「データに飲み込まれる世界」で日本はどう外貨を稼ぐのか——元経産官僚・津田通隆が語るデジタル赤字とAI開発競争
楽待 RAKUMACHI経済産業省で30歳以下の若手官僚チームを率い、日本のデジタル赤字を分析したレポートをまとめた津田通隆氏は、2026年8月末で同省を退官し、起業した。本人によれば、もともと官僚より経営者としての期間のほうが長く、本業は起業家・エンジニアだという。楽待チャンネルのインタビューでは、日本のデジタル赤字はなぜ日本特有の問題なのか、AIによって赤字はどこまで膨らむのか、そして日本に勝ち筋はあるのかが語られた。津田氏の立場ははっきりしている。日本に足りないのはミドルウェアを担うプレイヤーであり、フロンティアであるサンフランシスコに背を向けず、そこに向き合い続けるべきだという。
なぜ今、退官して起業するのか
津田氏が「デジタル経済レポート」を公表したのは2025年のゴールデンウィーク前だった。本人が最も言いたかったことは、その副題「データに飲み込まれる世界で 聖域なきデジタル市場の生存」に込めたという。
後半の「聖域なきデジタル市場」については、当時もある程度の実感があったと津田氏は見ている。テスラやBYDがソフトウェア定義型の製品を出し、イーロン・マスクがスターリンクを展開し、ジェンスン・フアンが「フィジカルAI」という言葉を使い始めていた。一方、前半の「データに飲み込まれる世界」は、1年前にはまだピンと来ない人が多かった。この1年でフロンティアラボが次々にモデルを出してきたことで、データとビジネス特有のコンテキストこそが企業価値の源泉だということを、多くの人が体感的に理解し始めたと津田氏は言う。レポートで掲げた「Data is eating the world」は、マーク・アンドリーセンが2011年に書いた「Software is eating the world」を踏まえた表現で、そこから約15年を経て、そのパラダイムが足元の市場に来ていると捉えている。
起業を選んだ理由として、津田氏は政策の限界を挙げた。国の中ではデータマネジメント基盤のチーフアーキテクトやオープンソースプロジェクトに携わってきたが、経済産業政策はプレイヤーがいて初めて機能する。とりわけブルーオーシャンの領域には、政策で打てる手が少ないのが現実だという。レポートには業界にとって耳の痛いこともあえて書いた。それを役所から言い続けるのではなく、自分で率先垂範する次世代のプレイヤーが必要だと判断し、自分のキャリアでもここに最大のレバレッジポイントがあると考えて起業したと説明した。
SDX——ハードウェアとソフトウェアの主従が逆転する
従来、デジタル赤字は、iPhoneを買い、Amazonで買い物をし、InstagramやYouTubeを使うたびにサブスク代や広告費が米国へ流れる、という形で説明されてきた。津田氏のレポートが強調するのは、その領域が製造業にまで広がっているという点である。
津田氏はこれを「SDX(ソフトウェア・デファインド・エブリシング)」と名付けた。ハードウェアとソフトウェアの主従が逆転し、ソフトウェアがハードウェアを含めて市場を定義していく状況を指す。例として挙げたのがテスラだ。テスラは車を売りたいのではなく、モビリティ・アズ・ア・サービスと呼ばれるサービスを売るために、車というデバイスを売っているにすぎない。そのため車載OSも自動運転支援(ADAS)も自社で作る。ソフトウェアのコンポーネントを疎結合にするため、従来の車よりソフトウェア的なE/Eアーキテクチャを採用し、スーパーチャージャーまで自前で設置する。津田氏によれば、これは日本の自動車メーカーからはあまり考えられないビジネスである。
サンフランシスコでは最近「ビッツからアトムズへ」という言い方がされるという。物理世界へ事業がシフトしても、そのアトムはソフトウェアによって定義され、拡張可能なビジネスにされていく。それを駆動しているのは明らかにAIのフロンティアモデルだと津田氏は述べ、レポートに書いたことが現実に起きていると受け止めている。
日本に欠けているのはミドルウェア
聞き手は、高市政権が2040年までに370兆円規模の産業投資を掲げるなかで、デジタル分野ではプレイヤー不足が起きているのかと尋ねた。津田氏はソフトウェアの三層構造から説明した。
ソフトウェアはアプリケーション、ミドルウェア、OSの三層からなる。歴史的には、まずWindowsのようなOSがあり、それを応用するアプリケーションが生まれた。アプリケーションがSaaSや周辺ツールを含めて膨らむと、共通部品が必要になり、最後にデータ基盤や認証基盤、オントロジー、さらにはAI基盤モデルといったミドルウェアが出てきた。日本でB2BのSaaS企業のIPOが増え始めたのは、津田氏がエストニアで暮らしていた2019〜2020年ごろで、米国で2000年代初頭に始まってから約19年遅れだった。アプリケーション層では日本でも少しずつ企業が育ってきたが、OSやミドルウェアを担う企業はいるのか、というのが津田氏の問題提起だ。
AIの登場で、アプリケーション層は揺らいでいる。津田氏によれば、従来のSaaSはGUI、SoR(システム・オブ・レコード、つまりデータ基盤)、ビジネスロジックの3要素でできていた。AI以前のソフトウェアは関数の塊であり、構造化された入力を受けて構造化された出力を返すものだった。だから人間がビジネス環境を観察して情報を構造化し、プルダウンなどのGUIを通じてデータベースに入れる必要があった。AIはテキストも画像もそのまま扱えるため、インターフェースはチャットウィンドウさえあればよくなりつつある。
2026年2月にClaudeがCoworkを出した際には「SaaSは死んだ」「SaaSポカリプス」とまで言われた。津田氏の見立てでは、その後に生き残っているのはデータ(SoR)を握る企業かビジネスロジックを握る企業であり、UIだけを握る企業は淘汰された。アプリケーション層がAIに崩され、価値が再結晶化していく先がミドルウェアと計算資源だという。
ところが、日本でその担い手を考えても、ほとんど思いつかないと津田氏は言う。Yコンビネーターで採択される企業では、ビジネスツールやデベロッパーツールを含むミドルウェアが花形だ。一方、日本はアプリケーションの上物や、SIerが人を労働力として客先に組み込むオペレーション型のビジネスに偏っている。ミドルウェアやマネージドサービスとしての製品が少ないところに自ら入り込むことが、自分の付加価値だと考えて起業を決めたという。
デジタル赤字は日本特有の問題
GAFAMのような企業がないのは日本だけではなく、米国以外のどの国にもない。それでもデジタル赤字は日本特有の問題なのか。津田氏の答えは「結論から言うと日本特有の問題」だった。
津田氏によると、デジタル赤字の状況が日本に最も近いのはドイツで、産業構造も似ている。違うのは、ドイツにはシーメンスやSAPのように外貨を稼ぐ企業があることだ(SAPは実質的に米国企業と言ってもよいと津田氏は付け加えた)。さらにドイツはユーロ圏の一員なので、自国単独の収支が悪くても他国と相殺される面がある。日本の場合、デジタル赤字は為替に直接跳ね返る。聞き手が言及した「構造的円安」の議論にもつながるファンダメンタルズの問題だという。
ただし津田氏は、赤字そのものが悪いわけではないとも注意を促した。デジタル赤字は国際収支統計のサービス収支のうち「デジタル関連収支」が支払い超過になっている状態を指す。赤字が大きいことは内需が外需を上回っていることの裏返しでもあり、経済政策・産業政策・財政金融政策の間にはトレードオフがある。レポートの立場は、デジタル赤字を日本のソフトウェア産業が抱える構造問題を映し出すものとして扱い、その構造に問題を見いだすことにある。
数字で見るデジタル関連収支の中身
津田氏はデジタル関連収支の内訳を説明した。示された資料は2023年の数字で、当時の経常収支は21.4兆円の黒字だった。デジタル関連収支は、経営コンサルティング、コンピューターサービス、著作権等使用料、情報、通信の5項目で構成され、前の3つで約97%を占める。
名前から誤解されやすいのが「経営コンサルティング」だ。外資系コンサルの使いすぎを連想しがちだが、実態はほぼすべてがデジタル関連の広告で、GoogleやMetaへの広告費が含まれる。聞き手が「今この動画で流れている広告も含まれるのか」と尋ねると、津田氏はそうだと答えた。「コンピューターサービス」はSaaSやPaaSの利用料で、B2BならセールスフォースやSAP、B2CならNetflixやSpotifyが入る。「著作権等使用料」は中身が分かりにくいが、WindowsやiOSなどOSのライセンス料がかなりの部分を占める。受け取りも支払いも伸びているが、海外企業への支払いが明らかに多いことが、デジタル赤字の直接の原因だという。
悲観シナリオで28兆円、隠れ赤字を含めて45.3兆円
今後について、津田氏はレポートの試算を紹介した。サービス収支のデジタル赤字は、ベースシナリオで2035年に18兆円、悲観シナリオで28兆円に膨らむ。この差の10兆円分は、AIによるディスラプションの影響と試算している。
ただし、これはサービス収支だけの話である。テスラやBYDの車に含まれるソフトウェアは、モノの付属品として貿易収支に計上されている。その額に加えて、ソフトウェア定義型の製品が売れることで既存のハードウェア中心の市場がどれだけ破壊されるかも考える必要がある。そこでレポートでは「隠れデジタル赤字」と「SDX赤字」という2つの概念を新たに作った。自動車産業、産業機械産業、通信産業を合わせると、悲観シナリオで合計45.3兆円程度の赤字が見込まれるという。
津田氏は、悲観シナリオの数字がサービス収支全体に与える影響も説明した。前年時点のデジタル赤字は6.85兆円で、それを含めたサービス収支の赤字は2.9兆円だった。サービス収支の受け取りを稼いでいるのはインバウンド観光と産業財産権(製造業の発明や特許のライセンス料)だが、発明が今から3倍になるとは考えにくく、訪日客や単価が3倍に伸びるにも限度がある。そうなると、デジタル赤字が6.85兆円から28兆円に増えた分の約22兆円がそのままサービス収支に乗り、サービス収支の赤字は22.9兆円程度になると津田氏は見積もる。貿易収支側でも赤字が増えていく。
日米金利差のような金融面の要因もあるが、ファンダメンタルズで見ると円安構造に最も響いているのはデジタル関連収支である可能性がある、と津田氏は述べた。日本で創造産業が育っていないのが担い手不在のためか、海外との競争に負けているためかはともかく、ここに手を入れなければならないというのが国の視点から見えてくることだという。
赤字が膨らむ業界構造——SIの人月ビジネス
AIによって何が削られるのか。津田氏の分析では、最も大きく削られるのは日本のSIの部分である。日本のデジタル赤字の構造問題は、大きく「事業モデルの問題」と「市場の問題」に分けられるという。
事業モデルについて、津田氏はメッコ図を示して説明した。日本の事業構造で最も面積が大きいのはSIで、人月単価で計算する労働型の産業である。成長率も粗利率も低いが、AIの受託開発と同じく足元で手堅くキャッシュを稼げる。ただ、顧客の要望に応え続ける必要があるため、プロダクトを作る時間がなくなる。これは小さなAIスタートアップでも大手SIベンダーでも同じだと津田氏は指摘する。
一方、海外企業が稼いでいるのは、アプリケーション、ミドルウェア、計算資源インフラ、広告といった資本集約型のビジネスだ。一度作ったソフトウェアをマネージドサービスとして運用して対価を得る、トランザクションごとに課金する、マーケットプレイスで手数料を取る、といった稼ぎ方である。人を増やさなければスケールしない線形のビジネスと、電気代を増やせばスケールしていく指数関数的なビジネス。その資本効率の差こそがデジタル赤字の構造的な根源だと津田氏は言う。しかもAIがSIの売上を削り、その分がミドルウェアや計算資源インフラへ移っていくので、デジタル赤字はさらに増えるという見立てである。
「FDE」の多くはマーケティング用語だ
聞き手は、最近日本でも「FDE(フォワード・デプロイド・エンジニア)をやっている」とアピールする企業が増えていると話を振った。津田氏は、日本のほとんどの会社が売っているFDEはマーケティング用語だと答えた。
本来のFDEはパランティアのものだ。パランティアはこれを「砂利道から道路へ」と説明しているという。前提として、パランティアにはオントロジーというミドルウェア製品がある。オントロジーとは、津田氏の説明では、AIが使うビジネスコンテキストを技術的にはグラフで表すための仕組みだ。FDEは客先のCTOのような立場で顧客企業に入り込み、そこで何が起きているかを観察して、その会社のデジタルツインを作り、AIが使えるようにする。多くの顧客を回るうちに共通部品が見つかってくるので、それをプロダクトにフィードバックする。この研究開発の機能こそが本来のFDEだと津田氏は強調した。
AnthropicやOpenAIが言うFDEも同じ構造だという。基盤モデルを持つ企業が顧客の中に入り、事前学習や事後学習でどうチューニングすべきかを知り、共通部分をプロダクトに還元する。プロダクトを持っているからこそFDEというオペレーションに意味が生まれる。SIerが言うFDEは、客先常駐の表面的な部分だけを切り出したものが多いと津田氏は見ている。
ミドルウェアが日本から生まれない理由——中途半端に大きい市場
なぜ日本はミドルウェアに進出してこなかったのか。津田氏は2つ目の要因として市場の問題を挙げた。
ソフトウェアのビジネスは、ミドルウェアを含めて勝者総取りである。最も大きな市場と資本を持つ者が規模の経済で全部を取る。ソフトウェアはもともと国境のないビジネスだが、近年はAIのおかげで言語の壁、商習慣の壁、制度のローカライズもトークン代を払えばほぼ克服できるようになった。米国で育ったサービスが、そのまま本家本元として日本に入ってくる。
それなのに、日本は伝統的に市場が「中途半端に大きい」ため、国内に過剰適応しがちだと津田氏は言う。上場すれば起業家にはそこそこの収入が入り、VCも海外に出なくても国内でヒットを打ち続ければLPに資金を返せる。かつては商習慣や法制度にも守られていた。その結果、日本のソフトウェアはガラパゴス化しやすい。日米ではICT支出に8.5倍の差があり、同じ機能のプロダクトでも、サンフランシスコの企業は信用、資金、顧客数のすべてで8.5倍の下駄を履いていることになるという。
ミドルウェアにはさらに固有の事情がある。ミドルウェアの顧客はアプリケーションであり、APIなどの連携機能をアプリケーション企業に提供する。津田氏はセールスフォースの例を挙げた。同社のイベントにはAnthropicのダリオ・アモデイも登壇していたが、セールスフォースの主張の根拠は、顧客管理システムの決定論的な関数がすでに定義されているなら、AIがAPIやMCP経由でツールとして呼び出せばよい、というものだという。ビジネスロジックとSoRを握る企業は代替されにくく、セールスフォースもアプリケーションからミドルウェアの領域へ少しずつ降りてきている。アプリケーション企業が最も多いのはサンフランシスコなので、ミドルウェアは最初から米国でやらなければ顧客も成長余地もない。技術的に最も難しい層なのでVCも目利きしにくく、それに特化したエコシステムがある米国に出ていかないことが、日本から、そしてサンフランシスコ以外のどの国からもミドルウェア企業が生まれにくい理由だと津田氏は説明した。
それでも日本に本社を置く理由——「ボーングローバル」の多様なやり方
聞き手は、日本での起業は圧倒的に不利に見えるのに、なぜあえて日本を選ぶのかと尋ねた。津田氏は、レポートを率先垂範するという意味合いもあるとしつつ、合理的な理由を挙げた。日本は金利が比較的低い。また、トップエンジニアの給与がサンフランシスコとはおそらく10倍以上違い、日本ではその価格で雇える。日米のアービトラージを取りにいくうえで、日本には優れた面があるという。
「日本に本社を置く」にもさまざまなやり方がある、と津田氏は強調した。韓国、北欧、イスラエル、英国は国内市場が小さいため、最初から国境なくグローバル市場を狙う「ボーングローバル」の考え方が起業家にも投資家にも浸透している。特に韓国から学べることが多いという。「韓国のAmazon」と呼ばれるクーパンは韓国に本社を持つが、登記は米デラウェア州で、ホールディングカンパニーの下に韓国の本社を置いている。投資を受ける窓口だけを米国に持ち、資金を韓国側に流してグローバル展開しているのだ。中国のアリババやバイトダンスも、中国特有の事情はあるものの、シンガポールや米国で資金調達して国内に還流させる形をとってきたという。
デジタル赤字を決めるのは、レポートに書いたように送金の比率だと津田氏は言う。日本の会社が米国で外貨を稼ぎ、IPを日本が持ち、資金調達はデラウェアで行う、というやり方も1つの選択肢であり、法人登記も本社も日本に置く純粋なやり方も1つの選択肢だ。ボーングローバルを狙う会社がさまざまなスキームを使っているという事実自体が日本ではあまり知られておらず、そこから学ぶべきだと述べた。
日本企業でこうしたやり方が少ないのは、米国での資金調達のハードルが非常に高いためだという。現地の投資家コミュニティに入り、英語で交渉しなければならない。さらに「なぜわざわざ日本から来るのか」と問われる。英国なら金融×フィンテック、北欧ならゲームと教育でゲームテックやエドテック、イスラエルなら軍事とサイバーセキュリティで防衛テック、と説明できる。日本は、今でこそキャディのような製造業×SaaSの企業が出てきたものの、そうした掛け算をする人が少なかった。中途半端に大きい国内市場があるのになぜ来るのか、という「Right to Win(なぜあなたは投資に値するのか)」の問いに答えられなかったことが大きかったと津田氏は振り返る。
新会社が狙う「コンテキストマネジメント」
津田氏の新会社が手がけるのは、「コンテキストマネジメント」と呼ばれる領域のミドルウェアである。
津田氏の説明によれば、LLMはインターネット上のテキストをクローリングして事前学習しており、最近はそれが足りなくなって古書店の本を大量に買い、断裁して学習させたという話もニュースになっている。いずれにせよ、学習のベースは世の中に公開されているものだ。次に問題になるのは、企業内部のドメイン特有の文脈、意味、ルール、データを学習させてよいのか、という点だという。
ソフトウェアがコモディティ化し、ハードウェアも重要ではあるもののコモディティである以上、企業にとって唯一の競争優位はデータとコンテキストだと津田氏は考えている。これを明け渡せば競争優位がなくなる。各社固有のドメインコンテキストに、ガバナンスをかけながら分散的に管理する市場が少しずつできてきているという。津田氏は、データ基盤企業のSnowflakeやDatabricksにも触れた。DatabricksはApache Sparkから始まり、UCバークレーのAMPLab時代から長くデータマネジメントに取り組んできた会社で、今ではヘクトコーン、津田氏の言葉で約15兆円規模の時価総額をつけている。データを管理し、ガードレールをつけ、コンテキストを管理する市場は大きくなっており、津田氏はそこを狙う。国で分散データマネジメントのチーフアーキテクトを務めた経験があり、パランティアのオントロジーのような領域も、技術的にはもっとスケーラブルにやる方法がたくさんあるという。
テックブロの発言は「半分はポジショントーク」として聞く
聞き手は、パランティアのアレックス・カープが、AnthropicやOpenAIのクローズドモデルを使うと知財を奪われ、事業をコピーされると警鐘を鳴らしていることについて意見を求めた。
津田氏はまず、サンフランシスコのいわゆる「テックブロ」の話は割り引いて聞くべきだと前置きした。最近フロンティアラボの人たちは、フロンティアが進みすぎていてみんなで止めなければならないと言い始めた。ダリオが言い出し、イーロンやOpenAIのサムが同調する場面もあった。ところがその後に何が起きたかと言えば、新しいOpus 5.5が普通に出された。表向きの発言にはポジショントークが含まれていると考えておく必要があるという。
オープンウェイトとプロプライエタリのモデルの対立軸にも、ポジションがよく表れていると津田氏は見る。ある事件をきっかけに設立された「オープン・セキュアAIアライアンス」(字幕上の名称)では、業界が二分された。AnthropicやOpenAI、Google DeepMindは参加せず、パランティア、Amazon、NVIDIA、Databricksは推進する側に回ったという。モデルの推論が回れば回るほどAWSやMicrosoftのデータセンターは儲かり、ジェンスン・フアンはGPUで儲かる。データマネジメントが増えればDatabricksが儲かり、ビジネス文脈のコンテキスト管理をしているパランティアにとってモデルはいくらでも切り替えられる。大義名分を掲げていても半分ぐらいはポジショントークだと思って聞くことが重要だと津田氏は述べた。
人類滅亡リスクはどれだけ真剣に語られているか
一方で、AnthropicのAI研究者が語るような「人類が滅亡するかもしれない」という懸念は、ビジネスとは別に実際に心配されているのではないか。聞き手のこの問いに、津田氏は、コアチームにいる人たちは実際にそう思っていると思う、と答えた。
津田氏はDeepMindなどフロンティアラボの人たちともよく話すという。サンフランシスコでは今や「AGI」「ASI」という言葉は使われず、口にすると鼻で笑われるほどだという。そのうえで、再帰的自己改善(RSI)のループはある程度回せるとみんなが思い始めている。津田氏はこれを「半分正しい」と評した。技術的には可能だとしても、タービン不足によるデータセンターの電力不足や、データ不足という問題があり、結論は出ていない。ただ、フロンティアが自分たち自身で危機感を感じるレベルで走っていることは皆が認識しているという。
津田氏はこの状況を、ゲーム理論の囚人のジレンマとして説明した。ジレンマは3つある。1つ目は投資家に対してで、VCの背後にいるLPも含め、今のバリュエーションを正当化するには全部の市場を破壊するぐらいのことをしてもらわないと困る、IPOできない、と本気で思っている。2つ目は競合に対してで、誰かがやめると言っても、相手はやめないだろうと思うから自分もやめられない。3つ目は米中の安全保障で、仮に米国内でやめられても中国が止まってくれるとは限らない。そのため、自分たちが破滅に向かっているのかどうか分からないまま、全速力で走り続けることを運命づけられていると認識しながら走っている、と津田氏は描写した。
その結果、コアチームは疲弊しており、最近は抜ける人も増え、危機感を持つ人も増えているという。津田氏は精神的な要因も挙げた。サンフランシスコは「不毛の土地」で何もない場所であり、そこに優秀な人材を合宿形式で缶詰にするような状態が1年、2年と続けば厳しくなる、と現地にいて感じるという。RSIが本当に来て全部終わるのかどうかは誰にも分からず、投資家もポートフォリオで分散しているくらいで、本人たちも分からないのだろうと津田氏は述べた。
電力という制約と、ガードレールの議論
電力が最後の制約になるなら土地的に中国が有利ではないか、という問いに対して、津田氏は電力の専門ではないと断ったうえで答えた。YCなどのVCが「ビッツからアトムズ」と言うように、最後は電力の動力源と、海底ケーブルを含む通信ファイバーを握っているところが強い、というのは皆が認識している問題だという。最近はガスタービンを回し始めたものの、タービンが売り切れで在庫がない状況で、日本の重工業系企業にとってはある意味うれしい状況でもある。
ただし津田氏は、もう少し引いて見る視点も示した。サイバーセキュリティの観点で、仮にAIがあらゆるファイアウォールを破れるのだとしたら、データセンターの電源ではなく、私たちが普段使っている機器の電力をハックして仮想化して使う、という考え方もできなくはない。これはガードレールの議論と表裏一体であり、どちらとも結論を言えるものではないと見ているという。
超知能が来ることを嬉しいと思うか怖いと思うか、と問われると、津田氏は超知能の定義がなく、ゴールポストが動き続けていると指摘した。そのうえで、どこかのタイミングで必ずシンギュラリティは来ると思うと述べた。人間がちゃんとキルスイッチを押せるのかを含めたガバナンスの議論が本当に大事であり、10年後の遠い未来ではなく明日来るかもしれないという心の備えを持って、今自分に何ができるかを考える。それ以上でもそれ以下でもない、というのが津田氏の答えだった。
「データ主権」ではなく、孤立しない技術主権を
データ主権について問われると、津田氏はまず訂正したいと前置きし、自分は「データ主権」という言葉をあまり使っていないと述べた。津田氏の専門は哲学・政治学・社会学の間の領域で、「主権」はもともと政治学の用語だという。
津田氏によれば、主権概念は16世紀のジャン・ボダンに端を発し、古典的な定義から最も重要な要素として含まれているのが「対外承認」である。主権というと、領土保全のように自国の枠内を守り、その中で権利を行使できる状態だけを考える人が多い。しかし主権は相対的に成立する概念で、アナーキーな国際社会の中で他国から独立を承認されていることが大きな部分を占める。外部から自国を守る意味での主権を「ウェストファリア的主権」と呼ぶが、デジタル主権の議論で抜けているのは、対外承認としての「国際法的主権」や、相互依存の中で制御できるという「相互依存的主権」だと津田氏は指摘した。
この話をする理由として、津田氏は技術が真空の中から生まれるわけではない点を挙げた。論文と同じく、技術は必ず先行研究の系譜の中で生まれる。自身のnoteにも「主権は孤立主義ではない」と書いたという。技術主権は、尊敬すべきフロンティアラボや、UCバークレーの先人の研究者たちが積み上げてきたものとの関係の中で相対的に存在する。だから「うちの技術だから海外のものは使わない」「車輪の再発明をする」という議論にすべきではない。デジタル赤字を論じる本人として海外サービスのオルタナティブを作る話はあるものの、ウェストファリア的な観点だけでデータ主権を守ろうとすれば孤立し、デカップリングされるだけだ。辛くてもフロンティア、つまりサンフランシスコに向き合い続けなければならない、と津田氏は語った。
明治維新ではなく遣唐使の時代に戻る
日本の改革を幕末・明治維新にたとえたり、近江商人の「三方よし」を持ち出したりする経営者が最近は多い。津田氏はそれも一方で正しいとしつつ、日本がもはやフロンティアではないことを考えれば、もっとさかのぼって遣唐使の時代の考え方に戻るべきだと主張した。
奈良時代や平安時代には、中国が漢字文化や律令、法律を含めて圧倒的なフロンティアを走っていた。日本はそこにひたすら人を送り込み、向こうからも人が来た。奈良時代には聖武天皇が、新興宗教だった仏教をもとに大仏を建立するという国家プロジェクトを行った。今のフロンティアは明らかにサンフランシスコにあるのだから、遣唐使ならぬ「遣サンフランシスコ使」として向こうへ行き、それを日本にフィードバックするという関係を途絶えさせてはならない、と津田氏は述べた。
日本のレバレッジと「技術報国」
日本が他国に対して優位を持てる「ジャパン・レバレッジ」はあるか。津田氏はいろいろあると答えた。1つはソフトパワーで、日本ほど社会資本が隅々まで積み上がった国は多くない。それを使ってフロンティアの人たちに日本へ来てもらうことができる。実際に海外企業が日本に拠点を置きたがっており、日本は「アジアのスイス」や「アジアのシンガポール」になるという話をする人も多い。
津田氏がサンフランシスコに行って感じるのは、日本人だと言えばまだ話を聞いてもらえるということだ。日本のハードウェア産業はどうなっているのか、電力需要はどうか、いいソフトウェアは出てきているのか、と必ず聞かれる。興味を持ってもらえるうちが花であり、まずそれをレバレッジにすべきだという。よく挙がるのはコンテンツ産業や製造業だが、津田氏が手がけるミドルウェアのような新しい市場もある。日本人がサンフランシスコに行き、noteにも書いた「技術で国に報いる」技術報国をしていくことが大事だと述べた。
そのための手段として、津田氏はエンジニアの相対価格を挙げた。米国では今や、フロンティアラボ級の人材は1人5000万円出しても雇えない。一方、日本では過小評価されているトップエンジニアに5000万円を出せば来てもらえる。日米のアービトラージポイントがどこにあるかを見定めて使うことが、まずは手堅いやり方だという。
50年後は想像できない——次世代としての責任
最後に、同世代へのメッセージを求められた津田氏は、自身の年齢から話を始めた。1997年生まれで、今年29歳になる。ここからおよそ50年生きるとして、1997年の50年前の1955年ごろは、商用コンピューターが初めて実装されたぐらいのタイミングだった。そこから、AIが自律的に動き、『攻殻機動隊』のような世界観になるとは誰も想像していなかった。これからの50年で起きることも誰にも想像できず、人間が想像しうることをやり尽くしたうえで、さらにその先の時代が必ず来る、と津田氏は言う。だからこそ、転換期にいる次世代として、日本という国と世界を責任を持って形づくり、デザインしていかなければならないと述べた。
「技術報国」という言葉について、津田氏はトヨタの「豊田綱領」に由来すると説明した。豊田佐吉の考えを、息子の喜一郎がまとめたものの中にある「産業報国」という言葉で、のちに国家と結びついて暗い歴史もあった。しかし津田氏によれば、本来の意味は次のようなストーリーの中にある。佐吉は、当時の産業革命の中心だった英国に認められるG型自動織機を作った。そこで得たライセンスを、ニューヨークで車という新しい技術を見た息子の喜一郎にハンドオーバーし、新たな自動車産業を作り上げていった。
津田氏は、産業だけでなく技術でも、自分が稼いで儲けるだけでなく次世代に何を残せるのかを考えるべきだと語った。これから生まれてくるAIネイティブの世代は、新卒の段階でAIに代替されて就職できないかもしれない。その子たちに何を残せるのかをこの年齢から考えなければ、日本にも世界にも未来はない、というのが津田氏の考えだ。会社は現在ファウンディングのフェーズで創業メンバーを募集していると触れたうえで、同じ世代として一緒にこの時代を楽しんでいきたい、と締めくくった。
日本のデジタル赤字を詳細に分析したレポートをまとめて発表されました。データワールド、隠れデジタル赤字とSDX赤字って2つの赤字をレポートの中で作ったんですけど、自動車産業、通信産業、産業機械産業を合わせると、大体合計で悲観シナリオで45.3兆円ぐらいの赤字が出ると。結論から言うと日本特有の問題。技術で国に報いる、技術報国をしていくっていうことがすごく大事だと。
サンフランシスコでもうAGI、ASIって多分言わないんです。最近だとフロンティアラボの人たちがPace the Frontierっていうふうに言い始めていて、その後何が起きてるかっていうと、普通にその後、新しいOpusの5.5を出していく。このバリュエーションを正当化するためには、全部のマーケットを破壊するぐらいのことをしてもらわないと正当化できないよ。もしかしたら自分たちは破滅の方向に向かってるのか、そうじゃないのか分からないけれども、全速力で走っていかないといけないってことは運命づけられてるってことを認知しながら走ってる。
不動産投資を学ぶなら楽待。
楽待チャンネルをご覧の皆さん、こんにちは。今回のテーマは「日本のデジタル赤字構造は打破できるのか」です。この方にお話を伺ってまいります。8月末付けで経済産業省を退官されたばかりの津田通隆さんです。津田さん、どうぞよろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
津田さんは経産時代に30歳以下の若手官僚チームを率いて、日本のデジタル赤字を詳細に分析したレポートをまとめて発表されました。そのルックスも相まって異色の官僚としてご活躍されていると、経済メディアをご覧の方にとってはそんなイメージが強いかと思うんですけれども、本業は起業家、そしてエンジニアということなんですね。今回は分析レポートだけではなくて、日本本社で外貨を稼ぐための事業をやるんだということで、一念発起して退官され、起業されたということです。日本のデジタル赤字の構造を解決するには何が足りないのか。そして現在のAI開発競争によって状況はどう変化していくのか、本日は詳しく伺っていければと思います。まず、なぜこのタイミングで退官、そして起業するということになったんでしょうか?
デジタル経済レポートを書いたのが、去年の2025年のゴールデンウィーク前の時に出したんですけど、あの時にデジタル経済レポートの副題が一番私の言いたかったことで。「このデータに飲み込まれる世界で、聖域なきデジタル市場の生存」って書いてるんですけど、このデータに飲み込まれる世界っていうのは、多分1年前のあの時だと結構まだピンと来てない人が多くて。聖域なきデジタル市場の方は、なんとなくテスラだったりBYDがソフトウェアデファインドな、ソフトウェア定義のプロダクトを出していて、同じイーロン・マスクがスターリンクを、後発的ですけど出していたりとか。ちょうどフィジカルAIみたいな単語もジェンスン・フアンが言い始めてたんで、非常に聖域がなくなってきたな感はあったと思うんですけど。
この1年間でフロンティアラボがすごいモデルをガンガンに出してきている中で、このデータとビジネス特有のコンテキストそのものが企業価値の根源であるっていうのが、結構皆さん体感的に理解できてきたタイミングなのかなと思っていて。そういう意味では、この「Data is eating the world」って書いたんですけど、これってマーク・アンドリーセンが2011年に「Software is eating the world」っていうのを書いてて、そこから15年ぐらい経ってるわけですけど、こういうパラダイムが実際に今、足元のマーケットにどんどんやってきている中で、政策的に私はずっと国の中でこのデータマネジメント基盤のチーフアーキテクトをやったりだとか、オープンソースのプロジェクトをやったりしてきたんですけど、いよいよプレイヤーが必要だなっていうタイミングで。
経済産業政策ってプレイヤーがいてなんぼの世界で、特にブルーオーシャンに対しては政策的に打てる手って結構少ないっていうのが現実の問題としてあって。ここでデジタル経済レポートで、結構その業界によっては耳の痛いこともわざと書きましたし、それを高所からずっと言ってるんじゃなくて、自分も元々経営者の期間の方が長いので、このタイミングでそれをちゃんと率先垂範していくような次世代のプレイヤーが必要だなということで、このタイミングで、自分のキャリアという意味でもここに一番のレバレッジポイントがあるだろうっていうことで、起業することを選んだという感じです。
従来デジタル赤字というと、よく説明されるのが、皆さんiPhone買いますねと。さらにAmazonを使って荷物を頼んで、Instagramで日常投稿して、こうやってYouTubeで動画を見ると。その度にアメリカにサブスク代とか広告費とか、いろんな形でお金が、日本円が流れていきますよねって、そういう説明がされたわけですけれども、今となってはテスラみたいな自動車だったり、あとはロケットもそうですけど、製造業の分野にももうデジタル赤字の領域がどんどん流れ込んできていると。それが聖域なきデジタル市場ということですね。
そうですね。隠れ赤字とか、そのSDXって単語を作ったんですけど、ソフトウェアデファインドエブリシングで、全てのものがハードウェアとソフトウェアの主従が逆転して、ハードウェアも含めてどんどん定義する形で、マーケットを定義する形で進んでいくのを書いたんですけど。それが自動車の中でも、結局テスラって車を売りたいわけではなくて、あくまでモビリティ・アズ・ア・サービスとか言われたりしますけど、そのサービスを売るために車っていうデバイスを売ってるに過ぎない。
そういう意味で彼らは自分たちで車載OSも作るし、自動運転のADASを作ったりもするし。そのためにはソフトウェアコンポーネントが疎結合じゃないといけないってことで、いわゆるE/Eのアーキテクチャーとか言われたりしますけど、従来の車よりもよりソフトウェアっぽく作って、なんなら自分たちでスーパーチャージャーも作ってそれを置くみたいなところまでやるのって、基本的に日本のOEMから考えると、あまり考えられないようなビジネスをやってるわけなので。
そういったところも含めていろんなところで、物理まで含めた、サンフランシスコでは最近ビッツからアトムズっていうふうに言ったりもするんですけど、このビットからアトム、原子っていうところにちょっとずつシフトしてる中でも、結局そのアトムっていうものはソフトウェアが定義する。それによってより拡張可能な、スケーラブルなビジネスにしていくっていうのが広がってきてるな。これをドライブしてるのは明らかにAIのフロンティアモデルだというところになってきてるなっていうのは、実際にこのデジタル経済レポートを書いた後に、ある程度自分がこのレポートの中に書いたようなことが、現実問題として起きてるよねという形で受け止めるような状況になってるなと思います。
はい。その重要なポイントとして、国が投資をしていくにしても、その投資する先のプレイヤーがいないといけないというお話があったと思います。今、高市政権でも370兆円、2040年までの産業投資があるということなんですけれども、ことこのデジタル分野においては、なかなか日本だとプレイヤー不足になっているっていう現状があるんでしょうか?
そうですね。ソフトウェアと一口に言ってもいろいろなビジネスがあって、大体ソフトウェアって三層構造になっていて、アプリケーションっていうレイヤーと、ミドルウェアっていうのと、OSっていうのがありますと。昔、歴史的にはOSが一番最初にあったんですね。Windowsがあって、出てきて、その後にOSを応用するって意味でアプリケーションっていうのが出てきたんですよね。だから最初はOSとアプリケーションしかなかったんですけど、このアプリケーションがどんどんSaaSだったり、それ以外の周辺のツール含めて膨らんできたことによって、それぞれ個々に使ってるアプリケーションって共通部品があるよねってことで、最後にデータ基盤だったりとか認証基盤だったりとか、最近だとオントロジーとか、AI基盤モデル自体もミドルウェアなんですけど、そういうものがどんどん出てきて。
特に日本の場合は、そのSaaSのビジネスが広がり始めたのが、ちょうど私がエストニアで暮らしてた2019年から20年ぐらいに、結構IPOもいろんなSaaSの会社がするようになってきていて。そこでようやくSaaSが始まったのって、アメリカの場合だと2000年代初頭なんで、大体19年ぐらいの時を経て、ようやく日本側でもそういうB2Bの、B2CじゃないSaaSが生まれ始めてきたっていうこともあって、ある意味アプリケーションっていう意味では、SaaSビジネスは結構日本でもちょっとずつ出てきていると。ただ、さっき言ったOSとかミドルウェア、やっていますかっていう話があって。
結局今このAIが、特に基盤モデルが最近、いわゆるAIエージェント、アメリカではエージェンティックAIって言いますけど、業務に組み込まれて自律的に動くようになってきている中で、アプリケーションってもはや機能としてはそこまでいらないよねと。実際問題というのは、今までのいわゆるSaaSって3つの要素で成り立つというふうに言われていて、1つがGUI、ユーザーインターフェース。もう1つがSOR、システム・オブ・レコードって、いわゆるデータ基盤のことですね。最後にビジネスロジック。基本的に今までのソフトウェアっていうのは、AIが来る前、いわゆる関数の塊みたいなものなので、ソフトウェアっていうのは。なので、構造化されたインプットを構造化してアウトプットするゲームだったんですよ。
だから人間がこのビジネス環境を観察して、そのさまざまな情報を構造化してデータベースに入れてあげないとロジックが処理できないから、わざわざGUIのインターフェースをそれぞれのSaaSごとにつけて、トグルダウンで文字を入れるとか、そういうことでちょっとずつ構造化して入れて、それをロジックに読ませるっていうのが普通だったんですけど。今このAIの世界で何が変わったかっていうと、AIって良くも悪くもいろいろなデータをそのまま扱えるわけですよね。テキストもそのまま扱えるし、画像もイメージというテキストで、最近全然扱えるようになってきてるし。そういう意味で、インターフェースとしてのチャットウィンドウさえあればいいっていう状況になってきていて。
結局、今年の2月にClaudeがCoworkを出した時にSaaSデスと言われ、SaaSアポカリプスまで言われてるわけですけど、その後に何が分かったかっていうと、生き残ってるところって結局データを握ってる、SORを握ってるところか、ビジネスロジックを握ってるところで。結局UIだけ握ってるところは淘汰されましたねっていうのが今の結論なんですね。そうですね。そういう意味では、このアプリケーション領域がどんどんAIによって崩されていって、再結晶化していく先が今ミドルウェアになっていて、データ基盤だとか認証とか、さっき言ったような基盤になってきていて。そこと、あとは計算資源ですよね。
コンピュートの部分、こっちにどんどんお金が分解されて回ってきてる状況なので、本当はそこを応援しないといけないんですけど、そのプレイヤーって、じゃあ日本で一体何社いるんだろうっていうふうに考えた時に、全然思いつかないですよね。日本の会社ってもちろんあるんですけど、本当にマーケットとしては小さくて。でもサンフランシスコ、例えばYコンビネーターとかで採択される企業とかって、実際はミドルウェアっていうのがめちゃくちゃ花形なんですよ。ビジネスツールとかデベロッパーツール含めて。そういうところにアメリカはすごく張ってるんですけど、その資本集約的なビジネス。
でも結局日本の場合は、どちらかっていうとアプリケーションの上物だったりとか、いわゆるSIって呼ばれるような、人間が人月ビジネスとしてレクターロードとして組み込んでいくっていうところに寄ってしまっている、オペレーションに寄ってしまってるので。そういう意味において、日本としての不足部分っていうのは明らかにミドルウェアだったりとか、プロダクトとしてのウェルマネージドサービスって言われる、そういったものが日本の場合は非常に少ないということで。ある意味そこにしっかりと自分で入り込んでいくってことが、自分としての真価値かなというふうに今思って、起業を再度しようというふうに決めたという感じです。
まず現状のデジタル赤字の状況について、以前のレポートをまだ読まれてない方もたくさんいらっしゃるかなと思うので、詳しく伺っていければと思います。まず、インターネットの勝者、GAFAMに吸われる形でのデジタル赤字っていうのが指摘され始めて久しいわけなんですけれども、AppleとかGoogleとか、そういう企業がないのは何も日本だけではない。むしろアメリカ以外どこにもないですよね。ということは、日本以外もデジタル赤字に悩まされてる国は多いのか、あるいは日本特有の問題があるのかというのがまず気になるんですけども、こちらはいかがでしょうか?
これは結論から言うと、日本特有の問題です。日本以外にも、例えばデジタル赤字側の国で言うと、ドイツみたいな国があるんですけど。ただ、日本とドイツが基本的に今、一番デジタル赤字解明っていう意味では近い国なんですね、産業構造的にも。一番違うのは、ドイツはシーメンスだったりだとか、あとSAPですね。実質的にSAPも米国の会社と言っても過言ではないんですけど、そういう会社が外貨を稼いできてくれるという側面があって、従ってまず産業構造的な意味でデジタル赤字っていうのは問題視されていない。
実際にマクロの数字として見た時にも、日本の場合は、デジタル赤字っていうのはこの後お話ししますけど、国際収支統計の中のサービス収支っていう区分の中に入ってるデジタル関連収支っていうのが支払い超になってる状況が、デジタル赤字というふうに言われるものなんですけど。これって基本的にそのまま為替の環境にフィードバックしていくっていう関係性があって、ファンダメンタルズとして。
はい。唐鎌さんが構造的円安と表現されているですね。
そうです。そういったところにダイレクトにフィードバックするんですけど、ドイツは良くも悪くもユーロ圏の国ではあるので、ドイツ単品で駄目だからといって、他の国で相殺されたりもするんで、そういう意味でも基本的にデジタル赤字っていうのは、レポートに書いた通り日本特有の問題ですと。
ここで注意しないといけないのは、このデジタル赤字が問題だっていう方もおっしゃるんですけど、今申し上げた通り、これって国際収支の問題なんですね。なので、例えば赤字が多いってことは、つまり国内の内需が外需よりも勝っているっていう状況の裏返しでもあるので、そういう意味では一方的に悪いとも言えない、この数字自体は。ここに書いている通り、結局経済政策、産業政策、財政金融で見た時に、それぞれトレードオフの関係があるので、赤字そのものが問題ということでは、これは必ずしもないんです。ただ、このデジタル赤字は、こういった日本が抱えてるソフトウェア産業の構造問題の写し、なので、その像に対して問題を見いだしていかないといけないっていうのが、まずこのデジタル経済レポートの立場になります。
すごく購買力が高くて、外国製品をたくさん買っていて、それで赤字というなら、それはそれで国民は豊かでいいのかもしれないですけど、日本のデジタル赤字に関してはどうもそうではなさそうだというところですよね。改めてドイツなど他国では、日本とはちょっとデジタル赤字の性質が違うというお話だったんですけれども、日本は他国とは何が違うんでしょうか?
それを理解するために、まずはデジタル赤字の数字がどうなってるのかっていう説明を簡単にすると。これ、数字が2023年で古い部分はあるんですけれども、基本的に先ほど言った通り、デジタル赤字っていうのは、このサービス収支の中に入ってるデジタル関連という数字が支払い超になってる状況ですと。左側が、この経常収支を計算する我が国のマクロの財布事情なんですけど、投資収益をトップの売り上げにして、そこからいろいろ削れていって、経常収支が21.4兆円になってますよね。このサービス収支っていう中のデジタル関連収支っていうのが今言ってるデジタル赤字なんですけど、これ今どういうもので構成されてるかというと、5つの項目で構成されてます。
1つは経営コンサルティング、コンピューター、著作権、情報、通信と、この5つなんですけど、大体この前の3つで97%ぐらいです。なので後ろの2つは無視していいんですけど、一旦この現時点においては。でもいずれにせよ、この3つが基本的に何を指し示してるのかっていうのが重要で。名前から察するに、経営コンサルティングって書いてたら、外資コンサルティングサービスを使い過ぎなんじゃないかとか、そういうイメージが湧いちゃうと思うんですけど、実態としてはデジタル関連広告がほぼ全てをこの経営コンサルティングの中で占めてます。つまりこれは、例えばGoogleとかMetaに対する広告支払いみたいなものも含まれてます。
今まさに動画を見ている方の、流れている広告も含まれてます。
まさにそういった広告も入ってます。コンピューターサービスは名前の通り、これはいわゆるSaaSとかPaaSですね。B2Bであれば、さっき言ったようなSalesforceだったりとかSAPだったりとか、B2CであればNetflixとかSpotifyみたいなもののフィーが入ってますし。著作権等使用料は、これはちょっと中身が分かりづらいんですけど、一応さっき言ったようなLとかWindowsとかiOSとか、OSのライセンスがここに入っているので、それがかなりのポーションを占めてます。つまり、この3つを一旦総じて考えると、売り上げも、支払いも受け取りも両方伸びてるんだけれども、明らかに今言ったような外の会社に対する日本からの支払い量が多いっていうのが、直接的なデジタル赤字の、まずは根源になっています。
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この赤字の額に関しては、このまま一定で続くのか、今後も増えていくのかで言うと、どちらだと予想されますか?
これは悲観モデルで言うと、2035年に28兆円まで膨らむということが分かっていて、これはあくまでサービス収支の話なんです。最初に言ったように、今このソフトウェアデファインドな世界がどんどんやってきている中で、じゃあBYDの売り上げはどこに入ってるのかってなったら、これは基本的に貿易収支に入っているんですね。なので、物、一応物として入ってる、その付属品としてのソフトウェアという形で計上されてるんですけど、じゃあそれっていくらなんだっけっていう話と、あと、このソフトウェアデファインドなものが売れることによって、どれぐらいハードウェアデファインドな既存のマーケットがどんどん破壊されていくのか。こういう競争力の低下も踏まえていかないといけないということで、隠れデジタル赤字とSDX赤字って2つの赤字を、今回はレポートの中で作ったんですけど。それを自動車産業、産業機械産業、通信産業を合わせると、大体合計で悲観シナリオで45.3兆円ぐらいの赤字が出ると、数字として見込まれていますと。
これは先ほど言った通り、あくまで国際収支統計の話なので、数字自体にはそういったいろいろな意味が付されてるんですけど、1つ言えるのは、今言った悲観モデルの28兆円という数字、これはAIによるディスラプトも含むものなんですけど、これを考えてみると、例えば今デジタル赤字っていうのは去年の時点で6.85兆円ありますと。ここから28兆円に増えるわけですね。でも今、このデジタル赤字の部分が含まれた上で2.9兆円のサービス収支の赤字が出てるわけですよと。これ今、支払いに対して受け取りがどこで稼がれてるかっていうと、インバウンドと産業財産権なんです。
産業財産権は、例えばいわゆる製造産業の発明とか特許のライセンスの料金なんですけど、じゃあ今からこの発明が3倍になりますかっていうと、ならないわけですよね。これは明らかに季節性もあるし、産業次第なので、大体変動するだろうと、横ばいに。旅行のインバウンドについても、じゃあ今から日本に外国人がさらに3倍来ますかとか、ここから売り上げがさらに、価格が3倍に伸びますかっていうと、これも限度があるよねってことを考えると、このデジタル関連収支の今6.85が28になった時に、残りの22ぐらいの部分はそのままサービス収支に乗っかってくるわけですよね。ということは、サービス収支が22.9兆円ぐらいになるぞと。
貿易収支側もさっき言った通り赤字が増えていくぞとなった時に、これはまさに唐鎌さんの言っているような、構造的なファンダメンタルズとしての円安の構造問題っていうのは、こういったいわゆるデジタル産業が中心になっていて。もちろん日米金利みたいな、そういう金融領域でのギャップによる日米の円安っていうのはあるんですけど、いずれにせよファンダメンタルズを見た時には、このデジタル関連収支っていうのが一番響いてる可能性があるという見方もできるので。そういう意味では、この日本の円安構造を見ていく金融政策の中でも、しっかりとこういった日本の産業構造としてのソフトウェア産業が育っていないことによって、代替手段がないのか、それとも向こうの競争力に負けているのか、いずれにせよここをちゃんとてこ入れしていかないといけないというのが、国的な視点では見えてくるという話ですね。
旧来のデジタル赤字の構造に加えて、SDXによる、既存の自動車を輸出して儲けるという日本の本来のビジネスモデルが脅かされかねないと。さらに日本が外貨を獲得する手段は、現状のままだとあまりスケールしないものが多いので、この国際収支がどんどんバランスしなくなっていって、これはちょっとまずいというお話でした。ただ、これだけデジタル赤字が放っておくと、悲観シナリオで4倍ぐらいになってしまうということで、何があったらこんなに増えてしまうのかというのを詳しく伺いたいんですけど、AIによるディスラプトという例も挙げられていましたが、具体的にはどういうことなんでしょうか?
まずこの28兆円という数字は、少なくともベースシナリオが18兆円なので、そこの10兆円分のデルタはAIによって来ているという試算をしてるんですけど。どこが一番血が出てるかっていうと、これは日本のSIのところからかなり削られてるという結果になってます。まず日本のこのデジタル赤字の構造問題の何が根源なのかっていうのを考えていった時に、もちろんいろいろなファクターがあるんですけど、大きく2つに分けると、1つは市場の問題で、もう1つは事業モデルの問題っていうのがありますと。
まず事業モデルの2個目の方から言うと、今日本のビジネスがどういうふうになっているかというと、これ、今の日本の現状の事業構造なんですけど、ちょっとメッコ図で分かりづらいと思うんですけど、見方としては、灰色の部分が日系が海外から稼いでいる部分で、赤色が海外に支払っている部分で、面積が大きければ大きいほど市場が大きいという見方なんですけど。一目で分かるのは、まずこのSIって書いてる部分が一番大きいですよね。これいわゆる労働型の産業で、人月単価と言われますけど、人をどれぐらい何時間で張ったかっていうところから計算するやり方になってます。なので、もちろんこれ成長率も低いですし、粗利率も低いと。でもここはある意味、AIの受託開発と同じで、手堅く足元でキャッシュを稼げるんですよね。
そういう意味では手堅く稼ぐモデルではあるものの、結局お客さんにずっと向き合い続ける、お客さんの御用聞きをし続ける必要があるので、プロダクトを作ってる時間がなくなるんですよ。これはちっちゃいAIスタートアップも大きいSIベンダーも同じで、ここで稼ぎ続けていると、お客さんの御用聞きをやってるだけになってしまうと。逆に海外がどこで稼いでるかっていうと、真ん中の方にアプリケーション、ミドルウェア、計算資源インフラ、広告って書いてますけど、こういった資本集約型のビジネスですね。1回ソフトウェアを作ったら、それをマネージドサービスとして運用保守してるのでお金をもらえるとか、トランザクションごとにトランザクションカットでお金がもらえるとか、マーケットプレイスで取引手数料でお金が取れるとか、そういう稼ぎ方を明らかに外資はしていて。日本のこのデジタル赤字の構造的な根源っていうのは、資本効率の差なんですね。
こういう人間を増やさないとスケールしないビジネス、いわゆる線形に増えていくビジネスと、電気代だけ増やせばどんどんスケールしていく、こういうエクスポネンシャルなビジネス。ここのギャップっていうのが、まずデジタル赤字構造っていう中に現れてきていて。かつ、先ほど言った通り、AIがどんどんこのSI料金を削っていくっていうのが見えてきてるので、これがさっき言ったミドルウェア側にどんどん移っていくわけですよね。かつ計算資源インフラ側に移っていくわけですよね。って考えると、さらに明らかにこれってデジタル赤字が増えますよねっていうのが、いわゆる事業構造側の問題になってますね。
デジタル分野においても、労働型のビジネスを日本企業は選びがちな傾向があるということですね。最近FDEというのが結構バズワードといいますか、世界的にも流行しているのかなと思うんですけど、日本もそういうFDEを自社はやってますみたいにアピールしてる企業が結構増えてる気がするんですよね。これによって何か働き方が変わったりみたいな事情はあったりするんでしょうか?
まず基本的に日本のほとんどの会社が売ってるFDEはマーケティング用語です。元々のパランティアがなぜFDEをやってるかっていうと、元々彼らも説明の仕方としては「砂利道から道路へ」っていうふうに言ってるんですけど、元々オントロジーというミドルウェアのプロダクトがあって。
はい。オントロジーって何ですか?
簡単に言うと、AIが使うビジネスコンテキストを、技術的にはグラフで表すための仕組みみたいなものなんですけど、簡単に言うと。要はソフトウェアのプロダクト、ミドルウェアのプロダクトを持っていますと。それをお客さんの前でどんどん、いわゆる客先のCTOみたいな形で、お客さんの会社の中でどういうことが起きてるのか観察して、その会社のデジタルツインを作ることによって、それをAIが使えるようにするっていうのが、簡単に言うとパランティアっていうビジネスモデルなんですけど。お客さんの先にどんどん行っていくと、共通部品が見つかってくるわけですよね。「これとこれって一緒じゃん」みたいなのが。これをプロダクトにフィードバックする、いわゆる研究開発の機能が本来的なFDEの機能なんですよ。
なのでAnthropicとかOpenAIがFDEと言ってるのも、あれはAIの基盤モデルを持っていて、そこに対して、じゃあどういうふうにプレトレーニング、事前学習の段階でチューニングすればいいのか、その事後学習の段階でお客さん用にチューニングすればいいのかっていうのを知るために、お客さんの中に入っていって、どういうビジネスをしてるかっていうのを見ると。共通の部品が出てきたら、これをプロダクトにフィードバックするっていう、このループがFDEの本来のあるべき姿なんですけど。SIの人たちが言ってるFDEっていうのは、あくまで客先の常駐の部分、表面的な部分だけを切り出して、それをFDEって言ってるケースも結構多かったりするので。このプロダクトを持っているからこそ、FDEというオペレーションに尊さが生まれるんですけど。ここを勘違いせずにちゃんと見ていく必要が、少なくともこの事業構造を見ても必要だなっていうふうには思いますね。
ちゃんとフロントに出ていくだけでは、その受け取ったデータを後のプロダクトに生かして付加価値をつけるっていう部分が抜け落ちてしまってるっていうことですよね。なかなかGAFAMのようなプラットフォーマーになることは難しくても、津田さんがおっしゃるようにミドルウェアは空いている部分もあるわけじゃないですか。なぜ今まで日本がこの領域に進出してこなかったのか、ここはいかがお考えでしょうか?
2つあると思ってまして、1つ目が先ほどもう1つ理由があると言ったところ、まさにで、これは市場の問題なんですね。基本的にこのソフトウェアのビジネス、ミドルウェアも含めますけど、っていうのは勝者総取りです。一番大きいマーケット、一番大きい資本を持った人が、規模の経済で全取りをしていくっていうマーケットなんです。ソフトっていうのは基本的に国境が元々ないビジネスなんですけど、昨今はAIのおかげもあって、言語の壁とか商慣習の壁とか、制度のローカライゼーションとか、そういったところもほぼトークン代を払えば克服できるようになってきてる。つまりアメリカで発達したやつが、そのまま日本に本家本元としてやってくるっていう状況になってきていて。つまり国境がない状況でビジネスをしていかないといけないんですけど、日本の場合って伝統的にマーケットがすごく中途半端に大きいっていうのがあって、国内に過適合するケースが多いんです。
この日本のマーケットって良くも悪くも、上場すればそこそこ起業家としては大きな収入が入ってくるし、VCとしてもわざわざ海外に出ていかなくても、日本の中でヒットを打ち続けていれば、ある程度LP、出資してくれる企業に対してお金を返していくことができるっていうのもあって。これは起業家だけの問題ではないんですけど、伝統的には日本のマーケットの中でやっていれば良かった話っていうのがあると。昔はさらに商慣習とか法制に守られていたっていうのもあって、結構日本のソフトウェアって日本特化のガラパゴスになりがちなんですね。
ただ、このアプリケーションもミドルウェアもそうなんですけど、基本的にこれってさっき言った通りスケールしていかないといけないビジネスで、特に一番大きいマーケットを狙っていかないといけないビジネス特性があるので。これどこかって考えたら、これは明らかに米国というか、サンフランシスコというか、シリコンバレーなわけですよね。なので本当はソフトウェアで勝ちたいなら、明らかにサンフランシスコにいきなり行って、そこでプロダクトをマーケットフィットさせて、向こうのとんでもない額の資本を引き連れて、全世界に対して広げていくっていうのが基本的にスケールの前提になるわけですよ。実際にこれ数字を出してますけど、日本と米国だけでもICTスペンディングで8.5倍の差があるんですよ。なので同じプロダクト、同じ機能で使っていたとしても、8.5倍の下駄をサンフランシスコの企業は履いてるわけですね。これ信用的にもお金的にも、プロダクトのお客さんの数という意味においても。なので、そもそも日本の市場に過適合したという環境がまず土壌としてあったっていうのが、まず日本の構造問題の1つで。
特にミドルウェアについては、ミドルウェアのお客さんってアプリケーションなんですよね。さっき言った通り三層構造になってて、ミドルウェアはアプリケーションの下にいる人たちなので、直接的なお客さんはアプリケーションで。彼らに対して、例えばAPIを出して連携機能を提供しますとか。今のAIでも、例えばSalesforceがこの前Anthropicのダリオと一緒にSalesforceのイベントに出てましたけれども、彼らも「is not dead」って言ってる理由は、基本的にCRM、顧客管理システムの決定論的な関数を、それって別にAIが代替せずとも、すでに関数として定義されてるなら、AIがツールコールして使えばいいじゃんと。API経由だったりMCP経由だったり、そういう観点もあって、ビジネスロジックとSORを握ってる企業は代替されないんですけど。そういう意味でSalesforceもどんどんちょっとずつアプリケーションからミドルウェアへの領域に降りてきている状況なので、このアプリケーションが一番いるところはどこかって考えたら、これもサンフランシスコなわけですよ。
なのでそういう意味では、最初から米国でやらないとミドルウェアっていうのは、お客さんもいないし成長する余地がないし。かつ、なかなかミドルウェアっていうものって、すごく技術的に一番一段ところをやってるんで、VCもなかなかデューデリできないっていうところもあるので。そういうところに特化してるエコシステムを持った米国に出てきてないっていうのが、日本から生まれてこないというか、日本以外の国もサンフランシスコ以外からなかなか生まれてこない理由になってると思います。
ここまで伺って、津田さんが起業する理由、そして問題意識、すごくよく分かったんですけど、お話を伺ってると、日本で起業するって圧倒的に不利じゃないですか。だからこそ、これまであまり出てこなかったというのもありますし、結局日本で起業しても、戦う相手はシリコンバレーに花形企業がたくさんいるわけですよね。そんな中でもあえて日本で起業することを選んだ、その理由を教えてほしいです。
はい。そういう意味では、私も最初に言った通り、デジタル経済レポートを率先垂範するんだっていう、そういう国士的な意味もあるはあるんですけど、いろいろ理由はありますね。結局、日本としては比較的に金利が安いっていう条件もあるし、エンジニアもサンフランシスコに比べると、トップエンジニアがもう給与、多分10倍以上違う価格で日本の場合は雇えるっていうのもあって。そういう意味で日米のアービトラージをする、そのギャップを取りに行くっていう上では、日本は一定優れてるっていう側面もあります。
ピュアに日本に本社を置くっていう言い方は、いろいろやり方があって。さっき言った韓国とか、私のいた北欧とかイスラエルとか、あとはイギリスって、国内のマーケットがそもそも小さいんで、最初からグローバルマーケットに出ていくっていう、国境なく始めるボーングローバルっていう考え方が浸透している国なんですけど、起業家も投資家も共に。彼らの中から参考にできるのは、すごく韓国から学べることって多いなと思っていて。例えば韓国のAmazonと言われているクーパンっていう会社があるんですけど、これって韓国本社の会社なんですよ。でも登記は実はデラウェアでやってて、米国でやってて、ホールディングカンパニーを持って、その下に韓国の本社をつけてる。要は持ち株だけ、いわゆる投資のインターフェースだけサンフランシスコに持っていて、実際にそのお金を韓国側に流して、それでゴーグローバルしてるっていう事例もあるし。
実は中国も似たようなことをやっていたりして、例えばアリババとかバイトダンスとかも、これは中国内のオフショアに投資できない、そういう中国独特の理由があったりするんですけれども、資金調達はシンガポールとかで、アメリカでやって、それを国内に還流させて起業するみたいな。日本に本社を置くという言い方をしても、いろいろなやり方が実はあって。
かつデジタル赤字と一口に言っても、基本的にはレポートにも書いてますけど、国内の送金比率が基本的にはデジタル赤字を決める決定因数なので。例えば今言ったようなスキームだと、日本の会社がアメリカで外貨を稼いでくる。IPも日本が持っている。でも資金調達は例えばデラウェアでするっていうやり方をしても、これはこれで1つのやり方ですし。本当にピュアにもう法人登記も、かつ本社も日本に置きますっていうやり方でも、これは1つのやり方だし。そういういろいろなやり方を、実はこういうボーングローバルを狙ってる会社は、いろんなスキームを使って実現しているんだよっていう事実自体があまり知られてないってこともあって、日本はそういうところから学ぶべきだと私はすごく思うんですよね。
こういうやり方を日本企業でやっているところっていうのは、今まであんまりなかったんでしょうか?
そうですね。あんまりないですね。なかなか、そもそも米国で資金調達をするってことのハードルがめちゃくちゃ高いんで、これは。
そうですよね。
やっぱりインナーのコミュニティにちゃんと入っていって、ゴリゴリにちゃんと英語で交渉しないといけないってこともあるし、なんでわざわざ日本から出てくるんだっていうのを、向こうからするとあるわけですよ。例えばイギリスとかだったら金融が強いから、金融と掛け算でフィンテックですとか、北欧とかはゲーム産業と教育が強いからエドテックです、ゲームテックですとか。イスラエルも軍事とサイバーセキュリティが強いから、防衛テックです、サイバーセキュリティでっていう話ができたりするんですけど。
日本の場合って、今でこそキャディさんみたいな会社出てきましたけど、製造業掛けるSaaSみたいなことやってる人がやっぱりなかなか少なかったんで、そういう意味でもなかなか、サンフランシスコで「なんでわざわざ日本みたいな大きいマーケットがあるのに、中途半端にって意味ですけど、うちに来るんだ」っていうのに対して、そのright to winっていうんですけど、「なぜあなたは投資されるに値するのか」っていう問いに対して答えられないっていうのがあったっていうのも大きいかなと思います。
なるほど。Yコンビネーターでもミドルウェアは非常に花形である、すごくライバルが強いということですけれども、具体的にどんなサービス、プロダクトを作っていくつもりなのかっていうのも、お話できる範囲でぜひ伺えたらと思うんですけど、いかがでしょうか?
はい。私の会社でやろうと思っているのは、先ほど言った通り、今AIっていうのは、特にLLM、大規模言語モデルっていうアーキテクチャーにおいては、インターネットのテキストデータをクローリングしまくって事前学習をしてるんですね。最近それ足りなくなってきたから、古本屋さんの本を大量に買いまくって断裁してみたいな話もニュースになってきてますけど、いずれにせよ世の中にパブリックに存在してるものをベースに学習してるんです。次何が起きるかっていうと、じゃあ企業の中のドメイン特有のビジネスの文脈、コンテキストとか、ビジネスの意味とかルールとかデータっていうのって、学習していいんだっけって話にこれなってます。
はい。
これはやっぱり先ほど言った通り、今企業において唯一の競争優位性っていうのはデータとコンテキストなわけです。これを明け渡したら、結局もうソフトウェア自体もコモディティになった。ハードウェア自体もこれはこれで重要だけれども、別にコモディティですよね。っていうことを考えた時に競争優位性がどんどんなくなっていくってことで、やっぱり皆さん特有のドメインコンテキストをどうAIにガバナンスをかけながら、分散したマネジメントできるのかっていう、こういうマーケットがちょっとずつできてきていると。
さっき言ったSnowflakeとかDatabricksみたいなデータ基盤企業も、やっぱりもう歴史がすごい長いんですけれど、深めていくと、DatabricksであればApache Sparkっていうところからスタートしてるんで、本当にUCバークレーのAMPLab時代からすごい長いことやってるんですけど、いずれにせよデータマネジメントっていう会社で、今もうヘクトコーン、つまり15兆円ぐらいの時価総額をつけてるぐらいなんですけど。やっぱりそれ言ったら、データをマネジメントするとか、ガードレールをつけるとか、コンテキストを管理するっていうマーケットがすごく大きくなってきていて、私はそこに今入ろうというふうに思っていて。国の方でも分散データマネジメントのチーフアーキテクトをずっとやっていたということもありますし、先ほど言ったPalantirのオントロジーみたいな領域も、もっとスケーラブルにやれる方法っていうのは技術的にたくさんあるわけ。なので、そういったコンテキストマネジメントと言われる領域のミドルウェアを作っていくということをやろうというふうに考えています。
まさにそのデータの競争優位性という部分で言うと、日本で結構有名なところだとやっぱりPalantirかなと思うんですけども、アレックス・カープも、これも結構ポジショントーク入ってるかなとは思うんですが、AnthropicやOpenAIなどのクローズドモデルを使うことによって知的財産が彼らに奪われて、やってる事業をコピーされちゃうんだみたいな感じで、これも実際コピーされてるかどうかは分からないですけども、そういう警鐘を鳴らしているわけですよね。どういったお考えなのか、ぜひ伺えますでしょうか?
はい。前提として、サンフランシスコのいわゆるテックブロっていうふうに言われてるんですけど、テックブロの人たちの話は話で聞いた方が、これ本当に良くて。例えば最近だとフロンティアラボの人たちが、Pace the Frontierっていうふうに言い始めていて、フロンティアもう進みすぎてると、みんなで止めないといけないっていうのをダリオが言い始めて、それにイーロンだったり、OpenAIのサムだったりが同調するっていう一面があったんですけど。その後何が起きてるかっていうと、普通にその後新しいOpusの5.5を出してるっていうのがあって、やっぱりこれ表面上彼らは結構ポジショントークで言ってるっていうところは、まず考えとかないといけなくて。
今言ったようなオープンウェイトvsプロプライエタリーのモデルっていうこの対立軸においても、結構やっぱりこれポジショントークがうまく現れてるなっていうふうに思ってて。OpenAI・ハギングフェイス事件の後に、結構設立されたオープンセキュアAIアライアンスっていうのがあって、ここで結構二分されてるんですよね。つまりAnthropicとかOpenAI、あとGoogle DeepMindは、これ入りませんと。でも逆にPalantirだったりとか、Amazonだったりとか、NVIDIAだったりとか、Databricksは、これはしっかりしないといけないっていうふうに言うんですけど、これって結局ポジショントークある程度反映されてて。
例えばモデルが、推論がぶん回ればぶん回るほど、AWSとかMicrosoftのデータセンターってめっちゃ儲かるわけですよ。IaaSビジネスだし、それがぶん回れるほどジェンスン・フアンはGPUで儲かるわけだし、逆にデータマネジメントが増えるほどDatabricksは儲かるわけだし。そういう意味でPalantirもある程度ビジネス文脈のコンテキストマネジメントやってるわけだから、モデルは別に何でもスイッチできちゃうっていうのがあって。やっぱりそういうみんな言ってることは結構、大義名分言ってたりするんですけど、半分ぐらいはポジショントークだなっていうふうに聞くのがまず重要ですっていうのがありますと。
その陣営の分かれ方を見ると、どっちに進んだ方がビジネス的利益が享受できるかっていうのは、結構分かりやすく分かれてますよね。
そうですね。
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元AI、Anthropicの研究者が言っていた、人類が滅亡するかもみたいな話は、またちょっとそのビジネスの文脈とは別で、実際にある程度心配されてるところかなと思うんですけど、これは現地の研究者の方は具体的にどれぐらいの真剣度を持って心配されてるんでしょう?
実際にそのコアチームにいる人たちは、そう思ってると思います。私もDeepMindだったり、それ以外のフロンティアラボの人たちともよく話すんですけど、サンフランシスコでもうAGI、ASIって単語言わないんですけど、言うともう鼻で笑われちゃうぐらいの感じなんですけど。でも実際にその、リカーシブ・セルフ・インプルーブメント、要は自己改善で学習していくっていうループ自体は、ある程度回せるっていうふうにみんな思い始めていると。
これは半分正しくて、やっぱりいわゆる技術的にはできますって話は確かにあるけれども、やっぱりデータセンター側の電力がタービン不足で足りないっていう問題があったりとか、そもそもデータが足りないって問題もあったりするんで、これ自体も結局まだ結論がついてない状況ではあるんですけど。やっぱりフロンティアがもうかなり、自分たちで危機感を感じるレベルで走ってるっていうのは、みんな認知してますと。
ただこれやっぱり、いわゆるゲーム理論で言うところの囚人のジレンマ状態で。誰に対して囚人のジレンマかっていうと、これは投資家に対してっていうのと、競合に対してっていうのと、最後に米中とのこの安全保障のジレンマっていう関係で、それぞれでジレンマ状態になっていて。少なくとも投資家である、いわゆるVCだけじゃなくて、その裏側にいるLPの人たちも含めて、やっぱりもうこのバリュエーションを正当化するためには、全部のマーケットを破壊するぐらいのことをしてもらわないと正当化できないよね、これ実際思ってるわけです。IPOできないじゃんっていうふうに思ってるっていうところが、まず投資家側の期待値としてあるし。
かつさっき言ったように、競合は競合で、もうどう頑張っても誰かがやめるって言っても、絶対にこいつやめないんだろうと思っているからやめられないと。仮に米国の中だけで閉じてやめられたとしても、じゃあ中国止まってくれるかっていう話はこれは別の話で、これ止まってくれないよねっていうのもあって。やっぱりみんな、もしかしたら自分たちは破滅の方向に向かってるのか、そうじゃないのか分からないけれども、この全速力で走っていかないといけないってこと、運命づけられてるってことを認知しながら走ってるっていうのもあって。やっぱり結構コアチームたちは疲弊しているし、最近抜けてる人もどんどん増えてきてますけど、その危機感を持つ人たちも増えてきてるなということにはなってるかなと思います。
なるほど。疲弊してるからこそ、ちょっと破滅的な方向に考えちゃうのもあるかもしれないです。
あるかもしれないです。やっぱりこれ精神的な問題で、そもそもサンフランシスコも、要は不毛の土地で本当に何もない場所なんですね。だからそういう何もない土地に、哲会みたいな形で、もうひたすら優秀なやつを缶詰状態で合宿形式で泊まらせてるみたいな状態なので、それを1年、2年ずっと続けてたら、それは厳しくなってくるなっていうのも、やっぱり現地にいると思いますね。
じゃあ本当にRSIが来て、もう全部終わったら自分たちの役割終わるんだみたいな感じで、根詰めてやってたけれども、実際どうなるか分からないというか。
それはやっぱり誰も分からないですね。投資含めても、やっぱりポートフォリオの中で分散してるぐらいなんで分からないですし、本人たちも本当にそうなのか分からないっていうのはあると思います。
電力が最後の律速になるとしたら、やっぱりちょっと中国の方が土地的に強いんじゃないかみたいなことも言われたりすると思うんですけど、その辺りはどういう議論になってるんでしょうか?
私は電力の専門じゃないので、もちろんよく分からないところもあるんですけれども、やっぱりビッツ・アトムズってYC、あるいは他のVCが言ってるように、最後は電力の動力源を握っているところ、そして通信の、結局データセンターって言っても電力だけじゃなく、海底ケーブル含めてファイバー必要なので、そこをちゃんと握っているっていうところが最後強いっていうのは、これみんな認知している問題なので。そういう意味では最近ガスタービンとかも回し始めたりとか、電力が足りないので、タービンの売り切れ待ちとかで在庫がないとか。それはある意味日本の企業にとっては嬉しいことではあるんですけど、重工業系がそれで儲かったりとか、そういう状況ではあるので、やっぱり必ずしもそれだけでは足りないっていうのもあるし。
もうちょいそのOpenAI・ハギングフェイス事件からちょっと冷静に俯瞰して見てみると、いやでもサイバーセキュリティ的に、全ての、例えばファイアウォールを破れるのだとしたら、別にデータセンターで供給してる電源じゃなくて、我々が普段消費電源として使ってるものもハックして、それを仮想化して使えるっていう考え方もできなくはなかったりするわけなので。やっぱりこれはガードレールの議論と裏表の関係で、これもどっちとも結論言えるものではないかなというふうには思って見てます。
なるほど。その破滅シナリオみたいなのも、絵空事ではないかもしれないけれども、普段からそれを前提に置いて行動するとかはちょっとどうしても難しいので、その状況下で粛々とビジネスをやっていくしかないっていうのが実情なんですかね。
うん。
ちなみに、津田さんご自身としては、ASIって今言うのか分からないですけども、そういう超知能が到来するとしたら、嬉しいのかちょっと怖いのかで言うと、どっちだと思われますか?
まず超知能の定義がないので、これって結構ムービングターゲットなところあるじゃないですか。ゴールポストがどんどん動いちゃってるので、分からないですけど、結局どこかのタイミングで必ずシンギュラリティは来るんだと思います。やっぱりそれに対して、我々がどういうふうに人類としてそれを受け入れていけるのか。もちろんガバナンス議論ってやっぱり本当に大事で、結局人間がキルスイッチをちゃんと持てるのかっていうところ含めて、やっぱりこれをちゃんと現実問題として捉えていく。遠い未来の10年後に来るかもしれないじゃなくて、もしかしたら明日来るかもしれないっていう、そういう心の備えを持って、じゃあ今自分に何ができるんだっけっていうのを考えていくっていう、それ以上でもそれ以下でもないかなっていうふうには思ってますね。
うん。わかりました。その電力の問題が一つと、良質なデータがどれぐらい取れるかというのがまた一つ、AIの進歩の一つの鍵になってくるというお話あったかと思うんですけれども、このデータ主権の問題について改めて伺えますでしょうか?
はい。私はちょっと訂正したいんですけど、私はデータ主権っていう単語、実はあんまり使っていなくてですね。まずこの主権っていう単語は、私、元々哲学とか政治学とか、あとは社会学の間みたいな領域になるところが専門なんですけど、実は。この主権っていう単語自体は、これ政治学の用語なんですよね。これ元々16世紀のジャン・ボダンっていう人が作ったところから端を発していて、いわゆる古典的な定義のところから、主権という概念に一番大事なものとして含まれてるのって、対外承認っていう概念なんです。
これ何かっていうと、主権っていう話をすると、みんないわゆるテリトリアル・インテグリティみたいな、領土保全みたいな、自分の国の中だけをちゃんと守っていて、これに対して権利を効かせてる状態みたいな、この中だけの話をする人が多いと思うんですけど、実は主権って相対的に成立するものっていう概念なんですよね。他の、アナーキーな国際政治社会の中で、他の国から承認を受けて独立していると認められているっていうのも、結構大きなポーションをまず主権っていう用語は含んでいます。
外部から自国を守るという意味においてのこの主権を、ウェストファリア的主権って言うんですけど、いわゆるウェストファリア体制っていう国家の体制ができたのがウェストファリア条約以降なんですけど。っていう主権っていう概念ももちろん大事なんですけど、でも今やっぱりこの主権の議論の中で足りないのは、国際法的主権って言われるような対外承認っていう主権で、あとは相互依存的主権っていう、相互依存の関係の中で制御できるっていう主権の話が結構抜けててですね、このデジタル主権の話って。
なんでこの話をするかっていうと、別に技術って真空の中に生まれるわけじゃないんですよ。必ず技術って他の論文とも一緒で、必ず他に何かの先行研究があって、そこの中の系譜として生まれてくるもので、いきなりポカーンってどっかに関係ないところから生まれてくるものではないんですね。っていうのを考えると、私が自分で書いたnoteの中でも、Sovereignty is not isolationismに書いてるんですけど、技術主権っていうのは孤立主義ではないと。絶対に周辺の関係性の、技術的な尊敬すべきフロンティアラボだったり、さっき言ったようなUCバークレーの先人の研究者たちが積み上げてきたものの中に、相対的なものとして存在するので。なので孤立主義的に、これはうちの技術だから、もう基本的に海外のもの使いませんとか、うちで勝手に車輪の再発明するっていう議論にすべきではないと思うんですよね。
なので、もちろんデジタル赤字の話をしてる本人なので、ある意味海外のサービスに対するオルタナを作るっていう話はあるんですけれども、やっぱりこのデータ主権っていう単語を、さっき言ったようなウェストファリア的主権の観点だけで守っていくっていうのは、これは本当に孤立していくだけなので、デカップリングされて。なのでそういう意味では、やっぱりこのフロンティアに、つまりサンフランシスコに向き合い続けるってことを、辛くてもやらないといけないと思うんですよね。日本国としてもそうだし、起業家としてもそう。なのでやっぱりそういう意味では、この技術主権の名の下に孤立主義に陥らないような、このデジタル赤字に対する考え方、このソフトウェアビジネスに対する考え方っていうのをしっかりと、これは自戒も込めて、していかないといけないなというふうに思ってます。
なるほど。企業や政府のデータだったり、良質なデータを守るという側面でも、デジタル赤字の構造をなんとか改善していくという、どちらの側面においても閉じてはいけない。国粋主義になってはいけないということですよね。
そうですね。やっぱり最近は日本の改革っていう意味で、幕末の明治維新の時代に例える人がすごく多いと思うんですけど、それはそれで一方で正しいと思ってて。あと近江商人の三方よしみたいな話も結構言う経営者、最近増えてるんですけど、私はやっぱり、ある意味日本がもうフロンティアでないってことを考えると、もっと戻って遣唐使の時代ぐらいまでの考え方に戻らないといけないというふうに思ってて。
結局奈良時代とか平安時代って、圧倒的に中国が漢字文化とか、律令文化とか法律とか含めて、すごいフロンティアを行ってたわけで、そこにひたすら人を送り込んで、あるいは逆に向こうから人が来て。それで当時の奈良時代とかだと、聖武天皇が新興宗教である仏教を元に大仏建立するみたいな国プロをやったりしたわけですけど。やっぱりそういう意味では、フロンティアは今明らかにサンフランシスコにあるのだから、そこに対して遣唐使として、あるいは遣サンフランシスコ使か分からないですけれども、ちゃんと向こうに行って、それをちゃんと日本にフィードバックするっていう、こういう関係性を途絶えさせてはいけないなというふうに思います。
なるほど。謙虚にコミュニケーションして学んでいく姿勢が大事だというところですかね。一つお伺いしたいのが、こういう状況において日本が遅れてしまった部分、デジタル敗戦という言葉も結構聞かれると思うんですけれども、そんな中で日本が他国に優位性を持てる、ジャパンレバレッジと言ってもいいような部分って何かありますでしょうか?
でもそれは色々あると思います。やっぱりソフトパワーっていう意味で、日本みたいに社会資本が隅々まで積み上がった国っていうのはそう多くはないので、そういう意味ではこのソフトパワーを使って、ちゃんとフロンティアの人たちにも日本に来てもらう。実際に今いろんなハード企業含めて、日本に立地したいと。いろんな人が、日本はアジアのスイスになるんだとか、アジアのシンガポールになるんだみたいな話をしてる方も多いと思いますけど、やっぱりサンフランシスコに行って思うのは、日本人って言うと割と話を聞いてくれる、まだ。
あ、そうなんですね。
っていうのがやっぱり一つあるかなと思ってて。じゃあ日本のハードウェア業ってどうなってるのとか、電力需要ってどうなってるのとか、ソフトウェアって何かいいの出てきてるの、みたいな話必ず聞かれるし、やっぱり興味を持ってる時点はまだ花だと思うんで、まずそれをちゃんとレバレッジにして。日本で勝てるような、よく言われるのはコンテンツ産業とか製造業ですけど、それ以外に私がやってるようなミドルウェアとかも新しいマーケットなんで、そういったところで日本人がちゃんとサンフランシスコに行って、noteで書きましたけど、技術で国にいる、技術報国をしていくっていうことがやっぱりすごく大事だと思っているし。
そのための手段としては、さっき言ったみたいにエンジニアの相対価格として、アメリカも本当に1人当たり5000万出しても雇えないんで、今となってはフロンティアラボの人たちは。なのでそういう意味では、ちゃんと日本の人たち、特にアンダーバリューされてるエンジニアを、それこそ5000万で、例えばトップ人材来てくれるので、そういった形でちゃんと日米のアービトラージポイントがどこにあるのかっていうのを見定めて、それを使っていくっていうのが、まず手堅いやり方かなと思います。
そうですよね。今まで結構国内に適合してもやっていけたぐらい、ちゃんとマーケットは大きくて、あんまりやってる人もいないということなので、考えようによってはすごく伸びしろが大きいビジネスもあるというところで、今率先垂範をされようとしているというお話でした。そろそろお時間になってきたかなと思うんですけれども、こうして20代の方にご出演いただく機会、楽待もビジネスメディアですけど、非常に少なくはなっております。今回の動画をご覧になって、自分も何かやりたいと考えている同世代、あるいはもっと上でも構わないんですけども、何か一言メッセージをいただけると嬉しいです。
やっぱり私の生まれたのって1997年で、今年29歳なんですけど、ここからさらに大体50年ぐらい生きるって考えると、50年前に、じゃあ1997年の50年前に何があったかっていうと、本当に商用コンピューターが初めて実装されたぐらいのタイミングなんですね。1955年とかそれぐらいのタイミングって、そこから考えて、まさかこんなAIが自律的に動いて、『攻殻機動隊』とかそういう世界観になってるとは誰も想像してなかったわけで。多分ここから先50年で起きることは誰も想像できない。多分人間が想像することはやり尽くした上で、その上をさらにやってくる時代っていうのが必ずやってくるので。
やっぱりそういう意味では、転換期になる次世代として、責任を持ってこの日本っていう国、この世界自体をちゃんとシェイプしていくというか、デザインしていくっていうのを責任を持っていかないといけないと思いますし。さっき言った技術報国についても、これは豊田綱領の、豊田佐吉が実際にトヨタを作った後に、その息子の喜一郎がまとめたものの中に入ってる用語なんですけど。昔は産業報国というふうに言って、報国主義っていう、その後にちょっと国家と結びついて暗い歴史もあったりするんですけど、でも本当の意味は、豊田織機のG型織機っていう、当時の産業革命の中心のイギリスに認められたような技術を佐吉が作って。
そこからさらに自分の子供である次世代に、自分がニューヨークで見た車っていう新たな技術、T型フォードっていう新たな技術を作るために、そこで得たライセンスをちゃんとハンドオーバーしていくことによって、新たな自動車産業を作り上げていったっていう、こういうストーリーの中に生まれてるもので。やっぱりこういった産業だけではなくて、技術でもしっかりと次世代に自分が何を残していけるのか。自分が稼いで儲かるだけじゃなくて、それをどういうふうに、次生まれてくるAIネイティブで、もしかしたら新卒としてもうAIによって代替されて入れないかもしれない子たちに対して、何を残していけるのかっていうのを、この年齢でもしっかり考えていかないと、やっぱり日本の社会というか世界の社会に未来はないかなっていうふうに考えているので。
そういう意味では、もちろん今ファンディングフェーズですし、ファウンディングメンバーを募集してますけど、やっぱり同じ世代として皆さんと一緒に頑張っていけたらなというふうに考えていますので、ぜひこの時代を楽しんでいきましょう。
ありがとうございます。改めまして本日は元経産官僚、起業家、エンジニアの津田さんにお話を伺ってまいりました。今後の起業家としてのご活躍もぜひ拝見させていただき、また機会がございましたらご出演もいただけたら嬉しいです。本日改めてありがとうございました。
ありがとうございました。
楽待、楽待、楽待。
不動産投資は楽待。
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