「1日1万歩」は必要か 150万人の歩数データと江戸の武士の日記から考える歩くことの効用
TBS CROSS DIG with Bloomberg歩くことは「最強の健康法」なのか。運動疫学を専門とする東京大学大学院准教授の鎌田真光さんは、医療の翻訳家・市川衛さんとの対談で、歩くことは素晴らしい健康法であり、それは研究からも確かめられると答えた。そのうえで鎌田さんは三つの話題を取り上げた。住む場所による歩数の大きな差、体を動かさない現代の生活と人類の進化との「ミスマッチ」、そして「1日1万歩」という目標の由来である。
「身体活動」には睡眠も家事も含まれる
鎌田さんはまず、歩くことより広い「身体活動」という概念から説明を始めた。身体活動は英語のphysical activityの訳語で、骨格筋を使って体を動かし、エネルギー消費を伴う活動全般を指す。その要素には睡眠も入っている。寝ている間も寝返りなどで骨格筋を使っているため、厳密な定義では睡眠中も身体活動が行われていることになるという。ただ、「体を動かそう」と呼びかける場面では、自分でどうにかできない睡眠はひとまず脇に置く。
残りの要素は、レジャーや健康目的、楽しみとして行うスポーツ・運動、仕事の中での活動、移動、そして洗濯や掃除などの家事である。鎌田さんによれば、スポーツ以外の場面で体を動かしている時間のほうがはるかに長いことは世界的に共通している。
動かないことが関わる病気は多い
体を動かすことの利点について、鎌田さんは研究で蓄積された知見を示した。体を動かさないとリスクが高まることがほぼ確実と考えられているものとして、糖尿病やメタボリックシンドロームなどの代謝性疾患、心血管疾患、腰痛や膝痛などの運動器障害、うつ病や認知症などの精神・神経疾患、乳がんや結腸がんなど一部のがんが挙げられる。ただし鎌田さんは、運動だけでこれらを解決できるという意味ではなく、これだけ多くの病気に体を動かすかどうかが関わっていることが分かっている、という趣旨だと補足した。
鎌田さんは災害時の問題にも触れた。熊本で地震があったことに言及し、避難先での車中泊などで体を動かしにくい状況になると、エコノミークラス症候群のリスクも高まると指摘した。体を動かす機会を持つのが難しい状況だからこそ、動くことが改めて大事になるという。
日本でも世界でも人は動かなくなっている
一方で、人は実際には体を動かさなくなっている。鎌田さんが示したのは、厚生労働省の国民健康・栄養調査で同じ方法によって測られてきた日本人の歩数の推移である。2000年ごろから下がってきた傾向が見られるという。世界でも、十分に体を動かしている人の割合は減っている。鎌田さんは、世界的に運動不足が加速していると述べた。
150万人の歩数データが示した地域差
一つ目の話題は、鎌田さんの研究チームが最近発表した論文の内容である。ジオテクノロジーズ社との共同研究で、同社のスマートフォンアプリを利用する約150万人の歩数データを分析した。市区町村ごとに住民の平均歩数を出し、地図上に濃淡で示すと、住む場所によって歩数に大きな差があることが見えてきた。ユーザーが100人に満たない自治体は分析から除外している。
大都市圏、特に東京23区から横浜にかけては歩数が多かった。東京23区の平均は約7400歩である。全国平均について鎌田さんは、正確な数字はすぐには出てこないと断ったうえで、だいたい6000歩くらいだと述べた。一方、地方では平均歩数が低い傾向がある。宮崎県出身の市川さんが地元の宮崎市について尋ねると、県庁所在地で県内では都市部にあたるにもかかわらず、平均は5000歩ほどだった。同じような年代で比べても、宮崎市の約5000歩に対して東京23区は約7500歩で、2500歩ほどの差がある。
歩きやすい街ほど歩数が多い
差が生まれる理由を探るため、研究チームは「地域で歩いて生活しやすいか」を示すウォーカビリティ指標と歩数の関係を調べた。この指標は、人口密度の高さや、歩いて行ける範囲にある施設の種類の数などで構成されている。人口が密集していればコンビニや病院など生活に必要な施設が集まり、歩いて行けるようになる。鎌田さんによれば、今回の指標には入っていないものの、人口密度が高い地域では公共交通も使いやすくなる。ドア・ツー・ドアの自家用車移動が減り、バスや鉄道を使う前後に歩く機会が生まれやすいという。
分析の結果、ウォーカビリティが高い自治体ほど平均歩数も高いという明確な相関が見られた。ただし鎌田さんは、都会の人ほどよく歩くことは自分たちの研究も含めて以前から分かっていたことで、今回改めて確認できた点だと位置づけた。
初めて分かったのは差の「大きさ」
今回の研究で初めて分かったこととして鎌田さんが強調したのは、差の大きさである。最も低かったのは宮崎県小林市で、平均は約4000歩だった。最も高かった東京都豊島区は7750歩で、その差は3500歩以上、2倍近くになる。まとめのスライドでは、最大で3700歩余りの差があったと示された。
市川さんが「病気のリスクも住む場所でこれだけ変わってしまうのか」と尋ねると、鎌田さんは慎重に答えた。寿命や病気の人の割合がこの歩数の分布どおりになるわけではない。健康にはさまざまな要素が関わるからである。それでも、住む場所によって活動量が変わり、それが病気のリスクに影響することは間違いない。だからこそ、差がこれほど大きかったことは重要な知見だと考えているという。
同じウォーカビリティの自治体どうしでも、歩数にはかなりのばらつきがあった。例として挙がったのは高知県のある自治体で、ウォーカビリティ指数は非常に低いのに、平均歩数は約6000歩と全国平均並みだった。市川さんは、こうした地域がなぜ歩けているのかを調べれば、歩きにくい地域でも動けるようになる方法が分かるかもしれないと述べた。鎌田さんも、傾向から外れて良い結果を示す「ポジティブデビアンス」と呼ばれる地域に焦点を当てて調べる必要があると話した。
歩かない生活は進化とのミスマッチか
二つ目の話題は「進化とのミスマッチ」である。人類の祖先は、狩猟採集のように体を動かして食べ物を手に入れる生活を非常に長く続けてきた。その間に今の私たちの体の仕組みが形づくられ、適応してきた。ところが産業革命などを経て生活は急速に変わり、豊かで便利になった代わりに、体を動かさなくてもよい社会になった。体の仕組みそのものはそれほど急には変わらないため、そこにミスマッチが生じているのではないか。こうした考え方が、ハーバード大学の進化生物学者ダニエル・リーバーマン教授らによって「エボリューショナリー・ミスマッチ」として提唱されている。
鎌田さんは、体を動かさないことがこれほど多くの疾患や障害のリスクとつながっている理由を考えるうえで、この考え方が一つのヒントになると紹介した。
祖先はどれくらい歩いていたのか
では、祖先はどれくらい動いていたのか。鎌田さんによれば、データがないためよく分かっていない。手がかりの一つが、現在も狩猟採集生活を送るタンザニアのハッザの人々を対象にした研究である。GPSで移動距離を測ったところ、1日に9〜15キロほど移動していた。歩数にすると男性で約1万8000歩、女性でも1万歩以上を毎日歩いていたという。
一方、農耕が始まり都市が形成されていく中で、いつ、どの程度動かなくなっていったのかについては、データがほとんどない。鎌田さんのチームはこの空白を埋めようとしている。以前の研究では、この50年ほどで仕事中の活動強度が1割減ったことを示した。しかしそれでは50年分しかさかのぼれていない。そこで次に挑んだのが江戸時代である。
江戸の武士の日記から歩数を推定する
この研究はまだ途中で、今回の話は経過報告だと鎌田さんは断った。使った資料は二つある。一つは、各藩から江戸に出てきた勤番武士の日記である。勤務記録を兼ねて、いつどこで何をしたかを詳細に記し、国元に送っていた人がいた。こうした日記は当時の生活を知る貴重な資料として活用されている。もう一つは、江戸の地図を現代の東京に重ね合わせた「江戸復元図」である。精度についてさまざまな検証がなされており、信頼できそうだという。
研究室の大学院生の大田さんが、江戸時代の道をデータ化した。そのうえで日記の記述から通ったルートを線で示し、1日の平均移動距離を推定した。移動距離と手段が分かれば、当時の人々の平均身長などから歩幅に幅を持たせて推定し、歩数を出せる。その結果、外出して徒歩で移動した日に限れば、9000〜1万2000歩ほど歩いていた可能性があるという数字が出た。
市川さんは、狩猟採集時代の約1万8000歩、自動車のない江戸の都市での1万1000歩程度、そして現代の約6000歩と、時代とともに歩数が減っている様子が描き出されていると整理した。鎌田さんはこれに留保をつけた。対象は江戸時代の武士という比較的高い社会階級であり、しかも1人分のデータにすぎない。現段階は分析手法を開発した段階だという。今後最も知りたいのは、人口の多くを占めていた農業に携わる人々がどれくらい動いていたかだが、これはさらに難しい課題になると鎌田さんは見ている。こうした過程が分かれば、今の生活様式を当たり前と思っている私たちの感覚を相対化し、新しい生活のヒントにつながるかもしれないと話した。
「1万歩」は日本の販促キャンペーンから広まった
三つ目の話題は「1日1万歩」である。ウェアラブル端末やスマートフォンのアプリでは、目標歩数の初期設定が1万歩になっていることが多い。しかし鎌田さんによれば、この数字はもともと科学的根拠に基づいて推奨されたものではない。日本の歩数計メーカーが普及キャンペーンの一環として「歩け歩け運動」のような形で売り出した際に掲げた目標で、「万歩計」は商品名だという。それが世界に広まり、海外の研究者もこの日本発の経緯をよく知っている。鎌田さんは、山佐の歩数計は精度が高いことで研究者の間でも知られているとも紹介した。
歩数と死亡リスクの関係は緩やかなカーブ
何歩歩けば死亡リスクや寿命にどう影響するのかは、長く分かっていなかった。鎌田さんはハーバード大学にいた時期に、所属研究室で歩数と死亡リスクの関係を詳しく明らかにする研究に取り組んだ。対象は全米の高齢女性で、さまざまな活動量と疾患、障害、死亡リスクの関係を調べた大規模研究である。サンプルは鎌田さんの記憶では1万5000人以上だった。
鎌田さんがまず大事な点として挙げたのは、歩数と死亡リスクの関係が緩やかなカーブを描くことである。ある歩数でがくんとリスクが下がるわけではない。だから「何歩歩かないと意味がない」ということはない。この研究では、約7500歩でリスクがほぼ頭打ちになり、それ以上はあまり変わらない様子だった。そもそもそれ以上歩いている人もあまり多くなく、これはどの調査でも同じだという。つまり1万歩に届かなくてもよさそうだということが分かった。
その後、他の国や性別、年代を対象にした研究が出てきたが、カーブの形はおおむね似ていた。対象者によっては、特に若い年代で1万歩くらいまでリスクが下がり続けるカーブも見られる。高齢者ではもう少し低い歩数で頭打ちになるという結果が、現時点では出ているという。
市川さんは、地域差の分析で最も歩数が多かった豊島区の平均がちょうど7500歩前後だったことを思い出し、豊島区の人は健康なのかと尋ねた。鎌田さんは、自治体ごとの健康には歩数以外の要素も入るため、歩数の分布がそのまま健康の分布になるわけではないと繰り返した。そのうえで、推奨される7500歩や8000歩が平均値で見て相当上の話になる地域がある、という点が大事だと述べた。
わずかな量でも効果はある
結局どれくらい歩けばよいのか。鎌田さんの答えは「わずかな量でも効果はある」である。まずは1分1秒でもいいので歩いてみる、立ってみる。それが一番伝えたいメッセージだという。先ほどのグラフでも、ほとんど活動していない人と、それより少しだけ動いている人との差が非常に大きい。
歩く量を増やせない人には、座りすぎを中断する「セデンタリー・ブレイク」を勧めた。最近の厚生労働省のガイドラインにも座りすぎの中断が盛り込まれている。仕事中に立ち上がる、高さを変えられる昇降デスクを使うといった形で、座っている時間を減らすことにつながる。収録したTBSの会議室には社員の運動不足対策として運動器具が置かれており、それを使ってもよいかという市川さんの問いに、鎌田さんは肯定的に答えた。特に暑い夏の日中など屋外を歩きにくい場合は、屋内で歩くことにもさまざまなメリットがある。生活に合わせて取り入れやすいものを選べばよいという。市川さんが、暑さの中で外を歩くのも大変な被災地の避難所でもこうした器具を使う意義があるかと尋ねると、鎌田さんは、それだけを推奨するわけではないが、さまざまな方法を組み合わせて取り入れてほしいと答えた。
厚労省の目安は成人8000歩、高齢者6000歩
目安としては、厚生労働省が2023年に改定版を出した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド」がある。その冒頭には全体の方向性として、個人差を踏まえて強度や量を調整し、可能なものから取り組むこと、今より少しでも多く体を動かすことが掲げられている。鎌田さんによれば、これは近年の大きな変化である。WHOのガイドラインを含め、鎌田さんらの研究も踏まえて、「ここまでやらないとだめ」ではなく、少しでも動くことに大きな意味がありそうだと分かってきた。また、スパルタ式ではなくハードルを下げて優しく伝えるほうが多くの人の行動変容を促すという知見もあり、こうしたメッセージが強調されるようになったという。
そのうえでの目安は、高齢者が1日約6000歩、成人が1日約8000歩である。市川さんは、日本の平均が約6000歩であることと照らし合わせ、少し安心したと話した。
歩けば歩くほどよいわけではない
では1日2万歩、3万歩と歩けばさらによいのか。鎌田さんによれば、2万歩歩くような人も、歩数の少ない人と比べれば死亡リスクは低く、寿命は長そうだと分かっている。したがって、すぐにやめて1万歩以下にしなければならないということはない。ただし、活動量が多いほどけがのリスクは上がり、膝などへの負担も増える。歩き方や履いているものには特に注意が必要だという。仕事でどうしても長く歩かなければならない人には、けがや腰・膝への負担のケアを勧めた。
誰にとってもハードルが低いという意味での「最強」
最後に市川さんは、冒頭の問いに改めて答えを求めた。鎌田さんは、歩くことはさまざまな運動の中で最も手軽にできるものだと述べた。実際、人気のスポーツ・運動の種目では、サッカーでもバスケットボールでも野球でもなく、ウォーキング・散歩がずっとぶっちぎりの1位だという。歩けない人にとっても、車いすで移動することは非常に勧められる運動であり、ベッドの中で手を動かせるなら手を動かすことでもよい。鎌田さんは、それぞれの人にとって最もハードルが低く取り入れやすい運動という意味でなら、それが「最強」の健康法だと言えると結論づけた。そして、かなり多くの人にとって歩くことがその選択肢に入るだろうと述べた。
1on1Health。今日のテーマは、歩くことは最強の健康法なのか。ゲストは運動疫学が専門の東京大学准教授、鎌田真光さんです。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
いきなりですけれども、鎌田さん、専門家の目から見て、歩くことは最強の健康法なんですか?
どうなんでしょうか。素晴らしい健康法だということは間違いないと、研究からも確かめられるとは思います。
ぜひその辺、今日伺っていきたいですが。
まず歩くことという前に、ちょっと大きなところから考えてみますと、身体活動とはというふうに書いてあるんですけども、これ、体を動かすこと全般のことを身体活動と言って、フィジカルアクティビティという英語の和訳なんですけども、これは骨格筋を用いて体を動かす活動全般を指すもので、エネルギー消費を伴うものを身体活動というふうに定義しているんですけれども。
下の5要素っていうところで、睡眠っていうのが入ってるのがすごい意外だったんですけど、これ、睡眠も活動なんですか?
そうなんです。これ、間違いじゃなくてですね、やっぱり寝てる間にも私たち、骨格筋で寝返りを打ったりっていうことで体を動かすと。なので、厳密な定義で言えば、この睡眠中も身体活動が行われてると。ただ、体を動かすことが大事だから動かそうねって言った時には、睡眠はちょっと一旦置いておいて。
自分でどうにかできないですもんね。
そうですね。他の4つ、余暇、レジャーとして、あるいは健康目的、楽しむために行うスポーツ、運動とか、そして仕事の中でも私たち体を動かすということですとか、移動の中で体を動かし、そして家事、例えば洗濯したり掃除したり、そうした中で体を動かすこと。これら全てが身体活動というふうになります。
確かに。スポーツ以外の仕事でも移動でも家事でも歩きますもんね。
そうですね。実際には、やはりスポーツ以外の場面で体を動かすという方が、時間としては非常に長いということが、これは世界的にも共通しています。
なるほどね。これをご覧になってるビジネスパーソンの皆さん、私もそうなんですけれども、やっぱりそろそろ病気とか気になってくるところではあるんですけど、どうやったら歩くことを通じて、もしくは他のことを通じて、そういう病気を予防できるのかなってすごい興味があるんですが。
そうですね。続いてのスライドも見ていただきますと、こちら、体を動かすことでそもそも何がいいんだろうっていうところを、いろんな研究で、本当にたくさんのエビデンス、知見が蓄積していまして、上からざっと代表的なものを並べてあるんですけれども、例えば糖尿病、メタボリックシンドロームなどの代謝性疾患、そして心血管疾患、そして腰痛や膝痛などの運動器障害。それから、うつ病、認知症などの精神神経疾患。そして、がんの中でも、例えば乳がんですとか結腸がんなどの一部のがん。これらについては、例えば体を動かさないとリスクが高まってしまうということは確実だろうというふうに考えられているものが、これだけ非常に多くのものに関係してるということが分かっています。
これ、僕らがいつも番組の中でも防ぎたいよねって言ってる、命に関わる代表的な病気もそうだし、それから腰の痛みとか膝の痛みとかうつ病みたいな、お悩みと言いますか、つらい症状っていうのは、全部動けば良くなるってことなんですね。
これだけで、運動だけで解決できるという意味ではないんですけれども、これだけ多くのものに、体を動かさない、そして動かすということが関わってるということが分かっているというところですね。現在、例えば熊本での地震があったりといった中で、非常に多くの災害が日本では起こっていますけども、そうした時にも、やっぱり避難先で、例えば車中泊ですとか、いろんな中で体を動かしにくい状況というのが起こってくる中で、避難所の中でエコノミークラス症候群といったようなことのリスクも高まってるという中では、そうした大きな災害が起こった時にも、動かすような機会というのが非常に困難な状況ではあるんですけれども、やはり改めて大事になってくるというのも、重要なメッセージになるかなというふうに思っています。
それなのにというのが、今日の番組のテーマにもなるんですけれども。
ところがというところで、実際には世界的には体を動かさなくなっている。世界的に運動不足が加速しているということが分かっています。
これ、ごめんなさい、これ日本人のデータですね。
そうですね。これは日本人のデータを示してるものなんですけども、この中でも赤色のところを見ていただくと、赤色は、これは国民健康・栄養調査という厚生労働省の調査で、日本人の歩数がどのくらいあるのかなというのを、ずっと同じ方法で調査をされたものでして、これを見てみると、2000年くらいから1000歩ほど下がってきたよねといったようなことなどが見られていまして。
これだけではなくて、世界でもですね、動かす総量としての、これ、他の黒色のデータは、スポーツしてますかとか運動してますかっていうのを聞いた時に、はいと答えたような人の割合の推移というのが書いてあるんですけれども、赤色、その体を動かすのを見たようなもので見てみますと、世界的にも、どんどんどうも十分動いてるよっていう人の割合が減ってるということが分かってきています。
なるほど。歩くってことが様々なメリットがあるのに、実際は歩かなくなっている。今日は、社会でも、それから私たちの生活でも、どうしていったらいいのかというのを考えていきたいんですけれども、3項目がこちらになります。歩行の地域格差とは、歩かないは進化とのミスマッチ、1日1万歩は神話だった。これ、3番、かなり僕、気になるところなんですけど、1万歩、神話なんですかね。
どうなんでしょうか。後で。
後ほど伺っていきますけれど、まず歩行の地域間格差って、これどういうことですか?
そうですね。こちら、スライドで示していただいてるのが、私たちがちょうど最近、出版をした論文の内容になって、右下に笑顔の写真があるんですけども。
素敵な笑顔ですね。
論文の中で、こちらは日本の150万人分の、スマートフォンを利用されている方の歩数のデータを、ジオテクノロジーズ社という企業の方々と一緒に共同研究させていただいて、そちらのアプリの利用者の方々の歩数を見たところ、どうも非常に大きな地域間格差があるということが見えてきたというものになります。
そこに住む自治体の人たちの平均的な歩数を見ると、めっちゃ多いところとすっごい少ないところが、住んでいる場所で分かれているっていうのが分かってきた。
そうですね。こちら、日本地図は、緑色の濃い自治体、市区町村ほど平均の歩数が高くて、薄い緑色のところが平均の歩数が低いというものを示していまして。あと、100人以上のユーザーの方がいらっしゃらなかった自治体は、今回、分析からは除外をしています。
線になってるところですね。分析から除外されていると。実際、データを見せていただいていいですか?
そうですね。実際、データを見てみますと、拡大したものがこちらになるんですけれども、これが全体像ですけれども。まず特徴としては、緑色が東京の都市ですとか、それから大阪だったりっていうのも、やっぱり大都市圏で歩数が高いと。
やっぱり東京23区から横浜あたりって、もう本当に見事に緑。
そうですね。平均値で見てみると、例えば東京23区が7400歩、平均の歩数があったりと。
大体これ、全国平均、何歩ぐらいです?
全国の平均が、正確な数字、今すぐ出てこないんですけど、大体例えば6000歩くらいとか、そのぐらいで。平均だと6000歩ぐらいになります。
じゃあ、それより1000歩以上多く。
高いというのが、この東京の都市圏になり、一方で、いわゆる地方になると薄い緑色になっていて、歩数の平均値が低いというような傾向が分かります。例えば私、宮崎県の出なんですけれども、その宮崎市で見てみますと、県庁所在地なので、宮崎県の中では非常に都市部に当たるところですが、歩数の平均値は5000歩ほどと。
平均より少ないとなる。
そうですね。歳に限定したデータですので、同じような年代で比べてみても、平均値で宮崎市が5000歩、それに対して東京の23区が7500歩ほどといったところですので。
2500歩も差があると。これ、なんでなんですか?
これは、まず私たちが、他にもどんな要因と関係してるのかというのを、地域で歩いて生活がしやすいかという観点の指標との相関を見ているんですけども、そうしたところ、非常にはっきりした相関が見られていまして。こちらが、右に、これは1つ1つの円が自治体、市町村を表していまして。
福岡県福岡市とかありますね。
右に行けば行くほど、その地域、自治体で歩いて生活がしやすいという指標が高いという。
例えば、どういうところが歩いて生活しやすいんですか?
例えば、まずこの辺りはもう全部、東京の大都市圏がありまして、この指標は、例えば人口密度の高さ、それから施設の種類、歩いていける範囲内の施設の種類の数が多い。
人口密度が高ければ、そこにやっぱり商店、例えばコンビニとか病院とか、そういう生活するために必要な施設が集中するから、歩いてそこに行けるっていうことですね。
そうですね。それから人口密度が高いと、この指標には今回は入っていませんけれども、例えば公共交通が非常に利用しやすくなって、そうするとドア・ツー・ドアで自家用車で移動する機会が減りますので、バス、鉄道を利用する前後で歩く機会が生まれるといったようなことが起こりやすい地域が、右側になるほどプロットされていて、上に行けば行くほど平均の歩数が高かったということを示して。
なるほど。だから歩きやすい場所ほど、やっぱり歩数は高いぞということを示している。
ということが分かっています。これがまず1つ、今回の研究で、これまでにも分かっていたんですけれども、改めて確認できたことですね。さらにもう1つ、今の研究で初めて分かったこととしては、都会の方がよく歩くというようなことは、私たちの研究も含めて以前から分かっていましたし、皆さんもそんなこと大体なんとなく感覚で分かるよという方も多いかもしれませんが、強烈だったのが差の大きさですね。
この上下の差ですね。
上下の差ですね。見ますと、例えば今回の分析では、たまたま宮崎県の小林市というところが4000歩ほどの平均値。一番高かったのがこの辺りになるんですけれども、大体例えば豊島区ですね。東京都の豊島区で。
7000、これ確か600近くですよね。
7750歩ということで、この差が3500歩以上あるということで、もう2倍近くの格差があると。平均値ですので。
だから、さっきいろんな病気が、動く、歩くことによってリスクが変わってくるっていうのを見ましたけれども、そのリスクがやっぱりこのぐらい住んでる場所で変わっちゃうってことなんですね。
そうですね。実際には、例えば寿命ですとか、病気の方々の割合みたいなものは、この通りの分布にはならなくて、それは当然、私たちの研究では。健康というのはいろんな要素が関わってきますので、これだけでは変わるものではないんですけれども、まずそもそもの、どこに住んでるかということでこうした活動量が変わって、そうした病気のリスクが変わってくるということは、もう間違いありませんので、こうしたところは、その差がこれだけ大きかったっていうことは、非常に大きな知見の1つだったかなというふうに考えてます。
これ、同じウォーカビリティ指標、つまり歩きやすさでも、随分違うんですね、数字が。
そうなんですね。例えば、この左側の青色のグループと、例えば赤色のグループなどで、ウォーカビリティが同じぐらいのグループって、5つくらいですかね、色で分けているんですけども、見ていただくと、例えばウォーカビリティが低いよっていう地域でも、これだけ縦の差がある。
今、指させていただいてるこの高知県の、こちらはウォーカビリティ指数はすごい低いのに6000歩だから、平均ぐらい歩けてるわけですよね。ここ、なんで歩いてるんだろうっていうのを調べると、じゃあ歩きにくい都市でもこうやったらより動けるようになるよってことが分かるかもしれませんね。
そうですね。なので私たちは、次にこうした、どんな特徴があるのかということも、改めて、いわゆる逸脱みたいな、ポジティブデビアンスって言われてるような地域にも焦点を当てて見ていく必要もあるかなというふうにも思っております。
ありがとうございます。そこから分かってきた、改めてなんですけれども、自治体の平均歩数は都市部ほど平均値が高い。そして最大3700歩余りの差が出ていたということで、今回初めてデータでしっかりと確かめられたということですよね。ありがとうございます。
ということで、そんな中で次のテーマですけれども、歩かないは進化とのミスマッチということで、結構刺激的なことです。これ、何ですか?
どうも私たちの、いろんな今、現代の人々がかかっている病気とか障害って、進化とのミスマッチが起こってるんじゃないっていうことが言われてることになりまして、どういうことかと言いますと、まずそもそも私たちの祖先の長い時間、ちょっと時計の針を巻き戻して考えてみますと、私たちの祖先って狩猟採集などの、体を動かしてなんとか食べ物を手に入れてたっていう時代が非常に長かったんですね。例えば2万年前、狩猟採集の生活様式だった時代っていうのは、本当に長い時間あって、その間に今の私たちの体のいわゆるシステムっていうのが作られていて。
適応してきたと。
そうしたものを持ったまま、急に例えば革命だったり、私たちの生活のあり方というのが非常に急速に変わってきて、という中で、どんどん生活は豊かに、そして便利になっているんですけども、その代償として体を動かさなくていいという社会になってきたということで、いや、でも私たちの体ってそんなに急速に変わってないよねと、仕組み自体ですね。という中で、そのミスマッチが起こってるんじゃないっていうことが、進化生物学の、例えばハーバード大学のダニエル・リーバーマン教授らによって、エボリューショナリー・ミスマッチっていうような形で提唱されていて。
やっぱり体を動かさないことと、これだけたくさんの疾病ですとか障害のリスクとつながってるっていうことの1つの考え方と。こうしたところにヒントというか、なぜそんなにもたくさんのものと関係してるのかというところの、そもそもの原因というのがあるんじゃないかというようなところが言われたりしています。
なるほど。産業革命以降みたいな、例えば自動車が出てきたよみたいな話とかって、もうそれこそ数百年っていうレベルですよね。我々の先輩方がそれを開発してきたわけですけれども、生活レベル、生活様式が変わったと。でも私たちの体、数百万年、数千万年かけて歩くことに最適化されているのに、急にそれと全然違う生活をしてるようになったことが、いろんな病気につながってるんじゃないかということですね。
そうです。そうですね。
それで、かなり面白い研究を実は先生のところがやってらっしゃるというのを教えていただいたんです。これ、どういうことですか?
例えば、じゃあどのくらい私たちの祖先って動いてたんだろうっていうことって、やっぱりあんまり分かってなくて、というのもやっぱりデータがないという中で、狩猟採集の生活様式を今でも、現代でも行っているのは、例えばタンザニアのハッザ族っていうような方々の移動距離というのを、GPSを使って調査したようなものなんかを見てみると、どうも1日に例えば9キロから15キロとか、そのくらい。歩数で言うと、例えば男性が1万8000歩くらいとか、女性でも1万歩以上くらい、1日あたり歩いていたっていうような研究などがあって。
1万8000歩、歩いてないですね。
今でもそのぐらい歩いてるっていう方はいらっしゃるんですけども、でも平均でそのぐらいと。
毎日毎日歩いてるってことです。
というような中で、例えば狩猟採集っていう生活様式だと、そのぐらいやっぱり活動的だったということは、そうした研究で分かったんですけども、じゃあ、いつの時代にどのくらいの活動量になってきて、例えば農耕も始まって、それから都市というものが形成されてきてっていうような中で、どのタイミングでどのくらい動かなくなってきたのかなということについては、データがほとんどないという中で、私たち、いろんな時計の針を巻き戻すことにチャレンジを始めていまして。
その1つで、例えば職業上、働く中で、今も私は座ってお話しして仕事させていただいてますけれども、まずそもそも仕事の中で、この50年くらいで1割、仕事の中での活動強度が減ってきたっていうのは、私たちの前の研究で示せたんですけども、とはいえまだ50年くらいしか時計の針を巻き戻せてないので、これ、もうちょっと巻き戻したいなと思って取り組んでみたのが、次の、江戸時代にチャレンジしてみたという研究でして。
気になる。江戸時代の武士の身体活動量ってどのくらいだったのか。
そうなんですよ。これ、まだ研究の途中なので、経過の報告というようなものなんですけれども、そもそもどうやって研究をしたのかというところなんですけども、私たちが使ったのが日記と、あとは地理情報システムというもので。江戸時代の武士の中で、勤番武士といったような、例えばいろんな各藩から江戸に出てきた人たちがいらっしゃって、そうした方々の中には勤務記録も兼ねて、詳細な、今日どこどこに行って何々をしたっていう日記を書いて、さらにはそれを国元に送って、例えば家族に知らせるとか、そうした目的、意図もあったのかもしれないですけども、非常に詳細に日記をつけていらっしゃった方々がいらっしゃって、それがすごく貴重な資料として、当時の生活の営みを知る資料として活用されてるものがある。
もう1つは、江戸時代の江戸、大都市ですけれどもの地図が残っていて、現代の東京と重ね合わせた地図っていうものが、江戸復元図というものが、これは精度が、様々な検証などもなされていて、良さそうだっていうものがあるので、この地理情報と、どこどこに行ったっていう日記の情報を組み合わせることで、このルートが描けると。
また写真が出てるの、これ、大田さんっていう私たちの研究室の大学院生なんですけれども、彼、本当に頑張って、大変な作業だったんですけれども、江戸時代の道をデータ化して、さらに記述からどこを通ったというルートを線で示すことで、1日の平均の移動距離というのを直線距離で推定することができて。そうすると、あとは身体活動量っていうのは、移動距離と手段が分かれば、例えば歩数が、歩幅が、当時の江戸時代の人々の大体の平均の身長とかから、歩幅をある程度の幅を持たせて推定すると、例えばもしかしたら9000歩から1万2000歩くらい。これ、外出して、しかも徒歩で移動したっていうふうに限れば、このぐらい歩いていたかもしれないという数字が出せたというものになります。
面白いですね。だから狩猟採集の時代からすると、1万8000歩っていうのが、江戸、都市になって、でも自動車はないぞっていう時は、1万1000歩とかぐらいになって、そして現在って読んでみると6000歩。時代とともに減っているってことが描き出せているってことなんですね。
そう。これ、あくまでまだ江戸時代の、しかも武士っていう、社会階級としてはかなり高めの、しかも1人のデータなので、まだ私たちは分析手法を開発したという段階なんですけれども、これから、例えばやっぱり私たち、一番気になるのは、人口としても多かった、農業に携わっていた方々はどのくらい動いていたんだろうかと。これはまたもっと難しい課題があると思うんですけども、こうしたところが徐々に分かっていけば、どんな過程で今の私たちの現状の生活様式になっていったのかということを知ることができて。言ってみたら、今、私たちこれが当たり前だと思ってますけれども、そうじゃないというようなことがもっと分かっていけば、新しい私たちの生活のヒントだったり、私たちの当たり前を相対化することにつながるかなというふうには考えています。
だから結構、歩くって非常に我々にとって当たり前っていうか、基本的な行動なんですけど、でもやっぱり時代とか進化とかの影響を受けて、どんどん変わっていってるっていうのを、やっぱり普段、意識できない。自分たちはこの世界で生きてるからですね。やっぱり時代を変えるとか、その別の生活様式で生きている人を調べてみるっていうところで、逆にそれを鏡にして明らかにしていくってことをやってらっしゃるんだなと。
そうですね。
ということが見えてきて、だからこそやっぱりもっと歩かなきゃなって思ったんですけど、じゃあやっぱり気になるのは、一体どのくらい歩けばいいんだよっていうところで、よく1万歩歩きなさいって僕、子供の頃から言われてたんですけど。
本当ですか?
なかなか1万歩歩けないなって思ってたんですけど、気になるのが、神話だったっていうのが書いてあって、それ、ちょっと気になるんですけど、教えていただいてもいいですか?
そうですね。例えば、今だとウェアラブルデバイスって言われるようなものですとか、あるいはスマートフォンのアプリで、デフォルト、初めの設定で、目標の歩数として1万歩って設定されること、多いんです。
私もスマートウォッチ使ってるんですけど、1万歩超えるとめっちゃ褒めてくる。
これ、元々は何か科学的なエビデンスがあって、その1万歩っていうのが推奨されていたっていうわけじゃないんですよ。
ない。
元は、日本の歩数計を販売、開発していたメーカーが、普及のキャンペーンの一環として、歩け歩け運動みたいな形で、万歩計というものが売り出される中で。
万歩計って商品名なんですか?
商品名ですね。そうなんです。その中で、1万歩っていうのを目標にして歩きましょうという形でプロモーションされたのが、今や世界にも。
日本発、世界ってことですか? マジですか。すごいですね。
これ、なんで1万歩っていうのがデフォルトなんだっていうのは、海外の研究者もよく知っていて、これはジャパン発のこんなことがあってなんだ。
そうなんですか。面白い。
これはヤマサさんっていう会社の歩数計は、世界の研究者の中でも非常に精度が高いんだっていうことは、研究者の中でもよく知られてるんですけども、そうしたキャンペーンの経緯などもあり、世界中で1万歩というのが推奨されるに至ったんですけども、そもそも分かってなかったのが、何歩ぐらい歩いたら、例えば死亡のリスク、寿命への影響ってどうなんだろうって、分かっていなかったので。そこで、私がちょうどアメリカのハーバード大学にいた時に、私たちの研究室で取り組んだのが、歩数と死亡のリスクの関係を、しっかり詳細に明らかにしようという研究になります。
だから右の軸が、歩数が増えていくわけですね。上が死亡リスク。いわば寿命の短さっていうか、死にやすさっていうね。
そうですね。右に行けば行くほど歩数が多く、これは下に行けば行くほど、いわゆる寿命が長い、死亡のリスクが低いというものになってまして、見ていただくと、まず大事なことが、緩やかなカーブになっているということで、どこかで例えばガクンとリスクが下がるなんてことはないんですね。なので、歩かないと絶対だめとか、歩かないと意味がないってことはないっていうのが、一歩だけでも、非常に大事なメッセージになります。
私なんていうのは、すごい即物的な人間だから、あれを見ると明らかに6000歩から7000歩ぐらいが一番低くて、そこからもうなだらかになっちゃってるなっていうふうに見えちゃうんですけど、その見方は間違い?
まさにその通りです。これは私たちが全米の高齢の女性を対象にした、非常に大規模な研究で、様々な活動量と、様々な疾患、障害、それから死亡のリスクを明らかにした研究なんですけれども。なので、今回のこのデータに関しては高齢の女性、特にアメリカに限ったデータでありますが、これが初めて歩数と死亡リスクを詳細に明らかにした研究でして。これだけ大規模な、サンプルが多分1万5000人以上はいたと思うんですけれども、それで見ると、この時は大体7500歩くらいで、頭打ちみたいな、ここくらいが一番死亡のリスクが低くて、そこから先はあまり変わらなそうと。それ以上歩いてる方もそんなに多くないんですね。これ、どこで調べても一緒なんですけども。という中では、あれ、1万歩までいかなくても良さそうだねっていうことが分かったり、というようなことが出ています。
この研究以降、他の国、それから性別、年代での歩数と死亡や様々な病気との関係を調べる研究というのが出てきて、その中でも大体似たようなカーブの形状は変わらず。ただ、もうちょっと年齢とかによって、対象者によっては1万歩くらいまではぐっとリスクが下がってくるよというようなカーブが、特に若い年代では見られていて。高齢の方だと、似た、このぐらいのもうちょっと低めの歩数で頭打ちになるかなみたいなのが、今のところ出ている結果になってますね。
でもね、これはあくまでアメリカの高齢女性だってことを理解しつつも、さっき見せていただいた結果で、そういえば1位の自治体の豊島区、1位っていうか、歩数で最高ランクの自治体の豊島区で大体7500歩ぐらいだったなっていうのは思い出されて、豊島区の方は健康なのかなとか思っちゃいました、今。
そうなんです。自治体ごとの健康で言うと、やっぱり繰り返しになりますけども、歩数とか体を動かすことだけではなくて、様々な要素が入ってくるので、ダイレクトには、そのまま歩数の分布が健康の分布ということにはならないんですけども。大事なのは、住んでる地域だけで、この例えば推奨の基準が7500歩とか8000歩って言われ、相当上の話だなっていう地域があるっていうことは、やっぱり大事なポイントになるかなと思いますね。
なるほど。ということで、先生にぜひ聞きたいんですけれども、結局どのくらい歩けば健康に効果があるのか、教えていただきたい。
はい。こちらです。わずかな量でも効果はあるということで、まずは1分1秒でもいいので歩いてみましょう、立ってみましょうというのが、一番お伝えしたいメッセージになりますね。
そうですよね。だから1万歩を目指そうっていうのももちろんいいですよね。一歩でも多く歩いてるけれども、でもそこまで行けないから諦めるじゃなくて、今、仮に平均歩数少なめの自治体に住んでらっしゃる方でも、一歩でも多く歩いてみようっていうふうに思えば、やってみられるかもしれないです。
そうですね。先ほどのグラフ、見ていただければお分かりになりますように、もう1つ、実は大事なメッセージもありまして、非常に活動的じゃない方、例えば左側の方ですね、左端の方々と、ちょっとそれよりは動いてるっていう方、ここの差が非常に大きいと。メッセージとしては、まずは1分1秒でも歩いてみる、立ってみる。なので、私もずっと座ったまま喋ってきました。見てる方も座ってる方もいらっしゃるかもしれないので、できればぜひ、今ちょっと立ち上がりますか?
立ち上がりますか。
もう立ち上がると、容易に画角から切れちゃうと思うんですけども、実は最近の日本の厚生労働省のガイドラインでも、座りすぎを中断しましょうということが示されていまして。これ、セデンタリー・ブレイクって言うんですけれども、こうしたことを生活の中、あと仕事の中にも取り入れていただくってことが、すごく大事になってくる。
歩くのを増やせないよって人は、仕事中に立ち上がるだけでもいい。
そうです。まずは立って、あるいは例えば最近だと、高さを変えられる昇降デスクっていうようなものもあります。座ってる時間っていうのを減らすってことでも、つながるかなと思いますね。
最近あれ、上げてないんですよね。
そうですね。分かります。
ちょっと上げてみます、今回。
ぜひそんな感じで、気軽に座ることを中断するっていうことも、していただきたいなと思いますね。
TBSの会議室なんですけど、そこに常に社員の方の運動不足を気にして設置してあるんですけど、あれでもいいんですか?
そうですね。やっぱり特に今、非常に暑いですよね。
夏なんかは暑いですよね。
特に日中は無理だっていう方とか、あるいは運動する時間を取りやすいのが、外を出歩くにはちょっとっていうような方々だったり、そうした場合にはもちろん屋内で歩いていただくということでも、いろんなメリットがありますので、それは本当に生活に応じて、取り入れやすいものを行っていただければいいのかなというふうに思います。
確かにね。さっきエコノミークラス症候群の、今の熊本地震の被災地の避難所でお暮らしの方とか、どうしても運動不足になっちゃうってところがありましたけれども、今、本当にあそこ、暑いから外で歩くのも結構大変だっていう、そっちの方がリスクが高いっていう状況の中では、例えば避難所にああいうものがあれば、それを使っていただく意義があるかもしれないってことですね。
そうですね。あれだけを推奨するわけではないですけども、そうした形で、とにかくいろんな方法を組み合わせつつ、取り入れていただけるといいのかなと思います。
とはいえ、1つ目安をということであると、一応厚生労働省が目安を出しているということで、これも教えていただいてよろしいですか?
そうですね。これが「健康づくりのための身体活動・運動ガイド」ということで、2023年に改定版として出された、厚生労働省が出している、どのくらい動くといいですよっていうようなことをまとめたものになります。この中でも一番上にメッセージとして、全体の方向性という中で、個人差を踏まえて強度や量を調整して、可能なものから取り組みましょうと。今よりも少しでも多く体を動かしましょうっていうのを、やっぱり全体の方向性として出してるのは、これは近年の実は大きな変化でして。
WHOのガイドラインもそうですし、いろんなガイドラインで、最近の、先ほどお示しした私たちの研究も含めてですが、どうもそんな、ここまで絶対やらないとだめではなくて、やっぱりちょっとでも動くっていうことに大きな意味がありそうということが分かってきて。メッセージとしても、いわゆるスパルタ式ではなくて、優しくハードルを下げてあげるっていうことが、多くの方々の行動変容を促す、一歩でも踏み出すっていうことを促す上で重要だ。そうした知見も踏まえて、強調されるようになってきたメッセージになりますね。
その上で、仮に目安としたら、高齢者の場合は1日約6000歩ぐらい、成人であると1日約8000歩ぐらい。今の日本の歩数の平均値が大体さっき6000歩ぐらいだっていうふうにおっしゃいましたけれども、平均ぐらい歩いていればクリアしてるよってことなんですね。それを聞くとちょっと安心してきたっていうか。逆にじゃあ、もうめちゃくちゃ歩く。例えば1日2万とか3万歩とか歩いたら、やっぱりいいことってあるんですか?
そうですね。まず大事な観点としては、先ほど見ていただいたグラフでも分かるんですけど、まず2万歩とか歩くっていう方々も、非常に歩数が低い方と比べたら、どうもやっぱり死亡のリスクは低そうですし、なので寿命は長そうってことは分かってますので、2万歩歩いてるよっていう方々が、絶対、いやいや、それすぐにやめて1万歩以下にしないといけないってことは、まずないというのが第一で。
ただし、いろんな理由で2万歩以上になってるって方々、いらっしゃるんですけれども、気をつけた方がいいこととしては、やっぱり怪我のリスクだったりっていうことは、活動量が多ければ多いほど上がってしまう。それから、例えば膝などへの負担ですね。しっかり、例えば歩き方もそうですけども、あるいはどんなものを履いているかとか、そうしたところに特に注意しないといけないっていうことは、お伝えしたいことかなというふうには思いますね。
歩けば歩くほど、どんどん効果が高まっていくわけではどうやらなさそうだから、怪我のリスクも考えて、無理しないでほどほどにっていうところが大事だと思うんです。
そうですね。お仕事などでどうしても歩かないといけないっていう方々もいらっしゃると思いますので、そうした場合には、特に怪我とか、腰、膝などへの負担などもケアをしていただけるといいのかなというふうに思います。
なるほど。最初のテーマ、これ、歩くことは最強の健康法なのかっていうふうに始めたわけですけれども、これ、本当に鎌田さんの視点だけでいいんですけれども、歩くことは最強の健康法なのかっていう問いに対して、最後、どうお答えになります?
まず歩くことって、一番いろんな運動の中でも手軽にしやすい運動だってことを考えれば。また実際に、人気のスポーツ、運動の種目で言うと、歩行、散歩っていうのがもうずっと断トツの1位ですので。
そうなんですか。サッカーとかじゃない。
サッカーでもなく、バスケでも野球でもなく、もうぶっちぎりでずっと1位なのがウォーキング、散歩なんですね。なので、そうした観点で言うと、一番まずはお勧めできる運動ですし、それから歩けないよっていう方々にとっても、例えば車椅子で移動する。
移動する運動は非常にお勧めできるし、あるいはベッドの中であれば、手を動かすってことができれば手を動かすっていうことでもいいし、ということで、皆さんそれぞれにとって一番ハードルが低くて取りやすい運動っていうことで言えば、それが最強の運動の方法、あるいは健康の方法ということは言えますので、かなり多くの人にとって歩行っていうのがその選択肢に入る可能性もあるかなっていうふうには思ってます。
はい。はい。本当に今日は歩くということについてとことん教えていただきました。鎌田さん、本当にありがとうございました。ありがとうございました。
はい。1on1Healthですね。こういったビジネスパーソンにとって役に立つ情報をこれからも届けてまいりますので、ぜひいいなと思ったら、高評価、コメントよろしくお願いいたします。今日はありがとうございました。ありがとうございました。
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