電子ごみのアートで資本主義は変えられるか 長坂真護がアトリエで語った原点とサステナブル・キャピタリズム
PIVOT 公式チャンネルPIVOTの佐藤が美術家・長坂真護のアトリエを訪ね、「ごみを使ったアートで資本主義を変えられるのか」を聞いた。長坂は、西アフリカ・ガーナのスラム「アグボグブロシー」に先進国から流れ着いた電子機器の廃棄物を回収し、作品の素材にしている。作品の売上を現地の雇用に回す仕組みを、本人は「サステナブル・キャピタリズム」と呼ぶ。この回は作品を一つずつ見ながら、パリ同時多発テロの現場で味わった無力感、ガーナへ向かった理由、廃棄衣服からダイヤモンドを作る試みまでをたどった。
ごみを清掃し、先進国に戻し、収益をスラムに返す
長坂は毎日このアトリエで制作している。活動の流れは次のとおりだ。アグボグブロシーには先進国の電子機器の廃棄物が大量に投棄されている。長坂のチームがそれを清掃して回収し、先進国に持ち帰る。回収物は絵の具のように画面に使うこともあれば、作品のフレームにすることもある。完成した作品を発表して得た収益で、スラムの人々を雇用する。佐藤が「アートを売って収益を得て、また現地に戻す。それがサステナブル・キャピタリズムという理解でいいか」と確認すると、長坂は「間違いない」と答えた。
代表作「真実の湖」と、ごみから作るフィギュア
最初に紹介されたのは代表作の一つ「真実の湖」シリーズだ。素材は長坂自身が清掃で集めたもので、大地に捨てられていた状態を画面上に再現している。長坂によれば、アグボグブロシーはもともとラグーンと呼ばれる湿地帯で、積み重なったごみをより分けると真っ黒な水が湧き上がってくる。この作品では、先進国が捨てた大量の堆積物をより分けた先に現れる湖面に、真実の美しさを見たという。描かれているのは現地で出会ったマリアという女性だ。きれいな花と壊れたスマートフォンを手に持ち、こちらをちらりと見ている。長坂はこの一枚を、先進国と貧困国をつなぐ作品として位置づけている。
制作では、まず廃棄物を使って背景を作り、その上に素材を配置してから絵の具を施す。長坂はこれを、作品のパーツが持つエネルギーを引き出す作業だと説明した。立体のフィギュアも作っており、これも売れているという。素材はすべてガーナのごみの再利用で、目にはパソコンのキーボードのキーを、眉毛には加工したプラスチックを使っている。
「ロマネ」シリーズ 筆一本が1000万円になるとき
「ロマネ」シリーズの一作は、長坂自身の手と、スタジオで使い古して固くなった筆を組み合わせた作品だ。約1000万円で売れたという。
長坂はこの作品のメッセージをこう説明した。もしこの筆がピカソの生前に使っていたものなら、それだけで1000万円の価値があるのではないか。いまはガーナの素材、筆、作家の手をすべて合わせて1000万円で売っている。だが自分がノーベル賞を取ったり、アメリカで活躍したりして、もっと世間に知られれば、筆一本だけで1000万円の価値を持つようになる。そうなれば、この作品は実質的に「ただ」になる。作家としてピカソを超えたときに初めて、作品がさらに飛び立つ。そこまで作品を通じて到達していく意思を表現したのだという。
「Freedom & Justice 1957」と「Still A Black Star」
作品にたびたび書き込まれる「FREEDOM & JUSTICE 1957」という言葉にも由来がある。ガーナは1957年に独立し、自由とは何か、正義とは何かを問い直すことをスローガンに掲げた。長坂は、私たちはいまその言葉どおりに生きられているのかを自分のテーマとしており、そのためこの言葉を繰り返し使っている。
もう一つのキーワードが「Still A Black Star(まだ黒い星)」だ。ガーナ国旗の中央には黒い星がある。長坂は、この星が黒いのは「まだ私たちの人権や自由は輝いていない」という意味だと聞いたという。奴隷制の歴史や社会経済的な不利など、多くの問題を抱える国を必ず輝かせる。その意味を込めて、2017年から「Still A Black Star」という個展を始めた。月をテーマにした作品の背景には、長坂の会社がガーナで経営するリサイクル工場から出たチップを貼っている。
長坂の主なシリーズは「月」「ガーナ」「新世界」、そして路上の絵描きだった頃の「路上時代」で構成されている。
月の部屋 パリ同時多発テロで絵が描けなくなった
隣の暗い部屋は「ムーンルーム(月の部屋)」と呼ばれている。入った瞬間から香りが漂う。イタリアのパフューマーに依頼して作ったオリジナルの香水で、「月の香り」をイメージしたウッディな匂いだ。
この部屋には路上の絵描き時代の作品も置かれている。長坂はもともとパリの街並みに憧れ、写真のような絵を描いていた。その後、人を殺す道具である拳銃などを否定する意味を込めた「NO」という作品を2015年8月に発表した。そのわずか3か月後にパリ同時多発テロが起き、長坂は現場を訪れた。惨劇を目にして、こういう絵を描いても世の中を少しも良くできないではないかと、深く失望したという。
パリをさまよっていたとき、長坂は満月に出会い、はっと気づいた。自分が戦争をなくすという大きな願いを抱くのではない。出会った一人ひとりに平和とは何かを伝える草の根の活動なら、自分にもできる余地がある。そう考えて従来の作品づくりを一切やめ、あの日の満月が教えてくれた宇宙の広がりや平和な心をイメージした「満月」の作品を2015年に描き始めた。この頃から、平和とは何か、人権とは何か、なぜ殺戮がなくならないのかという根本的な社会問題に強く引き寄せられ、社会活動の道に進んだという。そのわずか2年後にガーナへ渡っているため、絵描きとしての人生をたどるうえで大切なシリーズだと長坂は話す。
実は佐藤もテロの直後に取材で現場に入っていた。佐藤は「仕事だと思ったら怖くなかった」と振り返り、現場がまだ生々しく残っていたことや、ふと見上げた空をよく覚えているという。長坂も街の様子をよく覚えていると応じた。それだけ周囲を警戒し、街のささいな変化に敏感になっていたからだという。祈る人たちがたくさんいる中で、なぜ無作為に人が殺されるのか、なぜこんなに不条理なのかと考えた。報道として現地にいた佐藤とは違い、自分は絵を描くことで何に貢献できているのか。そう思うと悲しくなり、絵が描けなくなった。そこから月を見て、戦争をなくすのではなく「伝えよう」という方向に転じたのだという。
路上の絵描き時代の資金源とガーナへの道
戦争をなくしたい、世界を平和にしたいという思いは、もともとアートを通じて伝えたいと考えていたのか。佐藤がそう尋ねると、長坂は「ありました」と答えた。
長坂は世界15か国で路上の絵描きをしていた。お金がない中で旅を続けられたのは、電子機器の買い付けをしていたからだ。ニューヨークでiPadを買い、日本のYahoo!で売る「せどり」という方法で、アルバイトをせずに路上での制作を続けていた。その後、ガーナが「電子機器の墓場」になっているというニュースを聞き、自分の買い付けが人の命を奪い、人権や環境の問題に大きく関わっているのではないかと考えた。いても立ってもいられなくなり、ガーナに向かったという。
長坂によれば、中国でもパリでも、旅先ではいつもホームレスの人たちに目が向いていた。「たぶん」と前置きしたうえで、もともとそういうことが気になる性分で、気づいたら平和を考えるアーティストに少しずつ変わっていったのではないかと自己分析している。
宇宙から見れば国境はない 瞑想の部屋に込めた考え
月の部屋に腰を下ろして、長坂は部屋の意図を語った。スタジオ訪問では自分がアーティストで、来訪者は観察者になってしまいがちだ。だが長坂が伝えたいのは、誰もが持つ創造性がこれからいかに大切になるかということだという。
宇宙から青い地球を見れば国境の線は一本もない。奇跡的な瞬間を、84億の魂が平等に息をしながら輝いて生きているだけだ。それなのに人間は線を引きたがり、お金、貧富、国境、人権など、自分たちが作り上げた世界を世の中のすべてだと感じている。本当は自分たちが世界を作っているのではなく、生かされているのだと感じられれば、目に見えないところで困っている人にもっと優しくなれる。長坂はそう考えている。
その宇宙のスケールを体感してもらうため、暗い部屋に月と太陽を置き、月の香りの中で月を見てもらう。そのうえで長坂が宇宙や月をイメージした音を演奏し、来訪者に瞑想してもらう。収録でも実際に演奏が行われた。部屋にはたくさんの蝶が配されている。テーマは「バタフライ・エフェクト」で、どんなに弱い願いでもみんなが集まれば地球上に旋風を起こせるという意味を込めている。
長坂はこの音には言語が要らないと強調した。PIVOTで語られるような、サステナブル・キャピタリズムとは何か、貧困をどう解決するかといった話も大切だ。だが人間にとってより本質的に必要なのは、心で感じることだという。太陽の光を月が反射して届けるように、人も自分の心を振り返る必要がある。外から入る大量の情報ではなく、人間とは何か、なぜ自分はここに存在するのかという根源を理解しなければ、人類の探求はゴールに届かない。この部屋は長坂自身の瞑想の場であると同時に、来訪者が社会に尽くす働き手としてではなく一人の人間として自分をリセットする場でもある。
この流れで、長坂は大阪万博にも触れた。月をテーマに、月の形をした高さ6メートルほどのクラゲの作品をパビリオンで展示した。中島さんらメインプロデューサーと一緒に取り組み、何百万人もの人に見てもらったという。こうした小さな活動の積み重ねから、作品や空間ができ始めたと長坂は振り返る。
森で半年暮らして気づいた「24の季節」
部屋には新作もある。長坂は昨年12月、福井県の美術館「金津創作の森」で大規模な個展を開いた。その頃の半年間はひどく疲れていて、キャンピングカーを森に停め、半年間そこで暮らしたという。
森で過ごすうちに、長坂は日本の「美しい四季」という表現は間違いだと気づいた。実際には2週間に1回ずつ季節が変わっていく。木々の様子が変わり、森を支配する動物、虫、キノコ、花も2週間ごとに入れ替わる。長坂はこれに感動し、季節は24あると発表した。すると、昔の農村には「二十四節気」という言葉があったと知らされたという。長坂自身はその言葉を知らなかった。森に半年いたことで得たインスピレーションだったと話す。
作品は、太陽のエネルギーが生み出す24の季節を抽象的な色の重なりで表現し、そこに虹色に光る満月を描いたものだ。月らしい色はしていないが、長坂の中ではこれが月だという。画面の右側には太陽を配している。
資本主義の源は太陽光 お金は「仮想エネルギー」
太陽を描いた理由として、長坂は独自の資本主義論を語った。長坂はまず佐藤に、仮想通貨は何を仮想しているのかと問いかける。答えは「通貨」だ。では、目の前にある紙幣は何を仮想したものなのか。突き詰めると、それはエネルギーだと長坂は言う。紙切れにすぎない1万円を渡して「働いてください」と頼めば、相手は自分のエネルギーを捧げてくれる。つまりお金は仮想エネルギーだという理屈である。
そのエネルギーの出どころについて、長坂はこう説明した。太陽が数億年にわたって地球に降り注ぎ、生物などの有機物が地中で圧縮されてエネルギーになった。これが「太陽の資本」であり、いわば数億年かけて充電されたバッテリーだ。石油製品が台頭したのを約70年前と仮定すれば、人類はその数億年分のチャージを半世紀ほどで使い果たしてきた。1万円で1人を雇うのではなく、一度に1万人、100万人を雇って文明を耕すようにして進化してきたのが資本主義だ、と長坂は言う。
キャピタル(資本)とはもともと地球の資源であり、撮影用の照明に使われる電気も、元をたどれば太陽エネルギーを石油として掘り出し、光に変えているにすぎない。お金もエネルギーもすべて太陽から来ている。そうした根本的な世界を感じてもらうために、この部屋には太陽が必要なのだという。作品の価格は800万円ほどだと長坂は答えた。
「現代アート」かどうかにこだわらない
佐藤は、自分はアートの初心者で、現代アートは難しくてよく分からないという印象があると打ち明けた。長坂は、自分の作品は現代に生きている作家のものだから分類上は現代アートかもしれないとしつつ、そこには全くこだわっていないと答えた。焦点を当てているのは、美術とは何か、本質的な世界を自分が映し出し表現できるかどうかだけだという。
分かる、分からないではなく、心で感じてほしいということか、と佐藤が確かめると、長坂はこの部屋に関しては本当にそうだと答えた。難しい話をする前に、直感をつかさどる右脳でまず感じ、自分を中立に戻すことが大事だという。ビジネスパーソンも記者も視聴者も、もっと感じられるものがあるはずだ。その意味でこの部屋はデトックスの場所かもしれない、と長坂は話した。
プレビュールーム トランスポーター、仮面の化身、スラムの会議室
次の部屋は、完成した作品を並べるプレビュー用の空間だ。入口で迎える立体作品は「トランスポーター」シリーズの一つで、ガーナの星を輝かせようと、みんなでよちよちと運びながら行動を起こしていく希望のイメージだという。素材には、ガーナで集めた古いVHSテープも使っている。
ガーナのバウレ族の仮面から着想した作品もある。仮面を見た瞬間にインスピレーションが湧き、「Nature is Angry」、つまりこんなものを土に捨てたことに怒った仮面が、電子ごみを鎧としてまとって立ち上がるという神話を自ら作ったという。鎖骨に見える部分には、掃除機かモップの部品が使われている。
室内にはスラムの建物を再現した構造物もある。もとは美術館の展示でスラムを再現した際に使ったもので、いまは社員の会議室として再利用している。現地のコンビニにあたる「キャンディショップ」も、実際にガーナで売られている乾き物を並べて再現した。屋根代わりに使われているのは、ガーナのメインロードに並ぶ大きな広告看板だ。看板は化学繊維のシートに印刷されており、スラムの人々はそれを屋根にしているという。ここで会議をすると当時のガーナを思い出せると長坂は話す。
トランスポーターの平面作品には、「私があなただったら自分のことをもっと愛する」といった前向きな言葉や、太陽や月が輝くといった言葉が書き込まれている。どれもスタジオでその時に感じたことを書いたもので、毎回必ず入れる要素はない。毎日キャンバスを見てから決める、思いつきだと長坂は言う。
人が機械になる絵と、スーパーファミコンが問う加害性
油彩の一枚には、子どもが労働者になり、労働者が機械になり、人間が「Uber化」していく様子が描かれている。ごみを拾いながら働く少年がいつしか機械と一体化し、人がその後ろに乗れるようになっている。画中には「Uber」の文字があり、少年のキャップには「AMERICA」と書かれている。資本主義へのメッセージだ。長坂は、ロボタクシーのようにいままさにそうした話が現実になりつつあると指摘する。人と機械、職業の境目がなくなるのではないかという危惧を、言葉にする前に絵にする作業だと説明した。
「Black Star」の作品では、ガーナ国旗の赤・黄・緑がスラムの水面に映り込み、そこに真っ黒な星が沈み、周りに資本主義の堆積物が残る。焦げたように見えるよう仕上げた画面には、スーパーファミコンが埋め込まれている。佐藤が懐かしがり、遊んだことがあると答えると、長坂は「加害者の可能性がある」と返した。一度でも手に握ったことがあるものなら、自分たちの関わりはゼロではなくなる。それがこの作品のメッセージだという。
スラムでは、子どもたちが機器を燃やして中の金属を取り出し、売っている。紐をつけた磁石を引きずって、鉄くずを集めて売る子どももいる。金属はお金になるが、プラスチックはリサイクルが進んでいないため、燃えかすとして捨てられ、堆積していく。長坂はそういう悪循環があると説明した。
なぜ動いたのか 「先進国民をやっていられない」
なぜその状況をなくそうと思えたのか。佐藤の問いに、長坂は、強い意思ももちろんあるが、それよりも「先進国民をやっていられない」と思ったのだと答えた。この真実を知ったうえで、何食わぬ顔で貧乏でも画家を目指すという選択肢は、自分の中からなくなった。先進国に戻ってスラムの記憶に蓋をすれば、何も動かない。だが心の中にその重みがずっと積もっていくと考えると、自分が自分でいられなくなる。テロを見てあれほどの作品を作ってしまうほど繊細な人間が、この危機を見て忘れたように先進国に戻るという選択肢はなかった、と長坂は語る。そして自分にできることはやはりアートだった。
ただし、最初から迷いがなかったわけではない。ごみを素材にすれば「ごみのアーティスト」というイメージがつくかもしれないし、それまでの画風とは全く異なる。それでも、平然と画家のふりを続けることは不可能だと思い、消去法で選んだという。できるかどうかではなく、やるかやらないか。思い切り声を上げ、情熱をかけて描いた作品に本当の思いが宿り、人の行動が動いた、と長坂は振り返る。
美術館で何十万人もの来場者を集め、作品も売れるようになると、「サステナブル・キャピタリズムという戦略が良かったのか」「裏にプロモーターがいるのか」とよく聞かれるという。長坂の答えは、そんなことは全くない、だ。作家の心が作品になり、その一枚が自分の人生、ガーナの人々やスラムの子どもたちの人生を描いていく。これをやればうまくいくという策略はなく、純粋な思いが作品になったのが出発点だった。その現象を後から論理的に言葉にしたのがサステナブル・キャピタリズムであり、いまでは本にもまとめ、アメリカでも研究していくという。長坂はこれを「逆説」と呼び、こんなものが世の中に存在していていいわけがないという思いからすべてが始まったと話した。
「真実の海」 寄付された古着が捨てられる浜
電子ごみではない作品もある。「真実の海」と題した作品の舞台は、スラムから15分ほど離れた海岸だ。そこには先進国から寄付された大量の衣服が捨てられている。
長坂の説明によれば、寄付された服を受け取った業者や団体は、それを貧困層に小売りしている。売ればえり好みが始まり、売れ残りで倉庫がいっぱいになると次の商売ができなくなるため、海岸に捨てに来るのだという。初めてその光景を見た長坂は大きなショックを受け、どうなるか分からないがとにかく掃除しようとビーチクリーニングを始めた。作品には、その村に住む女の子を描き、清掃で集めた衣服を再構成して画面を作った。
長坂は2020年に自ら撮影した写真も見せた。浜を埋め尽くしているのはすべて服だという。海洋ごみが浜に打ち上がって衣服だけになることは物理的にありえないから、意図的に捨てられている証拠だと長坂は指摘する。同じ場所を清掃後に撮った写真と並べ、ここまできれいにしたと示した。
熱分解炉、ブロック、そして「ブラックスター・ダイヤモンド」
清掃を進めると、今度は自社の倉庫が回収した服でいっぱいになるという問題が起きた。そこで日本から熱分解炉を持ち込んだ。あらゆる有機物を大幅に圧縮できる機械で、長坂の説明では2000トンあった服を10トンの灰に変えた。この灰を固めてブロックを作り、ブロックの60%は洋服由来だという。この機械は価値にして1500万円ほどだが、最初は何も考えず、こんなに汚れているのは嫌だ、掃除しようという一心だったと長坂は語る。
しかし、また壁にぶつかった。どれほど思いを込めて作っても、ブロックはブロックで、100円か200円程度の値段にしかならない。手間暇をかけて圧縮しても、なかなか差別化できなかった。
そこで長坂は、灰に含まれる炭素をさらに圧縮すればダイヤモンドになるのではないかと考えた。約2年前から研究を重ねて完成したのが、収録で披露された0.5カラットの人工ダイヤモンドだ。長坂は、天然のダイヤモンドにも美しいものはたくさんあるとしたうえで、これは海のごみを掃除した自分たちの汗と努力が結晶化して輝く石だと語った。名前は「ブラックスター・ダイヤモンド」。どんな黒い星も努力と汗の結晶で輝かせられることの一つの証明だという。価格は100万円で、今年4つ限定で発売する予定だと話した。
サステナブル・キャピタリズムは実行可能なのか
最後に佐藤は、サステナブル・キャピタリズムとはどういう概念かを改めて尋ねた。長坂の定義は、文化の提供、環境への貢献、経済への寄与という三つのバランスを計算して組み込んだ流れだ。ガーナのエネルギーが作品になって輝いている。もし秋葉原の家電を素材にしたアーティストだったら、ここまで売れていないことは誰にでも分かるはずだ、と長坂は言う。そのうえで、資本とレバレッジが効く資本主義の仕組みを掛け合わせた「ハイブリッド」が原点だと説明した。
長坂はアーティストであると同時に、ガーナで会社を経営する企業家でもある。長坂によれば、ガーナには企業を格付けするCRDという金融機関があり、自社は5万4000社中1位の評価を受けた。これがサステナブル・キャピタリズムに実行可能性があることの一つの証明になったと長坂は語る。収録の終盤、話題はアメリカへの特別な思いに移りかけたが、その中身は次回に持ち越された。
皆さん、こんにちは。PIVOTの佐藤です。今回はゴミを使ったアートで資本主義を変えられるのかがテーマです。お話をお伺いするのは、アフリカ、ガーナの電子ゴミを使ってアート作品を作っていらっしゃいます長坂真護さんです。よろしくお願いします。
こんにちは。よろしくお願いします。
今日は特別にスタジオというかアトリエにお邪魔させていただいていますけれども、ここで普段作業されてるんですか?
そうですね。ここは僕のアトリエで、制作を毎日ここでやってます。
電子ゴミを使ったアートというのが、まさにこちらにあるような。
そうですね。西アフリカのガーナ、アグボグブロシーと呼ばれるスラムで、大量の先進国の電子機器の廃棄物が投棄されていて、それを僕らが清掃して、そしてまた先進国に戻して、絵の具のように使ったり、あとは作品を構成するフレームに使用したり、再利用して作品を世間に発表する。その作品の収益を使って、またスラムに再雇用したりとか、そういった活動をアートを通してやってます。
そのアートを売って収益を得て、また戻すというのが、提唱していらっしゃるサステナブル・キャピタリズムという理解でいいですか?
そうですね。間違いないです。
作品をご紹介いただきながら、その資本主義の次の概念と言われるサステナブル・キャピタリズムについて、お話を伺っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。これもまだ今……。
これは僕の代表作の1つなんですけれども、「真実の湖」というシリーズです。これ、僕が実際清掃したものです。本当に大地に捨ててあるものを再現して、元々アグボグブロシーっていう地域が湿地帯なんですよ。ラグーンと言われていて、より分けると真っ黒い湖の水が湧き上がってくるんですね。
この作品っていうのは、こういう先進国が捨ててしまったたくさんの蓄積物をより分けると出てくる、この水面に映る真実の美しさで、ここで育ったマリアっていうモデルを今回描いて。その子が美しく、綺麗な花を持って、壊れたスマートフォンを持って、こっちをちらっと見てるような、先進国と貧困国をつなぐ1枚として生まれたのが、この真実です。
この後ろでもいい?
これもそうですね。こういう廃棄物を使って背景を描いて、これを配置して、この後に絵の具で施して、さらにこの作品のパーツの持つエネルギーってものを引き出していく作業ですね。
こういうフィギュアも制作してて、これも売れてるんですけど、こういうちょっとした素材。これ全部ガーナのゴミを再利用して、これキーボード、パソコンの。
それは分かりました。鼻、目とかもそうなんですね。
プラスチックを加工して、眉毛とかもこういう立体作品に使わせてもらったりしてますね。
このお名前はあれですか?
これね、ロマネっていうシリーズで。
この手にもいろいろ描いてあります。
これも僕の手ですね。
そうなんですね。
これ、スタジオで使った固くなっちゃった筆で、僕が使ってた。これ、1000万ぐらいで売れたんですけど。
すごい。
要は、もしこの筆がピカソが生前使ってた筆だったら、これで1000万の価値あるんじゃないかみたいな。つまり、今僕が1000万で販売するこの作品は、全部込みで1000万なんですけど、僕がノーベル賞取ったり、アメリカで活躍したり、もっともっと世間に認知されたら、この1本が1000万の価値になったら、これタダでしょっていうメッセージ。ピカソを超えた時に初めて、この作品はさらに飛び立っていくっていうか。
これがピカソの手だったらどうですかっていう、それだけで価値が感じられるようなとこまで、作品を通してやっていくっていうのを表現した作品で、ガーナ、そしてこの筆の再利用、そして作家の手っていうのが一緒になった作品です。
どんな方が買われるんですか?
そうですね。経営者。経営者なのかな。秘密。
経営者の方。日本の方ですか?
日本ですかね。日本。
後ろはフリーダムって書いて。フリーダム、ジャスティス。
そう、ジャスティス。フリーダム。1957年にガーナが独立して、自由とは何か、正義とは何かを問うっていう、そのスローガンに僕たちは今生きれてるかっていうのが自分の中のテーマで、よくこの言葉を用いて使ってます。フリーダム&ジャスティス、1957。
他の作品にも。
「Still a Black Star」っていう、まだ黒いガーナを輝かせる。奴隷社会、経済的な不利、たくさんの問題を抱えている発展国を必ず輝かせるっていう意味で、ガーナの黒星を輝かせる。
なるほど。
それも1950年に国旗がデザインされて、なんで黒星かと言うと、まだ僕たちの人権や自由は輝いてないっていうテーマがあると聞いてですね。10年前から、2017年から「Still a Black Star」っていう個展を開始して。これもそうですね。これもガーナのリサイクル工場で生まれたチップ、うちが経営してるチップを貼ってですね。これは月の作品の背景に使ってます。
このシリーズがいくつか、やっぱりあるんですね。
そうですね。自分の中の代表的なシリーズが何個かあって、月、ガーナ、あと新世界、あと昔は路上の絵描きだった路上時代という、主な構成でやってます。
なるほど。一番最初だった、その路上の絵、見せていただいていいですか?
あるかな。多分次の部屋にあったかなと。あるか? 次の部屋にある? あったかな?
ここは、なんか暗い。
ここがムーンルーム、月の部屋と言われてる。
すごい。そして入った瞬間から、すごいいい香りがしています。これ何なんでしたっけ?
イタリアのパフューマーにお願いして、月の香りっていう、ちょっとウッディな匂いを使ってですね、チップを使って作ったオリジナルの香水です。
そこに、まさに路上の絵描きだった時に、パリの同時テロで。元々パリの写実に憧れて、こんな写真みたいなのを描いてたんですね。これは人を殺す道具を皮膚で否認して、拳銃もどっちも人を作らない要素のあるものじゃないですか。これをカバーして、ノーみたいな。掛け合わせることによって「ノー」っていう作品を発表してたんですけど、この作品を2015年8月に発表してから、わずか3か月で同時多発テロが起こって、僕、その現場に行ってたんですね。
それでテロの惨劇を見て、こういう絵を描いてもちっとも世の中、自分はよくできないじゃないかって言って、失望をしていた時に、パリを放浪してる時に満月に出会ってですね。はっと気づいたことがあって、それが、自分が戦争をなくすっていうおごりを持つんじゃなくて、出会った一人一人に対して平和っていうものは何かって伝えるような、草の根運動は自分にもできる余地があるなっていうので。
あの日見た満月が教えてくれた宇宙の広がりとか平和な心とか、そういったものをイメージして、こういう作品を一切やめて、満月、月の作品っていうのをやり始めたのが2015年。その時から平和とは何か、人権とは何か、なぜ殺戮がこの世の中にあるのかみたいな、抜本的な社会的問題、そこの構造にすごく心が、自分のDNAが呼ばれてるような気がしてですね。どんどんこういう社会活動というか、そういう道に進んでいった1つのきっかけのシリーズではある。
そのわずか2年後、ガーナに行ってますから、ここも自分の絵描きの人生をたどる中では、すごく大切な作品のシリーズの1つです。
元々でも、戦争をなくすとか、そういう世界平和みたいな思いは、アート作品を通じて伝えたいっていう思いはあった?
ありましたね。僕、世界15か国、路上の絵描きやってたんですよ。貧乏でお金がなくて、どうやって世界中旅してたかって言うと、電子機器の買い付けをしてたんですよ。ニューヨークに行ってiPad買って、それを日本でYahoo!で売るみたいな、せどりっていう方法で、バイトをせずに世界中で、貧乏だけど路上の絵描きができてたんですね。
そこからガーナが電子機器の墓場っていうニュースを聞いた時に、もしかして自分のやっていた買い付けが人の命を奪ったり、人権とか環境問題に大きく関与してるんじゃないかって思うと、いてもたってもいられず、それでガーナに行ったっていうことを考えて、全てが点と点がやがて面となってね。
やっぱり人を助けたいとか、世界中旅してる時に、常に中国行ってもパリ行っても、ホームレスとかそういう人にずっと僕、目が行ってたんですよ。多分ですけど、元々そういうことが気になる。気づいたら本当にガーナとか、そういう平和とか、そういったものを考えるアーティストに徐々に変わっていったんじゃないかなと思います。
初めここから始まり、月の絵になり、ガーナに出会うという。
そうです。
月の部屋では、ここ、いつもどうやって……。
座ってください。ちょっとこれ片付けて。スタジオビジットしてもらうとですね、さも僕がアーティストで、オブザーバーになってしまうんですけど。僕はそうじゃなくて、みんなが持ってるクリエイティビティが、いかにこの世にこれから大切になっていって。
もし地球っていうものを客観的に体感できるとですね、例えばここにいる皆さんが宇宙に行ってもらって、宇宙から青い地球を見たら、国境の線なんて1つもないし、ただ奇跡的なこの瞬間、刹那の瞬間を、84億の魂が平等に息しながらね、輝いて生きてるだけの瞬間じゃないですか。紛れもなくそうじゃないですか。
でも僕たちは線を引きたがり、お金とか貧富の差、国境、人権、社会問題、たくさんのものを僕たち人間が全て作り上げた世界を、世の中の全てのことだと感じて。でも本当は宇宙に行って、その奇跡的な状態を見ればですね、何か意図して世の中を作ってるんではなくて、僕たちは生かされてるんだってことを感じれば、目に見えない困る人に幾分優しくなれるなと思う。
その宇宙のスケールを感じてもらうために、暗い部屋に月とか太陽が存在していて、香りで月の香りを感じながら月を見て、そして僕、音を弾くんです、ここで。宇宙の音とか月の音っていうのを弾いて、それで皆さんメディテーションしてもらって。そこにある奇跡のこの瞬間の生命体の喜びを感じるみたいなのが、この部屋です。
じゃあ一瞬、お願いします。
蝶々がたくさんいるんですけど、バタフライエフェクト。どんなに弱い願いでも、みんなが集まれば地球上に旋風を起こすっていう、バタフライエフェクト、蝶の羽ばたきっていうのをテーマにしてやってます。
すごい、ありがとうございます。私、実はパリの同時テロの時、現場に行ったんですよ。直後に。
俺も直後に。
なので、取材に行った、同じ空気を吸ったっていうか。どこでもそうなんですけど。
あの時、怖くなかったですか、行くの?
それはでも仕事だと思ったら怖くなかったんですよ。まだ事件も起きてたんですけど、本当にやっぱり現場がすごい、まだそのまま残っていて。そういう時の、ふっと見上げた空とか、確かにすごく覚えてる。
僕、街のことすごい覚えてる。そんだけやっぱり警戒してるんですよ。街の些細な変化とか。祈ってる人たち、たくさんいたじゃないですか。
いました。
僕、なんで世の中って、こんなに無作為な人が殺されて、なんで不条理なんだろう。じゃあそれに対して自分は、報道で行ってたわけですけど、絵を描いて何に貢献できてるんだ。すごい悲しくなって、絵描けなくなったんですよ。
その時に月を見て、戦争をなくすとかじゃなくて伝えようみたいな。それで少しでも地球を感じたり、宇宙を感じられるように、こういう部屋ができたり、こういう曲を作ったり。たくさんのことを毎日やり続ける中で、こういう世界観ができてきて。
月っていうのがテーマで、大阪万博でも去年、クラゲっていう大きい月の形したクラゲの作品を、6メートルぐらいのクラゲで、パビリオンで中島さち子さんとかメインプロデューサーと一緒にやって。何百万人の人に見てもらって、本当にそういうちょっとした活動から、こういう作品、空間ができ始めた。だから今の音って、言語必要ないじゃないですか。
ないですね。
今、僕ら線を引いた言葉ばっかりいっぱい使わなきゃいけない。要はPIVOTで話すのは経済的な話も、サステナブル・キャピタリズムって何ですか、貧困ってどう解決するんですかみたいな、すごい大切なことなんですけど、僕たちがもっともっと人間の本質、本質的に必要なものは、心で感じることだと思うんです。
心で、月の太陽の輝きがリフレクション。それこそ太陽がリフレクションして僕たちに光を届けるように、僕たちの心もリフレクションして、顧みなきゃいけないことが実はたくさんある。競争にあるたくさんの情報じゃなくて、心の中で本当に人間とは、なんで僕はここに存在しているんだろうとか、たくさんの本質的な根源を理解していかないと、僕たちの人類の進化の探求のゴールには届かないっていうのを、僕は感じるために、自分のメディテーションでもあり。みんなもただここで働いて社会に尽くすんじゃなくて、ヒューマンとしてリセットできるような部屋。
これが、去年12月に金津創作の森っていう福井のミュージアムで、大規模個展をして。その時に半年間、僕すごい疲れていて、キャンピングカーを森に止めて、半年森に住んでたんですよ。その時、日本の美しい四季って言われる表現が間違いだってことに気づいて、季節が24個ある。2週間に1回、季節がどんどん変わっていくんです。
へえ。
森の中にある木々の様子が変わったり、その森を支配していた動物とか虫とかキノコとか花とか、2週間に1回、様子を変えていく。それを見てすごい感動して、「24シーズンズ」っていうのがあるって発表したら、なんと昔の言葉で二十四節気という言葉があった。
確かにありました。2週間に1回、その季節のものって。
本当にあった。
忘れてますね。
僕はその言葉はもちろん知らなかったし、森に半年いることによって気づいたインスピレーションがあって。それを、太陽のエネルギーが作り出した24の季節っていうものを、この抽象的な色の合成によって表現して、そこにレインボーに光る満月みたいなものを描いた。これも新しい作品で、これ一応月という、全然月の色してないんですけど、僕の中ではこれが月っていうので。右手が太陽。
僕たちの資本主義の源でもある太陽っていうのが、僕ら経済的な資本主義をよくPIVOTって語ってるんじゃないかなと思うんですけど。
はい。
そもそもの資本主義って何ですか。例えば仮想通貨って何の仮想ですか?
仮想通貨で? 仮想通貨、目に見えないもの?
いや、仮想通貨。何を仮想してますか?
頭の中。
違う。
違う?
仮想だ。通貨じゃないですか?
通貨。通貨があるはずだけど、それが仮想的。
じゃあお金、ここにあるお金って何を仮想したものなんですかって。
実体にあるお金。
そう、実体のお金。でもあれって紙切れじゃないですか。何を仮想してるのかって突き詰めていくと、結局エネルギーなんですよ。要は何もない条件なのに、例えば1万円じゃ働いてくれないと思うけど、佐藤さん、1万円あげるから働いてください。
はい。
「はい」って言ったでしょ。紙なのに自分のエネルギー捧げてくれるわけですよ。だから仮想エネルギーなんですよ、お金って。そのエネルギーってどこから来てるかって言うと、太陽が数億年、地球に降り注いで、地球の有機物とか動物とか死骸が、地熱、重力に押されて固まって、重油化してエネルギーになったの。これが太陽の資本なんですよ。
このエネルギーを半世紀で、数億年貯めたバッテリーですよ。要はリチウムバッテリーみたいなものです。ミネラルで、ミネラルじゃないわ、リチウムっていう成分物で貯めたエネルギーを半世紀で使い果たしたのが今の資本主義の、もう70年経つか。石油製品が台頭したのが70年前だとして、この半世紀で僕らが進化できたっていうのは、数億年のエネルギーのチャージを半世紀で使ってるんです。
要は佐藤さんに1万円渡したのを、1回で1万人か100万人雇って、この文明を興そうっていうので進化していったのが資本主義で。だからそもそもお金っていう、キャピタルゲインとかキャピタリズムっていうのは、キャピタルって元々資本じゃないですか。地球の資源。だから太陽っていう存在が僕たちの地球に何を恩恵として与えてくれてるかってことを感じるために、この太陽はすごい必要で。
お金もエネルギーも全部ここから来てるものを僕ら使わせてもらって、ここにあるカメラマンのエネルギー、電気とかも全部元々太陽エネルギーを、もう1回石油を取り出して光に変えてるだけっていうような、すごくファンダメンタルな世界をここで感じるっていうのが、このムーンの。
なるほど。
そんなこと考えないでしょ、だって。
考えないです。考えない上に、アートめちゃくちゃ初心者なので。もちろん海外に行ったら、不思議なことに美術館に行くんですけど、日本、多分現代アートとか、難しいなと思って行かなかったりとかする。わけ分かんない。
分かります。自分のアートは現代ではない。分類で言ったら生きてるから現代だからね、現代かもしれないですけど、僕は美術っていうものは何かっていうところにしかフォーカス当ててないです。自分が現代なのか、近代でもないし、そういう意味では現代に生きてるアーティストが現代アートなのかもしれないけど、僕は別にそこには全然こだわってなくて、もっともっと本質的な世界っていうものを自分が映し出せるか、表現できるかどうかっていうところにすごくフォーカスしてます。
アートが分かりませんとかそういうことではなくて、心で感じてくださいみたいな感じですか?
そうですね。ここは本当にそうで。要は今から難しい話をいっぱいするんであれば、右脳がどっちですか?
右は直感的。
直感的ね。
はい。左は。
だからまず、左脳で考える前に右脳で感じて、まずニュートラライズすることがすごい大事だと思う。ビジネスマンも記者もPIVOTの視聴者も。もっともっとここを感じるものあるだろうって。
なるほど。じゃあ今日は、今日はというか、これからちょっと心を無にして。
ここの空間では、感じることが大事です。だからデトックス的な場所かもしれないですね。
なるほど。この作品はちなみにおいくらぐらい?
これはいくらだ? 800万ぐらいじゃないですかね。
素敵。
ありがとうございます。ぜひ。
ちょっと難しい。ちょっとそこまで貯まってなくて、すいません。素敵って言ってた。ちょっとここに来て、メディテーションさせていただきたい。
いつでも。
なるほど、ありがとうございます。でも月と太陽っていうのは、なんとなく感じられました。
よかったです。
ありがとうございます。じゃあ、ここから発想を経て、このお部屋は?
できた作品を飾るプレビューですね。
お出迎えしてくれるんですね。
この子はトランスポーターって言って、さっき言ったガーナの星を輝かせようって言って、みんなでよちよち運んで、またアクションを起こしていこうというか、そういう希望のイメージで作り上げたシリーズです。
これ、さっきのブラックスターみたいな話。
そう。これもガーナのVHSのテープ。昔、磁気テープだったでしょ?
ありました。
それを使ってやったりしてます。
すごい。そして、なんかお迎えしてくれる。また迎えるのがいました。
ガーナの、バウレマスクって言うんですけど。そのマスクを見た時にインスピレーションが湧いて、「Nature is angry」みたいな。こんなことを土に捨てて、このお面がEウェイストを鎧として、立ち上がるみたいな、そういう神話を作って、作った作品です。こうやって見ると人に見えるじゃないですか。人というか、何かの化身に見えるっていうか。そういうテーマで作ってます。
鎖骨に見えるのが、掃除機か。掃除機の、多分かなんか、モップかなんか。モップって書いてありますね。この建物も。
これ、スラム街の。
スラム街ってこんな感じなんですか?
表現して、これミュージアムでスラムを作ったんですけど、それで使われていた作品を会議室として今再利用してます。
会議室に使ってるんですか?
はい。社員の子たち、ここで会議して。これはキャンディショップっていう、あっちでいうコンビニみたいな。ただ、乾き物しか売ってなくてですね、実際にガーナで売られてるものを陳列して、ミュージアムで使ってます。
インスピレーションが来そうですね、ここで会議すると。
そう。本当にこういうところに入って会議すると、本当に当時のガーナのことを思い出せるし。
改めるかも。
これもバナーですね、広告。ガーナのメインロードに大きなアドバタイズメントがすごい並んでて、それって全部化繊の生地に印刷してるんですよ。本当にスラムの子たち、これを屋根代わりに使ってるんですよね。それも全部ここで、本当にミーティングするっていう。
この辺はさっきのシリーズ。
トランスポーターですね。この子たちが星を運んだりして、星を輝かせ、みんなで動いてムーブメントで変えていこうっていう、そういうので描いてるシリーズがトランスポーターですね。
これが、そうか、立体になったのがさっきの。
これを描いたのが立体になってるって感じですね。
これを描いたのが立体。
「私があなただったら自分のことをもっと愛すよ」みたいな、そういうポジティブな、「世界を平和にするよ」みたいな、思ったことを多分スタジオで書いて。「太陽はあなたのなんとか」みたいな、さっき言った太陽の話とかだと思うんですよ。シャインとか、月が輝いて、みたいな、いろんなこと、その時思ったことを多分文字にしてるって感じだと思います。
じゃあ1個1個、作品によって違う。
違います。
絶対これを入れとくみたいなのは?
ないです。もう感じたものを作品にする。毎日そのスタジオで、キャンバス見てから決めるっていうか、思いつきですね。
これは絵なんですね。
油絵ですね。子供が労働者になって、労働者が機械になって、Uberみたいに人間がUber化するみたいな。まさに今、そんなんになってますけどね、ロボタクシーとか。人と機械の境、職業の境目がなくなるんじゃないかっていう。ここにUberって書いてある。
本当でした、ここに。
男の子、働きながらゴミ拾って、でも機械になって、人が後ろに乗れるみたいな。
ちょっと最初は気づかなかったけれど、男の子の絵かと思ったけど、確かに一体化している。
キャップにアメリカって書いてあるんですよ。
資本主義、メッセージがあるっていうことですね。作品1つ1つ描く時には、テーマを決めて描かれる?
言語化できてない、襲いかかってる不安みたいな、感じてるものをここに描きますよね。なんかもう人間とかロボットの境目、これからなくなるんだろうなみたいな、そういう危惧とか感覚を言葉にする前にするっていうか、そういう作業だと思いますね。
これはさっき下で、最初アトリエで教えてくださったブラック。
そうですね。ガーナの国旗、赤、黄色、緑、それがそのスラムの水面に映って、そこに真っ黒い星が沈む。そこの周りに資本主義の蓄積が残るみたいな、そんな負の要因というか、残したような作品ですね。
焦げてるように見える。
そうですね。そういうふうにしてますね。
懐かしい、スーパーファミコン。
そう、懐かしいとか、これでゲームしたことあります?
あります。
可能性的には加害者の可能性があるってことです。
そういうことか。
1回でも握ったことがあるものであれば。
確かに、我々が使ったものが。
ゼロじゃなくなるんです。っていうのが、この作品の持ってるメッセージかなと思います。
我々がそれこそ使っていたかもしれないものが、ガーナで捨てられて、スラムの子たちが。
そう。燃やして、中の金属を売るっていう。みんなこれが欲しいんですよ。こういう金属。これを、塵を集めて、子供たち、マグネットにひもをつけて引っ張って、こういう塵を、鉄のくずを集めて売ってます。
くっついてくるものが金属で。
そう。みんな金属がお金になるんですね。プラスチックのリサイクルが進んでないので、それはもうガワになって捨てちゃう。それが堆積するっていう、そういうスパイラルです。
なぜそれをなくそうと思えたんでしょう?
なくそうと思ったっていう強い意思ももちろんあるけど、先進国民やってられないなと思いました。この真実を知った上でいい顔して、悠長な生き方、貧乏でも画家を目指すっていう選択肢がなくなりました、自分の中で。
貧乏でも画家を目指す。
先進国に戻って、スラムのことに、自分の思い出の中に蓋をしてしまえば動かないじゃないですか。でも自分の心の中に、その重荷がずっと堆積してると考えると、自分じゃいられなくなるんだ。
同時テロを見てああいう作品作っちゃうぐらい繊細な男ですよ。このクライシスを見て、自分が忘れたかのように先進国に戻るって選択肢がなかったってことですよ。そこのために、自分ができることはやっぱりアートだ。
だから、ゴミを使った変態なアーティストってイメージついちゃうかもしれないっていう。今、よく見えるかもしれないんだけれども、全然最初始めた時はそんなことはなくて。こういう材料を扱ったら、そういうゴミのアーティストっていうイメージもついちゃうだろうし、今と全然一線を画すスタイルが、どう自分の、まあどうでもよかったですけど、関わってくるかっていうので。
全然、消去法じゃないですか。でもそれでも、知らぬ顔して絵描きを続けるってことは自分には不可能だなって思って。だったら声を大にして、できるかどうかじゃなくて、やるかやらないかっていう世界、領域の中で、思いっきり声を上げて、思いっきり情熱をかけて。この真実の湖もそうなんですけど、作品を描き上げたところに、本当の愛が、思いが宿って、人の心が動いた。
そしてミュージアムとか、今、何十万人も動員して、何十億円売れたんですけど、そういった現象につながって。「サステナブル・キャピタリズムって戦略がよかったんですか」とか、「裏にプロモーターがいるんですか」とか、たくさんのことを聞かれるんですけど、全然そんなことなくて。芸術っていうのは作家が思った心が作品になって、それが本当に、その1枚が自分の人生やガーナの人生、スラムの子たちの人生を変えていくっていう。
僕はその目で見てきたんで、本当に「これをやればうまくいく」とか、全然そんな策略がなくて。もっともっとピュアな、純粋な愛の部分が作品になって、形になったっていうのが、本当に最初の話、スタート。その現象を論理的に言葉にしたり、作品にしたり、作業プロセスがありましたね。
それがサステナブル・キャピタリズムなんだとか、今、本にしましたけどね。アメリカでもそういった研究をしていきますけど、逆説ですね、全部逆。「世の中に存在してていいわけないだろう」みたいな。そこから全てが始まるっていうか。
こちらの絵は電子ゴミではない。
この絵は「真実の海」というタイトルで。そのスラムから15分ぐらい離れた場所に海があって、そこに大量の先進国が寄付した服が捨てられてるんです。
寄付した服。
それがなんで捨てられるかって言うと、寄付された服を受け取った業者とか団体が、貧困層のみんなに小売りして売ってるんですよ。売ることによってえり好みが始まって、倉庫がパンパンになって。パンパンになるともう次の事業ができなくなるんで、捨てに来る海があってですね。そこを初めて見た時に僕、すごいショックを受けて、どうなるか分かんないけど、もうこれ掃除するぞっていうので、ビーチクリーニング。
その時にその村に住む女の子を描いた、海にある真実っていうので、「真実の海」っていう作品。ビーチを掃除して、再構成して作り上げた作品です。
本当に服っていう感じがしますね。
これを集めて、電子ゴミとはまた別に服を集め、こっちのメンバーとね、ビーチクリーニングをここでこういうふうにやって。2020年、こんなにたくさんの、これ僕が撮ったんですけど、全部服ですよ。海洋ゴミが浜に上がって、服だけのゴミって物理的に無理じゃないですか。だから意図的なんですよ。意図的に捨てられてるっていう証明。
そういうこと。
同じ画角で、僕らここまで。
そういうことか。本当だ、すごい。これ同じ場所ってことですね。
はい。問題が起こったのが、うちの倉庫がパンパンになると。それで手を打ったのが低温熱分解炉っていう機械を、これなんですけど、日本から持ってきて。これをやると、ありとあらゆる有機物が1/2に圧縮できるんですよ。それでできた灰を固めて作ってたのが、このブロック。このブロックの60%は洋服からできてます。2000トンだった服を10トンのアッシュ、灰に変えて、これを作ってたんですけど、また問題が起きて。
どんな思いを込めて作ったブロックでも、ブロックはブロックで、値段が変わらないんですよ。だから、こんだけ手間暇かけて、お金かけて1/2にして、コンクリートにしても、「これ100円だろう、200円だろう」って、ブロックだから。なかなかこう、価値をつけられなかったんですよ。
それで考えたのが、このアッシュの中に含まれるカーボンをさらに圧縮したら、ダイヤモンドになるんじゃないかって思ってですね。数年前、2年前からここから探し抜いてできたのが、見ますか?
もしかして。
せーの、はい。ダイヤモンド。
本当、ダイヤモンド。プロポーズされたと思って。思いました。違ったんですか? すごい、本当に綺麗。
海を、紛れもなく海を掃除して作られた奇跡のダイヤモンドっていうのが。
ちなみにおいくらで?
これは100万円で。かなり大きいです。
すごい。すごい綺麗です。
もちろん人工の本物のダイヤモンドなので、かなり綺麗だし、天然ダイヤモンドはもちろん美しいものたくさんあるけれども、これは0.5カラットの輝きと、海ゴミを掃除した僕らの汗が、努力が結晶化して輝いてるダイヤモンドです。
すごい。
そこに理解のある人がプロポーズしてくれたら、すごく輝くんじゃないかなと思います。
すごい、ありがとうございます。じゃあ、これからさらに圧縮して、これができたということですね。
そうです。
でも最初のこの機械も、すごい投資をしてるってこと?
1500万ぐらいかな、価値として。だから何も考えてないですよ、最初。「もうこんなに汚れてる。もう嫌だ。もう掃除しよう」。今年4つ限定で発売しますので、ぜひ皆さん、プロポーズする予定の人は必ず、このブラックスターダイヤモンドっていうので。
ブラックスターダイヤモンドと名付けたんですね。そのブラックスター。
そう。どんな黒い星も、僕たちの努力と汗の結晶が輝かせるってことを1つ証明してますので。
ありがとうございます。ぜひ買ってくださいとは、ちょっと自分で。
そうね。プロポーズを計画してる皆様。
サステナブル・キャピタリズム。この概念はどういうものなのか。
文化の提供、環境への貢献、経済への寄与、この3つのバランスを計算して組み込んだ流れっていうのが、サステナブル・キャピタリズムです。
ガーナのエネルギーっていうのが作品になって、それが輝いている。もし秋葉原で作った家電のアーティストだったら、今まで何十億も売れてたか、絶対売れてないって誰でも分かるんですよ。ここに大きなサステナブル・キャピタリズムと、資本とレバレッジがかかる資本主義の仕組みっていうものを掛け合わせて、ハイブリッドしていったっていうのが原点なので。
アーティストでありながら、企業家で言うと、会社を回してる。企業、CRDっていう、金融機関が会社に格付けをする機関があるんですよ。5万4000社中1位なんですよ。サステナブル・キャピタリズムは実行可能性があったっていう証明になったんですよ、1つ。
アメリカにっていうところは、何か特別な思いがあります?
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