世界初の水冷スマホ「REDMAGIC 11 Pro」を分解して見えた、水冷の役割と冷却の主役
イチケン / ICHIKENREDMAGIC 11 Proは、市販モデルとして初めて水冷システムを搭載したスマートフォンだという。電子工作系YouTuberのイチケンは、REDMAGICから「このスマホに使われている技術を見てほしい」と分解の依頼を受け、内部構造を確認した。分解と温度測定を通じて話者が出した結論は、水冷は一定の効果を持つものの冷却の主役は空冷ファンであり、水冷の主な目的は放熱よりも本体内部での熱の移動と温度の均一化にある、というものだ。
外観から見える2つの冷却機構
REDMAGIC 11 Proはゲーミングスマートフォンに分類され、見た目もそれらしいデザインになっている。外から確認できる冷却機構は、強制空冷ファンと液体冷却機構の2つだ。
空冷は本体の右側に吸気口、左側に排気口があり、その間が空気の流路になっている。左側の出口付近にはシロッコファンが見える。排気口に物を近づけると勢いよく風が吹き出すが、話者によれば流量はそれほど多くなく「そよ風レベル」だという。ファンの音は静かな環境では意外と気になるとも述べている。ファンは手動でオン・オフでき、充電中に回すかどうか、強・弱も設定で選べる。
液体冷却機構は背面から見えるようになっており、液体の中を白い気泡のようなものが動くため、流速がわかりやすい。話者は外観から、発熱の多い部分に流路を設けて発熱の少ない部分へ熱を運び、さらに空冷部分に液体を通して熱を逃がす設計ではないかと推測し、分解で確かめることにした。こちらも液体循環のオン・オフと流量の強・弱を選べる。なお黒色モデルは外から水冷部分が見えないが、同じ冷却機構が入っているという。
冷却以外の特徴として、最近では珍しい有線イヤホンジャック、SIMカード2枚用のトレイ、FeliCaチップ搭載によるおサイフケータイ対応が挙げられた。
背面カバーを外して現れた液体の流路
背面カバーは比較的簡単に外れ、さらに剥がしていくと液体の流路が現れた。左下がポンプで、その部分を指で押すと液体が進んでいく様子が見える。ポンプはピエゾ素子を使ったマイクロポンプで、動作中は耳を近づけると音が聞こえるが、離れていれば気にならない程度だという。流路はポンプの出口から一周して再びポンプの入口に戻る構成になっている。
ポンプ給電用のコネクタもあるが、水冷機構にはほかの部品がくっついていてすぐには外せないため、先に周辺の部品を分解していった。
カメラ周りの部品
カメラやSoC類を覆う上部のカバーは、カメラ部分がアルミ削り出しで、全体は金属と樹脂を貼り合わせたような作りだと話者は見ている。カメラのLEDモジュールには大きめのLEDが4灯付いており、その中央の部品について話者は明るさセンサではないかと推測している。カメラモジュールのカバーでこのセンサを覆う部分には段々があり、フレネルレンズのような構造になっていた。LEDモジュールの横の金属カバーの中にはMEMSマイクが隠れている。
カメラは3つで、最も大きいメインカメラには手ブレ補正機構がある。ただし話者は、このスマホはゲーミング性能に全振りしているため、カメラは「そこそこ」の性能だと評している。そのほか有線イヤホンの差込口のモジュールも確認した。
水冷モジュールの正体:冷やすのではなく熱を運ぶ
銀色のカバーを外すと、冷却モジュールは強制空冷モジュールと液冷機構がくっついたような形になっていた。液冷モジュールの裏側には熱伝導率の高いグラファイトシートが貼られており、中央にはワイヤレス給電モジュールがある。取り外した液冷モジュールの裏側にはマイクロポンプがあった。流路の中の白いものについて、話者は当初、流れを見やすくするためにオイルなどを入れているのかと考えたが、よく見ると気泡だったという。
分解前、話者は「発熱部の熱を液体に移し、ポンプで循環させ、強制空冷の空気で冷やす」構造を想像していた。しかし実際には、水冷と空冷の部分は位置的には近いものの物理的な接触はほとんどなく、液体に移した熱を空冷で逃がす仕組みにはなっていなかった。
水冷機構の下にはバッテリーがあるため、話者はこの水冷機構がバッテリーのためのものだと見ている。ただしバッテリーの熱を液体に乗せるなら、その液体の熱をさらにどこかへ逃がす必要がある。この配置ではその逃がし先がない、というのが話者の指摘だ。熱の移動自体は裏側のグラファイトシートでも可能なので、水冷機構は「お飾り要素が強く」放熱にはあまり寄与していないようにも見えると述べている。
一方で、バッテリー部分の温度の均一化には寄与しているという。バッテリー付近で発生した熱を、液体とグラファイトシートによって空冷機構に近い部分へ効率よく移し、本体も冷やしている空冷機構で積極的に逃がす、という考え方だ。ただし温度の均一化という目的であれば、グラファイトシートのほうがコストでも性能でも勝っているような気がする、と話者は付け加えている。
ベンチマーク中の温度測定:水冷ありのほうが温度が上がった
水冷の効果を確かめるため、話者はベンチマーク動作中の温度を測定した。充電100%でUSBケーブルを接続した常時給電の状態で、「ファンなし・水冷なし」「ファンあり・水冷なし」「ファンあり・水冷あり」の3パターンを比べている。
どのベンチマークも最初の4周までは順調に動き、それ以降は第1段階のサーマルスロットリングが働いた。温度も同様で、どの条件でも開始直後に急上昇し、4分あたりで上昇が緩やかになる。その後もゆっくり上がり続け、ある程度で平衡するが、これは第2段階のサーマルスロットリングによるものだという。
ファンありの状態で水冷の有無を比べると、第1段階のスロットリングまでは大きな差がなかったが、それ以降はなぜか水冷ありのほうが温度上昇が大きかった。何回か試しても同じ傾向で、水冷ありでは温度上昇が速すぎて端末の電源が落ちたこともあった。
話者はこれを「憶測の域を出ない」と断ったうえで、水冷が動作しているときはSoCなどの動作プロファイルがよりハイパフォーマンス寄りになる一方、水冷自体の冷却効果はそれほど大きくなく、空冷の動作も変わらないため、このような結果になったのではないかと考察している。
動作プロファイルを固定した再測定
違いがはっきりしなかったため、CPUとGPUの動作プロファイルを固定して再測定した。温度が上がりきった定常状態から始め、最初の10分は冷却ファンと水冷を両方動かし、10分後に水冷だけをオフにしている。
結果はほとんど違いがわからないものだったが、水冷オフのときのほうがわずかに温度が上がっているように見えたという。話者はこれを、分解時に述べたとおり、この水冷方式が水を冷やして熱交換するものではなく、熱の移動や温度の均一化を主目的にしているためだと解釈している。一定の効果はあるが、空冷ほどの冷却効果はない、というのが話者の見立てだ。
冷却の主役、空冷モジュールの構造
空冷モジュールは取り外せる構造になっている。熱伝導グリスが塗られた部分が熱を受け取る場所で、その相手は銅箔が貼られたメインプロセッサーやSoCのある部分と、筐体部分だ。モジュール側のグリス接触面は、熱をよく伝えるために金属がむき出しになっており、表面はやや粗めだった。
空気は画面右側から吸気して左側から排気され、先にSoCを冷やし、その後に本体を冷やす順序になっている。モジュールを分解すると、本体から見えていた部分はカバーで、その下に空気の通り道があった。通り道の深さは1.7mmで、冷却フィンはなく単純な流路になっている。話者は、フィンを多く立てると圧力損失が大きくなり、このファンのスペックでは十分な流量を確保できなくなる可能性があるからではないかと述べている。
ファンと防水の工夫
このスマホは防水仕様だが、水に沈めれば吸気口から水が入り、ファンの周りも水浸しになる。ただし吸排気口以外には水が漏れない作りになっている。ファンの給電用フラットケーブルを通す穴はシリコンのコーキング剤で固められ、水が空気の流路以外に入らないようにしてある。
ファンは24000rpmで、ファンを大きくするより回転数を上げて流量を稼ぐ設計だ。製造はデルタ電子。水に直接触れるファンの基板には防水コーティングが施され、むき出しに見えるホイール部分にも防水コーティングがされている。吸気口と排気口にはゴムパッキンがあり、吸気口にはゴミの侵入を防ぐメッシュフィルターも付いていた。
話者はこのメッシュフィルターについて、目がかなり細かいためホコリで目詰まりしそうで、しかも取り除く手段がない点を懸念している。本体が防水なので排気口から空気や水を流し込んで掃除することもできるが、推奨はしないとしている。
7500mAhのバッテリー
バッテリーは無水エタノールで粘着を弱めて外した。Appleのように電圧をかけると剥がれるシールは採用されていないという。容量は7500mAh(28.43Wh)の大容量で、商品ページでも電池持ちや給電なしで長時間ゲームができることをアピールしている。電池メーカーはNVTで、端に温度センサが付いていることから、話者は温度管理もしっかりしているようだと見ている。
下側モジュール:スピーカー、USB-C、リニアモーター
バッテリーの下には、上側と下側のモジュール基板をつなぐフラットケーブルが隠れていた。ケーブルは二重になっており、裏側はEMCシールドのためか金属メッシュ張りになっている。その下の金色のシートはベイパーチャンバーだ。
下側モジュールにはスピーカーユニットがあり、本体側にもスピーカーの穴がある。取り外した基板は主にUSB-CやSIMカードなどの機能を担うもので、金属シールドで覆われた部分にはIC類が入っていると話者は見ている。USBの真下には振動用のリニアモーターがあり、中を開けると確かにリニアモーターの構造になっていた。
メイン基板と「複合液体金属3.0」
メイン基板の裏側には熱伝導グリスが塗られていた。グリスの塗り方やディスプレイ側のベイパーチャンバーとの接触から、話者はこの部分が最も発熱の多い場所だと推測している。
ベイパーチャンバー側の表面には金属片のようなものがあり、これは公式に「複合液体金属3.0」と呼ばれている部品に相当するという。取り外すと表面は確かに液体金属のような質感だが、ソニーのPS5のように液体金属がたっぷりある感じではない。REDMAGICによれば、液体金属を独自のサンドイッチ構造にすることで、SoCの発熱時に表面だけが溶けて密着し、熱をよく伝えるという。話者がヒートガンで加熱してみると、温度が上がったときの液体金属らしい様子が確認できた。
基板のシールドに貼られた銅箔を剥がすと、中には熱伝導グリスがかなり入っていた。その下にはMicron製のRAMがあり、さらにその下の緑色の基板の上にSoCが載っている。RAMとSoCを2階建てにすることで配線経路を最短にし、性能を上げる構成で、最近のスマートフォンではだいたいこの配置だと話者は説明する。
空冷ヒートシンクが当たっていた基板反対側の銅箔の下にも熱伝導材料が充填されていたが、こちらはグリスよりも熱伝導シートに近いものだった。この部分は電源系の回路で、ESLを減らせる3端子MLCCが多用されている。
冷却機構と発熱源の位置関係
話者はここで全体の構成を整理している。本体側にベイパーチャンバーがあり、その上に熱伝導グリスや複合液体金属3.0が乗る。メイン基板の主な発熱源はSoCとRAMで、両者は重なって配置され、その熱は複合液体金属3.0を介してベイパーチャンバーへ流れる。
メイン基板の反対面には電源回路があり、その裏にちょうどSoCがあるため、電源回路の熱とSoCの熱がこちらの面にも伝わってくる。この面に空冷機構が重なり、空気が流れることで熱が効果的に冷やされる。つまり電源回路、SoC、RAMの熱は、空冷で積極的に冷やしつつ、ベイパーチャンバーにも逃がして放熱する、というのが話者のまとめたイメージだ。
2階建ての基板とスピーカー
メイン基板に隠れた位置には、かなり大きめのスピーカーがある。これを収めるためにメイン基板のその部分はへこんでおり、正面から見ると基板が2階建てになっているのがわかる。2階部分にも回路が載っていて、基板面積を有効活用していると話者は評価している。
ディスプレイとベイパーチャンバーの内部構造
ディスプレイは裏面全体が銅箔張りで、指紋センサもこの部分にある。インカメラの穴にあたる部分もディスプレイになっていて、映像がしっかり映るという。
本体側にはほぼ全面にグラファイトシートが貼られ、その下に非常に大きなベイパーチャンバーがある。断面を開くと液体成分が残っており、この液体が蒸発と凝縮を繰り返すことで熱が移動する。
内部のメッシュは2枚構成で、マイクロスコープで確認すると、小さい方のメッシュは網目が粗く線が太く、大きい方のメッシュは網目が細かく線が細かった。中央付近の太く粗いメッシュは液体を素早く運び、全体に敷かれた細かいメッシュは液体をしっかり引き寄せる役割があり、両者の長所を組み合わせた構造だと話者は説明している。
結論:水冷は放熱より熱の移動と均一化のため
話者は、REDMAGIC 11 Proが水冷と空冷の技術を組み合わせて、発生した熱を効率よく外部に逃がしていることがわかったとまとめている。一方、ベンチマーク中の温度測定については条件をそろえるのが難しく、途中で断念したと認めている。そのうえで、水冷には一定の効果が見込めるものの、空冷機構ほど冷却に大きな影響はなさそうだと判断し、水冷は放熱というより本体内部での熱の移動や温度の均一化を主な目的にしていると考察している。
この動画はJLCPCBの提供でお送りします。
こんにちは。今日は技術的にかなり尖ったスマホを入手したので、分解レビューしていきます。こちらのREDMAGIC 11 Proです。
本体をよく見てみると、何か動いているのがわかりますでしょうか。実はこちらのスマートフォン、水冷式なんです。これまで市場で入手出来るスマートフォンは基本的に自然空冷式であったのですが、市販モデルとして水冷システムを市場投入したのは、これが世界初となっている前代未聞のスマホです。
これほど挑戦的なデバイスを分解しないわけにはいきません。実は今回REDMAGICから直接、このスマホに使われる技術をイチケンに見てほしいと分解のオファーをいただきました。今日はこれを分解していって、一体内部はどのような構造をしているのかというのを確認していきます。
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まずは外観から確認していきます。こちらは括りとしてはゲーミングスマートフォンです。見た目的にも、いかにもゲーミングスマホといった感じです。
外から見える冷却機構は2つあります。強制空冷ファンと液体冷却機構です。強制空冷については、こちらに吸気口、そして反対側に排気口があります。この部分が空気の流路になっています。右側から入ってきて左側に抜けるといった構成です。
そして左側の出口付近には、シロッコファンが見えます。排気口に物を近づけてみると、このように風が勢いよく吹き出しているのがわかるかと思います。ただ空気の流量としてはそこまで多くはないです。そよ風レベルです。ファンの音は静かな環境で使っていると、意外と気になります。
ちなみにファンについては、手動でオン・オフを切り替えられるほか、充電中にファンを動作するかも選べるようになっています。あとは強・弱も選べます。先ほど聞いていたファンの音は、強モードのときの音です。
次はこちらの液体冷却機構です。液体がぐるぐると動いているのがわかりますでしょうか。白い気泡のようなものが動いているので、どれくらいの流速で動いているかがよくわかるかと思います。
外から見ると、発熱が多い部分に流路が設けられていて、それを発熱が低い部分に流していって熱を分散させる、それから強制空冷のところにこの液体を通して熱を分散させるような設計にも見えます。この部分については、後で実際に分解して確かめます。
ちなみに、こちらの液体冷却機構についても、液体循環のオン・オフと流量の強・弱が選べるようになっています。
ちなみにREDMAGIC 11 Proには、他の色のモデルもあります。黒色のものについては、外から水冷部分は見えないようになっていますが、他の色と同じ冷却機構が入っています。
このスマホのその他の特徴として、有線イヤホン用のジャック、これ最近のスマホでは珍しいです。2枚用のSIMカードトレイ、FeliCaチップ搭載とおサイフケータイに対応しています。
ここからは実際に分解していきます。
まずこちらに貼り付けてあった背面のカバーについては、結構簡単に取り外せました。さらに剥がしていきます。ここも剥がれます。
このように液体の流路が見えました。一応左下がポンプになっているようで、指でこのようにポンプの部分を押すと、液体が進んでいく様子がわかります。
ポンプはピエゾ素子を使ったマイクロポンプです。動作中は耳を近づけると音は聞こえていますが、離れていれば聞こえないので気にはなりません。実際耳を近づけると、このような音がします。
液体の流れていく方向ですが、ここがポンプの出口で、一周ぐるっと回っていって、そしてまたポンプの入口に戻っていくという流路になっています。
さらに分解していきます。ここにポンプ給電用のコネクタがあります。
こちらの水冷機構を取り外したいのですが、このままではこの部分にいろいろとくっついていて、まだ取り外せないので、まずは他の部分を先に分解していきます。
こちらの上のカバーを取ってしまいましょう。これはカメラやSoC類のカバーです。カメラの部分はこのように、アルミ削り出しの素材でできていて、このように取り外せます。こちらは金属と樹脂を貼り合わせたようなものでしょうか。こちらのカバー部分だけ金属でできています。
次はこちら。これはカメラのLEDモジュールです。ライトについては、割と大きめのLEDが4灯つけられています。その真ん中にあるもの、これは何でしょう。明るさセンサでしょうか。
こちらのカメラモジュールのカバーを見てみると、この中心部にあるセンサを覆うようにして取り付けられます。センサを覆う部分については、段々がついているので、フレネルレンズっぽい構造になっています。
LEDモジュールのすぐ横に、金属のカバーで覆われている部品があります。これを横から見てみると、このようにMEMSマイクが隠れています。
ついでにカメラ周りも紹介します。カメラは全部で3つ付いています。一番大きいメインカメラについては、このように手ブレ補正機構が搭載されています。ただこちらのスマホ、ゲーミング性能に全振りしているため、カメラの性能は非常に高いわけではなくて、そこそこのカメラを搭載しています。
そして次はこちら。これは有線イヤホンの差込口のモジュールです。
次はこちらの銀色のカバーも取り外してしまいましょう。全部取り外せてしまうみたいです。このような外観です。
冷却モジュールはこのように、強制空冷モジュールと液冷機構がくっついたような形になっています。こちらの液冷モジュールの裏側を見てみると、このように熱伝導率が非常に高いグラファイトシートが貼られていました。これも剥がしてしまいましょう。
そして真ん中のこちらは、ワイヤレス給電モジュールです。
このように水冷モジュールは取り外せました。こちらの液冷モジュールの裏側には、マイクロポンプがあります。先ほどもお見せしましたが、このように押すと、中の流体が流れていく様子がわかるかと思います。流路の中に白いものが混ざっているのですが、これは流れがわかりやすいようにオイルなどを入れてるのかなと思ったのですが、よく見てみると気泡のようです。
こちらの水冷システムの冷却について、もう少し詳しく見ていきます。こちらを分解する前は、発熱している部分の熱を液体に移して、それをポンプで循環して、強制空冷の空気で冷やすみたいな事を想像していたのですが、それがどうやら違ったようです。水冷と空冷の部分は、位置的には近いものの、物理的な接触はほとんどなくて、液体に移した熱を空冷で逃がすみたいな事はやっていないようです。
こちらの水冷機構の下側を見てみると、バッテリーがあるので、この水冷機構はバッテリーのためにあるようです。ただバッテリーの熱を液体に乗せて逃がす場合は、この液体の熱をさらにどこかで逃がす必要があります。ただこの配置では、液体の熱をここからさらにどこかへ逃がすのは難しいと思います。熱を逃がす先がないという事です。熱の移動については、水冷機構の裏側に貼り付けられているグラファイトシートでも出来るので、水冷機構についてはお飾り要素が強く、放熱にはあまり寄与していないようにも見えます。
ただバッテリー部分の温度の均一化には寄与しています。つまりどういう事かというと、このあたりで発生した熱を、液体とあとはグラファイトシートを使って、効率よく空冷機構に近い部分に移してやるという事です。空冷機構は本体も冷却していますので、それで積極的に熱を逃がしていくという事でしょう。ですが温度の均一化については、このやり方ではグラファイトシートの方が、コスト的にも性能的にも勝っているような気がします。
水冷の有無による冷却の効果を確認するために、ベンチマーク動作中の温度測定も行いました。充電は100%でUSBケーブルを接続している、常時給電の状態です。今回は3パターンの温度測定を行いました。ファンなし・水冷なし、ファンあり・水冷なし、ファンあり・水冷ありの3つです。
まずはベンチマークの結果ですが、どのベンチマークも最初の4周までは順調に動いています。それ以降は第1段階のサーマルスロットリングが動作します。これは温度測定の結果にも表れています。どの状態でもベンチマーク開始直後は温度は急上昇していますが、4分あたりで温度上昇は緩やかになります。これは第1段階のサーマルスロットリングのせいです。そしてその後も穏やかに温度上昇をしていきます。ある程度温度上昇が止まって温度は平衡しますが、これは第2段階のサーマルスロットリングです。
空冷ファンが動いている状態で、水冷の有無による温度の結果を比較します。第1段階のサーマルスロットリングはそこまで大きな変化はありませんが、それ以降はなぜか水冷ありの方が温度上昇は大きくなっています。何回か実験しましたが全てこの傾向でした。また水冷ありのものは温度上昇ペースが速すぎて、端末の電源が落ちてしまいました。
ここから話す事は憶測の域を抜けていませんが、水冷が動作している場合は、SoCなどの動作プロファイルがよりハイパフォーマンスになるが、水冷による冷却のインパクトはそこまで大きくなく、また空冷の動作は変わっていないため、このような温度上昇になったと考察しています。
違いがあまりわからなかったので、CPUとGPUの動作プロファイルを固定して、改めて温度測定を行いました。こちらのグラフです。温度が上がりきった定常状態から実験をスタートしています。先ほどの結果の縦軸とは温度のレンジが違うので注意して見てください。
測定開始から10分時点までは、冷却ファンと水冷は動作しています。10分後から水冷をオフにしています。どうでしょうか。ほとんど違いはわからないのですが、若干水冷オフのときの方が温度が上がっているような気がします。
やはり分解時に話した通り、この水冷方式は水を冷やして熱交換するものではなく、熱の移動や温度の均一化を主目的に置いているからだと思います。一定の効果は発揮するけれども、空冷ほどの冷却の効果はないという事です。
次は冷却の主役であるこちら、空冷機構を見ていきます。空冷機構はこのように取り外せるようになっています。こちらが空冷機構です。この空冷機構がどの部分の熱を逃がしているかというと、この熱伝導グリスが塗ってある部分です。こちらの銅箔を貼ってある部分と、あとは筐体部分の熱を逃がしています。この銅箔が貼ってある部分は、メインのプロセッサーやSoCなどが入っている部分です。
このモジュールの中に空気が通っていくわけですが、空気が通る部分は結構薄いです。空気の流れとしては画面右側から吸気して、左側から排気です。先にSoCを冷やして、その後に本体も冷やすようになっています。
こちらの冷却モジュールの方を見てみると、熱伝導グリスが塗られている部分は、熱をよく伝えるために金属むき出しとなっています。これはグリスを拭いたところです。表面も少し粗めです。
空冷モジュールを分解しました。本体から見える部分については、カバーとなっていました。このように空気の通り道が見えます。こちら横から見るとこのようになっていて、こちらの深くなっている部分に冷却ファンが入っています。こちらの空気の通り道となっている部分の深さは1.7mmでした。
空気の通り道については、冷却フィンなどは立っておらず、単純な流路となっています。冷却フィンをたくさん立ててしまうと、圧力損失が大きくなってしまい、冷却ファンのスペック的に十分な流量を確保するのが難しくなってしまう可能性があります。
ファンの部分も分解して確認します。一応このスマホ、防水となっています。スマホを水の中に沈めると、当然こちらの吸気口からも水が入ってきて、このファンの周りも水浸しになります。ただ吸排気口以外からは水が漏れ出ないようになっています。こちらのファンの部分をよく見てみると、給電のフラットケーブルを通す穴の部分については、シリコンコーキング剤で固められていて、水が空気の流路以外には入らず、スマホ内部に水は入っていかないようになっています。
こちらのファンは24000rpmのものです。ファンを大きくするよりは、回転数を上げて流量を稼いでいくスタイルです。製造はデルタ電子です。
こちらの基板は思いっきり水に触れるわけですが、表面には防水コーティングがしてあります。ホイール部分もむき出しに見えるのですが、こちらも防水コーティング処理がされています。
こちらの吸気口と排気口の部分を見てみると、スマホ内部に水が入っていかないように、ゴムパッキンがあります。そしてさらに吸気口の部分については、ゴミ侵入防止のためにメッシュフィルターがありました。ただこのメッシュフィルターは結構目が細かいので、ホコリとかで目詰まりしてしまいそうな感じはします。しかもそのホコリを取り除く手段がないので、なかなか厳しそうです。一応スマホ自体は防水ですから、こちらの排気口から空気や水を流し込んで、メッシュフィルターを掃除する事もできますが、推奨はしません。
バッテリーも取り外していきます。無水エタノールで粘着を弱くしていくだけです。Appleみたいに電圧を加えると剥がれるシールがあると便利ですが、こちらは採用していないようです。
外れました。取り外した電池を見ていきます。実はこちらのスマホ、大容量電池を搭載しています。容量は7500mAh、28.43Whです。実際商品ページを見ても、電池の持ちや長時間給電なしでゲームが動く事をアピールしています。電池メーカーはNVTです。温度センサが端に取り付けられているので、温度管理もしっかりとしているようです。
電池を取り外した下側を見てみると、上側のモジュール基板と下側のモジュール基板を繋ぐためのフラットケーブルが隠れています。
下側のモジュールについて、まず先に見ていきます。まずはこちら。これはスピーカーユニットです。このように本体部分にもスピーカーの穴があります。
フラットケーブルも取り外します。二重になっているんですね。こちらも外しましょう。
フラットケーブルの裏側を見てみると、EMCシールドのためか、金属メッシュ張りとなっています。
フラットケーブルの下にあるこちらの金色のシートですが、これはベイパーチャンバーです。後で分解して内部構造も見てみます。
下側のモジュールをさらに外していきます。外れました。
こちらの取り外した基板については、基本的にUSB-CやSIMカード、そのような機能が付いているものとなっています。金属シールドで覆われている部分がありますが、IC類やそのようなものが入っているところかと思います。
そして次、このUSBの真下に隠れているこの部品です。こちらは振動を作るためのリニアモーターです。中身を開けてみると、このようにしっかりとリニアモーターしています。
次はメイン基板を取り外していきます。取れました。こちらのメイン基板の裏側を見てみると、このように熱伝導グリスが塗られています。熱伝導グリスの塗り方や、ディスプレイ側にあるベイパーチャンバーへの接触を考えると、こちらの部分が一番発熱の多いところかと推測しています。
こちらのベイパーチャンバーの表面を見てみると、何やら金属片のようなものがあります。公式の表現を引用すると、これは複合液体金属3.0に相当する部品です。取り外して詳しく見てみると、確かに表面は液体金属っぽい感じがします。ただソニーPS5のように液体金属がひたひたにある感じではないです。REDMAGICによると、液体金属を独自のサンドイッチ構造にする事で、SoC発熱時に表面だけ溶けて密着して、温度をよく伝えるそうです。
ヒートガンで加熱してみます。液体金属っぽい感じがよくわかるのではないですかね、こうすると。温度が高くなると、この液体金属の感じがよくわかるかと思います。
基板のシールドに貼られている銅箔も剥がしてしまいます。熱伝導グリスが結構入っています。
銅箔を剥がしました。こちらにMicronのRAMが載っています。その下に緑色の基板があるのですが、この上にSoCが載っています。RAMとSoCをこのように2階建てにする事によって、配線経路を最短にしてパフォーマンスを上げていく、そのようなものです。最近のスマートフォンでは、SoCとRAMの位置関係はだいたいこれです。
基板反対側の、空冷ヒートシンクが当たっていた部分の銅箔も剥がします。こちらも、このように熱伝導系の材料が充填されていました。これはどちらかというと熱伝導シートに近いものです。
これは電源系の回路です。よりESLを減らせる3端子MLCCが多用されています。
ここまで見てきた冷却機構や発熱源の位置関係について改めて整理します。まずはスマホ本体にベイパーチャンバーがあります。ここに熱伝導グリスや複合液体金属3.0が乗っています。メイン基板の一番の発熱源はSoCとRAMです。これがこのように重なっていきます。SoCとRAMの熱は複合液体金属3.0を使って、ベイパーチャンバーに流れています。
今メイン基板に見えているこちらは電源回路です。この電源回路で出た熱、そしてこの裏面にちょうどSoCがあるわけですが、その熱もやはりこちらの面に伝わってきています。その熱をどうやって逃がすかというと、このように空冷機構が重なって、ここから空気が入ってきます。そうするとここにある熱が効果的に冷やされるという事になるわけです。そのため電源回路、SoC、RAMの熱はどうなるかというと、空冷で積極的に冷却、そしてベイパーチャンバーに熱を逃がして、そちらでも積極的に放熱していく、そんなイメージです。
本体部分をさらに見ていきます。メイン基板で隠れていてわからないですが、ここに部品があります。これはスピーカーです。結構大きめですよね。この部分にスピーカーを入れるために、メイン基板のちょうどこの部分、へこんでいるのがわかりますでしょうか。正面から見るとよくわかるのですが、この部分、実は2階建てとなっています。この部分にどうしてもスピーカーを入れるために、基板も2階建てとなっているんですね。2階建てとなっている部分にも回路はあり、基板面積を有効活用しています。
最後、本体側。ディスプレイを外しました。ディスプレイは全面銅箔張りとなっています。この部分に指紋センサもあります。液晶のこの部分、これインカメラの穴ですが、実はこの部分も液晶になっていて、しっかりと映像は映ります。
次は本体側です。こちらに黒いシートが貼ってありますが、これはグラファイトシートです。ほぼ全面に貼ってあります。そしてその下にあるベイパーチャンバーも剥がして確認します。
ベイパーチャンバーも非常に大きいです。断面を見てみます。中身を見てみると、このようになっています。液体の成分が残っているのが見えます。この液体が蒸発して気体になったり、また液体になったりというのを繰り返して、熱が移動していきます。
今メッシュを確認しているのですが、メッシュは2枚構成になっています。このようになっています。網目の構造をマイクロスコープを使って確認しました。左が小さい方のメッシュ、右側が大きい方のメッシュです。ほとんど違いはないように見えるのですが、小さい方のメッシュは網目が粗く線は太く、大きいメッシュは網目が細かく線は細いです。中央付近に配置されている太く粗いメッシュは液体を素早く運びます。全体に敷かれている細く細かいメッシュは液体をしっかりと引き寄せる役割があるので、それぞれのメッシュの特徴を良いとこ取りするような構造となっています。
というわけで今日はREDMAGIC 11 Proを分解レビューしてきました。見てきた通り、水冷技術と空冷技術を活用して、スマホで発生した熱を効率よく外部に逃がしているという事がわかりました。
ベンチマークでの温度測定は条件を合わせるのが難しくて途中で断念しましたが、水冷については一定の効果は見込めるものの、空冷機構ほど冷却に対して大きなインパクトはなさそうだとしています。水冷については放熱というよりは、本体内部での熱の移動や温度の均一化を主目的に置いていると考察しています。
というわけでこの動画が役に立ちましたら、高評価・チャンネル登録よろしくお願いします。もし何か気になる事があれば、ぜひコメントも残してみてください。それでは最後まで動画のご視聴ありがとうございました。
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