明確に分けたR&Rはなぜチームを壊すのか:ハン・ギヨンが答えた3つの葛藤エピソード
EO Korea翻訳元 한국어
リーダーとして働いてきた中で最もつらかった瞬間を振り返ると、そのほとんどは人や組織の間の衝突や葛藤から生じていたとハン・ギヨン氏は語る。リーダーが衝突をどう捉え、どう解決するかがチームの結果に大きな影響を与えるというのが同氏の見方だ。今回は、葛藤をテーマにした視聴者からの相談3件を取り上げる。エースの企画案を別のチームメンバーに任せたチーム長、役割をきっちり分けたところ「それは私のR&Rではありません」という言葉ばかり聞くようになったリーダー、そして他チームと序列争いを繰り広げるチーム長の下で働くメンバーの話だ。
相談1:エースの企画案を別のメンバーに任せたら
ニックネーム「ソンソン」さんからの相談だ。チーム長である相談者のチームには仕事のできるエースがいるが、現在大きなプロジェクトのせいで寝る暇もないほど忙しい。ちょうどエースが草案をまとめていた企画案が一つあり、すぐに実行する必要があったため、チーム長は比較的余裕のあるメンバーにその仕事を任せた。リソース配分をうまくやったと満足して退勤したが、翌日からエースの態度が変わった。口を閉ざし、意見を求めても終始「いいと思います」としか答えない。相談者は、会社の仕事は個人の所有物ではなく、仕事を奪ったのではなく業務のダイエットをさせてあげたのではないかと問う。
ハン・ギヨン氏は、この形の相談が思った以上に多かったと話す。同氏の見立てでは、衝突の相当部分は共通の目標が明確でないとき、あるいは人々がその目標を明確に認識していないときに生じる。そのため、業務配分を変えると決めたときに事前に伝えるのも一つの方法だが、それよりも共通の目標と結びつけて説明するほうがよいと提案する。たとえば次のように伝えるのだ。「あなたは今こういう仕事で忙しい。でもこの仕事は進めなければならない。私たちの共通の目標を達成するために、今回はこのように配分する。理解してもらえるとうれしい。そして、引き続きアイデアを出してくれてありがとう。」
個人の力で認められてきたメンバーほど、仕事が自分の手を通らなければ意味がないと考える傾向があると同氏は見る。だからリーダーは、そうしたメンバーが自分の仕事の外に目を向けられるよう手助けし、実際にそうした行動をとったときには認め、褒めるべきだという。これは一種の強化学習のように働き、人が自分の考えや行動を変える大きな動機になるとハン・ギヨン氏は説明する。
組織の間でも同じことが起きる
ハン・ギヨン氏自身が経験した似たケースは、個人の間ではなく組織の間の出来事だった。ある組織がプロジェクトを成功させると、別の組織がそのプロジェクトを持っていき、別のマーケットに展開することがある。最初にプロジェクトを手がけたチームは「あれは自分たちのアイデアなのに」と思うようになる。実際、そのアイデアを見て別のマーケットに複製したのも事実だ。
こうした状況でその後の協業をうまくいかせるには、複製して別のマーケットに適用したチームが、元のチームにクレジットを与え続けなければならないと同氏は言う。このチームのおかげでこうしたアイデアが生まれ、このチームの助けで成功できたと認めることだ。これは個人だけでなく組織の間でも非常に重要だったというのが同氏の経験だ。同時に、チーム文化の面では「自分がアイデアを出したのだから実行まで全部やらなければならない」と考える必要はないとまとめる。
相談2:徹底したR&Rが生んだ壁
ニックネーム「開発セバルジャ」さんの相談タイトルは「徹底したR&Rのジレンマ」だ。相談者は組織内の衝突を減らそうと、それぞれの役割をきっちり分けた。最初は効率が上がったようで満足していたが、ある時点から雰囲気が変わった。問題が起きるたびに、皆が示し合わせたかのように「それは私のR&Rではありません」という言葉から口にする。争わないようにと引いた線が、今では越えれば侵害になる巨大な壁になり、目の前で火事が起きているのに「私の担当には消防士はいませんが」と傍観するメンバーたちを見ているという。相談者は、システムが問題なのか、リーダーとしてどこでボタンを掛け違えたのかと問う。
ハン・ギヨン氏はまず定義から確認する。R&RとはRoles and Responsibilities、つまり役割と責任だ。ハイレベルでチームや個人の役割と責任をある程度明確にすることは非常に良い。問題はこれを細分化しすぎたときに生じ、細分化する動機が何かが重要だと同氏は言う。衝突を防ぐためにR&Rを細かく分けるケースがあり、それと同じくらい良くない動機として、人に専門性を持たせるため、つまり一人が一つの仕事だけをするように分けるケースを挙げる。
細分化が生む2つの副作用
そのようにR&Rを細分化すると生じる一つ目の悪影響は、協業能力が落ちることだ。時には自分の責任の外に出て、チームとして成果を出す姿を見せる必要があるのに、「自分はこれ一つだけをやる」と自分の仕事だけをしようとするようになる。
二つ目の問題は、人を多く採用しなければならなくなることだ。担当する仕事が細かく決まってしまうからだ。ハン・ギヨン氏は、アドバイザーを務めた会社の事例を挙げる。社員100人の会社に、財務チームだけで7人いた。同氏が「ありえない」と表現したこの状況の原因を調べてみると、財務チーム長がメンバー同士の争いを防ぎ、専門性を生かすという理由で非常に細分化された仕事を割り振っており、その結果、採用が増えていた。そうした文化が果たしてそのチームだけにあっただろうかと同氏は問い返す。
結局、R&Rを細分化して決めようとすると本末転倒になるというのが同氏の診断だ。自分たちのビジョンとミッションは何か、自分たちが持つ目標は何かといった大きな絵を見ずに、細かな自分の責任と権限、専門性ばかりを問題にするようになるという。
「Highly Aligned, Loosely Coupled」:制度ではなく対話のチャネルを
ハン・ギヨン氏は、この問題はシリコンバレーでは比較的少ないと言う。境界があいまいな仕事は、R&Rを事前に細分化して決めるのではなく、その境界にいるチーム同士が会ってその都度決めるほうが適切だと考えられているからだ。
同氏は、かつてのネットフリックスのカルチャーデックに登場した「Highly Aligned, Loosely Coupled」という表現を紹介する。リーダー層が常にアラインメントを取っておけば、現場の担当者は衝突を心配しなくてよいという意味だと同氏は説明する。あいまいな仕事が生じたとき、メンバーに「君たちで決めて」と丸投げするのではなく、リーダー同士がその都度会って「今回はそちらがここまで、その先はこちらがやる」と決めるのだ。こうしたミーティングをスタッフミーティングと呼ぶこともあると付け加える。
同氏の核心的な主張は、衝突を防ぐ制度を作ろうとするのではなく、衝突について話し合えるコミュニケーションのチャネルを作るべきだということだ。これが自身の経験したシリコンバレーの働き方の文化であり、韓国は誰が何をすべきかをもっと明確にしたがると比較する。ただし、R&Rが不要だという意味では決してないと一線を画す。ある程度は必要だが、細分化して具体的に決めようとするのは本末転倒な感じがするということだ。
相談3:他チームと序列争いをするチーム長
ニックネーム「イホ」さんの相談は、前の2件とは異なり、メンバーがチーム長に対して抱える悩みだ。新しく入社した会社で、相談者の価値観は「会社がうまくいってこそ自分もうまくいく」だが、チーム長は自分のチームさえ傷つかなければそれでいいと考えているようだ。スタートアップでは例外的な状況が起きるものなのに、チーム長は他チームが自チームの職務について少しでも的外れなことを言うと烈火のごとく怒る。相手のチーム長は謝るのに忙しく、相談者は隣で顔を上げられない。チームを守ってくれるのはいいが、やり方があまりにきつくて意見すらできず、協力が必要な場面でチーム長が一人で序列争いをするため、プロジェクトはいつも遅れる。価値観があまりに合わないチーム長の下で、平和の鳩の役割を続けなければならないのかという質問だ。
ハン・ギヨン氏は、このケースでメンバーにできることは多くないと見る。チーム長に直接話すか、チーム長の上司に話す程度だという。自分がこうした観察をしているなら、その上のマネージャーも周囲から似たような話、つまり協業がうまくいかないという話を聞いている可能性が高いと同氏は推測する。
また同氏は、このチーム長は前の職場で得た経験のせいかもしれないと推し量る。協業して手助けしたのに良い経験がなかったなら、その人が得た教訓は「線をはっきり引かなければならないんだ、手伝っても自分には何も返ってこないんだ」というものかもしれず、それが仕事をうまくこなす方法だと勘違いしているのかもしれないという。
反面教師としての経験
ハン・ギヨン氏は、個人的にもこうした傾向のリーダーに出会ったことがあると話す。そのリーダーは下のメンバーにとってはそれなりに良い人だったが、隣のチームから見ると協業しにくく、非常に感情的で声が大きかった。そのため、皆が萎縮しながら話をしに来る雰囲気だった。しかし結局、そうした態度が協業を難しくし、評判を悪くして、後にはその人の足を引っ張る形に変わっていったというのが同氏の経験だ。
だからこの相談から得るべきものは反面教師だと同氏は言う。協業しにくい人、理由もなくまず拒否から入る人になってしまうと、結局は個人のキャリアにも大きな悪影響を及ぼすということだ。
「最善を尽くし、変わらなければ転職せよ」
ハン・ギヨン氏は、こうした環境に長くいると結局は本人がつらくなると指摘する。そのため、こうした個人的な相談に対して同氏がよく伝えるアドバイスは、最善を尽くしたうえで、変わらないと判断したらもっと良い場所へ転職せよというものだ。長い目で見れば、それが限られた時間をはるかに有意義に過ごす方法だと同氏は言う。
多くの人が勤続年数を気にして、合わない環境に長く留まっていると同氏は見る。「何年勤めれば長く勤めたことになりますか?」「履歴書に悪い記録が残るのではないですか?」といった質問を多く受けるが、同氏はこれを非常に悲しい質問だと表現する。大切なのはメンタルヘルスだという。履歴書に短い職歴が多少あったとしても、毎日の出勤がつらく、働きながら傷が積み重なっているなら、その傷はいつか癒やすために返さなければならない負債であり、タダではないと同氏は語る。31年間働いて14社を渡り歩いてきたことを明かし、合わない環境に長く留まって萎縮し自信を失うよりも、移るほうがはるかに良いと考えていると話す。
リーダーの役割:葛藤をなくすのではなく、健全に扱うこと
締めくくりとしてハン・ギヨン氏は、リーダーの視点で重要なのは葛藤や衝突を無視することではないとまとめる。どうすれば健全な葛藤や衝突が生まれるかを考え、そのために組織内に信頼を築くことが重要だという。問題が起きたときは傍観せず適切に介入して解決し、解決の原則を作って、次に似た問題が起きたときにはリーダーが介入しなくても自動的に解決されるようにすべきだと同氏は語る。組織内に信頼という文化を築くために努力する、勇気あるリーダーになってほしいという言葉で話を締めくくる。
該当する記事はありません。
記事公開
