断面で見る電子部品の中身:ハイロックスの新型マイクロスコープでキャパシタから自作半導体まで観察する

YouTubeで開く ↗
概要

電子工作YouTuberのイチケンが、ハイロックスのマイクロスコープ新機種HRX-02(ハイロックス提供)を使い、キャパシタ、インダクタ、抵抗、ヒューズ、水晶振動子、スイッチ、半導体、プリント基板を切断・分解して内部構造を観察した。2023年にも同社のマイクロスコープで動画を公開しており、今回は新機種の使用感も確かめる。部品ごとに「教科書通りの構造か」「なぜその形なのか」を読み解いていく。試料の多くは回転砥石で削って断面を作っている。

15分で読めます

MLCC:容量と用途で変わる内部電極の配置

最初は、電気回路のほぼすべてに使われるキャパシタである。積層セラミックキャパシタ(MLCC)には、高誘電率系材料で静電容量を大きくしたX7R特性のものと、温度補償用材料で温度や電圧の影響を抑えたC0G特性のものがある。

1μF・耐圧450Vの2220サイズのMLCCでは、内部電極が層状に重なった教科書通りの構造が見えた。層間の距離は約16μmで、この短い距離をこの精度で重ねられるのは「とんでもない技術」だとイチケンは評価する。

耐圧500V・1nFのMLCCは、耐圧はほぼ同じで容量が1/1,000になる。こちらは左右の電極を単純に重ねるのではなく、中間にどこにもつながっていない電極が置かれていた。積層の密度も場所によって違い、上部が高密度、中央が低密度、下部が中程度だった。電極のない部分にも積層の跡がはっきり見える。電極の配置や密度には相当なノウハウがあるのだろう、とイチケンは述べている。

0.12pF・耐圧50VのC0G品では、電極同士の重なりがなく、内部電極が向き合うように配置されていた。イチケンは、重ねると容量が大きくなりすぎるため、向き合わせる構造で小さな容量を作っているのではないかと推測している。この部品は電極の色の違いが見やすく、外部電極は銅、ニッケルめっき、スズめっきの3層構造で、ここも教科書通りだった。

物理的に小さいMLCCとして、村田製作所の0201Mサイズ(0.25mm×0.125mm)も観察した。2024年まではこれが最小サイズで、現在はさらに小さい016008Mサイズ(0.16mm×0.08mm)も登場しているという。リールから出すと塵と見分けがつかず、手はんだはさすがに無理だとイチケンは話す。それでも内部はしっかりキャパシタの構造になっており、村田の技術力を示すものだと評している。

三端子コンデンサ:浮いて見える電極の正体

変わったMLCCとして三端子コンデンサも取り上げた。通常のMLCCよりESLが小さいのが特長で、内部電極がクロスするように重なっている。断面では左右の外部電極が内部電極につながり、中間には浮いているような電極が見える。上から見ると、この電極も別方向の外部電極につながっていることがわかった。

電解コンデンサとタンタルコンデンサ

導電性高分子アルミ固体電解コンデンサは、陽極、電解質、電解紙、陰極をロール状に巻いてアルミ缶に収めた構造である。電解コンデンサはどのタイプでも基本構造は似ているという。上から見た断面ではロール状の巻きが、横方向の断面では層の重なりがよくわかる。黒い紙状の部分に導電性高分子を電解質として染み込ませている。灰色のアルミ箔のうち、よくあるアルミ色の箔が陰極、アルミの両側を灰色の層で挟んだものが陽極である。陽極の灰色部分はアルミ箔を表面処理して作った酸化膜で、この膜が耐圧を確保している。陰極と陽極がはっきり見分けられることにイチケンは感心していた。

タンタルコンデンサも一種の電解コンデンサだが、電解質が固体である。中央にタンタルワイヤーが通り、四角い部分が誘電体の五酸化タンタルで、ここまでが陽極にあたる。その外側に固体電解質の二酸化マンガン、陰極のグラファイトと銀ペーストが重なる。映像ではわかりにくいが、四角い部分は多孔質で、そのためサイズの割に容量が大きい。特性は良いものの故障モードが短絡故障になるため、MLCCやポリマー系電解コンデンサへの置き換えが進み、最近は見かける機会も使う機会も減っているとイチケンは説明する。

PMLCAP:MLCCのように積層したフィルムキャパシタ

キャパシタの最後はルビコンのPMLCAPである。チップ形状だが分類はフィルムキャパシタで、一般的なフィルムキャパシタが巻いて作るのに対し、PMLCAPはMLCCのように積層して作る。特性が非常に良く、高級オーディオで使われることもあるそうだが、そのぶん値段は高い。断面で測ったフィルムの厚さは約1μmで、一般的なフィルムキャパシタのフィルム(数μm〜数十μm)と比べてかなり薄い。

新型マイクロスコープで変わった点

ここでイチケンは、前回の機種からの変更点を紹介している。まず、カメラとレンズユニットが一体になった高解像度カメラとレボルバーレンズユニットである。10〜80倍のマクロレンズと100〜500倍の対物レンズが標準搭載され、最大4本のレンズを取り付けて観察対象に合わせて切り替えられる。最高倍率は10,000倍だが、これは光学顕微鏡の限界ラインにあたり、実際に使ってみて実質的に有効なのは5,000倍程度だとイチケンは感じたという。

照明については、前モデルでは別に光源が必要だったが、新製品は光源とレンズが一体になり、光源の接続や調整の手間が減った。左手用コントローラも付属し、ズーム、フォーカス、ステージ移動、光源切り替え、ショートカット操作を手元でできる。以前は画面上のマウス操作が多く不便だったが、コントローラによって容易かつ直感的に操作できるようになったとイチケンは評価している。スタンドの脚には振動吸収機構が付き、高倍率でも振動を抑えて観察できる。このスタンドは従来のレンズとも組み合わせられる。本体はカメラ2台を同時接続でき、従来のカメラとレンズも使える。

インダクタ:コア形状と磁束の漏れ

スルーホールのドラム型インダクタは、I形状のコアに巻線を巻き、リード線部分にマグネットワイヤーをはんだ付けした構造だった。コイルを巻きやすい形状だが、磁束がコアの端から漏れ出すため、流す電流によってはインダクタ自体がノイズ源になる。使いどころやコア形状を選ぶ必要がある、とイチケンは注意を促す。

抵抗にそっくりなインダクタも、断面を見ると磁性体コアに巻線を巻いたI形状の構造で、ドラム型に近い。樹脂でコアと巻線が密閉されているため劣悪な環境にも耐えそうだが、見た目が抵抗と似ているので取り違えないよう注意したいという。

コアの内部にリード線を通す形状のものは、巻数1のインダクタで、フェライトビーズインダクタと呼ばれる。スイッチング電源など高周波ノイズを出す箇所に入れて、ノイズを吸収する用途が多い。

表面実装型インダクタ2種の比較では、マイクロスコープの画面分割機能と測定機能を使った。低倍率でマップを作っておくと、高倍率時にマップをクリックして目的の位置へ移動できる。銅線の周囲をなぞると断面積が表示され、定格電流が高い方は187,869μm²(約0.18mm²)、低い方は0.03mm²台の中ほどだった。細い方の巻線は外側と内側で太さが違って見えたが、これは研削時に圧力をかけすぎて線が伸びた可能性があるという。イチケンの説明では、定格電流は銅線の断面積と、正確にはコアの透磁率の電流特性などで決まる。インダクタンスについても、細い線は多く巻け、太い線は少ししか巻けないという巻数の違いが効いてくる。

樹脂封止型・メタルアロイ型と深度合成による空洞の測定

先ほどの表面実装品に似た別のインダクタは、巻線がフェライト粉末入りの樹脂で固められていた。空気より磁束が通りやすい磁路ができるため、外に漏れる磁気ノイズが減り、周辺部品への影響を抑えられる。

このインダクタには空洞ができていた。製造上のばらつきや気泡の混入によるもので、本来はないほうがよい。この空洞の深さを、マイクロスコープの深度合成機能と画像処理で測定したところ、約500〜600μmだった。カラーマップ表示で凹凸をひと目で確認することもできる。イチケンは、レンズなど光学系の精度、ステージなど機械系の精度、画像処理の組み合わせによってこうした測定が可能になっていると説明している。

メタルアロイタイプのチップインダクタは、巻線を磁性体材料で固めた構造で、磁性体自体が磁気シールドになるため外部への磁束の漏れが少ない。今回は入手していないが、積層して作るチップインダクタもあるという。

可変インダクタの調整機構

インダクタの最後は可変インダクタである。可変キャパシタに比べて使う機会は少なく、使うとしても無線系くらいだろうとイチケンは話す。ケースの内側と外側にフェライトコアがあり、その間に巻線がある。内側のコアにはネジが切ってあり、回すとコアが移動して外側のコアとの結合が変わり、インダクタンスが調整される。

抵抗器:トリミング痕と意外な多回転ポテンショメータ

1kΩの炭素皮膜抵抗は、白いセラミックの芯に炭素皮膜があり、左右に金属キャップ、全体をベージュの樹脂でコーティングした構造である。抵抗体をコーティングしたあと、レーザーや砥石でトリミングして抵抗値を作る。断面では芯と皮膜が等間隔に凹んでおり、これがトリミングの跡だった。抵抗の専門家に確認したところ、この製品は砥石でトリミングしているとのことだった。

見た目は炭素皮膜抵抗そっくりでも、断面がまったく違うのがソリッド抵抗である。中央の黒くうねった部分が、炭素と樹脂を混ぜて作った抵抗体だ。パルス耐性が高く、コイル状でないためインダクタンス成分が少ない。家電を分解しても見かけることは少なくなったのではないかとイチケンは述べる。

多回転タイプの可変抵抗器は、ネジと歯車が組み合わさっており、ネジを回すと噛み合った歯車が回る。歯車の下に抵抗体があり、歯車の裏の金属製板バネが抵抗体に接触する。イチケンは抵抗体を長くして調整しているのだろうと想像していたが、実際はネジと歯車で減速比を作り、移動量を小さくして細かく調整する仕組みだった。

セメント抵抗は耐熱性があり、大電力部分や放電用に使われる。外側はセラミックの焼き物で非常に硬いが、内部を固めたセメントはピンセットでつつくとボロボロ崩れるほど柔らかい。抵抗体はセラミックの芯に高抵抗の金属線を巻いたもので、金属線なのでよほどの大電力でなければ焼き切れないという。

チップ抵抗は、セラミック基板上の抵抗体皮膜を緑色の樹脂でコーティングした構造だった。樹脂を剥がすと黒い抵抗体にL字のトリミング跡が見える。レーザーで抵抗体を焼き飛ばし、縦方向のトリミングで大まかに、横方向で微調整する。

ヒューズ:交換性と、砂と穴の意味

ガラス管ヒューズは中の線が過電流で切れて電流を遮断する。線の太さは遮断電流で変わり、太いほど多くの電流を流せる。抵抗のように見えるヒューズも内部には同様の線があったが、基板にはんだ付けするタイプなので、切れたときの交換作業が大変になる。ホルダーのあるガラス管ヒューズのほうがメンテナンス性は高いとイチケンは述べる。

大電力ヒューズを分解すると、アークを消すための砂が入っていた。高電圧・大電流用のヒューズには砂が入っていることが多い。電流が流れる帯状の部分には穴がいくつも開いている。詳しい理由はわからないとしつつ、穴の部分は電流密度が高くなるので、そこで確実に切れるようにしているのではないか、とイチケンは推測している。

水晶振動子:メーカーで異なる音叉の形

水晶振動子は決まった周期の振動を作る部品で、クオーツ時計やマイコンのクロック生成に使われる。32.768kHzの時計用振動子は内部が非常に繊細で、缶から取り出す際に何度も壊してしまい、映像はその生き残りだという。音叉のような形の水晶の表面に金属薄膜がある。電圧を加えると目に見えないレベルで振動し、形状によって周波数が変わる。

シチズン製とセイコー製を、周波数も負荷容量も同じ条件で並べたところ、水晶の形状がかなり違っていた。イチケンは水晶振動子に詳しくないとしたうえで、どちらが優れているというものでもなさそうだと述べている。17MHzの振動子になると音叉形状ではなく、水晶の板の表裏に金属薄膜がある構造で、水晶の削り方や薄膜の形状にノウハウがありそうだという。

スイッチ:接点の表面処理とグリス

ディップスイッチの断面はほぼ想像通りで、白いプラスチックを動かすと金属に当たって接点が閉じる。プラスチックが当たる金属部分は色が違い、何らかの表面処理がされているようだった。擦れる部分なので、表面を滑らかにしてプラスチックと接点の消耗を減らしている可能性があるとイチケンは見ている。

トグルスイッチは、中央のプラスチックが動くと金属片が動いて導通する接点が切り替わる。プラスチック部分には滑りをよくして摩耗を抑えるためのシリコングリスのようなもの、金属接点には耐久性を高める目的と思われる透明なグリスが塗られていた。グリスを除いた接点は、滑らかだろうという予想に反してかなりデコボコしていた。

金属缶パッケージの半導体

半導体は中身の見やすさを重視して、金属缶タイプを選んだ。最近はエポキシ樹脂パッケージが多いが、缶タイプもまだ製造されており、密閉性が高く、熱を逃がしやすく、缶自体がシールドになるという利点がある。

ダイオードは缶の中央にシリコンチップがあり、缶内に伸びた足とワイヤーボンディングでつながっている。カソードはチップ上でもう1端子引き出せるようになっていたが接続されておらず、別パッケージの同製品ではカソードを2本引き出しているので、そのためのパッドかもしれないという。パッドには、完成後に半導体テスターのプローブを当てた際の傷が残っていた。チップの外周を緑色の線が1周しているが、イチケンはガードリングだろうかと推測するにとどめ、視聴者にコメントを求めている。

2回路入りのRFダイオードは、チップ側もリード側もウェッジボンディングだった。ワイヤーが白っぽいのでアルミワイヤーだろうとイチケンは見ており、最大20mA程度の用途に金ワイヤーを使うとコストが上がるからではないかと推測している。2つのダイオードでアノード側の配線の取り回しがわずかに違うが、RF特性への影響はリード線や基板トレースの長さのほうが支配的だろうという見方だった。

NチャネルMOSFETは、ゲート・ドレイン・ソースのほかに4本目のリードがあり、ケースにつながっている。チップは緑、紫、青、ベージュとカラフルに見えるが、これはチップ上の膜による光の干渉で、シャボン玉が虹色に見えるのと同じ原理だと説明している。

60V・15AのNPNバイポーラトランジスタは、チップもケースも大きく、ボンディングワイヤーも太い。昔のオーディオアンプの背面でヒートシンクに固定されている形状だ。チップ上では外側を囲むベース電極の中に、短冊状のエミッタ電極が交互に並ぶ。電流がチップを縦に貫通する構造のため、ケース自体がコレクタになっている。チップはケースにはんだ付けされ、発熱を効率よく逃がせる。

最後はテキサス・インスツルメンツのオペアンプLM201である。缶入りは他のパッケージより極端に高く、1個3,000円ほどするという。チップを見ると差動増幅の入力部、抵抗、出力段らしいトランジスタが見分けられ、データシートの回路図と見比べればレイアウトの対応がわかるだろうとイチケンは話している。

MEMSマイク

変わり種としてMEMSマイクも観察した。今回のものは大きめのサイズで、スマートフォンにはさらに小さいものが複数使われている。パッケージ裏の穴から空気の振動が入り、内部の膜を振動させる。丸いダイヤフラム部分はシリコン製で、音で振動すると静電容量が変わり、それを信号に変換する。センシングとA/D変換は専用ASICが担い、黒いエポキシ樹脂のようなものでポッティングされていた。シリコンで膜を作ってマイクにしてしまう点を、イチケンはなかなかすごい技術だと評している。

自作半導体チップを5,000倍で見る

半導体の最後は、オープンソース半導体コミュニティ「ISHI会」の支援を受けてイチケンが作ったオペアンプである。1つのチップを領域で区切って複数人でシェアしており、その一部がイチケンの回路だ。プロセスルールは0.6μm、チップサイズは1.8mm角で、価格はベアチップ20個で20万円ちょっとと、思ったより安かったという。

高倍率レンズではトランジスタレベルまで見えるが、拡大を進めると見えづらくなり、使えるのは5,000倍程度が限界だとイチケンは述べる。この倍率でも画像解析で表面の凹凸がわかり、メタルレイヤーのある部分が盛り上がっているのが確認できた。設計時に四角で開けたビアは、角が取れて丸くなっていた。薬品やガスで溶かすなどの工程でどうしてもエッジが丸くなるもので、実際に作ってみてそれがよくわかったという。

プリント基板の断面:6層とパッド・オン・ビア

最後にプリント基板の断面を見た。6層基板で、表面のレジスト、表層の銅箔、内層の銅箔、ガラス繊維とエポキシ樹脂のFR4基材がはっきり分かれている。縦方向の銅はビアである。

今回はパッド・オン・ビアを採用した。ビアの上に銅箔を載せられるため、高密度実装で助かる場面が多いという。そのためにはビア内部を充填する必要があり、映像の一方は樹脂を充填したもので、これにより表層の銅箔が凹んだり破れたりしない。もう一方は樹脂に銅粉末を混ぜたものを充填しており、樹脂のみより熱と電流が伝わりやすいが、値段は高い。大電流を流す用途や、基板の反対側まで熱をしっかり伝えたい場合に向いているとイチケンは説明している。

締めくくり

イチケンは、マイクロスコープは部品を分解して中身を確かめる用途のほか、製造現場で製品の細部の品質が保たれているかをすぐに確認する用途にも使えるとし、品質保証担当者、開発者、研究者にとって役立つ機会が多いだろうと述べて動画を締めくくった。本編中に残された問いとしては、ダイオードのチップ外周を囲む緑色の線の正体や、大電力ヒューズの穴の本当の理由など、イチケン自身が推測にとどめた点がある。