床下から湧き続ける灯油、損失800万円 弘前市のRCマンション大家が流出元を突き止められない理由

YouTubeで開く ↗
概要

青森県弘前市で中古RCマンションを所有する不動産投資家のAさんは、2023年2月から床下に溜まった灯油に悩まされている。汲み上げても油を含んだ水は再び溜まり、流出元はいまも分かっていない。調査費用と空室損を合わせた損失は約800万円に達した。Aさんは、個人で対応できる範囲はもう超えていると話す。動画では、発覚の経緯、原因調査、売主への責任追及を断念した理由、行政への協力要請の結果が語られている。

6分で読めます
2:51

購入から5年後、冬の凍結対応で見つかった液体

Aさんがこの中古RCマンションを購入したのは2017年12月で、その後は順調に稼働していた。異変が見つかったのは購入から5年あまりが過ぎた2023年2月である。冬場に共用部で何かが凍結し、その対応のために共用部の床を開けたところ、下に大量の液体が溜まっていた。

管理会社から「とにかく来てください」と呼ばれた時のことを、Aさんは「そんなことがあるわけないだろう」と思ったと振り返る。現場で実物を見せられなければ、話を聞いただけではとても信じられない状況だったという。

1:03

102号室の床下に残る強い臭い

取材班が物件を訪ねると、1階の共用廊下に強い臭いが漂っていた。1階には2部屋あり、臭いは左側の102号室から出ているようだった。この部屋も3年ほど前まではフローリングの床がある普通の住戸だったが、現在は床材が剥がされ、入居者を募集できない状態になっている。

取材者が「灯油なのか、ガソリンスタンドのような臭い」と言うと、Aさんは灯油だと答えた。油分の成分分析を依頼したところ、炭素分布から見てほぼ灯油だろうという結果が出たという。床のコンクリートには穴が開けてあり、その約1m下に油分を含む水が溜まっている。蓋代わりの板を外すと、取材者が思わず声を上げるほど臭いは強かった。

3:28

汲み上げても、時間が経つとまた上がってくる

発覚後は「あるのだから汲み上げるしかない」という判断になり、3月には早々に汲み上げを済ませた。Aさんはこれで終わったと思ったが、時間が経つにつれて油を含んだ水はじわじわと上がってきた。一度汲み上げただけでは何も解決しないことが、ここで分かった。

3:48

敷地の東側に高い濃度、それでも流出元は分からない

原因を探るための掘削調査は、まず建物の外から始めた。しかし外側の調査だけでは原因にたどり着けなかった。そこで「先生」から建物の下は調べたのかと指摘を受け、まだやっていないと気づいたAさんは、RC造の床コンクリートに穴を開けて床下を調べた。

各調査地点の油分の濃度と臭いの強さを敷地図に落とし込むと、敷地の東側の地点で油分も臭いも際立って多いという結果が出た。ただし、それで流出元が特定できたわけではない。原因が分からないまま汲み上げても、時間とともにまた入り込んでくる。Aさんは、まず流出元を止め、そのうえで汲み上げて床下をきれいにし、この部屋を再び賃貸に出したいと考えている。

5:30

売主への責任追及は難しいと判断

灯油が見つかった時点で、売買から5年が経っていた。売主が売却時にこの問題を知っていたかどうかについては、買主であるAさん側に立証責任がある。そのため、売主の責任を問うのは難しいと判断したという。

5:46

調査費300万円と空室損500万円

Aさんによれば、調査費用は約300万円、3年半にわたる空室損は約500万円で、合計の損失は800万円ほどになる。物件は全8部屋だが、トラブルの影響で1階の2部屋は募集できない。実質6部屋の物件として見ると、現在は5部屋に入居者がいる。1階を稼働させられないため、収支はぎりぎりだとAさんは言う。

いまの入居者には灯油の件をすでに伝えている。今のところ臭いなどに関するクレームはなく、退去の直接の理由にもなっていない。

6:35

量から見て、一般の家庭が原因とは考えにくい

流出元についてAさんは、これだけの量が一軒の民家から出ているとは思えないとし、灯油を大量に使う場所から何らかの形で漏れたのではないかと推測している。ただし、どこから漏れているのかは特定できていない。

6:43

唯一の後悔は、内見時に共用部を開けなかったこと

Aさんが後悔しているのは購入時の物件確認だ。紹介を受けて物件を見に来た時、共用部の床まで開けて確認するという発想がなかったという。こうなった以上、これから物件を買う人には同じ点に気をつけてほしいと話す。物件の開けられるところは全部開けてみるという考え方はよく言われるもので、やはり実行した方がいいというのがAさんの教訓である。

7:38

消防本部に1時間15分訴えても、具体的な対応は得られず

流出元も、責任を負うべき相手も特定できないなかで、Aさんは行政の力を借りるしかないと考えた。しかし、これまで積極的な協力は得られていない。取材当日、Aさんは新たにまとめた調査報告書を持って弘前市消防本部を訪れ、改めて協力を求めた。

面談は1時間15分ほど続いた。新しい事実をいくつも伝え、消防側も内容は理解したという。ただ、消防がすぐにできる範囲の対応はまだないというのが、Aさんの受け止めだった。消防の説明では、危険物施設、つまり主に大きなタンクのようなものからの漏れが疑われる場合なら指導に入れる。しかし今回はそれに当たらない、という話だった。

8:57

「相手が分からないから動けない」行政の限界

Aさんは、個人で取り組むのはもう限界だとして、行政の力で対応してほしいと2〜3回繰り返し頼んだ。事情は分かってもらえたと思う一方で、行政は法律の範囲内で公金を使うという制約を受ける。声を上げているのが自分一人である以上、一人の訴えにすぎないと言われても仕方がない状況だとAさんは見ている。被害を訴える人が複数出てくれば、行政も動きやすくなるのではないかと考えている。

消防からは、相手が分からないから動けないと言われた。これに対してAさんは、相手が分かっていればこんなに苦労していないと話す。発覚から3年以上が経ち、自分だけで対処を続けることはもうできないと感じている。

10:01

爆発の危険は否定、それでも解決の見通しは立たない

面談でAさんは、悪意のある人がタバコの火や火のついたライターを床下に投げ入れたら爆発するのかと尋ねた。消防は物理的にそれはないとはっきり否定し、Aさんはその点には安心したという。

流出元はいまも分からず、行政が動く条件も満たせていない。そうしたなかでAさんは、入居者の安全に配慮しながら、解決に一歩でも近づきたいと語っている。