世界初の原子力空母エンタープライズは、どう解体されるのか
USA Military Channel 2原子力空母を最後まで解体し、処分した前例は世界にまだない。動画は、その最初の例になろうとしているアメリカ海軍の空母エンタープライズを取り上げる。アメリカ海軍自身も、この作業を原子力空母として史上初の処分と位置づけている。8基の原子炉を積んだ巨大な艦をどう処分するのか、その方法は後に続くニミッツ級にどうつながるのか。動画はこの2点を中心に、処分方式が決まるまでの経緯をたどっている。
退役した空母のその後:通常動力艦の場合
動画はまず、退役した空母が一般にどうなるかを整理する。原子力ではない通常動力の空母では、解体施設へ運んで船体全体を切断し、鉄などをリサイクルする例がある。たとえばキティホークは、退役後の2022年にテキサス州の解体施設へ向けて最後の曳航が行われた。
一方で、退役後も保存されて博物館になる空母もある。変わった例として紹介されるのがオリスカニーだ。この空母は2006年にフロリダ沖で意図的に沈められ、現在は巨大な人工魚礁になっている。ただし動画によれば、原子力空母ではこうした処分を同じようには行えない。
エンタープライズという艦
エンタープライズは1961年に就役した世界初の原子力空母で、2012年に運用を終えるまで51年間使われた。最大の特徴は動力にある。ニミッツ級の原子炉が2基なのに対し、エンタープライズは8基の原子炉を搭載していた。全長はおよそ342m、満載排水量はおよそ9万3000tである。この巨大な船体と8基の原子炉プラントを、最後は安全に処分しなければならない。
2013年に始まった不活性化作業には多数の造船所作業員が参加し、8基すべての原子炉から核燃料を取り出して推進システムを停止させた。この作業は2018年に完了している。アメリカ海軍の使用済み燃料は鉄道でアイダホ国立研究所内の海軍原子炉施設へ運ばれ、そこで管理されているという。
燃料を抜いても普通の艦にはならない
核燃料を抜いてしまえば、あとは通常の空母と同じように切断できるのか。動画の答えは「そう簡単ではない」である。燃料を取り出しても原子炉設備そのものは艦内に残り、原子炉プラントを解体すれば低レベル放射性廃棄物が出る。さらに艦内にはアスベストなど、適切な処理が必要な有害物質もある。
そのため、普通のスクラップ船のように船体を切り分けて鉄くずとして処分することはできない。放射性物質を含む部分を厳格に管理しながら巨大な船体全体を解体する必要があり、しかも原子力空母でこれを経験した者はまだいない。
前例としての原子力潜水艦の処分
とはいえ、アメリカ海軍には原子力艦を処分してきた長年の経験がある。動画が参考例として挙げるのが原子力潜水艦だ。
退役した潜水艦では、まず核燃料を取り出す。次に艦内から再利用できる機器やスクラップ金属などを撤去し、燃料を抜いた原子炉区画から艦の前部と後部を切り離す。残った原子炉区画は両端を巨大な構造物でふさぎ、区画全体を1つの大きな輸送パッケージにする。これをバージと呼ばれる大型の船に載せて海と川をおよそ1100km移動し、最後は多数の車輪を備えた特殊車両に積み替えて、ワシントン州にあるアメリカエネルギー省の核関連施設ハンフォード・サイトまで運ぶ。ここには退役した原子力艦の原子炉区画を処分する専用区域がある。
アメリカ海軍は1986年以来、原子力潜水艦や原子力巡洋艦から取り出した原子炉区画をこの方法で処分してきた。2025年末までにハンフォードへ運ばれた原子炉区画は145基に達しているという。原子力艦の処分そのものについては、海軍に十分な蓄積があるわけだ。
当初案の見直しと民間施設での一括解体
エンタープライズでも、当初は同じような方法が考えられていた。2012年の時点では、原子炉区画を艦から切り出してハンフォード・サイトへ送る計画が決まっていた。しかし、この計画は後に見直される。相手は潜水艦ではなく9万tを超える巨大空母で、原子炉も8基あるためだ。
アメリカ海軍は技術面、費用、環境への影響、さらに海軍造船所の負担まで含めて、長い時間をかけて複数の処分方法を検討した。2023年に最終的な方針が決まり、選ばれたのはエンタープライズを民間施設で船体ごと解体する方法だった。
この方式では、エンタープライズをアラバマ州の港湾都市モービルへ運ぶ。燃料を抜いた8基の原子炉プラントを含め、船体全体を民間施設で解体する。再利用できる金属などはリサイクルし、8基の原子炉プラントは現地で切断・分解する。そのうち放射性物質を含む部品は専用の容器に入れ、認可された処分施設へ運ぶ。
動画によれば、別の案ではおよそ15年かかるとされた処分を、民間施設を使うこの方式なら約5年で実施でき、費用もおよそ半分に抑えられるとされている。
2026年の最終解体契約
そして2026年7月、エンタープライズの最終解体契約が結ばれた。契約額は約4億1850万ドルで、契約上の作業完了は2030年9月の予定だという。世界初の原子力空母だったエンタープライズは、今度は世界で初めて解体処分される原子力空母になる。
ニミッツ級への道筋
動画は、この作業の意味がエンタープライズ1隻にとどまらない点を強調する。後には10隻のニミッツ級原子力空母が控えている。ネームシップのニミッツは2026年に最後の実任務を終え、退役準備のためノーフォークへ向かっており、不活性化や核燃料除去へ進む段階に入りつつある。
アメリカ海軍はこれから、核燃料を取り出した巨大な原子力空母をどう安全に解体するか、大量に出る廃棄物をどう安全に処分するかを確立しなければならない。その最初の実例がエンタープライズであり、海軍もエンタープライズで得た経験を将来のニミッツ級の処分方法の検討に生かすとしている。動画は、世界初の原子力空母の最後の役割は、原子力空母をどう終わらせるかについてアメリカ海軍に初めての道筋を示すことだ、と締めくくっている。
世界でこれまで原子力空母を最後まで解体し、処分した前例はありません。しかし今、その史上初の作業が始まろうとしています。対象となるのは世界初の原子力空母として誕生したエンタープライズ。アメリカ海軍自身もこの作業を原子力空母として史上初の処分と位置づけています。
ではそもそも退役した空母はその後どうなるのでしょうか? 原子力ではない通常動力の空母の場合、解体施設へ運ばれ、船体を切断して鉄などをリサイクルするケースがあります。例えばキティホークは退役後の2022年、テキサス州の解体施設へ向けて最後の曳航が行われました。一方、退役後も保存され、博物館になる空母もあります。
さらに変わった例がオリスカニーです。この空母は2006年、フロリダ沖で意図的に沈められ、現在は巨大な人工魚礁となっています。
しかし原子力空母では同じようにはいきません。エンタープライズは1961年に就役。世界初の原子力空母として2012年に運用を終えるまで51年間にわたって使用されました。
そして最大の特徴がその動力です。エンタープライズには8基もの原子炉が搭載されていました。ニミッツ級が2基なのに対し、エンタープライズは8基。そして空母の全長はおよそ342m。満載排水量はおよそ9万3000t。この巨大な船体と8基の原子炉プラントを最後は安全に処分しなければなりません。
2013年から始まった不活性化作業には名を超える造船所の作業員が参加。8基すべての原子炉から核燃料を取り出し、推進システムを停止させました。この不活性化作業は2018年に完了しました。アメリカ海軍の使用済み燃料は鉄道でアイダホ国立研究所内の海軍原子炉施設へ運ばれ、管理されています。
では核燃料さえ抜いてしまえば、あとは普通の空母と同じように切断できるのでしょうか? もちろんそう簡単ではありません。核燃料を取り出しても原子炉設備そのものが消えるわけではありません。原子炉プラントを解体すれば低レベル放射性廃棄物が発生します。さらに艦内にはアスベストなど適切な処理が必要な有害物質もあります。
普通のスクラップ船のように船体を切り分け、そのまま鉄くずとして処分することはできません。放射性物質を含む部分を厳格に管理しながら、巨大な船体全体を解体していく必要があります。しかも原子力空母の処分はこれまで誰も経験したことのない作業です。
とはいえ、アメリカ海軍には原子力艦そのものを処分してきた長年の経験があります。参考になるのが原子力潜水艦です。退役した原潜ではまず核燃料を取り出します。その後、艦内から再利用できる機器やスクラップ金属などを撤去し、船体の前部と後部を燃料を抜いた原子炉区画から切り離します。
残された原子炉区画は両端を巨大な鋼製構造物で閉鎖。原子炉区画を1つの巨大な輸送パッケージにします。これをバージと呼ばれる大型の船に乗せ、海と川をおよそ1100km移動します。最後は多数の車輪を備えた特殊車両へ載せ替え、ワシントン州にあるアメリカエネルギー省の核関連施設、ハンフォードサイトまで運びます。ここには退役した原子力艦の原子炉区画を処分する専用区域があります。
アメリカ海軍では1986年以来、原子力潜水艦や原子力巡洋艦から取り出した原子炉をこの方法で処分してきました。2025年末までにハンフォードへ運ばれた原子炉は145基に達しています。原子力艦の処分そのものについては、アメリカ海軍にはすでに長年の経験があるわけです。
当然エンタープライズでも当初は似た方法が考えられていました。2012年にはエンタープライズから原子炉区画を切り出し、ハンフォードサイトへ送る計画が決められていました。しかしその後、この計画は見直されます。相手は潜水艦ではありません。9万tを超える巨大空母。しかも原子炉は8基です。
アメリカ海軍は技術面、費用、環境への影響、そして海軍造船所の負担まで含めて、長い時間をかけて複数の処分方法を検討しました。そして2023年、ようやく最終的な方向が決まります。選ばれたのはエンタープライズを民間施設で船体ごと解体する方法でした。
この方式ではエンタープライズをアラバマ州の港湾都市モービルへ運びます。そこで燃料を抜いた8基の原子炉プラントを含め、船体全体を民間施設で解体します。再利用できる金属などはリサイクル。一方、8基の原子炉プラントは現地で切断、分解します。その中で放射性物質を含む部品は専用の容器に入れ、認可された処分施設へ運びます。
この民間施設を利用する方式なら、別の案ではおよそ15年かかるとされた処分を約5年で実施でき、費用もおよそ半分に抑えられるとしています。そして2026年7月、ついにエンタープライズの最終解体契約が決まりました。額は約4億1850万ドル。契約上の作業完了は2030年9月の予定です。
世界初の原子力空母だったエンタープライズは、今度は世界で初めて解体処分される原子力空母となります。そしてこの作業が重要なのは、エンタープライズ1隻だけの問題ではないということ。その後には10隻のニミッツ級原子力空母が続きます。
しかもニミッツ級の1番艦ニミッツは2026年に最後の実任務を終え、退役準備のためノーフォークへ移っています。すでに不活性化や核燃料除去へ向かう段階に入りつつあります。
これからアメリカ海軍は核燃料を取り出した巨大な原子力空母をどう安全に解体するのか。そして大量に発生する廃棄物をどのように安全に処分していくのか。その方法を確立していかなければなりません。その最初の実例になるのがエンタープライズです。アメリカ海軍もエンタープライズで得られる経験を、将来のニミッツ級の処分方法を検討するために活用するとしています。
世界初の原子力空母だったエンタープライズ。その最後の役割は、原子力空母をどう終わらせるのかという、アメリカ海軍にとって初めての道筋を作ることになります。
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