ビール大手4社に公取委が強制調査 外食ビジネスアナリスト三輪大輔氏が読み解く「カルテル疑惑」の背景と影響

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概要

10月7日、公正取引委員会は、国内大手ビールメーカー4社がビール類の値上げ幅などを事前に示し合わせるカルテルを結んだ疑いがあるとして、独占禁止法違反の疑いで強制調査を始めた。捜索を受けたのはアサヒビール、キリンビール、サッポロビール、サントリーの4社で、この4社で国内シェアの9割以上を占めるとされる。PIVOTの佐藤氏が、外食ビジネスアナリストの三輪大輔氏にこのニュースの受け止め方を聞いた。三輪氏は「結構深刻なニュース」だと受け止めつつ、疑惑の背景にはビール事業が各社の稼ぎ頭であり続けているという事情があるのではないかと推測する。なお、収録時点では疑いの段階であり、事実関係は調査中である点が繰り返し確認されている。

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何が疑われているのか

三輪氏の説明によれば、今回問われているのは価格の決め方である。報道では、4社がビールや発泡酒の出荷価格や値上げ幅を相談していた疑いが持たれている。原材料費や人件費などの高騰で値上げが必要になること自体はあり得るが、各社が独自に判断するのではなく、競合する会社同士で価格を申し合わせていたとなれば話は別だ、と三輪氏は言う。調査の焦点は、競争が適正に行われていたかどうかにあるという見立てである。

佐藤氏は、2022年10月と2025年4月の2回の値上げを4社が同時に行い、値上げを公表した時期も近接していた点を挙げた。三輪氏も、過去2回にわたって上げ幅や時期が重なっていたことが疑いを持たれている部分だろうと応じている。

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なぜビールで起きたのか――稼ぎ頭を守る動機

長年にわたって行われていた可能性があるという報道について問われると、三輪氏は、このニュースで最も感じたのは「ビールが大手各社にとって重要な稼ぎ頭であることが改めて証明された」という点だと答えた。

三輪氏はその背景として、各社が競争環境の変化にさらされていることを挙げる。国内ではアルコール離れが進んでいるが、ビールメーカーは工場などの重い設備を持っているため、ある程度の販売数を確保しなければ工場を維持できない。国内だけでは難しいとなったとき、各社は海外展開や新規事業に乗り出した。例として三輪氏は、キリンのヘルスケア事業への参入や、サントリーのウイスキー強化を挙げている。しかし、こうした新規事業はまだビールを支えるほどには育っておらず、育て続けるにはさらに投資が必要になる。その投資資金の出どころはやはりビールだった、というのが三輪氏の見方だ。

そのうえで三輪氏は、資金を確保しながら新しい環境に対応するために、ビールの収益を「是が非でも守りたかった」という思惑が働いた可能性がある、と推測している。

佐藤氏はもう一つの環境変化として、10月1日からの酒税改正でビールが実質的に安くなり、各社がまさに「ビール回帰」を狙っていた局面だったことを指摘した。

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各社の戦略が違っても価格を合わせる必要があったのか

佐藤氏は、各社の戦略の色はそれぞれ違って見えていたと問いかけた。アサヒは海外事業、キリンはヘルスケア、サントリーはウイスキーに注力し、サッポロはとにかくビールに投資する、といった具合である。それでも価格を一緒に決める必要があったのか。

三輪氏は「まだ推測の部分」と前置きしたうえで、ビール離れ・アルコール離れで市場が縮小していくと言われるなか、ビールの収益は守りたいが、今後の市場環境を考えるとビール以外にも投資しなければならない、その両立のためにビールの収益をなんとしても守りたかったという考えが働いたのではないか、と述べた。佐藤氏が、それだけビール事業が各社の柱であることの表れかと確認すると、三輪氏はその裏返しになるだろうと答えている。

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最も影響を受けるのは消費者、そして社員

もしカルテルが事実であった場合、最も影響を受けるのは誰か。三輪氏はまず消費者だと答える。ビールだけでなく発泡酒や第3のビールについても、上げ幅や改定の時期の示し合わせが疑われているため、本来もっと安く買えたはずのビールを高く買っていた可能性が出てくる。三輪氏はこれが消費者にとって最大の不利益だとする。

もう一つ忘れてはならないのが社員だ、と三輪氏は続ける。どの階層で話し合いが行われていたかにもよるが、現場の社員は自社の商品に誇りを持ち、それを広く届けるために日々働いている。その思いが裏切られた形になるという点で、社員にとっての不利益も大きかったのではないかと三輪氏は話した。

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今後の注目点――価格で勝負する会社は出てくるか

各社の戦略やブランドへの影響について、三輪氏は、消費者から「もう少し値段を下げられたのではないか」という疑いの目がビール各社に向くことになると指摘する。その価格への疑念を各社がどう解消していくかが、ひとつの注目点になるという。

具体的に三輪氏が注視したいとしたのは、酒税改正後のビール強化の局面で各社がどんな戦略を取るかである。これまで各社は味や風味といった付加価値で勝負するとされてきたが、今回の件で「実は価格でも勝負できたのではないか」という話になる。そのため、付加価値だけでなく価格戦略で勝負を仕掛ける会社が出てくるかどうかを見ていきたい、と三輪氏は述べた。

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「会合後の非公式な話し合い」と経営責任の行方

佐藤氏は報道内容として、4社がたびたび会合を開いて価格調整を行っていた疑いがあり、通常の会合の後、他の出席者が退席したあとに4社の課長級や部長級が残って非公式に話し合っていたのではないかと伝えられていることを紹介した。そこで値上げ幅や時期を調整したとみられているという。

これが事実だった場合の展開について、三輪氏は、本当に課長級・部長級だけで話がまとまっていたのかが焦点だと言う。もし経営陣まで話が及んでいたとなれば、経営の責任まで波及する問題になる。そうなればトップの辞任といった話にもなり得て、株価や業績の低迷にもつながるため、ビール業界を大きく揺るがす問題になるだろうと三輪氏は予想している。

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ブランドへの不信がビール離れを加速させる懸念

佐藤氏は、事実であれば消費者としてはかなりの裏切りと感じるだろうと述べ、三輪氏もブランドへの信頼感を失うのは間違いないと応じた。

アルコール離れが加速するかどうかは分からないにしても、不信感は残るのではないか、という佐藤氏の問いに対して、三輪氏は次のように答えている。そもそもアルコール離れが進んでいるなかでブランドに不信感がついてしまうと、ブランドが選ばれなくなり、さらにビールの売れ行きが落ちる。そうなれば、守ろうとしていたはずの大切な収益源であるビールを、自ら毀損することになってしまう。三輪氏は、その影響は少なからずあるだろうと述べた。

対談は、まだ疑いの段階であり今後調査が進んでいくとして、引き続き話を聞きたいという佐藤氏の言葉で締めくくられた。