「高すぎた未来艦」ズムウォルトは極超音速兵器CPSの搭載艦としてどう生まれ変わったのか
USA Military Channel 21隻あたり1兆円超とも言われる米海軍の駆逐艦ズムウォルトが、長い改修期間を経て再び海に戻った。2026年1月、ズムウォルトは約3年ぶりに自力で出航した。艦首側にあった主砲は撤去され、代わりに米海軍の極超音速兵器CPSを運用するための大型ミサイル発射筒が搭載されている。搭載数は12発である。「使い道が定まらない失敗作」とまで言われた巨艦が、なぜ極超音速兵器とともに戻ってきたのか。動画は改修の中身、ズムウォルト級そのものの特徴、失敗とされてきた経緯、そして今後の役割を順に紹介している。
3年がかりの大改修とCPSの仕組み
2023年8月、ズムウォルトはサンディエゴを離れ、ミシシッピ州のインガルス造船所に入った。ここで行われたのは通常の整備ではなく、艦の役割そのものを変える大改修だった。
改修の中心は、海軍の極超音速兵器プログラムCPSの搭載である。このプログラムは、核を使わずに世界中のあらゆる目標を迅速に攻撃することを目指している。CPSはロケットブースターと極超音速滑空体を組み合わせた兵器システムで、滑空体C-HGBは陸軍と共通設計となっており、陸軍のダークイーグルと同じものだという。速度はマッハ5以上の極超音速域に達する。
発射にはコールドガス方式が使われる。これはミサイルを発射筒の中でいきなり点火するのではなく、まずガスの力で外へ押し出し、艦から安全な距離まで離してからロケットに点火する方式である。
前部の155mm AGSを撤去し、4本×3発の発射筒へ
今回の改修では、まず前部の155mm AGS砲塔を廃止し、そこにCPS用の大型ミサイル発射筒を設置した。大型発射筒は4本で、1本に3発のCPSが収まる構成とされ、合計12発という計算になる。
一方、後部の砲塔部分については、内部の装填装置や弾庫のスペースがまだ残っているようだと動画は伝える。完全に空にしたわけではなく、将来的に別のミサイル発射装置や新しい兵器、無人機関連の装備を載せる余地として残している可能性があるという見立てである。ズムウォルト級は船体が大きく電力にも余裕があるため、新しい装備を追加しやすい艦だと動画は評している。
2026年1月にはビルダーズ・シートライアルが実施された。これは造船所側が改修後の艦を実際に海へ出し、基本的な性能やシステムが機能するかを確認する試験である。
「改修完了=即戦力化」ではない
ただし動画は、改修が終わったからすぐに完全な戦力になるという単純な話ではないと留保している。艦側のCPS統合は大きな山を越えたものの、肝心のCPSミサイル自体は、艦上からの実弾発射試験がまだ残されている。
さらに2026年4月には、ズムウォルトの艦内で火災が発生し、乗員3名が負傷した。火災の詳しい原因や艦への影響、今後のスケジュールにどこまで響くのかは、まだ明らかになっていないという。
ズムウォルト級とはどんな艦か
1番艦は2016年に就役した。ズムウォルト級は世界最大級であり、最も技術的に進んだ水上戦闘艦の一つとして知られている。全長186m、排水量1万6000t。駆逐艦でありながらアーレイ・バーク級よりかなり大きく、サイズだけなら巡洋艦に近い存在感があると動画は説明する。最大速力は約30ノットである。
最大の特徴はステルス性能だ。外見は、内側に切り込んだピラミッドのような上部構造をしている。これはタンブルホームと呼ばれる船形で、レーダー反射を抑える狙いがある。普通の軍艦は船体側面が上に向かって外へ広がる形をしているが、ズムウォルトは逆に、上に行くほど内側へ傾いている。船体や上部構造物を大きな角度で傾斜させ、レーダー波を正面へ跳ね返さず別方向へ逃がすことで、敵のレーダーに映りにくくする設計である。
兵装としては80セルのミサイル垂直発射装置(VLS)を備えるが、ここにもステルス性への配慮がある。VLSは艦の中心ではなく、船体の外側に沿って埋め込まれるように配置されている。蓋のヒンジなどの可動部分は内側に作られ、凹凸を極力減らしているため、外からはただの四角いパネルにしか見えない。80発分の発射装置があることは外見からはほとんど分からないという。このVLSでは、トマホーク、発展型シースパロー、スタンダード・ミサイル、対潜ロケットなどが運用できる。
さらにMH-60Rヘリコプターや、MQ-8ファイアスカウトのような垂直離着陸型無人機を運用できる航空能力も持つ。
32隻計画が3隻に縮小された経緯
なぜここまで大規模な改修が必要になったのか。動画はその背景に、ズムウォルトがたどった波乱の開発とコストの問題があると説明する。
計画当初は32隻の建造が予定されていたが、研究開発費の高騰により、最終的に建造は3隻にとどまった。研究開発費を含めた総費用は約225億ドルで、1隻あたりの価格は75億ドルにもなる。
この縮小によって、専用装備や専用弾薬のコストを多くの艦に分散できなくなった。その影響を最も大きく受けたのが、ズムウォルトの象徴だった2基の155mm AGSである。
撃てない主砲となったAGS
AGSは単なる艦砲ではなく、専用の長射程精密誘導弾を使い、沿岸部から地上目標を精密に攻撃するための未来の攻撃システムだったと動画は説明する。ステルス性を生かして沿岸へ近づき、長射程の誘導砲弾で地上を叩く。ズムウォルトはそうした未来の対地攻撃艦として大きな期待を背負っていた。
しかし建造数が3隻に削減されたことで、砲弾1発あたりのコストが大きく上昇した。当初の想定よりはるかに高額になり、最終的には1発数十万ドル規模、場合によっては80万ドル以上にもなった。こうなると、地上目標を大量に攻撃する兵器としては現実的に使いにくい。結果としてズムウォルト級は、主砲を持っているのにその主砲を本来の形で使えない艦という奇妙な存在になってしまった。海軍は当初の対地攻撃支援という任務を見直し、艦の役割を外洋での水上打撃へと切り替えていった。
78MWの統合電力システムという「余裕」
ズムウォルト級のもう一つの特徴が統合電力システムである。発電容量は約78MW級に達する。この大きな電力の余裕があるからこそ、将来の高出力レーダーやレーザー兵器、新しい兵器システムの搭載が現実的な話として語られてきたと動画は述べる。ズムウォルト級は「電気が余って困るほどの艦」と表現されることもあるという。
動画の見方では、当初目指した未来とは違ったとしても、未来の装備を受け入れるだけの余裕を持っていたことが、今回のCPS搭載改修につながっている。
3隻で最大36発、答えはまだ出ていない
ズムウォルト級は全部で3隻あり、今後は2番艦と3番艦もCPSの統合を進める予定である。3隻すべてが同じ改修を受ければ、単純計算でズムウォルト級全体で最大36発のCPSを運用できることになる。
そのまま消えても不思議ではなかった艦が、極超音速ミサイルという新しい牙を得てもう一度海に戻ってきた。動画は、これが失敗作の延命なのか、それとも未来の艦としての本当の始まりなのか、その答えはまだ出ていないとしている。そのうえで、ズムウォルトは米海軍の失敗と挑戦の両方を背負った、現代海軍を象徴する1隻だと結んでいる。
一隻あたり一兆円級とも言われる駆逐艦が、長い改修期間を経て再び海へ戻ってきました。この艦の名はズムウォルト。
2026年1月、ズムウォルトは約3年ぶりに自らの力で海に出ました。前部の主砲は消え、代わりにアメリカ海軍の極超音速兵器CPSを運用するための大型ミサイル発射筒が搭載されました。その数12発。使い道が定まらない失敗作とまで言われた巨艦が、なぜ今、極超音速兵器とともに再び海に戻ってきたのか。今回は改修を終えたズムウォルト級が、これからどんな役割を担うのかを紹介したいと思います。
まずは改修の話から。2023年8月、ズムウォルトはサンディエゴを離れ、ミシシッピ州にあるインガルスへ向かいました。ここでズムウォルトは通常の整備ではなく、艦の役割そのものを変える大改修に入ります。
改修のメインは海軍の極超音速プログラムCPSの搭載です。このプログラムでは核を使わずに、世界中のあらゆる目標を迅速に攻撃することを目指しています。ロケットブースターと極超音速滑空体を組み合わせた兵器システムで、滑空体C-HGBは陸軍と共通設計となっており、ダークイーグルと同じものです。速度はマッハ5以上の極超音速域。そして発射方式にはコールドガス方式が使われます。
これはミサイルを発射筒の中でいきなり点火するのではなく、まずガスの力で外へ押し出し、艦から安全な距離まで離してからロケットに点火する方式です。
そして2026年1月、ズムウォルトはビルダーズ・シートライアルを実施。ビルダーズ・シートライアルとは、造船所側が改修後の艦を実際に海へ出し、基本的な性能やシステムが機能するかを確認する試験です。
今回の改修は、まず前部の155mm AGS砲塔を廃止、そこにCPS用の大型ミサイル発射筒を設置します。この大型発射筒は4本、1本に3発のCPSが入る構成とされ、合計で12発という計算になります。
後部の砲塔部分については、内部の装填装置や弾庫のスペースがまだ残っているようで、完全に空っぽにしたわけではなく、将来的に別のミサイル発射装置や新しい兵器、無人機関連の装備を載せる余地として残している可能性があります。ズムウォルト級は船体が大きく、電力にも余裕があるため、将来的に新しい装備を追加しやすい艦だと言えます。
一方で、この改修は終わったからすぐ完全戦力化という単純な話ではありません。艦体側のCPS統合は大きな山を越えたものの、肝心のCPSミサイルそのものは、艦上からの実弾発射試験がまだ残されています。
さらに2026年4月にはズムウォルト艦内で火災が発生し、乗員3名が負傷しました。火災の詳しい原因やその影響、今後のスケジュールにどこまで影響するのかについては、まだ明らかになっていません。
ここで一度、そもそもズムウォルト級とはどんな艦なのかを紹介します。1番艦は2016年に就役しました。ズムウォルト級は、世界最大級かつ最も技術的に進んだ水上戦闘艦の一つとして知られています。
全長186m、排水量1万6000t。巨大な船体は駆逐艦にもかかわらず、アーレイ・バークよりもかなり大きく、サイズだけ見れば巡洋艦に近い存在感があります。最大速力は約30ノット。何より大きな特徴はそのステルス性能。外見は内側に切り込んだ船体と、ピラミッドのような上部構造です。これはタンブルホームと呼ばれる船型で、レーダー反射を抑える狙いがあります。
普通の軍艦は船体の側面が上に向かって外へ広がるような形をしています。しかしズムウォルトは逆です。上に行くほど内側へ傾き、艦橋や上部構造物も大きな角度で傾斜しています。レーダー波を正面へ跳ね返すのではなく、別方向へ逃すことで敵のレーダーに映りにくくする設計です。
兵装としては80セルのミサイル発射装置がありますが、ここにもステルス性能が。ミサイルを収納したVLSは艦の中心ではなく、艦の外側に沿って配置され、埋め込まれています。そしてそこも、蓋のヒンジなどといった可動部分は内側に作り、凹凸を極力減らすデザインになっているため、外から見るとただの四角いパネルにしか見えません。そのため、この艦に80発分のミサイル発射装置があることは、外見からはほとんど分からない設計です。
このVLSではトマホーク、発展型シースパロー、スタンダードミサイル、対潜ロケットなどが運用できます。さらにMH-60RヘリやMQ-8ファイアースカウトのような垂直離着陸型無人機を運用できる航空能力もあります。
今回、なぜここまで大規模な改修が必要になったのか。その背景には、ズムウォルトが歩んできた波乱の開発があります。コストにあります。
計画当初32隻の建造が予定されていたものの、研究開発費の高騰により、最終的に3隻のみの建造となりました。研究開発費を含めた総費用は約225億ドル。1隻あたりの価格は75億ドルにもなります。
たった3隻。この縮小によって専用装備や専用弾薬のコストを分散できなくなり、その影響を大きく受けたのが、ズムウォルトの象徴だった2基の155mm AGSでした。
このAGSは単なる艦砲ではありません。専用の長射程精密誘導弾を使い、沿岸部から地上目標を精密に攻撃するための未来の攻撃システムでした。ズムウォルトはステルス性を生かして沿岸へ近づき、長射程の誘導砲で地上を叩く。そんな未来の地上攻撃艦として、大きな期待を背負っていたのです。
それが3隻に削減されたことで、一発あたりのコストが大きく上昇。当初想定よりはるかに高額になり、最終的には一発数十万ドル規模、場合によっては80万ドル以上にもなってしまうことに。こうなると、地上目標を大量に攻撃する兵器としては現実的に使いにくくなります。
その結果、ズムウォルト級は主砲を持っているのに、その主砲を本来の形で使えない艦という奇妙な存在になってしまいました。海軍は当初の地上攻撃支援という任務を見直し、艦の役割を外洋での水上打撃へと切り替えていきます。
ズムウォルト級のもう一つの特徴が統合電力システムです。発電量は約78MW級。この大きな電力余裕があるからこそ、将来の高出力レーダー、レーザー兵器、そして新しい兵器システムの搭載が現実的な話として語られてきました。よくズムウォルト級は、電気が余って困るほどの艦と表現されることがあります。最初に目指した未来とは違ったとしても、未来の装備を受け入れるだけの余裕を持っていた。それが今回のCPS搭載改修にもつながっています。
ズムウォルト級は全部で3隻です。今後、3番艦も2番艦もCPSの統合を進めていく予定です。もし3隻全てが同じ改修を受ければ、単純計算でズムウォルト級全体では最大36発のCPSを運用できることになります。
そのまま消えても不思議ではなかった艦が、極超音速ミサイルという新しい牙を得て、もう一度海に戻ってきました。これは失敗作の延命なのか、それとも未来としての本当の始まりなのか。その答えはまだ出ていません。ただ一つ言えるのは、ズムウォルトがアメリカ海軍の失敗と挑戦、その両方を背負った現代海軍を象徴する一隻だということです。
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