黒板のない教室と「表現入試」 藤村女子から吉祥寺湧水へ変わる中高一貫校は何を育てようとしているのか

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概要

創立95年目の学校法人井之頭学園・藤村女子中学・高等学校は、2027年に共学化し、校名を「吉祥寺湧水中学校・高等学校」に改める。この動画では、MCの西川典孝さんと、人材育成・組織づくりを支援するMomentor代表の坂井風太さんが仮校舎を訪ね、授業や教員を取材し、最後に菊池健太郎校長と対話した。偏差値と進学実績で測られがちな中高6年間に、この学校は何を置こうとしているのか。それが全体を通した問いである。

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偏差値教育に疑問を持つ人材育成の専門家が訪ねる

坂井さんは取材の冒頭で、自分の立場を説明した。娘が2人おり、中学受験をさせるかどうか考えている。ただ、坂井さん自身は私立中学に入学した後に退学しており、受験を経て偏差値の一元的な教育に組み込まれることには疑問を持っているという。

もう一つの関心は仕事にある。坂井さんは社会人向けに人材育成やマネジメントのプログラムを提供しているが、受講者の価値観や振る舞いのルーツをたどると、たいてい中高の6年間に行き着くと話した。この6年間をどう設計するかが、社会に出た後の人の在り方に関わる。坂井さんはこの視点から学校を見ていった。

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黒板ゼロ、全員MacBookの「ファインダースタジアム」

仮校舎は、MCが「おしゃれなオフィスのよう」と表現したガラス張りの建物である。最初に案内されたのは「ファインダースタジアム」と呼ばれる空間だ。英語教員の菅原先生によると、ベンチ状の座席がサッカースタジアムのように中央を囲んでおり、中央でのスピーチや教員の説明に注意が集まるように設計されている。訪問時は国語の授業中で、生徒は全員1台ずつMacBookを持っていた。

この校舎には黒板が1つもない。坂井さんは、紙の教科書のほうが効率がよく定着もよいと言われることを挙げ、モニター中心で問題はないのかと尋ねた。菅原先生は、画面を見るのは情報共有やこれからの指示を聞く場面であり、そこで知識をインプットしているわけではないと答えた。学校が重点を置くのは、インプットした知識を使う段階である。記憶の定着と、覚えたものを使うことを分けたうえで、後者を最大化したい。そのために、どこが自分に適した場所かを生徒自身が選びながら課題に向き合う形にしているという。

坂井さんは、これでは集中力がなく落ち着かない子が生まれるのではないかと一瞬思ったと率直に述べた。菅原先生は、自分で集中を切り替える練習もこの環境に含まれており、集中が切れたら場所を変えてよいと説明した。坂井さんは学習科学への関心から、在宅勤務に疲れた社会人がカフェに移るように、集中力を自分で維持する力を鍛えるということかと確認し、先生は肯定した。先生は、集中力は15分しか持たないと言われており、一斉授業を50分続けるのは難しいので、自分のペースに合わせて場所や向き、話す相手を変えることが大事だと補足した。

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ポテトチップス形の椅子と「who I am」

ほかの教室にも同じ考え方が及んでいる。ある教室は壁一面が鏡で、スピーカーも備え、ダンス部がスタジオとして使っている。坂井さんは、学校のダンス部はふつう可動式の鏡しかないので、部活動にとってはとてもありがたいはずだと反応した。教室にはポテトチップスを模した「チップス」という椅子が置かれている。理由を問われた先生は、学校らしくないことが大事であり、従来型の教室を一度変えてみて、これでも授業ができると分かったと答えた。

その教室の前面は一面がLEDスクリーンで、学校説明会にも使われている。生徒のMacBookをつなげば、生徒がスライドを映しながら前で話すこともできる。ほかにも、公園のようにくつろぎながら会話やアイデアを広げるラウンジ「ファインダーパーク」や、iMacや3Dプリンターでものづくりに没頭できる「ファインダーアトリエ」がある。

坂井さんが環境づくりの思想を尋ねると、先生は「who I am」を挙げた。あなたは何者か、私は何者かを探しに行く6年間を目指してカリキュラムを作っている。しっかり基礎学力をつけ、社会との結びつきを数多く作ることで、生徒が自分を多面的に捉えられる教育を目指すという。坂井さんはこれを、主体性を大切にしつつ、その主体性は結局環境によってデザインされるという思想だと受け止めた。

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英語とは別の授業「バイリンガリズム」

中学生の授業として紹介されたのは「バイリンガリズム」である。英語の授業とは別枠で設けられ、スピーキングを中心にプロジェクト型学習を行う。教科書の単元を順に学ぶのではなく、プロジェクトごとに生徒が自分で計画を立て、いつまでに何を提出し完成させるかを管理していく。

取材時は、段ボールで「ビジョンボード」を作って発表する場面だった。自分が将来どうなりたいかをボードにまとめ、そのために年・月・週・日単位で何に取り組むかを具体的に計画して英語で発表する。ある生徒は、仲間とディズニーランドに行きたいので毎日お金を貯めてお菓子に使いすぎないようにする、ビジネスを始めたい、いろいろな国に行きたいと英語で話していた。

日本語で話を聞いた生徒は、今年転校してきたという中学生だった。この学校を選んだ理由は、自分で考えて行動し、自分で責任を持つことに力を入れているようで、成長に良さそうだと感じたからだという。最初は話せなかったが、英語は言葉だから話さないと意味がないので、バイリンガリズムはとてもいい授業だと思うと語った。将来やりたいビジネスは、この学校に来てから見つけたもので、自分の化粧品ブランドを作りたいという。教員によれば、生徒たちは入学時から英語が流暢だったわけではない。話すのが普通という環境をつくり、自分のことだから話したくてしかたがない状況を生み出すよう意識しているという。

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「英語ができない原因は学習ではない」

授業を担当する英語教員は、日本生まれでアメリカで幼少期を過ごした。この学校に来る前はずっとインターナショナルスクールで教えており、プロ野球の通訳やラジオDJの経験もある。学校に惹かれた理由は学校改革だという。

この教員は、従来の日本の英語授業は文法中心で学問的だと述べた。それも大事だとしたうえで、日本の人は学習を通じて英語の知識をかなり持っているのに、できないと感じるのは自分から英語で話しかける勇気がないからであり、問題は実は学習ではないと指摘した。その部分を学校で養う必要がある。人間力、リーダーシップと言い換えられる力であり、学校には友達がいて、教員という大人との関わりもあるので、そこで育てられるという考えだ。

どんな場面で英語学習が一番効いていると感じるかと問われると、教員は学校の外でどれだけ使えるかだと答えた。言語習得には環境とニーズがあれば必ずできる、この授業はそのニーズと環境を提供するために設計したものだと説明した。

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前職を生かした理科と国語の授業

理科と国語の教員にも話を聞いた。一人は少し前まで公立高校の教員だった。もう一人は児童養護施設のケアワーカーとして、愛着ケアなどの支援に6年ほど携わってから来た。後者は、施設で6年過ごすだけで人が一人変わるほどの成長を目の当たりにし、学校教育の中でも生徒が変わる瞬間をもっと見ていきたいと考えたと話した。

授業づくりで重視しているのは「問いを起点にした学び」である。理科の例として挙がったのは、授業中に蚊が現れたときの展開だ。どう思うか、どこにいるのか、どうすれば減らせるかを問い、時間を使って実際に公園へ捕まえに行く。調べて終わりにはせず、この建物にいるみんなを蚊から守ろうという問いにつなげ、自分事にとどめずに誰かに伝え、新たな視点を誰かに問うところまでを授業全体で意識しているという。

国語では、森鷗外の『舞姫』を題材に映像制作に取り組んだ。読み終えた後、留学先でエリスを見捨てて日本に帰る主人公・太田豊太郎に弁論の機会を与えるというテーマを設け、裁判形式で生徒が演じ、カメラ担当の生徒が撮影する。脚本も役割分担もすべて生徒が決める。教員は、文学の心を揺らすには当事者意識を持たせるのが一番であり、インパクトのある授業のほうが大人になって振り返ったときに記憶に残ると説明した。この教員は大学時代に映像制作のゼミに所属し、そこで映像を作ることの効果を実感したため、授業に取り入れたという。

18:50

教員の哲学が個人や組織に閉じている

坂井さんが、中学や高校の教員はこうした教育哲学を持って仕事をしているものなのかと問うと、学校側の答えは「たぶんイエス」だった。教員は熱量を持ってその職業を選び、目の前の一人ひとりの生徒に思いを向けている。ただ、その哲学が個人や組織に閉じてしまっていることが、世の中の学校の大きな課題だという。組織を変え、日本を変えるところまで目を向けなければ日本は変わらない。この学校には日本の教育を変えることに一石を投じたいという思いがある、と語られた。番組のナレーションは、学校が授業内容を一律に決めるのではなく、教師一人ひとりが得意なことを生かして学びを更新している点を、この学校の強みとしてまとめた。

20:19

正解のない入試「表現入試」

共学化に合わせて入試も変わる。ただし学校側の説明では、共学化で入試を変えるというより、教育そのものを変えようとしている流れの中に入試があるという。中学受験の王道である国語・算数・理科・社会の4科目に加え、来年度から「表現入試」を導入する。多分うちだけの入試だという。表現入試にはアート、エッセイ、デジタル、ダンスの4方式があり、受験生が自分に合った表現方法を選ぶ。

番組ではデジタル方式のお題が紹介された。タイトルは「画面から本への入り口を作る」。前提情報として、文化庁の16歳以上を対象にした調査で、1か月に本を1冊も読まない人が62.6%いること、その人たちの75.3%はSNSやネット記事など本以外の文字情報にほぼ毎日触れていることが示される。課題は、自分が読んだことがあり、その魅力を自分の言葉で説明できる本を1冊選び、その本をまだ読んでいない身近な人を思い浮かべ、その人が自分から少し読んでみたいと思えるデジタル作品を作ることだ。

作品の形式は自由だが、条件が付く。「読書は大切だから」と押し付けないこと、結末や大切な秘密を明かしすぎないこと、何を見せ何を見せないかを自分で判断すること。最後に「画面の中の作品で本との出会いを作るとはどういうことか。あなたは何を伝え、何を相手に残すか」という問いが添えられる。

特徴は、課題を事前に公表する点にある。9月に発表して2月が本番なので、最大で5か月近い制作期間がある。坂井さんが、それでは大人も一緒に作れてしまうのではと尋ねると、相談するのは構わないという答えだった。当日は作品を持ってきてもらい、面談で話を聞く。作品の質を見て合格を出すのではなく、どんなプロセスで何を考え、必ずあったはずの悩みをどう経たのかを聞きたいという。悩みがなく「お父さんが言っていたから」のようになれば、本人のプロセスがないので評価できない。

設計の意図について学校側は、4科目入試が王道であることは認め、それはしっかり継承していくとしたうえで、こう説明した。学校が大事にする「who I am」には答えがなく、見つけていくものだ。授業も問いから始まる。だから入試でも、どこかにある答えを探すのではなく、答えは自分の中にしかないということを問いかけたい。それは試験時間30分では見つからないので、ある程度の時間を与えて深い問いに向き合ってほしい。これがどの方式にも共通する根本の思いだという。

坂井さんは、制約条件にも意図があるという仮説を示した。相手の気持ちを想像する思いやりと、相手には相手の考えがあるので押し付けないこと。この2つを一貫して重視しているのではないかという指摘である。学校側はそれを認め、自分自身はもともと「これをやりたい」があまりないタイプで、「やりましょう」と言われるだけでは良くないと思っていると述べた。一方で、全員がやりたいようにだけやればめちゃくちゃになる。自分のやりたいことと、世の中や社会に応えることを両立させたい。だから「好きな作品をどうぞ」ではなく、それを使う人は誰か、誰に届けるのかを同時に問うのだという。

坂井さんは、この問題を解くことを通じて人を思いやることを学べるのが本当の入試問題なのではないかと感じ、受験するかどうかはともかく娘に解かせてみようと思ったと話した。学校側は、12歳の時点で高い水準に到達している必要はなく、そこから6年間でどう育てるかが学校の使命だと応じた。坂井さんは「これに傾向と対策が出たら嫌だ」とも付け加えた。

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新校舎の裏テーマは「6年間退屈させない」

本体となる新校舎は2029年に吉祥寺で完成する予定で、取材時点では設計段階にあり、特に南館が大詰めだという。表向きのテーマは「学校らしくない」だが、裏テーマは「ドキドキワクワクをつくる」こと、そして「子どもたちを6年間退屈させない」ことだと説明された。図面で示された空間について、カフェテリアではなく教室だという説明があった。

坂井さんは、通いたくなる学校環境はとても大事だと述べた。勉強しやすいだけでなく、ここに来ると落ち着く、開放的になれると感じられる場所は職場でも重要であり、そうした機能があるのだろうと話した。

設計者は、これまでに見たことのない新しい学校空間を作りたいと語った。名建築や革新的な建築が生まれる瞬間には、設計者の独創性だけでなく、建築主の挑戦的な姿勢や思想、新しいものを受け入れる寛容さが背景にあることが多いと個人的に思っており、今回はそういう瞬間に立ち会っているつもりでチーム全員で取り組んでいるという。このプロジェクトは新築だけでなく改修も含む。思い出の残る部分と新しい部分があり、これから入る生徒にもこれまで通った人にも、通ってよかったと思える場所にしたいと話した。

28:56

オリジナルウェアと西海岸の学校

最後は菊池校長への取材である。校長は来年度の新しい取り組みの一つとして、制服ではないオリジナルウェアを挙げた。この学校は制服がないことを公言してきたが、自分らしくいたいという思いがある一方で、多感な中高生の時期には人と違いすぎるのが嫌だったり、大好きな友達と同じでいたかったりもする。その選択肢を与えたいという。

校長は学校づくりの前に米国西海岸を訪れ、サンタモニカのハイスクールやボーディングスクール、スタンフォード周辺などを見て回った。現地では学生が学校のウェアをよく着ており、この学校が好きなのだろう、誇りがあるのだろうと感じたという。そういう学校はワクワクするので、生徒にもとにかくワクワクしてほしいと話した。

30:39

「己を識り世に応う」と、測りにくい力

どんな生徒に育ってほしいかと問われ、校長は「who I am」の意味から説明した。転職や就職の場面では「あなたは何ができるのか、何者なのか」と問われがちで、校長自身もそう問いかけてきた。どこの企業でも同じだろうという。認知能力は演習を重ねれば上がるが、それだけで社会で役立つとは思えない。人とコミュニケーションを取り、言われたことにどう建設的に向き合うか、どう合意形成するかという学びも大事だという。

目指す姿は、校是でもある「己を識り世に応う」である。「己を知る」が「who I am」にあたる。ただ、自分のことだけを考えていても人は幸せにならないと校長は考えている。校長自身にとっての幸せは、同じ思いで集まってくれる人と志を共にし、子どもと保護者を幸せにすることであり、それは利他的なことだ。これが「世に応う」であり、己を知らなければ世に応えることもできないという。

坂井さんは、学校が掲げる8つの花びらの図に「美的共鳴力」や「倫理観」が入っている点が特徴的だと指摘した。校長は、絵を見たり人の話を聞いたりして心が震え、感動することは幸せなことであり、逆に人を感動させ共鳴させることも大事だと説明した。

坂井さんは自分の仕事の経験からこれに賛同した。組織の40〜50代の部長層で慕われ活躍している人を考えると、倫理観や美的共鳴力に近いものを持っている。損得ではなく善悪で「これは客に不誠実だからやめよう」「この人は困っているから助けよう」と考えられるのが倫理観である。マネジメントでは人や物の良いところを見つけられなければ、事業も人もプロデュースできない。何を与えられるかより、そのものの良さを見つけられるかのほうが、マネジメントでも人生全体でも重要だという。坂井さんは、測定できなさそうで捨てられがちなものを意図的に拾っている点が素敵だと評した。

34:14

AI時代と「教育の答え合わせ」の時間軸

坂井さんは、AIネイティブの時代に教育にどんな価値があるのかが結局大事だと述べ、2つの考えを示した。一つは、AIは目的地に早くたどり着く手段として出てきたが、どこに行きたいかを決めるのは人間だという点である。企業でもAIでプロダクトを早く作れるようになった分、何を作るべきか、会社としてどこに向かうかを描くことが問われる。組織の目的地を描けるのは、自分のありたい姿や目的地を真剣に考え続けてきた人のはずであり、そこが「who I am」とつながっていると坂井さんは考えた。

もう一つは、活躍の時間軸である。いい大学に入った、いい企業に入ったことを活躍と定義してよいのか。坂井さんは、教育の答え合わせは本来もっと長い時間軸で決まるもので、50歳でもなく70歳や80歳になったときに、あの人がこの地域や組織にいてよかったと思われることが大事だと述べた。さらに突き詰めれば、自分の人生を生き切ったと本人が思えることが最良の答え合わせであり、だから学校は「who I am」を最初に置いているのではないかと推測した。校長は「大正解」と応じた。

36:23

中学受験は「一点物」を選ぶこと

MCは、偏差値や進学実績を気にする親とどう向き合うのかを問うた。校長は、気にしない親はいないぐらいだと認め、自分も父親として中学受験に伴走した経験を語った。息子をSAPIXに通わせ、通帳から引かれる金額に驚きながら、これで良いのだろうかと考えた。3年間、息子には「お父さんは中学受験を知れば知るほど少し失望していて、レースにしか見えない」と伝えていたという。AIを誰もが使う時代に、認知能力だけを測るのが正解ではないとなれば、中学受験そのものが批判的に見られる時代が来るかもしれない、と校長は述べた。大学名だけで人の人生は語れない。20年後、30年後、子どもが親の手を離れ、親がいなくなった後も豊かに生きていてほしい。それがおそらく全保護者の願いだと校長は話した。

坂井さんは、5歳と2歳の娘を持つ親として、自分は中学受験に実はもともと否定的だったと明かした。私立中学に進んだとき、とりあえずみんな東大に入ればいいという世界観で、一元的な偏差値教育を避けたいと思っていたからだ。しかし今回の訪問を経て、中学受験の本質は競争ではなく、この子にとって一番いい中学はどこかを一点物として選ぶことだと考えるようになった。外からは同じような体験に見え、「英語教育が強い」といった一言でくくられても、実際に来てみると固有の体験がある。一点物の子どもに提供したい場所を選ぶという意味で中学受験を捉えるほうが正しいのではないか、と坂井さんは語った。

MCも、学校は偏差値、東大合格者数、部活動の全国優勝といった数字で語られがちだが、今回は違ったと述べた。転校してきて成長できそうだと思った生徒、英語を学んで海外の大学に進み化粧品のビジネスをしたいという生徒、別の職業の経験を生かして子どもの家庭まで深く関わる教員の話を聞き、ここならこういう経験ができるかもしれないと想像できたという。だから親はまず見学や体験に来るとよいと感じたと話した。坂井さんは校名の「湧水」にも触れた。探究心や好奇心、思いやりが湧き、その結果の一つがあのビジョンボードだったのではないか。外から水を与えるのではなく、自分の中に湧き水があることが、子どもにとって一生の財産になると話した。

40:34

「未完成の学校」に子どもを通わせられるか

締めくくりに校長は、まだ未完成の学校だと認めたうえで、判断基準を語った。校長には小学6年生の娘がおり、自分の子をこの学校に通わせられるかが一つの基準だという。従来の価値観なら、偏差値がとても低ければ通わせられないと思っていただろう。それでもこの学校に自信がある理由として、校長は教員を挙げた。自分が起業したときもそうだったが、事業計画はその通りにいかないものの、思いだけは負けないポテンシャルのある人がいれば何とかなり、変えていける。この学校にはそういう先生がそろっているので来てほしい、と述べた。

坂井さんは、1期生や2期生として初期に入ることが実は一番素敵な経験かもしれないと語った。一緒に学校を作ったということ自体がいい思い出になるだろう、というのが坂井さんの最後の感想だった。