CIOとイチケンの国産充電器、Makuakeで開始 ディスプレイ搭載の理由と8,880円の価格設定

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概要

CIOと電子工作系YouTuberのイチケンが共同で進めてきた「国産充電器プロジェクト」の第5回で、クラウドファンディングの開始が告知された。撮影時点では、日本国内での量産はまだ始まっていない。動画では、これまでの開発の経緯、ディスプレイを載せた理由、「国産」と呼ぶ範囲、そして想定より安い価格に決めた事情が、イチケンとCIO側の担当者の対話で説明された。CIO側の担当者は、価格について自分が最終的な意思決定をしたと述べている。

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イチケンが担当した回路と熱設計の監修

イチケンがこのプロジェクトで主に見てきたのは、回路と熱設計である。最初に受け取った試作品は発熱が大きく、表面温度が93℃ほどに達したという。イチケンは「これで発売できるのか」と危機感を持ち、当初の予定より踏み込んで監修することにした。問題の箇所ごとにレポートを作り、どこにどのような放熱材を入れるとよいかといった助言をしたという。

CIO側の担当者によると、イチケンのフィードバックは、チャンネルで公開された分解動画より細かい粒度だった。どの部分で熱の問題が起きやすいかを示した資料をもとに、CIOが修正し、その修正の確認をイチケンに依頼した。場合によっては基板そのものを修正した。担当者は、イチケンが想像以上に深く関わり、それによって改善された部分が多いと話す。試作当初の温度から大幅に下がる見通しが立ってきたとのことで、動画内では中身が見える状態の現物も紹介された。

イチケンは中国の工場も見学している。実際に見ると、想定していなかった工程がいくつも含まれていた。行かなければ分からない部分があったので、行ってよかったと振り返る。CIO側も、組み立ての最初から最後までをリアルタイムで見てもらったからこそ出てきた指摘があったと考えており、完成度の高いフィードバックだったと評価した。

ディスプレイは表示用ではなく操作用

この充電器には、ディスプレイとボタンが付いている。上下の操作に加えて中央を押し込むと決定になる、トグル式の操作系である。CIO側の担当者は、これは単なるモニターではなく操作用のディスプレイであり、充電速度を見るために付けたものではないと説明した。

テーマは「パーソナライズ」で、利用者の価値観や用途に合わせて動作モードを切り替えられる。担当者は例として次のモードを挙げた。

  • フルパワーモード:AIの処理などで負荷が高いときや、65Wが必ず必要でACアダプターのように使いたい人向け
  • セーフティモード:持ち運びが多く、抜き差しを安心して行いたい人向けに温度を抑える
  • お休みモード:就寝中など、必要最低限の充電速度でよいので万一のリスクを極力減らしたい場合
  • エコモード:スマートフォンの充電を80%程度で止め、電池の劣化を抑えたい人向け

こうした切り替えを1台の充電器で、しかも見て操作できる形で実現するためにディスプレイを載せた、というのが担当者の説明である。アプリとも連携しており、アプリからしか操作できないモードもある。ディスプレイで選んだ設定が内部のファームウェアに書き込まれ、そのモードで動く仕組みだ。技術的な要素が多く、正直苦戦していると担当者は認めた。イチケンによれば、操作できるモニターを備えたCIOの充電器はこれが初めてだという。

なぜ国産第1弾でこれをやるのか

イチケンは、日本に工程を移管する最初の製品でこれほど多くの機能を盛り込んで大丈夫なのか、熱設計や回路を見ながら少し気になっていたと打ち明けた。視聴者からも同様のコメントが多く寄せられていたという。

これに対して担当者は、このプロジェクトの意義と、CIOが手がける意義の両方に挑み、その成果を次につなげたいと答えた。一人ひとりの生活シーンに合わせて細かく調整するという発想は、海外からはあまり出てこない、日本的な文化を背景にした着想だと担当者は考えている。実際に「80%で充電を止めてほしい」「ACアダプターのように使いたい」といった声が寄せられていた。それらを1つの製品にまとめれば、リテラシーが高くない人でも自分に合った充電ができるのではないか、というのが狙いだ。

担当者はさらに、単に工程をできるだけ日本に寄せたUSB充電器にとどまるなら、欲しがるのは「日本製の充電器を使いたい人」に限られるとも述べた。パーソナライズという考え方が世界に広まって共感を得られれば、他にない価値になり得るし、それが日本の企業だから生まれた発想だと受け止められれば、物の見方も変わるのではないか。そこまで持っていくことに会社として挑戦したい、という考えである。面白いと感じてもらえなければ使っていてワクワクせず、愛着も湧きにくい。記念品のような存在で終われば製品として長続きしない、とも語った。

一方で、ディスプレイは足かせにもなっている。イチケンは、ディスプレイがあるだけで筐体構造の熱設計が難しくなり、ディスプレイに熱が伝わりすぎると寿命が短くなると指摘した。CIO側は内部に熱がこもりにくいよう修正を繰り返した。実装の難易度は一段上がったが、妥協せずに設計で解決していくこと自体を国産充電器プロジェクトの一部にしたい、と担当者は話している。

「国産」はどこまでか

イチケンは、シリーズを通して見ていない視聴者に向けて、今回の充電器が完全な国産ではないことを改めて確認した。担当者によると、生産工程の7〜8割は中国で行い、日本は残りの2〜3割にとどまる。部品は点数ベースで半分ほどが日本製で、残りは海外製を使っている。まだハイブリッドな要素が多い、というのが担当者自身の評価である。

具体的には、プリント基板への部品実装までは中国で行う。基板をケースに収める組み立てやディスプレイの接続などから先を日本で行う。イチケンは、これで「国産」と呼んでよいのか疑問に思う人も多いだろうと述べた。

担当者は、基板へのチップ実装を含めた一連の工程をすべて日本でできればもちろん理想的だと認めた。ただ、自社で調べた限りでは、設計から実装、組み立てまでを一貫して国内で行っている企業は見つからなかったという。さらに部品の多くは中国で作られており、調達やサンプル試作も中国で進めなければならないのが現状だと説明する。すべてを一から日本でやろうとすれば、見積もれないほどの時間とコストがかかる。その上で形にならなければ、構想だけで意味がない。

担当者は、CIOが企業として活動を続ける中で「いつか日本で物づくりを」という声を年々多く受けてきたと語る。共感するファンもつき、ようやく挑戦できる段階に立てたという。ただ、設計や開発は自社で進められても、部品サプライヤーや協力工場とのつながりやノウハウはまだない。そこで、充電器づくりの工程を一通り洗い出し、日本に持っていけるところから少しずつ移すことを現実的な方針とした。今ようやくスタートラインに立てたので、今後は部品の日本比率を上げたり、部品実装を含めて工程を日本に移したりしていきたいという。最初から全部を掲げて期待だけさせ、実現できないよりも、まず形にしてニーズがあるかを確かめ、長期的に広げていく土台を作りたいと担当者は述べた。

組み立て先・朝日電子と今後の拡張

国内の組み立てを担うEMS(受託製造)メーカーとして、福島県の朝日電子が見つかった。その経緯はCIO側のチャンネルで動画になっている。イチケンは、朝日電子がプリント基板の実装を多く手がけており、将来的には部品実装から日本でできるのではないかという話が出ていたと紹介した。

担当者によると、基板実装に使うSMT設備は導入に大きなコストがかかるが、朝日電子はこの設備を持ち、実装の前段の工程を担ってきた。そうした設備と経験を持つEMS工場と組めば、設計や部品調達を含めて前の段階から国内で担える可能性が見えてくる、と担当者は考えている。部品サプライヤーに対しては、要求される発注数量の壁を越えることや、適合する部品をカスタマイズしてもらうことも含めて、今後広げていきたいという。第2弾、第3弾もぜひやりたいと語った。

ただし、第1弾を形にすること自体が見た目ほど簡単ではない。工場にはスペースを明け渡してもらっており、CIO側も設備を入れる必要がある。工場はふだん充電器を作っていないため、新たに人員を配置して生産ラインを組み、教育し、現場で本当に作れるかを確かめなければならない。

価格8,880円は「無理をしている」

通常のWeb販売価格は8,880円である。イチケンは、1万円を超えて1万円台半ばになると予想していたので、かなり安いと受け止めた。原宿のCIOのポップアップストアで聞いた際も、1万円を超えるかもしれないという話だったという。担当者も、社内の製品企画メンバーが原価ベースでそのくらいの金額を見込んでいたことを認めた。

この価格は担当者が最終的な意思決定として決めたもので、本人は「正直ちょっと無理をしている」と述べた。今回は通常の充電器にはない費用がかかっている。国内EMS工場への組み立て委託費に加え、工程を分散させることで新たに人手が必要になる。設備を日本に持ち込む費用や、工場のスペースを明け渡してもらうための工事費も一定程度負担する。アプリ開発費など通常の製品でもかかる費用もある。これらを製品の原価に載せず、企業のブランド活動費用として扱うよう損益計算の考え方を組み替えた。そのうえで原価だけで見たときにギリギリ成り立つ価格にした、と担当者は説明する。

価格はコストの積み上げから決めたのではなく、顧客がギリギリ手に取れる価格から逆算した、というのが担当者の説明である。担当者自身の金銭感覚では、1万円を超えるとハードルが一気に上がる。8,880円も一般的な充電器と比べれば高いが、ディスプレイや各種モード、熱を抑える設計などを備えていることを踏まえれば、妥当と感じてもらえる金額だと判断したという。イチケンも、65W・2ポートで1万円を超えると多くの人が高いと感じるだろうと同意した。

担当者は、中国で充電器が汎用品化し、65Wでも2,000円弱の製品があることにも触れた。それとの明確な違いの例として、ポート間で電力を自動で振り分ける機能を挙げた。これは対応するチップを使わなければ実現できず、何も考えずに使っても便利な充電器になっているという。

さらに担当者は、数量ベースで成功することが次につながると強調した。成功すれば日本の工場がもっと取り組もうという気持ちになり、販売店や国内の企業もこの製品に関心を持つ。プレミア価格で利益を出して一度きりで終わるより、ブランドへの投資として費用を計上する道を選んだ、と説明した。イチケンは、本当にこの価格で成り立つのかと正直思った、とあらためて口にしている。

今後のスケジュールとクラウドファンディング

今後、イチケンとCIO側は福島県の朝日電子を訪れ、量産の準備や工程を視察する予定で、その様子も動画にするという。うまくいけば10月に量産を始めるスケジュールで動いている。ただ担当者は、紆余曲折があるはずで、実際にどこまでうまくいくかはまったく未知数だと述べ、進捗をイチケンの動画で伝えていきたいと話した。

クラウドファンディングはMakuakeで、動画公開の翌日12時30分に始まる。通常価格より安くなるプランが用意され、最初に製品が届くのもMakuakeの支援者だという。担当者は、この取り組みが成功して可能性が見えれば、本当に一から設計を始められる未来にもつながると語った。イチケンは、熱設計や回路を見てきた立場から思い入れのある製品になったと述べた。一方で、国内量産がどこまで予定どおり進むかは、撮影時点ではまだ答えが出ていない。