品のフレームにすることもある。完成した作品を発表して得た収益で、スラムの人々を雇用する。佐藤が「アートを売って収益を得て、また現地に戻す。それがサステナブル・キャピタリズムという理解でいいか」と確認すると、長坂は「間違いない」と答えた。

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代表作「真実の湖」と、ごみから作るフィギュア

最初に紹介されたのは代表作の一つ「真実の湖」シリーズだ。素材は長坂自身が清掃で集めたもので、大地に捨てられていた状態を画面上に再現している。長坂によれば、アグボグブロシーはもともとラグーンと呼ばれる湿地帯で、積み重なったごみをより分けると真っ黒な水が湧き上がってくる。この作品では、先進国が捨てた大量の堆積物をより分けた先に現れる湖面に、真実の美しさを見たという。描かれているのは現地で出会ったマリアという女性だ。きれいな花と壊れたスマートフォンを手に持ち、こちらをちらりと見ている。長坂はこの一枚を、先進国と貧困国をつなぐ作品として位置づけている。

制作では、まず廃棄物を使って背景を作り、その上に素材を配置してから絵の具を施す。長坂はこれを、作品のパーツが持つエネルギーを引き出す作業だと説明した。立体のフィギュアも作っており、これも売れているという。素材はすべてガーナのごみの再利用で、目にはパソコンのキーボードのキーを、眉毛には加工したプラスチックを使っている。

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「ロマネ」シリーズ 筆一本が1000万円になるとき

「ロマネ」シリーズの一作は、長坂自身の手と、スタジオで使い古して固くなった筆を組み合わせた作品だ。約1000万円で売れたという。

長坂はこの作品のメッセージをこう説明した。もしこの筆がピカソの生前に使っていたものなら、それだけで1000万円の価値があるのではないか。いまはガーナの素材、筆、作家の手をすべて合わせて1000万円で売っている。だが自分がノーベル賞を取ったり、アメリカで活躍したりして、もっと世間に知られれば、筆一本だけで1000万円の価値を持つようになる。そうなれば、この作品は実質的に「ただ」になる。作家としてピカソを超えたときに初めて、作品がさらに飛び立つ。そこまで作品を通じて到達していく意思を表現したのだという。

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「Freedom & Justice 1957」と「Still A Black Star」

作品にたびたび書き込まれる「FREEDOM & JUSTICE 1957」という言葉にも由来がある。ガーナは1957年に独立し、自由とは何か、正義とは何かを問い直すことをスローガンに掲げた。長坂は、私たちはいまその言葉どおりに生きられているのかを自分のテーマとしており、そのためこの言葉を繰り返し使っている。

もう一つのキーワードが「Still A Black Star(まだ黒い星)」だ。ガーナ国旗の中央には黒い星がある。長坂は、この星が黒いのは「まだ私たちの人権や自由は輝いていない」という意味だと聞いたという。奴隷制の歴史や社会経済的な不利など、多くの問題を抱える国を必ず輝かせる。その意味を込めて、2017年から「Still A Black Star」という個展を始めた。月をテーマにした作品の背景には、長坂の会社がガーナで経営するリサイクル工場から出たチップを貼っている。

長坂の主なシリーズは「月」「ガーナ」「新世界」、そして路上の絵描きだった頃の「路上時代」で構成されている。

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月の部屋 パリ同時多発テロで絵が描けなくなった

隣の暗い部屋は「ムーンルーム(月の部屋)」と呼ばれている。入った瞬間から香りが漂う。イタリアのパフューマーに依頼して作ったオリジナルの香水で、「月の香り」をイメージしたウッディな匂いだ。

この部屋には路上の絵描き時代の作品も置かれている。長坂はもともとパリの街並みに憧れ、写真のような絵を描いていた。その後、人を殺す道具である拳銃などを否定する意味を込めた「NO」という作品を2015年8月に発表した。そのわずか3か月後にパリ同時多発テロが起き、長坂は現場を訪れた。惨劇を目にして、こういう絵を描いても世の中を少しも良くできないではないかと、深く失望したという。

パリをさまよっていたとき、長坂は満月に出会い、はっと気づいた。自分が戦争をなくすという大きな願いを抱くのではない。出会った一人ひとりに平和とは何かを伝える草の根の活動なら、自分にもできる余地がある。そう考えて従来の作品づくりを一切やめ、あの日の満月が教えてくれた宇宙の広がりや平和な心をイメージした「満月」の作品を2015年に描き始めた。この頃から、平和とは何か、人権とは何か、なぜ殺戮がなくならないのかという根本的な社会問題に強く引き寄せられ、社会活動の道に進んだという。そのわずか2年後にガーナへ渡っているため、絵描きとしての人生をたどるうえで大切なシリーズだと長坂は話す。

実は佐藤もテロの直後に取材で現場に入っていた。佐藤は「仕事だと思ったら怖くなかった」と振り返り、現場がまだ生々しく残っていたことや、ふと見上げた空をよく覚えているという。長坂も街の様子をよく覚えていると応じた。それだけ周囲を警戒し、街のささいな変化に敏感になっていたからだという。祈る人たちがたくさんいる中で、なぜ無作為に人が殺されるのか、なぜこんなに不条理なのかと考えた。報道として現地にいた佐藤とは違い、自分は絵を描くことで何に貢献できているのか。そう思うと悲しくなり、絵が描けなくなった。そこから月を見て、戦争をなくすのではなく「伝えよう」という方向に転じたのだという。

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路上の絵描き時代の資金源とガーナへの道

戦争をなくしたい、世界を平和にしたいという思いは、もともとアートを通じて伝えたいと考えていたのか。佐藤がそう尋ねると、長坂は「ありました」と答えた。

長坂は世界15か国で路上の絵描きをしていた。お金がない中で旅を続けられたのは、電子機器の買い付けをしていたからだ。ニューヨークでiPadを買い、日本のYahoo!で売る「せどり」という方法で、アルバイトをせずに路上での制作を続けていた。その後、ガーナが「電子機器の墓場」になっているというニュースを聞き、自分の買い付けが人の命を奪い、人権や環境の問題に大きく関わっているのではないかと考えた。いても立ってもいられなくなり、ガーナに向かったという。

長坂によれば、中国でもパリでも、旅先ではいつもホームレスの人たちに目が向いていた。「たぶん」と前置きしたうえで、もともとそういうことが気になる性分で、気づいたら平和を考えるアーティストに少しずつ変わっていったのではないかと自己分析している。

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宇宙から見れば国境はない 瞑想の部屋に込めた考え

月の部屋に腰を下ろして、長坂は部屋の意図を語った。スタジオ訪問では自分がアーティストで、来訪者は観察者になってしまいがちだ。だが長坂が伝えたいのは、誰もが持つ創造性がこれからいかに大切になるかということだという。

宇宙から青い地球を見れば国境の線は一本もない。奇跡的な瞬間を、84億の魂が平等に息をしながら輝いて生きているだけだ。それなのに人間は線を引きたがり、お金、貧富、国境、人権など、自分たちが作り上げた世界を世の中のすべてだと感じている。本当は自分たちが世界を作っているのではなく、生かされているのだと感じられれば、目に見えないところで困っている人にもっと優しくなれる。長坂はそう考えている。

その宇宙のスケールを体感してもらうため、暗い部屋に月と太陽を置き、月の香りの中で月を見てもらう。そのうえで長坂が宇宙や月をイメージした音を演奏し、来訪者に瞑想してもらう。収録でも実際に演奏が行われた。部屋にはたくさんの蝶が配されている。テーマは「バタフライ・エフェクト」で、どんなに弱い願いでもみんなが集まれば地球上に旋風を起こせるという意味を込めている。

長坂はこの音には言語が要らないと強調した。PIVOTで語られるような、サステナブル・キャピタリズムとは何か、貧困をどう解決するかといった話も大切だ。だが人間にとってより本質的に必要なのは、心で感じることだという。太陽の光を月が反射して届けるように、人も自分の心を振り返る必要がある。外から入る大量の情報ではなく、人間とは何か、なぜ自分はここに存在するのかという根源を理解しなければ、人類の探求はゴールに届かない。この部屋は長坂自身の瞑想の場であると同時に、来訪者が社会に尽くす働き手としてではなく一人の人間として自分をリセットする場でもある。

この流れで、長坂は大阪万博にも触れた。月をテーマに、月の形をした高さ6メートルほどのクラゲの作品をパビリオンで展示した。中島さんらメインプロデューサーと一緒に取り組み、何百万人もの人に見てもらったという。こうした小さな活動の積み重ねから、作品や空間ができ始めたと長坂は振り返る。

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森で半年暮らして気づいた「24の季節」

部屋には新作もある。長坂は昨年12月、福井県の美術館「金津創作の森」で大規模な個展を開いた。その頃の半年間はひどく疲れていて、キャンピングカーを森に停め、半年間そこで暮らしたという。

森で過ごすうちに、長坂は日本の「美しい四季」という表現は間違いだと気づいた。実際には2週間に1回ずつ季節が変わっていく。木々の様子が変わり、森を支配する動物、虫、キノコ、花も2週間ごとに入れ替わる。長坂はこれに感動し、季節は24あると発表した。すると、昔の農村には「二十四節気」という言葉があったと知らされたという。長坂自身はその言葉を知らなかった。森に半年いたことで得たインスピレーションだったと話す。

作品は、太陽のエネルギーが生み出す24の季節を抽象的な色の重なりで表現し、そこに虹色に光る満月を描いたものだ。月らしい色はしていないが、長坂の中ではこれが月だという。画面の右側には太陽を配している。

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資本主義の源は太陽光 お金は「仮想エネルギー」

太陽を描いた理由として、長坂は独自の資本主義論を語った。長坂はまず佐藤に、仮想通貨は何を仮想しているのかと問いかける。答えは「通貨」だ。では、目の前にある紙幣は何を仮想したものなのか。突き詰めると、それはエネルギーだと長坂は言う。紙切れにすぎない1万円を渡して「働いてください」と頼めば、相手は自分のエネルギーを捧げてくれる。つまりお金は仮想エネルギーだという理屈である。

そのエネルギーの出どころについて、長坂はこう説明した。太陽が数億年にわたって地球に降り注ぎ、生物などの有機物が地中で圧縮されてエネルギーになった。これが「太陽の資本」であり、いわば数億年かけて充電されたバッテリーだ。石油製品が台頭したのを約70年前と仮定すれば、人類はその数億年分のチャージを半世紀ほどで使い果たしてきた。1万円で1人を雇うのではなく、一度に1万人、100万人を雇って文明を耕すようにして進化してきたのが資本主義だ、と長坂は言う。

キャピタル(資本)とはもともと地球の資源であり、撮影用の照明に使われる電気も、元をたどれば太陽エネルギーを石油として掘り出し、光に変えているにすぎない。お金もエネルギーもすべて太陽から来ている。そうした根本的な世界を感じてもらうために、この部屋には太陽が必要なのだという。作品の価格は800万円ほどだと長坂は答えた。

「現代アート」かどうかにこだわらない

佐藤は、自分はアートの初心者で、現代アートは難しくてよく分からないという印象があると打ち明けた。長坂は、自分の作品は現代に生きている作家のものだから分類上は現代アートかもしれないとしつつ、そこには全くこだわっていないと答えた。焦点を当てているのは、美術とは何か、本質的な世界を自分が映し出し表現できるかどうかだけだという。

分かる、分からないではなく、心で感じてほしいということか、と佐藤が確かめると、長坂はこの部屋に関しては本当にそうだと答えた。難しい話をする前に、直感をつかさどる右脳でまず感じ、自分を中立に戻すことが大事だという。ビジネスパーソンも記者も視聴者も、もっと感じられるものがあるはずだ。その意味でこの部屋はデトックスの場所かもしれない、と長坂は話した。

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プレビュールーム トランスポーター、仮面の化身、スラムの会議室

次の部屋は、完成した作品を並べるプレビュー用の空間だ。入口で迎える立体作品は「トランスポーター」シリーズの一つで、ガーナの星を輝かせようと、みんなでよちよちと運びながら行動を起こしていく希望のイメージだという。素材には、ガーナで集めた古いVHSテープも使っている。

ガーナのバウレ族の仮面から着想した作品もある。仮面を見た瞬間にインスピレーションが湧き、「Nature is Angry」、つまりこんなものを土に捨てたことに怒った仮面が、電子ごみを鎧としてまとって立ち上がるという神話を自ら作ったという。鎖骨に見える部分には、掃除機かモップの部品が使われている。

室内にはスラムの建物を再現した構造物もある。もとは美術館の展示でスラムを再現した際に使ったもので、いまは社員の会議室として再利用している。現地のコンビニにあたる「キャンディショップ」も、実際にガーナで売られている乾き物を並べて再現した。屋根代わりに使われているのは、ガーナのメインロードに並ぶ大きな広告看板だ。看板は化学繊維のシートに印刷されており、スラムの人々はそれを屋根にしているという。ここで会議をすると当時のガーナを思い出せると長坂は話す。

トランスポーターの平面作品には、「私があなただったら自分のことをもっと愛する」といった前向きな言葉や、太陽や月が輝くといった言葉が書き込まれている。どれもスタジオでその時に感じたことを書いたもので、毎回必ず入れる要素はない。毎日キャンバスを見てから決める、思いつきだと長坂は言う。

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人が機械になる絵と、スーパーファミコンが問う加害性

油彩の一枚には、子どもが労働者になり、労働者が機械になり、人間が「Uber化」していく様子が描かれている。ごみを拾いながら働く少年がいつしか機械と一体化し、人がその後ろに乗れるようになっている。画中には「Uber」の文字があり、少年のキャップには「AMERICA」と書かれている。資本主義へのメッセージだ。長坂は、ロボタクシーのようにいままさにそうした話が現実になりつつあると指摘する。人と機械、職業の境目がなくなるのではないかという危惧を、言葉にする前に絵にする作業だと説明した。

「Black Star」の作品では、ガーナ国旗の赤・黄・緑がスラムの水面に映り込み、そこに真っ黒な星が沈み、周りに資本主義の堆積物が残る。焦げたように見えるよう仕上げた画面には、スーパーファミコンが埋め込まれている。佐藤が懐かしがり、遊んだことがあると答えると、長坂は「加害者の可能性がある」と返した。一度でも手に握ったことがあるものなら、自分たちの関わりはゼロではなくなる。それがこの作品のメッセージだという。

スラムでは、子どもたちが機器を燃やして中の金属を取り出し、売っている。紐をつけた磁石を引きずって、鉄くずを集めて売る子どももいる。金属はお金になるが、プラスチックはリサイクルが進んでいないため、燃えかすとして捨てられ、堆積していく。長坂はそういう悪循環があると説明した。

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なぜ動いたのか 「先進国民をやっていられない」

なぜその状況をなくそうと思えたのか。佐藤の問いに、長坂は、強い意思ももちろんあるが、それよりも「先進国民をやっていられない」と思ったのだと答えた。この真実を知ったうえで、何食わぬ顔で貧乏でも画家を目指すという選択肢は、自分の中からなくなった。先進国に戻ってスラムの記憶に蓋をすれば、何も動かない。だが心の中にその重みがずっと積もっていくと考えると、自分が自分でいられなくなる。テロを見てあれほどの作品を作ってしまうほど繊細な人間が、この危機を見て忘れたように先進国に戻るという選択肢はなかった、と長坂は語る。そして自分にできることはやはりアートだった。

ただし、最初から迷いがなかったわけではない。ごみを素材にすれば「ごみのアーティスト」というイメージがつくかもしれないし、それまでの画風とは全く異なる。それでも、平然と画家のふりを続けることは不可能だと思い、消去法で選んだという。できるかどうかではなく、やるかやらないか。思い切り声を上げ、情熱をかけて描いた作品に本当の思いが宿り、人の行動が動いた、と長坂は振り返る。

美術館で何十万人もの来場者を集め、作品も売れるようになると、「サステナブル・キャピタリズムという戦略が良かったのか」「裏にプロモーターがいるのか」とよく聞かれるという。長坂の答えは、そんなことは全くない、だ。作家の心が作品になり、その一枚が自分の人生、ガーナの人々やスラムの子どもたちの人生を描いていく。これをやればうまくいくという策略はなく、純粋な思いが作品になったのが出発点だった。その現象を後から論理的に言葉にしたのがサステナブル・キャピタリズムであり、いまでは本にもまとめ、アメリカでも研究していくという。長坂はこれを「逆説」と呼び、こんなものが世の中に存在していていいわけがないという思いからすべてが始まったと話した。

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「真実の海」 寄付された古着が捨てられる浜

電子ごみではない作品もある。「真実の海」と題した作品の舞台は、スラムから15分ほど離れた海岸だ。そこには先進国から寄付された大量の衣服が捨てられている。

長坂の説明によれば、寄付された服を受け取った業者や団体は、それを貧困層に小売りしている。売ればえり好みが始まり、売れ残りで倉庫がいっぱいになると次の商売ができなくなるため、海岸に捨てに来るのだという。初めてその光景を見た長坂は大きなショックを受け、どうなるか分からないがとにかく掃除しようとビーチクリーニングを始めた。作品には、その村に住む女の子を描き、清掃で集めた衣服を再構成して画面を作った。

長坂は2020年に自ら撮影した写真も見せた。浜を埋め尽くしているのはすべて服だという。海洋ごみが浜に打ち上がって衣服だけになることは物理的にありえないから、意図的に捨てられている証拠だと長坂は指摘する。同じ場所を清掃後に撮った写真と並べ、ここまできれいにしたと示した。

34:01

熱分解炉、ブロック、そして「ブラックスター・ダイヤモンド」

清掃を進めると、今度は自社の倉庫が回収した服でいっぱいになるという問題が起きた。そこで日本から熱分解炉を持ち込んだ。あらゆる有機物を大幅に圧縮できる機械で、長坂の説明では2000トンあった服を10トンの灰に変えた。この灰を固めてブロックを作り、ブロックの60%は洋服由来だという。この機械は価値にして1500万円ほどだが、最初は何も考えず、こんなに汚れているのは嫌だ、掃除しようという一心だったと長坂は語る。

しかし、また壁にぶつかった。どれほど思いを込めて作っても、ブロックはブロックで、100円か200円程度の値段にしかならない。手間暇をかけて圧縮しても、なかなか差別化できなかった。

そこで長坂は、灰に含まれる炭素をさらに圧縮すればダイヤモンドになるのではないかと考えた。約2年前から研究を重ねて完成したのが、収録で披露された0.5カラットの人工ダイヤモンドだ。長坂は、天然のダイヤモンドにも美しいものはたくさんあるとしたうえで、これは海のごみを掃除した自分たちの汗と努力が結晶化して輝く石だと語った。名前は「ブラックスター・ダイヤモンド」。どんな黒い星も努力と汗の結晶で輝かせられることの一つの証明だという。価格は100万円で、今年4つ限定で発売する予定だと話した。

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サステナブル・キャピタリズムは実行可能なのか

最後に佐藤は、サステナブル・キャピタリズムとはどういう概念かを改めて尋ねた。長坂の定義は、文化の提供、環境への貢献、経済への寄与という三つのバランスを計算して組み込んだ流れだ。ガーナのエネルギーが作品になって輝いている。もし秋葉原の家電を素材にしたアーティストだったら、ここまで売れていないことは誰にでも分かるはずだ、と長坂は言う。そのうえで、資本とレバレッジが効く資本主義の仕組みを掛け合わせた「ハイブリッド」が原点だと説明した。

長坂はアーティストであると同時に、ガーナで会社を経営する企業家でもある。長坂によれば、ガーナには企業を格付けするCRDという金融機関があり、自社は5万4000社中1位の評価を受けた。これがサステナブル・キャピタリズムに実行可能性があることの一つの証明になったと長坂は語る。収録の終盤、話題はアメリカへの特別な思いに移りかけたが、その中身は次回に持ち越された。