ダッソー・システムズの新しい取り組みをどう見るか:ソブリンクラウド、MCP対応、NVIDIA連携、OTレイヤー

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概要

「ものづくり太郎ラジオ」の第70回は、パーソナリティのものづくり太郎と、エアリオン株式会社の河村氏がドイツから届けた回である。収録日は2026年9月4日と語られている。2人で話す回の2回目で、前回はダッソー・システムズ(以下ダッソー)のAIエージェント構想を扱った。今回はその続きとして、ダッソーが打ち出したほかのトピックを取り上げる。具体的には、ソブリンクラウドの提供、MCPやエージェント間連携によるオープン化、NVIDIAとの世界モデル連携、そしてOT(制御・現場系)レイヤーへの姿勢である。ものづくり太郎はそれぞれについて、ダッソーの狙いを評価したり疑問を投げたりしている。

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前回の振り返りと登壇者

冒頭でものづくり太郎は前回の内容を振り返った。ダッソーの「親パイロット」と「コパイロット」という仕組みでは、AIエージェントが能動的にCADを描いたりCAE解析をしたりする。親パイロットが複数のコパイロットに指示を出してオーケストレーションし、各コパイロットがCAEやCADの作業を担う。ものづくり太郎はこれを、AnthropicのClaudeのように能動的に検証してくれる世界だと説明した。

河村氏は、エアリオンで製造業に特化したAI開発をしていると自己紹介した。特に注力しているのはFA(ファクトリーオートメーション)の領域である。例として、PLCのラダープログラムをAIで書いたり解析したりする取り組みや、フィジカルAIにおけるVLA・VLMの実装を挙げた。ものづくり太郎は、エアリオンを売上を大きく伸ばしている東大発スタートアップとして紹介している。

ソブリンクラウド「アウトスケール」:TINA=This is not Amazon

河村氏が最初に挙げたトピックは、ダッソー自身がアウトスケール(Outscale)というクラウドを、いわゆるソブリンクラウドとして提供していくという話である。

ものづくり太郎は「ソブリンといっても、フランスの息のかかった企業のクラウドではないか。大丈夫なのか」と問いかけた。河村氏は、対抗相手はAmazonのAWSのようなグローバルクラウドだと説明した。グローバルクラウドはどうしてもベンダー依存になる。それに対して、エンドユーザーが主権を持てるクラウドを提供するという位置づけである。河村氏が面白かった点として紹介したのは、このコンセプトが「TINA(This is not Amazon)」と呼ばれているらしいことだった。

使い方は、製造業のCADなどのデータをダッソーが用意するクラウドに預ける形になる。河村氏によれば、ダッソーは次の2点を担保できると説明していたという。1つは、日本企業の機密データであれば、日本の法律や日本人、日本の技術で管理できること。もう1つは、仮にAWSがサービスを停止してもデータにアクセスできなくなる事態を避けられることである。

ものづくり太郎は、サーバーを日本に置いているかどうかが重要だと指摘した。河村氏は、日本向けは日本、欧州向けは欧州、アメリカ向けはアメリカというように、地域ごとにサーバーを用意しているとダッソーは説明していたと答えている。

米国のクラウドと政府アクセスをめぐるものづくり太郎の見方

ここでものづくり太郎は、ソブリンクラウドが必要とされる背景について自身の見方を語った。ものづくり太郎の説明では、アメリカにはインテリジェンス関連の法律がある。AWSやMicrosoftのAzureのサーバーがアメリカにあり、そこに個人情報が置かれている場合、アメリカ政府は令状なしでそれを見ることができるという。

さらに中国の例も挙げた。中国はこうした危険性を理由にサーバーをアメリカに置かない。また、中国で運用されているMicrosoftのサーバーは、Microsoft自身ではなく中国の国の機関にあたる組織が管理しているという。

こうした事情から、ものづくり太郎は、ガバメントクラウドのような発想は正しいかもしれないと述べた。AWSやAzureにサーバーを握られると危ういので対策は必要であり、ガバメントクラウドとして売るなら勝ち筋もある。ダッソーの打ち出し方を「ちょっとうまい」と評価している。

囲い込みのイメージとは逆の「オープン化」:MCPとエージェント間連携

次に河村氏は、ダッソーには「クローズドで囲い込み」というイメージがあるかもしれないが、今回はオープン化を強く打ち出していたと話した。ものづくり太郎は笑いながら「怪しいな」と合いの手を入れている。

河村氏が挙げた具体例は3つある。1つ目は、MCP(Model Context Protocol)に対応し、AIから接続しやすくする話。2つ目は、エージェント同士が対話しながら、他社のエージェントとも協調して業務を進めていく構想。3つ目は、後述するNVIDIAのOmniverseとの連携である。

MCP対応について、ものづくり太郎は河村氏に「AIが推論しているのは、人との対話とAI同士の対話のどちらが多いか」とクイズを出した。河村氏が「AI同士」と即答すると、ものづくり太郎は正解だと応じた。ものづくり太郎によれば、人間がプロンプトを打って対話するよりも、AI同士がやり取りしている情報量のほうがすでにかなり多くなっているという。

そのうえでものづくり太郎は、「AIエージェントはいつ来るのか」と言っている人や、AIエージェントを初めて聞いたという人は危ういと述べた。こうしたトレンドがすでに走っているので、MCPでAIの窓口をしっかり用意することが重要だという。ダッソーがそこに対応している点を、ものづくり太郎は今回のトピックの1つとして挙げた。

NVIDIAとの連携と「世界モデル」

NVIDIA連携について、ものづくり太郎は、NVIDIAのジェンスン・フアンとダッソーのCEO(名前は出てこないと本人が言っている)が一緒に写真に収まり、「世界モデル」を打ち出していることに触れた。

ものづくり太郎の説明では、NVIDIAのデジタルツインには速度はあるものの、摩擦や重さといった要素はなかなか反映されていない。そこでダッソーのものづくり向けの技術を使い、ダッソー特有の世界モデルを作ろうという話になっているという。ものづくり太郎は、ダッソーを訪れた際にこの話を聞いたと述べている。世界モデルとダッソーのCADを連携させることで、よりリアルなものづくりを体験できるようにする狙いだと、ものづくり太郎は受け止めている。

全体の感想としてものづくり太郎は、ダッソーはAIをしっかり適用できているという印象を述べた。

OTレイヤーをどうするのか:河村氏の推測とものづくり太郎の見立て

最後の話題はOTレイヤーである。河村氏は、ダッソーはOT向けのソリューションをあまり持っておらず、PLCも当然持っていないと指摘した。一方シーメンスは上から下まで全部そろえている。ものづくり太郎も「全部あるよね。PROFINETもあるし」と同意した。

河村氏は現地で、ダッソーがOTをどう考えているのかを尋ねたという。その結果、ダッソーが過去に「アスコンキューブ」(字幕上の表記。字幕では「12年前」と聞こえる時期)というソフトPLC関連の技術を買収していたと知った。そこから河村氏は、徐々にOTレイヤーにも広げていく意向があるのかもしれないと考えたと話している。

これに対してものづくり太郎は、「ぶっちゃけ僕の見立てではないと思う」と否定的な見方を示した。理由は、ダッソーのOTのサービスを聞いたことがないからだという。ハノーバー(の展示会)に行っても展示はあるが、地に足がついているかといえばそうではない。オムロンと協業したりもしているが、比較的クローズドな環境という印象だと述べた。

ただしものづくり太郎は、OTが弱いからこそ補強はしていかなければならないとも語った。その背景として挙げたのがシーメンスである。シーメンスはOTも非常に強く、PLMやCADに加え、現場のBOP(工程)のシミュレーションのようなものも非常に作り込んでいる。CAEについては自分はよく分からないとしつつ、ダッソーのOTへの取り組みはシーメンスへの対抗だろうという見方を示した。

ダッソーの話題はここで締めくくられた。OTへの展開については、可能性を読み取る河村氏と、現時点では実体がないと見るものづくり太郎とで、見立てが分かれたまま終わっている。