金利が戻った世界で何に資産を置くか:エミン・ユルマズ、永濱利廣、杉山浩一が語った株・債券・不動産の行方

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概要

日本の長期金利は9月に3%台に達し、アメリカの10年金利も一時5%台をつけた。この金利上昇は株、債券、不動産にどう影響するのか。フリーアナウンサーの佐田志歩が司会を務め、エコノミストのエミン・ユルマズ、第一ライフ資産運用経済研究所首席エコノミストの永濱利廣、株式会社プラン・ドゥ代表の杉山浩一の3人が議論した。

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3人の見方は「金利上昇は悲観一色ではない」という点でほぼ一致している。ただし重点は異なる。永濱は実質金利と名目成長率から見て、まだ過度に恐れる局面ではないとみる。エミンは金利上昇の勢いと各国の債務、インフレの行方を警戒し、分散を勧める。杉山は不動産の現場から、金利高による価格の押し下げと、インフレによる地価・家賃の上昇の綱引きを語った。

3:15

名目金利ではなく実質金利で見るべきだという永濱の立場

最初に長期金利3%、約30年ぶりの高水準をどう受け止めるかが問われた。永濱は、日本経済がようやく正常なインフレ経済に戻ってきた裏付けだと答えた。ただし不動産やお金を借りる場面で考えるなら、表面上の名目金利ではなく、インフレ率を差し引いた実質金利で見るべきだと強調した。

10年国債利回りは3%を超えているが、インフレ率を2%前後とすれば、実質金利は直近で1%程度にとどまる。永濱によれば、2000年代後半と比べても実質金利はそれほど上がっていない。政策金利に至っては実質でまだマイナスである。そのため、名目金利の上昇だけを見て過度に悲観する必要はないという見方も成り立つ、と永濱は述べた。

4:47

エミンが指摘する「勢い」と「借金」という二つの問題

エミンはまず長期の歴史を持ち出した。日米とも長期平均を取ればおおむねこの程度の金利水準で、アメリカの10年金利も平均で5%ほどだという。むしろこの20〜30年の異常な低金利の方が例外であり、今は普通に戻りつつある。これがエミンの見立てである。

ただしエミンは二つの点を問題視した。一つは上がり方である。水準だけでなく、この半年から1年の上昇スピードやチャートの形が問題で、しかも一国だけでなく、アメリカ、日本、ヨーロッパ諸国のほぼすべてで同時に起きている。これ以上上がればさまざまなセクターと実体経済を圧迫するが、どこで止まるかは分からないという。

もう一つは債務である。過去にも金利が高い時代はあったが、当時の各国はこれほど借金を抱えていなかった。今の世界は各国が借金だらけで、この20〜30年の財政出動、金融緩和、量的緩和でお金をジャブジャブに流したツケが、より高い金利の形で回ってくるかもしれない。国の金利負担が非常に重くなる点が昔との大きな違いだ、とエミンは述べた。

中東情勢の影響を問われると、エミンは影響を認めた。原油をはじめコモディティが軒並み上がり、長期のインフレ期待を押し上げているという。そのうえで、ウクライナからイランへと続く紛争はいずれもエネルギーやそのルートをめぐる争いで、背景には米中の地政学的対立があり、それはまだ始まったばかりだと述べた。資源が自由に行き来し、グローバルサプライチェーンが機能する世界はもう終わったかもしれない。そうであれば長期的にはインフレになり、借金を抱える各国の通貨は目減りしていく。エミンはこれを金利上昇の背景にある懸念として挙げた。

8:30

9月の日米利上げと、日本銀行が置かれた板挟み

9月には日米がともに利上げを決めた。永濱は、日銀の金融政策について立場上あれこれ言えないと断ったうえで一般論を述べた。日銀が示す中立金利の水準は1.1〜2.5%で、基調的なインフレ率が2%を上回る状況なら、その中心あたりまで緩やかに金利が上がっていくのは自然な流れだという。さらに、イラン情勢の緊迫化などで世界的に期待インフレ率が上がっており、海外も利上げしていることから、インフレが落ち着くまで利上げは続くのではないかと見通した。

永濱は財政との関係も重要だと付け加えた。いわゆるドーマー条件、つまり名目成長率と長期金利の差で見ると、日米とも長期金利は上昇しているものの、今のところはなんとか名目成長率を下回っている。この程度ならよいが、長期金利がさらに上がれば財政への懸念が急に強まるので、今後は注意が必要だという。

エミンはアメリカについて、年内にもう1回程度の利上げがありそうで、ただし中間選挙の後になりそうだとみる。ECBが先に利上げに動いていたこと、長期金利だけが上がって短期金利が低いままではイールドカーブが急峻化して歪みが生じることから、アメリカも利上げせざるを得なくなったと説明した。主要中央銀行が一斉にインフレ抑制に動いた形である。

エミンは日米の違いも指摘した。アメリカの政策金利は4%で、インフレ率3.4%を上回り、実質金利はプラスだ。日本は1.25%で、実質金利はまだマイナスにとどまる。日本の利上げには行き過ぎた円安を止めたい狙いがある一方、政権からはあまり利上げするなという圧力もかかっているはずだ、とエミンは見る。ここで永濱が、自分も最近内閣府に呼ばれるようになったので発言が制限されると冗談を返す場面もあった。

アメリカからの圧力についてエミンは次のように語った。1ドル160円を超えるとベッセント財務長官は機嫌を損ねる。日本は米国債の最大の保有国で、日本が介入資金を得るために米国債を売らざるを得なくなる事態は、アメリカにとって絶対に避けたい。だから為替介入のような一時的な手段ではなく、実質金利を引き上げる構造的な対応をすべきだというのがアメリカの立場で、それが日本に利上げを迫る理由ではないか。一方で利上げしすぎれば景気が壊れるという政権側の圧力もあり、日銀は板挟みになっているかもしれない。本来、為替は日銀の仕事ではないともエミンは付け加えた。

13:34

株価は「金利と成長の関係次第」:2030年の日経平均10万円という推計

株式市場への影響について、永濱は教科書的には金利上昇は株価のネガティブ材料だと認めた。とくにPERの高い企業やハイテク関連には逆風で、逆に金融セクターには追い風の面もある。ただ、金利がいくら高くても、それ以上に経済が成長していれば問題はない。財政のドーマー条件と同じで、両者の関係次第だという。

その根拠として永濱が示したのが、政府の2040年までの経済の中長期見通しである。永濱によれば、そこでは長期金利が将来的に3%を安定して超え、良いシナリオでは3%台半ばまで行く一方、名目成長率も3%程度とされている。この関係をもとに理論株価の式で推計すると、日経平均は上昇トレンドを維持でき、2030年に10万円程度に達してもおかしくない計算になる、と永濱は述べた。逆に経済成長以上に金利が上がれば相当なブレーキになるが、今のところは大丈夫だろうという。

15:34

エミン:米国株は指数ではなく個別株ですでに調整している

エミンは「利回り」の概念から説明した。株式の利回りにあたるのが益利回りで、市場全体のPERが20倍なら益利回りは約5%になる。日本株のPERは17〜18倍程度なので益利回りはそれより高く、まだ国債より株の方が有利な状況だという。金利上昇はネガティブではあるが、日本株全体を壊すほどの要因にはなっていない。

アメリカは事情が異なる。長期金利が5%を超え、S&P500の益利回りを上回ってきた。それでも指数は下がっていない。しかしエミンによれば、個別株にはすでに影響が出ている。ラッセル2000やラッセル3000の銘柄で見ると、移動平均線を上回っている銘柄は全体の2割ほどしかなく、高値から50%以上下落した銘柄も2割ほどある。個別株ベースではアメリカはすでに調整に入っていて、長期金利の上昇で打撃を受けているという。指数が落ちないのは、ひと握りのAI銘柄が支えているからだ。

エミンは、冒頭で「もう一つある」と予告していた長期金利上昇の理由として、AIインフラ投資のための大量の社債発行を挙げた。データセンターを運営するいわゆるネオクラウド企業の直近の起債は約11%の金利だったという。アルファベット(Google)でさえ30年債を5.6〜6%程度で発行しており、その社債価格は額面1ドルに対して84セントまで下がっている。価格が下がるということは利回りが上昇しているということで、金利上昇が続けば価格はさらに下がる。満期まで持てば問題ないが、途中で売る場合は含み損を抱えて損切りを迫られることもある。エミンはここに国債や社債の厄介さがあると述べた。

佐田は、元本が保証される国債と、リスクを取る株の利回りを横並びで比べてよいのかと質問した。エミンはその通りだとし、バフェットも同じ考えで、だから今はほとんど現金で持っていると答えた。今の益利回りでは株は割安ではなく、仮に株価が半分になれば優良銘柄の利回りはまったく違ってくる。バリュー投資や長期投資をする人にとって、今は魅力的な割安銘柄が少ないという。

20:36

不動産は金利の影響を最も受けるが、地価・家賃との綱引きになる

杉山は、不動産投資が金利上昇の影響を最も大きく受ける資産だと明言した。不動産は株式投資に比べて大きなレバレッジをかけられ、借入れが9割に及ぶこともある。金利が上がれば求められる利回りが上がり、それが価格の押し下げ要因になる。これは構造的に間違いないという。

一方でインフレも同時に起きていて、土地価格が上がっていく傾向にあることも間違いない、と杉山は述べた。土地のインフレ率、金利、家賃の推移という3要素の中で、金利がある世界での新しい相場観ができていく。今はちょうどその調整局面で、一部で価格の下落が起きていることを現場で感じているという。

佐田が、インフレで家賃が上がれば金利高を押しのけられるのかと尋ねると、杉山は期待収益との関係で価格が決まると答えた。今は金利の方が急激に先行して上がったため押し下げの力が強い。リスクゼロの国債に対してリスクに見合ったプレミアムを取るという構造は株も不動産も同じで、不動産の場合は家賃収入と資産価値の上昇で金利とプレミアムをどれだけ補えるかで相場が決まる。そのため、これまで以上に資産性と収益性のバランスが重要になり、同社もバランスの取れた物件に投資する傾向が強まるだろうと語った。

23:33

「世界はインフレを起こそうとしているのでは」というエミンの疑念と、物価連動債

エミンは、インフレになれば借金は目減りするので、どの国にとってもインフレはありがたいと指摘した。そのうえで、世界的にインフレを起こそうとしているのではないかと疑っている、と本人も「グローバル陰謀論チック」と認めつつ語った。永濱は、日本は2%のインフレ目標を掲げているので一応そこに管理しようとするだろうと応じ、トルコ中銀のインフレ目標は何%かと冗談めかして尋ねた。エミンは今年は35%程度だと答えた。先進国は2%なので、今のままなら極端なことにはならないが、システムが行き詰まったときにはそうなるのではないか、というのがエミンの見方である。

そうなれば現物資産を持っていた方がいい、という流れになる。エミンは株でも不動産でも金でも、お金以外のものならよいとし、国債のリスクはまさにそこにあると述べた。国が発行する借用書である国債は、インフレを放置すれば目減りしていく。対策として物価連動債を挙げ、アメリカのTIPSに触れつつ、個人向けにはまだあまりないと補足した。

26:07

富裕層のお金は債券へ:都心マンション転売の終わり

富裕層のお金がどこに向かっているかという問いに、永濱は不動産関係の富裕層向け講演の現場で聞いた話として、かなり債券に流れているようだと答えた。富裕層の多くは金利が上がっても借入れなしで買える人たちで、これまで転売で儲けていた人たちが、不動産の利回りが2%程度まで下がってきたことで、ソフトバンクの社債のように4%台の利回りがつく債券に移っているという。債券は流動性が高く、満期まで持てば元本が返ってくる。その結果、都心の良い立地の不動産価格の上値が重くなっているという話だった。

杉山は都心マンションの構造を説明した。値上がりを見込んで買い、入居者を入れると売値が下がるため空室のまま転売する。管理費、固定資産税、金利を払っても値上がり益を取るという手法で、金利が安かったから成り立っていた。金利が上がって耐えきれなくなったのだという。永濱は、不動産協会が1人で多数の物件を買う転売目的の購入を抑える自主規制をしていること、今後は国の規制も入ってきそうなこと、外国人の投資も一旦落ち着いているかもしれないことを付け加えた。

エミンは利回り2%という数字を株のPERに置き換えた。PER50倍に相当し、50年経っても元が取れない水準である。杉山も、理論的にはそういうことになっていて、金利上昇で厳しくなる構造だと認めた。ただし、短期間の値上がりで利益を得た人がいるのも確かだと述べた。

28:31

個人向け国債の拡大策と、エミンの警戒

永濱はもう一つの論点として、国がすでに個人向け国債の市場拡大策に動き始めていることを挙げた。イタリアでは国債保有に相続税の優遇を設けて成功しており、日本でも同様の制度を求める政治家がいるという。これまで不動産が売れた理由の一つは税制優遇だったため、国債にも相続税の優遇が入れば不動産には逆風になりうる、と永濱は指摘した。どう決まるかはまだ分からないとも付け加えた。

エミンは、国が国債を買ってほしがることにはやや怪しさを感じると述べた。国が新たな資金を喉から手が出るほど欲しがっているのは日米とも同じで理解できるが、インフレを放置すれば目減りする借用書に資産を一本化するのはリスキーで、分散の一部ならよいという立場だった。

これに対し永濱は、日本の個人金融資産2,500兆円のうち半分近くが現預金であることを指摘した。預金も結局は銀行を通じて国債に回っているが、預金金利は国債利回りより低く、銀行に手数料を取られている形になる。個人が直接国債を持てば、中間で抜かれずにリターンを得られる。永濱はこれを「貯蓄から投資」の文脈に位置づけた。エミンもこの点には同意し、今は預金で持つ意味がゼロで、お金が死んでいるようなものだと述べた。リスク資産が軒並み上がる中、預金金利は良くても0.55%程度で、現金は確実に目減りしていく。何かしらに投資しなければならない世の中だという点で、2人は一致した。

31:20

日本の不動産投資は「金融資産を持つ人ほど有利」な仕組み

杉山は、富裕層を顧客とする立場から、株か不動産かの二者択一ではないと語った。富裕層は国債や株などの資産を背景に借入れを起こし、不動産投資をしている。日本の銀行融資はノンリコースではなくリコースローンなので、物件がいくら割安でも、借り手自身が金利負担に耐えられるかが問われる。金融資産をきちんと運用している人ほど不動産投資もできる。この「両立て」の構造が、富裕層ほど儲かる仕組みになっていると杉山は感じているという。

エミンは、アメリカでは住宅ローンが払えなくなっても住宅を渡せば借金がなくなると、日米の違いを補足した。杉山によれば、銀行は今は貸せば儲かるのでたくさん貸したいが、金利負担に耐えられる人の線引きがこれまで以上に厳しくなり、より富裕な層でないと貸せなくなっている。

33:01

インフレ下では土地割合の高い中古物件が強いという見方

杉山はさらに、インフレ下での物件選びを説明した。これまでは節税のための減価償却が大きな意味を持っていた。しかしインフレで値上がりするのは土地で、建物は償却メリットはあってもインフレの恩恵を受けにくい。同じ1億円を投じるなら土地割合の大きい物件の方が将来の値上がりを期待できる。建築費の上昇も考えると、中古の方がインフレに強くなっていく、というのが杉山の考えである。

エミンもこれに同調した。リートは売られているが、建設会社は人手不足と建材費高騰で厳しく、新規供給が減れば既存物件の価値は上がる。希少資産の原理である。やや売られすぎだと感じるとし、昔は建物そのものに価値はなかったかもしれないが、これからは価値が出るのではないかと述べた。郊外の中古物件は相対的に価格が上がっていない分、利回りも高いだろうとも指摘し、杉山もそれがメリットだと認めた。

34:44

賃金上昇が家賃に波及しているという現場の報告

永濱は、今年は名目賃金が安定して3%を超えており、構造的に賃金が上がる局面に入ったと見ている。背景は人手不足だ。デフレが続いたのは、企業が値上げせず、人手余りで人件費を抑えて利益を出せたからだった。今は人件費を抑えると人が確保できない。この傾向が続けば家賃も緩やかに上がっていくだろうという。

杉山はこれを現場の数字で裏付けた。少し前までは、リノベーションをすれば家賃を2〜3割上げられても、住み続けている入居者の家賃はなかなか上げられなかった。それが今は、同社が更新時に一律5%程度の値上げをお願いすると、9割ほどの入居者がそのまま受け入れ、住み続けることを選んでいるという。郊外の物件でも家賃は上がるものだということがスタンダードになってきた、と杉山は感じている。ただし急には上がらないとも付け加えた。

36:48

国道16号線沿いの郊外と、都心の価格をどう見るか

杉山の言う郊外は、極端な田舎ではない。国道16号線沿いの、高度経済成長期に住宅・都市整備公団が整備したニュータウンのエリアで、交通インフラに加え学校、病院、商業施設、公園が当時から整っている。杉山は大型ショッピングモールが展開しているエリアとも表現し、モール側もここを新たなファミリー層が住む場所と見て今後も展開を計画しているのではないか、と語った。

永濱は、今は都心より郊外の方が上昇率が高いと指摘した。都心でパワーカップルが買えるのは1億5,000万円程度が上限らしく、それ以上上がると手が届かないため、需要が郊外に広がっているという。

一方エミンは、自分は不動産の専門ではないと断ったうえで、株と違って不動産はバブルかどうかを言い切れないと述べた。株は新しい企業や産業が常に供給されるが、土地、とくに東京のような人が住みたい場所は供給が限られた、ある意味で唯一の資産だという。世の中には現金を寝かせて目減りさせるくらいなら3億円でも家を買いたいという富裕層がいくらでもいる。だから利回りの理屈だけで東京の高額物件をバブルとは断言できず、さらに上がるかもしれない、とエミンは語った。

杉山は、都心マンションは希少性に注目されて上がったものが、今は実需で見てどうかというところに揺り戻しが起きていると整理した。住宅価格も金利も上がって支払いが増えるなら、給料が上がっていても賃貸の方がいいという流れも生まれている。郊外のファミリータイプの家賃はかなり高くなっているという。

災害リスクについて、杉山は東京エリアは元々湿地だった場所が多く、ハザードリスクはこれから一層注目されると認めた。そのうえで、かつて水が出たとされるエリアでは地下の大規模な放水施設を含めてかなり対策が打たれており、地方で災害が多発しているのに比べ、首都圏の水害対策は進んでいるのではないかとの見方を示した。

40:42

「住宅は30年」という通念と、一棟中古マンションの需要

建物について杉山は、中古が注目されなかった理由を二つ挙げた。一つは旧耐震基準以前の建物を長く使えるのかという疑問、もう一つは日本人に根付いた「住宅は30年ぐらい」という通念である。杉山によれば、その通念が覆されつつあり、100年持つかという観点でも、実際に長く持っている建物は現存している。同社はバブル期に建てられた賃貸マンションを専門に扱っており、1990年をバブルの頂点とすれば築80年となる2070年まで、どう計画的に運用するかを顧客と話し合っているという。

金利が上がってからも一棟中古マンションへの引き合いは十分にあるという。ただし杉山は、急激な値上がりや家賃の急上昇を見込む物件ではなく、長期で持って意味のある物件であることが良さだと強調した。エミンは、一棟物は利回りが高くなりやすく、中古は減価償却期間も短くできるので、富裕層に人気があるのではないかと補足した。

想定する顧客層について杉山は、高年収で金融資産を持ち、ローンを組みやすいエリートサラリーマン層を挙げた。もともと年収2,000万円以上を対象にしていたが、外資系企業に勤める人の中には給与水準が上がっている人もいる。株式中心の資産でこの数年に数億円単位まで増えた人も多いという。永濱から、都心の超高級物件では経営者や美容医療の医師などが目立つが超富裕層も顧客にいるのかと問われると、杉山は超富裕層もいるが、彼らにとっては小ぶりな投資だろうと答えた。同社が扱うのは一棟5億円前後で、レバレッジをかければ自己資金は数千万円規模になる。個人には大きすぎ、ファンドやリートには小さすぎる中間のサイズで、経営しやすく、複数を持ってリスク分散できるという。

エミンが挙げた移民という需要要因

エミンは家賃について、デフレ環境で上がらなかっただけで日本が伝統的にそうだったわけではなく、今後は少なくともインフレ分は上がり、賃金はそれ以上に上がりそうだと見る。周辺に工場が多い場所などでは需要もあるだろうという。

そのうえでエミンが加えたのが移民の論点である。日本の将来推計はあまり移民を想定していないが、すでに外国人は増えている。新規供給が少ない中で新たな需要を生み、家族で来日して賃貸を選ぶ人もいる。東京のコンビニの従業員はほとんど外国人、飲食店でも半分近くが外国人で、彼らもどこかに住まなければならない。移民を受け入れるべきかという議論の結論はエミン自身にも分からないが、外国人がじわじわ増えているのは間違いなく、とくに工業団地が多い郊外のような場所で、収入は高くないが住む場所が必要な人々の需要が出てくるかもしれない、と述べた。

47:24

3人の結論:前向きな経済活動、分散、そして中長期の物差し

最後に、金利上昇局面で生き残るための考え方を3人が述べた。

永濱は、金利が上がっているのは物価が上がっているからで、インフレと金利のある世の中は経済的に前向きな活動をした人が報われる世の中だと語った。デフレ期は預金に預けておけば実質価値が勝手に上がったが、皆がそうしたことで景気が悪かった。今は株でも不動産でも前向きに動けば儲かりやすい。都心ほど価格が上がりすぎていない郊外型の不動産投資は、一つの良い選択肢になるのではないかと述べた。

エミンは、預金で3%や5%が取れない限り預金はダメだと断じ、何かしら運用しなければならないとした。インフレ環境では現物資産もそれ以外もリスク資産は全部上がると思うが、何が大当たりするかは分からない。だからある程度お金がある人は、不動産、株、国債などの債券、持てるなら他の現物資産にも分散すべきで、分散するほどリスクを減らせるという。

杉山は、不動産投資の物差しは資産性と収益性、つまり資産価値と利回りがどうなっていくかの二つの軸だと改めて述べた。金利のある世界ではとりわけ中長期の目線が最も大事で、金利に負けないリターンを長期で得ていく考え方をすべきだと語って議論を締めくくった。