世界初の水冷スマホ「REDMAGIC 11 Pro」を分解して見えた、水冷の役割と冷却の主役

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概要

REDMAGIC 11 Proは、市販モデルとして初めて水冷システムを搭載したスマートフォンだという。電子工作系YouTuberのイチケンは、REDMAGICから「このスマホに使われている技術を見てほしい」と分解の依頼を受け、内部構造を確認した。分解と温度測定を通じて話者が出した結論は、水冷は一定の効果を持つものの冷却の主役は空冷ファンであり、水冷の主な目的は放熱よりも本体内部での熱の移動と温度の均一化にある、というものだ。

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外観から見える2つの冷却機構

REDMAGIC 11 Proはゲーミングスマートフォンに分類され、見た目もそれらしいデザインになっている。外から確認できる冷却機構は、強制空冷ファンと液体冷却機構の2つだ。

空冷は本体の右側に吸気口、左側に排気口があり、その間が空気の流路になっている。左側の出口付近にはシロッコファンが見える。排気口に物を近づけると勢いよく風が吹き出すが、話者によれば流量はそれほど多くなく「そよ風レベル」だという。ファンの音は静かな環境では意外と気になるとも述べている。ファンは手動でオン・オフでき、充電中に回すかどうか、強・弱も設定で選べる。

液体冷却機構は背面から見えるようになっており、液体の中を白い気泡のようなものが動くため、流速がわかりやすい。話者は外観から、発熱の多い部分に流路を設けて発熱の少ない部分へ熱を運び、さらに空冷部分に液体を通して熱を逃がす設計ではないかと推測し、分解で確かめることにした。こちらも液体循環のオン・オフと流量の強・弱を選べる。なお黒色モデルは外から水冷部分が見えないが、同じ冷却機構が入っているという。

冷却以外の特徴として、最近では珍しい有線イヤホンジャック、SIMカード2枚用のトレイ、FeliCaチップ搭載によるおサイフケータイ対応が挙げられた。

背面カバーを外して現れた液体の流路

背面カバーは比較的簡単に外れ、さらに剥がしていくと液体の流路が現れた。左下がポンプで、その部分を指で押すと液体が進んでいく様子が見える。ポンプはピエゾ素子を使ったマイクロポンプで、動作中は耳を近づけると音が聞こえるが、離れていれば気にならない程度だという。流路はポンプの出口から一周して再びポンプの入口に戻る構成になっている。

ポンプ給電用のコネクタもあるが、水冷機構にはほかの部品がくっついていてすぐには外せないため、先に周辺の部品を分解していった。

カメラ周りの部品

カメラやSoC類を覆う上部のカバーは、カメラ部分がアルミ削り出しで、全体は金属と樹脂を貼り合わせたような作りだと話者は見ている。カメラのLEDモジュールには大きめのLEDが4灯付いており、その中央の部品について話者は明るさセンサではないかと推測している。カメラモジュールのカバーでこのセンサを覆う部分には段々があり、フレネルレンズのような構造になっていた。LEDモジュールの横の金属カバーの中にはMEMSマイクが隠れている。

カメラは3つで、最も大きいメインカメラには手ブレ補正機構がある。ただし話者は、このスマホはゲーミング性能に全振りしているため、カメラは「そこそこ」の性能だと評している。そのほか有線イヤホンの差込口のモジュールも確認した。

水冷モジュールの正体:冷やすのではなく熱を運ぶ

銀色のカバーを外すと、冷却モジュールは強制空冷モジュールと液冷機構がくっついたような形になっていた。液冷モジュールの裏側には熱伝導率の高いグラファイトシートが貼られており、中央にはワイヤレス給電モジュールがある。取り外した液冷モジュールの裏側にはマイクロポンプがあった。流路の中の白いものについて、話者は当初、流れを見やすくするためにオイルなどを入れているのかと考えたが、よく見ると気泡だったという。

分解前、話者は「発熱部の熱を液体に移し、ポンプで循環させ、強制空冷の空気で冷やす」構造を想像していた。しかし実際には、水冷と空冷の部分は位置的には近いものの物理的な接触はほとんどなく、液体に移した熱を空冷で逃がす仕組みにはなっていなかった。

水冷機構の下にはバッテリーがあるため、話者はこの水冷機構がバッテリーのためのものだと見ている。ただしバッテリーの熱を液体に乗せるなら、その液体の熱をさらにどこかへ逃がす必要がある。この配置ではその逃がし先がない、というのが話者の指摘だ。熱の移動自体は裏側のグラファイトシートでも可能なので、水冷機構は「お飾り要素が強く」放熱にはあまり寄与していないようにも見えると述べている。

一方で、バッテリー部分の温度の均一化には寄与しているという。バッテリー付近で発生した熱を、液体とグラファイトシートによって空冷機構に近い部分へ効率よく移し、本体も冷やしている空冷機構で積極的に逃がす、という考え方だ。ただし温度の均一化という目的であれば、グラファイトシートのほうがコストでも性能でも勝っているような気がする、と話者は付け加えている。

ベンチマーク中の温度測定:水冷ありのほうが温度が上がった

水冷の効果を確かめるため、話者はベンチマーク動作中の温度を測定した。充電100%でUSBケーブルを接続した常時給電の状態で、「ファンなし・水冷なし」「ファンあり・水冷なし」「ファンあり・水冷あり」の3パターンを比べている。

どのベンチマークも最初の4周までは順調に動き、それ以降は第1段階のサーマルスロットリングが働いた。温度も同様で、どの条件でも開始直後に急上昇し、4分あたりで上昇が緩やかになる。その後もゆっくり上がり続け、ある程度で平衡するが、これは第2段階のサーマルスロットリングによるものだという。

ファンありの状態で水冷の有無を比べると、第1段階のスロットリングまでは大きな差がなかったが、それ以降はなぜか水冷ありのほうが温度上昇が大きかった。何回か試しても同じ傾向で、水冷ありでは温度上昇が速すぎて端末の電源が落ちたこともあった。

話者はこれを「憶測の域を出ない」と断ったうえで、水冷が動作しているときはSoCなどの動作プロファイルがよりハイパフォーマンス寄りになる一方、水冷自体の冷却効果はそれほど大きくなく、空冷の動作も変わらないため、このような結果になったのではないかと考察している。

動作プロファイルを固定した再測定

違いがはっきりしなかったため、CPUとGPUの動作プロファイルを固定して再測定した。温度が上がりきった定常状態から始め、最初の10分は冷却ファンと水冷を両方動かし、10分後に水冷だけをオフにしている。

結果はほとんど違いがわからないものだったが、水冷オフのときのほうがわずかに温度が上がっているように見えたという。話者はこれを、分解時に述べたとおり、この水冷方式が水を冷やして熱交換するものではなく、熱の移動や温度の均一化を主目的にしているためだと解釈している。一定の効果はあるが、空冷ほどの冷却効果はない、というのが話者の見立てだ。

冷却の主役、空冷モジュールの構造

空冷モジュールは取り外せる構造になっている。熱伝導グリスが塗られた部分が熱を受け取る場所で、その相手は銅箔が貼られたメインプロセッサーやSoCのある部分と、筐体部分だ。モジュール側のグリス接触面は、熱をよく伝えるために金属がむき出しになっており、表面はやや粗めだった。

空気は画面右側から吸気して左側から排気され、先にSoCを冷やし、その後に本体を冷やす順序になっている。モジュールを分解すると、本体から見えていた部分はカバーで、その下に空気の通り道があった。通り道の深さは1.7mmで、冷却フィンはなく単純な流路になっている。話者は、フィンを多く立てると圧力損失が大きくなり、このファンのスペックでは十分な流量を確保できなくなる可能性があるからではないかと述べている。

ファンと防水の工夫

このスマホは防水仕様だが、水に沈めれば吸気口から水が入り、ファンの周りも水浸しになる。ただし吸排気口以外には水が漏れない作りになっている。ファンの給電用フラットケーブルを通す穴はシリコンのコーキング剤で固められ、水が空気の流路以外に入らないようにしてある。

ファンは24000rpmで、ファンを大きくするより回転数を上げて流量を稼ぐ設計だ。製造はデルタ電子。水に直接触れるファンの基板には防水コーティングが施され、むき出しに見えるホイール部分にも防水コーティングがされている。吸気口と排気口にはゴムパッキンがあり、吸気口にはゴミの侵入を防ぐメッシュフィルターも付いていた。

話者はこのメッシュフィルターについて、目がかなり細かいためホコリで目詰まりしそうで、しかも取り除く手段がない点を懸念している。本体が防水なので排気口から空気や水を流し込んで掃除することもできるが、推奨はしないとしている。

7500mAhのバッテリー

バッテリーは無水エタノールで粘着を弱めて外した。Appleのように電圧をかけると剥がれるシールは採用されていないという。容量は7500mAh(28.43Wh)の大容量で、商品ページでも電池持ちや給電なしで長時間ゲームができることをアピールしている。電池メーカーはNVTで、端に温度センサが付いていることから、話者は温度管理もしっかりしているようだと見ている。

下側モジュール:スピーカー、USB-C、リニアモーター

バッテリーの下には、上側と下側のモジュール基板をつなぐフラットケーブルが隠れていた。ケーブルは二重になっており、裏側はEMCシールドのためか金属メッシュ張りになっている。その下の金色のシートはベイパーチャンバーだ。

下側モジュールにはスピーカーユニットがあり、本体側にもスピーカーの穴がある。取り外した基板は主にUSB-CやSIMカードなどの機能を担うもので、金属シールドで覆われた部分にはIC類が入っていると話者は見ている。USBの真下には振動用のリニアモーターがあり、中を開けると確かにリニアモーターの構造になっていた。

メイン基板と「複合液体金属3.0」

メイン基板の裏側には熱伝導グリスが塗られていた。グリスの塗り方やディスプレイ側のベイパーチャンバーとの接触から、話者はこの部分が最も発熱の多い場所だと推測している。

ベイパーチャンバー側の表面には金属片のようなものがあり、これは公式に「複合液体金属3.0」と呼ばれている部品に相当するという。取り外すと表面は確かに液体金属のような質感だが、ソニーのPS5のように液体金属がたっぷりある感じではない。REDMAGICによれば、液体金属を独自のサンドイッチ構造にすることで、SoCの発熱時に表面だけが溶けて密着し、熱をよく伝えるという。話者がヒートガンで加熱してみると、温度が上がったときの液体金属らしい様子が確認できた。

基板のシールドに貼られた銅箔を剥がすと、中には熱伝導グリスがかなり入っていた。その下にはMicron製のRAMがあり、さらにその下の緑色の基板の上にSoCが載っている。RAMとSoCを2階建てにすることで配線経路を最短にし、性能を上げる構成で、最近のスマートフォンではだいたいこの配置だと話者は説明する。

空冷ヒートシンクが当たっていた基板反対側の銅箔の下にも熱伝導材料が充填されていたが、こちらはグリスよりも熱伝導シートに近いものだった。この部分は電源系の回路で、ESLを減らせる3端子MLCCが多用されている。

冷却機構と発熱源の位置関係

話者はここで全体の構成を整理している。本体側にベイパーチャンバーがあり、その上に熱伝導グリスや複合液体金属3.0が乗る。メイン基板の主な発熱源はSoCとRAMで、両者は重なって配置され、その熱は複合液体金属3.0を介してベイパーチャンバーへ流れる。

メイン基板の反対面には電源回路があり、その裏にちょうどSoCがあるため、電源回路の熱とSoCの熱がこちらの面にも伝わってくる。この面に空冷機構が重なり、空気が流れることで熱が効果的に冷やされる。つまり電源回路、SoC、RAMの熱は、空冷で積極的に冷やしつつ、ベイパーチャンバーにも逃がして放熱する、というのが話者のまとめたイメージだ。

2階建ての基板とスピーカー

メイン基板に隠れた位置には、かなり大きめのスピーカーがある。これを収めるためにメイン基板のその部分はへこんでおり、正面から見ると基板が2階建てになっているのがわかる。2階部分にも回路が載っていて、基板面積を有効活用していると話者は評価している。

ディスプレイとベイパーチャンバーの内部構造

ディスプレイは裏面全体が銅箔張りで、指紋センサもこの部分にある。インカメラの穴にあたる部分もディスプレイになっていて、映像がしっかり映るという。

本体側にはほぼ全面にグラファイトシートが貼られ、その下に非常に大きなベイパーチャンバーがある。断面を開くと液体成分が残っており、この液体が蒸発と凝縮を繰り返すことで熱が移動する。

内部のメッシュは2枚構成で、マイクロスコープで確認すると、小さい方のメッシュは網目が粗く線が太く、大きい方のメッシュは網目が細かく線が細かった。中央付近の太く粗いメッシュは液体を素早く運び、全体に敷かれた細かいメッシュは液体をしっかり引き寄せる役割があり、両者の長所を組み合わせた構造だと話者は説明している。

結論:水冷は放熱より熱の移動と均一化のため

話者は、REDMAGIC 11 Proが水冷と空冷の技術を組み合わせて、発生した熱を効率よく外部に逃がしていることがわかったとまとめている。一方、ベンチマーク中の温度測定については条件をそろえるのが難しく、途中で断念したと認めている。そのうえで、水冷には一定の効果が見込めるものの、空冷機構ほど冷却に大きな影響はなさそうだと判断し、水冷は放熱というより本体内部での熱の移動や温度の均一化を主な目的にしていると考察している。