電気は通さず熱だけを通すチップ部品「サーマウィック」を実験で確かめる

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概要

VishayのThermaWick(サーマウィック)は、見た目はセラミックキャパシタのようなチップ部品である。しかし役割は放熱で、電気的には絶縁したまま熱だけを伝える。動画では、この部品がどのような場面で役立つのか、データシートと実物でどんな特性が確認できるのかを整理し、2種類の実験で効果を検証している。

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銅箔を広げて放熱すると、電位までつながってしまう

サーマウィックは、抵抗などと同じように基板に実装して使う。話者はまず、通常の放熱の考え方を説明する。抵抗やICで発生した熱は、基板やヒートシンクに逃がす。基板の銅箔に積極的に熱を逃がし、銅箔をヒートシンク代わりにすることもある。銅箔に移った熱はプリント基板にも伝わり、周囲の空気の対流や放射によって放散される。そのため、熱の逃げ先になる銅箔の面積を広げれば、発熱部品の温度は下がる。

話者は図を使った例を示す。設計段階で銅箔を追加して面積を広げると、80℃だった部品が50℃まで、つまり30℃下がる。ただし、銅箔を広げて熱的につなぐと、電気的にもつながってしまう。基板では広いグラウンド銅箔につなぐことが多いが、そうすると発熱部品側の銅箔もグラウンド電位になる。グラウンド電位で問題ない回路もあるが、そうでない場合もある。

サーマウィックを使えば、電気的には絶縁したまま、別の銅箔に熱を捨てられる。熱を受け取る銅箔と電位が違っていても構わない。

最初から前提にするか、最後の手段にするか

話者は、この部品を前提に回路設計やアートワーク設計をするよりも、放熱に本当に困ったときの「奥の手」として使うのがよいのではないかと述べる。一方で、積極的に使う設計も面白いとしている。採用するかどうかは、部品にかけられるコストと、設計の手戻りにかかるコストを比べて決まるだろう、というのが話者の見方である。

材料は窒化アルミ、絶縁抵抗は999MΩ以上

データシートには、製品の構造と冷却効果の例が載っている。特徴は「電気的に絶縁された熱伝導体」で、材料には窒化アルミが使われている。話者によれば、窒化アルミは絶縁体でありながら熱をよく伝えるので、この用途に向いている。パワー半導体モジュールでチップを載せる絶縁基板に使われることもあるという。

似た例として、話者は以前分解したプリウスのインバーターを挙げる。パワーカードと熱交換器の間に、薄いセラミック板が挟まれていた。窒化アルミかどうかは分からないとしつつ、セラミック系材料で電気的絶縁と熱伝導を両立させている点が共通するという。このセラミックは触るとひんやりしており、話者はそれを熱をよく伝えるためだと説明している。

絶縁抵抗は、データシート上で999MΩ以上とされている。実際に部品を割ると、中身は窒化アルミだけでできていた。テスターで抵抗を測ると表示はオーバーフローで、測定範囲外だった。

静電容量はごく小さいが、ゼロではない

セラミック板に電極が付いた構造なので、電気的にはキャパシタのようにも見える。データシート上の静電容量はチップサイズによって異なり、字幕上では0.0数pFから0.数pF程度の範囲とされている。

話者は、グラウンドプレーンと電源ラインをつなぐような場所ならほぼ気にならないと見ている。ただし、電位が激しく変動する箇所とグラウンドプレーンをつなぐ場合は、気になるかもしれないとする。手持ちの装置で測ったところ、測定できないほど小さかった。つまり直流的には絶縁されているが、交流的には容量成分を通してわずかに電流が流れる、と話者は説明している。

サイズごとに熱抵抗と絶縁距離が変わる

話者はDigiKeyで実物を購入した。サイズは0603から2512まであり、長辺電極品もある。話者が挙げた熱抵抗は次のとおりである。

  • 0603:14℃/W。ピンポイントの熱対策向きではないかと話者は見ている。
  • 2512:15℃/W。端子間距離が長いので絶縁距離を確保でき、電位差の大きい部分に向きそうだという。ただし距離が長い分、熱抵抗は大きくなる。
  • 1225(長辺電極):4℃/W。熱をよく伝えるが、絶縁距離は短くなる。

チップ抵抗と同じように並列接続もできる。2個並列なら熱抵抗は半分、3個なら3分の1になる。

実験1:基板上の2枚の銅箔をつなぐ

実験基板には銅箔AとBがある。抵抗は銅箔A側に実装されており、電圧を加えると抵抗が発熱し、その熱が銅箔Aに流れる。AとBの間にはサーマウィックを実装でき、比較用に実装した基板としていない基板を用意した。実装した基板では、熱がサーマウィックを通ってBにも逃げるため、抵抗の温度は下がり、代わりにBの温度が上がるはずである。

話者はこれを熱回路で表した。Pは抵抗の発熱量、TRは抵抗の温度、RAは銅箔Aの熱抵抗、RTWはサーマウィックの熱抵抗である。実装した基板では、その先に銅箔Bの熱抵抗がつながる。未実装の基板ではこの経路は開放になる。実際には基板の基材を通してBに伝わる熱もあるが、この回路では無視している。

サーモグラフィーで見ると、サーマウィックのある基板では熱がBの銅箔に伝わり、じんわり温まる様子が見えた。時間がたつと、未実装の基板でも基材を通して熱が広がり、基板全体の温度が上がった。

ただし、サーマウィックがあっても温度が大きく下がるほどの差は出なかった。話者の考察では、銅箔Aの熱抵抗RAがもともとそこそこ小さく、しかもサーマウィックの熱抵抗が銅箔より大きいため、目に見える効果にならなかった可能性がある。それでも加熱直後に熱が隣の銅箔へ移る様子は確認できたので、熱自体はスペックどおり伝わっているのだろうと話者は見ている。

実験2:抵抗に直接付けると約30℃の差

効果を分かりやすくするため、話者はより極端な条件で実験した。抵抗とサーマウィックを直接はんだ付けし、サーマウィックの反対側に銅箔を付けたものと付けないものを用意した。

サーモグラフィーで見ると、銅箔のない方は開始直後から温度が早く上がった。銅箔のある方は、サーマウィックを通して銅箔に熱が逃げるため、抵抗の温度上昇が緩やかだった。ほぼ定常状態に達した時点で、抵抗の温度は銅箔なしが約100℃、銅箔ありが約70℃だった。

話者はこれも熱回路で説明する。どちらの条件でも、抵抗から直接逃げる経路の熱抵抗RAは非常に大きく、そちらにはほとんど熱が流れない。銅箔なしでは、RTWの先の経路RBが開放になっている。銅箔ありでは、RTWの先にRB、つまり銅箔を通って周囲温度25℃へ至る経路ができる。その結果、銅箔をつないだ方が熱がよく逃げ、抵抗の温度が下がった、と話者は結論づけている。

まとめ

話者は、サーマウィックを電気的に絶縁したまま熱だけを通す面白いチップ部品と位置づけ、放熱設計の幅を広げたい設計者に勧めて動画を締めくくった。ただし、基板上の銅箔同士をつないだ実験1では目立った温度低下は見られなかった。実際の効果は、元の銅箔の熱抵抗とサーマウィック自身の熱抵抗の大小関係に左右される。このことも、実験から示された点である。