電源ケーブルのフェライトコアは伝導ノイズを減らせるのか:怪しいスイッチング電源で検証する
イチケン / ICHIKENパソコンやスイッチング電源の電源ケーブルには、筒状のフェライトコアが付いていることがある。多くの人は特に気にせず使っているが、実際にどれくらい効果があるのか。イチケンはLISN(疑似電源回路網)とスペクトラムアナライザ機能を使って伝導ノイズを測り、フェライトコアの効果を確かめた。比較のために、市販のACラインフィルター、ノイズカットトランス、品質の高い電源も測定している。結論として、試した電源に限ってはケーブルのフェライトコア程度では伝導ノイズはほとんど減らなかった、と話者は報告している。
フェライトコアは何をするものか
話者によれば、電源ケーブルのフェライトコアは、電化製品の内部で発生したノイズが電源コードを伝って外に出ていかないようにするための部品である。フェライトコア付きケーブルを開けると、分割されたフェライトコアが入っている。これで電線を挟んで閉じると磁路ができ、フィルターとして働く。電線を全部まとめて挟むので、主に効くのはコモンモードノイズだという。
ノイズには大きく分けて伝導ノイズと放射ノイズがある。伝導ノイズは、スイッチング電源などのノイズ源につながった電源コードを伝わってくる電磁ノイズである。放射ノイズは、ノイズ源から空間に放射される電磁ノイズを指す。フェライトコアで減らせるのは主に伝導ノイズのほうで、コードの途中や根元に付けることで、ノイズ源から伝わってくる伝導ノイズを減衰させられる。「減衰」とは言うが、実際にはフェライトコアの部分でノイズを熱に変えている。
伝導ノイズを減らせれば、電源タップなどでつながっている他の機器にノイズが伝わりにくくなる。ノイズが強すぎると他の機器が誤動作するおそれもある。逆に、外から入ってくる伝導ノイズを減らす役割もある。
ただし話者は一つ注意を加えている。電源ラインのフェライトコアには、ノイズ源そのものが出す伝導ノイズを小さくする効果はない。ノイズを外に出さない、あるいは中に入れないようにしているだけである。発生量を減らすにはノイズの根本原因を消す必要があるが、それは難しいことが多いという。
測定のセットアップ
測定系は、ノイズカットトランス、LISN、供試体(今回のノイズ源)、計測器の4つからなる。交流電源にノイズカットトランスをつなぎ、その先にLISNを置き、LISNにスイッチング電源などの供試体を接続する。LISNにはノイズ源から出る伝導ノイズだけを取り出す端子があり、そこに計測器をつなぐ。
各機器の役割は次のとおりだ。ノイズカットトランスは、他の製品から来るノイズを取り除き、比較的クリーンな電源を供給する。LISNは入力側から来る伝導ノイズをさらに除去したうえで、測定対象のノイズ源から伝わる伝導ノイズの成分だけを信号として取り出す。計測器にはスペクトラムアナライザを使うのが普通だが、今回はオシロスコープ(ローデ・シュワルツ MXO3)のスペアナ機能を使った。
話者は測定条件の限界も明言している。再現性を確保するため、本来は接地した金属導体の上で実験するが、今回は設備の都合で行っていない。この点が後の結果の解釈にも関わってくる。
「ヤバそうな」スイッチング電源で測る
最初の供試体は、そこら辺に転がっていたというスイッチング電源である。回路を見る限り電源ラインのノイズフィルターは入っていないようで、PSEマークもない。話者はこれを「いろいろとノイズを撒き散らしていそうな、ヤバそうな電源」と評している。
画面の横軸は150kHz〜30MHzで、伝導ノイズ測定の規格と同じ範囲である。縦軸は伝導ノイズの強度で、大きいほどノイズが強い。何もつながない状態のバックグラウンドノイズを確認してから、フェライトコアのない通常のケーブルでこの電源を接続すると、伝導ノイズが「かなりバンバン出ている」状態になった。
フェライトコア付きケーブルと大型コアの結果
次にフェライトコア付きの電源ケーブルに替えた。見た目ではほとんど変わらない。あり・なしを比べると、5MHz以下で伝導ノイズが少しだけ減っているようだった。ただし話者は、セットアップの再現性の問題でこうなった可能性もあると留保し、若干減っているので効果は少しあるのかもしれない、という程度の評価にとどめている。
効果がはっきりしなかったので、追加で電源ケーブルをループにして大型のフェライトコアに通した。話者の説明では、コアが大きくなって断面積が増え、ケーブル側でもインダクタの巻き数が増えるので、原理的にはノイズフィルターとして有利になりそうだった。しかし結果は、大型コアのあり・なしでもあまり変わらなかった。話者は、どちらかといえば実験の再現性の問題のほうが大きそうだと見ている。
インダクタンスを測ってみると
なぜ効かないのかを確かめるため、話者は各ケーブルのコモンモードインダクタンスを測った。フェライトコア付きケーブルは5.5μH、コアなしは4.0μH、大型コアに通した状態は150μHだった。
電線を1回通しただけのフェライトコアでは、インダクタンスはコアなしのケーブルとほとんど変わらない。実際に伝導ノイズもあまり減っていなかった、と話者は結びつけている。一方で、インダクタンスが大きく増えた大型コアでも伝導ノイズの状況はほとんど変わらなかった。このため話者は、今回のスイッチング電源ではフェライトコアを付けるだけでは効果がなさそうだと結論づけた。
市販のACラインフィルターを使った場合
続いて、電源ライン用の既製品ノイズフィルターを試した。内部にはキャパシタと0.3mHのコモンモードインダクタが入っている。
結果は、低域はほとんど変わらなかったが、500kHz以上でノイズがかなり少なくなった。一方、20MHz付近のピークは残った。はっきり効果が見えたので、話者はフェライトコア単体よりもACライン専用のノイズフィルターを使うほうがよさそうだと述べている。この種のフィルターは外に出ていく伝導ノイズだけでなく、外から入ってくる伝導ノイズも減らすので、ノイズの多い環境ではほぼ必須だという。
ノイズカットトランスをフィルターとして使う
次に、ノイズカットトランス自体をノイズフィルターとして使う構成に変えた。この構成ではNF回路設計の交流電源を使っているため、何もつながない状態でも若干のバックグラウンドノイズが見える。話者はこれは仕方ない部分だとしている。
ここにノイズ源の電源をつなぐと、低域の伝導ノイズはかなり減衰し、高い周波数でもバックグラウンドノイズとほぼ同じレベルになった。話者は「かなり優秀」と評価している。ただし、ノイズカットトランスを装置ごとに用意するのは、特別な事情がない限り現実的ではない。そのため実用上は、先ほどのACライン専用フィルターを使うことになるという。
ちゃんとした電源はそもそもノイズが少ない
ここまでの電源は「かなりひどいレベルのノイズ撒き散らし電源」だった。そこで、ちゃんとした会社が作った一般的なスイッチング電源も測った。ノイズフィルターを入れていない状態でも伝導ノイズは低く、電源自体が出すノイズが少ないことが分かった。話者は、電源の伝導ノイズは本来こうでなければならないと強調している。
中を開けると、AC入力部にキャパシタやコモンモードチョークなどが入っている。ノイズは電力変換部分で発生しているが、回路内にすでにフィルターがあるので、外に出ていく伝導ノイズも低い、というのが話者の説明である。
さらに、低ノイズ電源として売られているダイトロンの製品も測った。伝導ノイズはかなり低いレベルで、話者は非常にノイズ性能の高い製品だと評している。理由として話者が挙げるのは、この電源の内部回路がソフトスイッチングで設計されていることだ。電源が出すノイズ自体が少ないので、伝導ノイズも少なくなる。
結論:後付けのフィルターは対症療法
話者のまとめによれば、今回試した電源に限っては、電源コードに付いているフェライトコア程度では伝導ノイズはあまり減らせなかった。ACラインフィルターやノイズカットトランスには効果が見られたが、こうしたフィルターの後付けは対症療法的な対策であり、ノイズ源が出すノイズそのものを減らすわけではない。本気でノイズに向き合うなら、良い電源の例が示したように、ノイズ源が出すノイズを減らす設計をしていく必要がある、というのが話者の結論である。
この動画はDigiKeyの提供でお送りします。こんにちは。今日はこちら、電源コードに付いているフェライトコアは効果があるのかを検証していきます。
基本的には電化製品やスイッチング電源とか、パソコンの電源ケーブルを見てみると、フェライトコアが付いていることがあります。このフェライトコアは、電化製品の内部で発生しているノイズがこの電源コードを伝って外に出て行かないようにするためのものです。
ほとんどの人はフェライトコアが付いていることなど気にせずに何となく使っているかと思いますが、実際どれくらい効果があるのかというのを、こちらにある計測器類を使って検証していきます。
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まずは電源ケーブルについて見ていきます。左にあるのが通常の電源ケーブル、そして右側にあるのがフェライトコア付きの電源ケーブルです。この部分がフェライトコアです。
フェライトコア部分の構造を見てみます。このように分割されたフェライトコアが入っていて、これを電線を挟むようにして閉じると、磁路が形成されてフィルターとして動作します。このフェライトコアは電線を全て一括して挟むので、主にコモンモードノイズに効いてくるものとなります。
まずノイズといってもいろいろあります。主に伝導ノイズと放射ノイズです。まず伝導ノイズは、このようなノイズ源、例えばスイッチング電源などがそうですが、このようなノイズ源に接続されてある電源コードから伝わってくる電磁ノイズのことです。次の放射ノイズとは、ノイズ源から空間中に放射される電磁ノイズのことです。
このフェライトコアで減衰できるノイズは、主に伝導ノイズの方です。つまり今回の電源コードの場合では、ここにフェライトコアがありますが、このようなところであったり、このようなところにフェライトコアを付けたり、下の方にもフェライトコアを付けたりと、そうするとノイズ源から伝わってくる伝導ノイズをここで減衰させることができます。
ノイズを減衰すると言っていますが、実際にはフェライトコアの部分でノイズを熱に変換しています。ここで伝導ノイズを減衰できると、電源タップなどで繋がっている他の製品に伝導ノイズが伝わりにくくなります。ノイズがあまり強すぎると、他の機器が誤動作する可能性もありますからね。
まとめると、フェライトコアを付ける役割としては、ノイズ源から外部に流出する伝導ノイズを減らすこと、そして仮に外部から伝導ノイズが伝わってきたとしても、フェライトコアを使うことで流入してくるノイズを減らすことです。繋がっている他の機器に対して、伝導ノイズの影響をなるべく少なくすることができるわけです。
ただここで注意してほしいのは、電源ラインに入っているフェライトコアは、ノイズ源自体で発生する伝導ノイズを小さくする効果はありません。外に出ていかない、または中に入っていかないようにしているだけです。ノイズ源自体が出している伝導ノイズを減らすには、ノイズ発生の根本的な原因を消す必要があります。ただノイズ源自体を消すのはなかなか難しかったりするわけです。
こちらが今回の測定セットアップです。右側にあるのがノイズカットトランス、真ん中にあるものがLISN、これは疑似電源回路網です。こちらが供試体、今回の場合ではこれがノイズ源になります。そして最後、計測器です。
こちらが接続図です。ノイズカットトランスを交流電源に接続して、そこにLISNを接続。LISNにはスイッチング電源などの伝導ノイズを出す製品を繋ぎます。またLISNにはノイズ源から出ている伝導ノイズだけを測定できる端子が出ているので、そこに計測器をつなぎます。
それぞれの役割を説明します。ノイズカットトランスは、他の製品から出ているノイズをここで除去するためのものです。ノイズ分の少ない比較的クリーンな電源を供給してくれます。
LISNには電源の入出力端子と信号測定端子があります。入力から入ってくる伝導ノイズを一旦ここでも除去します。さらに測定するノイズ源から伝わってくる伝導ノイズの成分だけを、信号として取り出すことができます。
計測器についてはスペクトラムアナライザを使うことがほとんどです。今回はオシロに付いているスペアナ機能を使うことにしました。伝導ノイズの測定については再現性を確保するために、本来であればグラウンドに設置された金属導体上で実験を行いますが、今回は設備の都合でやっていません。
というわけで、まずは実験してみます。こちらのスイッチング電源です。そこら辺に転がっていたものを持ってきました。回路を見る限りでは電源ラインのノイズフィルターも入っていなさそうですし、そもそもPSEマークがないので、いろいろとノイズを撒き散らしていそうな、ヤバそうな電源です。
ちなみに今オシロスコープに映っているものは、どれくらいノイズが出ているかのFFTの結果です。LISNには何も接続していないので、今見ているのはバックグラウンドノイズです。
まずはフェライトコアがない通常の電源ケーブルで試します。接続すると、このような波形です。結構すごいですよね。伝導ノイズとしてはかなりバンバン出ているような状態です。
横軸は150kHz~30MHzの範囲を見ています。これは伝導ノイズの測定の規格と同じです。縦軸は伝導ノイズの強度を示しています。これが大きいほど強い伝導ノイズが出ています。かなり出ていますね。
次はこちらのフェライトコアが入っている電源ケーブルを使ってみます。実際につないでみると、ほとんど変わらないような気がしますね、これは。
実際にフェライトコアのあり・なしで比べてみると、5MHz以下の周波数で伝導ノイズは少しだけ減っているようです。ただし実験セットアップの再現性の部分の問題で、このような結果になっている可能性もあります。若干減っているので、効果は少しあるのかもしれません。
効果があまりよくわからなかったので、次は追加の実験をしてみます。こちらの電源ケーブルでループを作って、そこに大型のフェライトコアを通してみます。原理的には大型のフェライトコアで断面積が増えて、さらに電源ケーブルのところでインダクタの巻き数も増やしているので、ノイズフィルターとしては有利になりそうです。
実際に試してみると、このような結果になりました。大型のフェライトコアはあってもなくても、あまり変わらないという結果になっています。どちらかというと、実験の再現性の問題の方が大きそうです。ここまで実験したフェライトコアの有無で、大きな効果はなさそうです。
実際フェライトコアを入れている電源ケーブルは、コモンモードインダクタンスがどれくらいあるのか確認します。このフェライトコアは電線を一括でまとめているので、コモンモードノイズに効きます。フェライトコア付きは5.5μH、何もないコアは4.0μH、大型コア付きは150μHでした。
少なくとも1回通しただけのフェライトコアでは、インダクタンス値はフェライトコアなしのケーブルとほとんど変わりませんでした。実際伝導ノイズもそこまで減っていませんでしたからね。かといって、このような大型のフェライトコアを付けた場合でも、伝導ノイズの状況はほとんど変わっていませんでした。そのため今回のスイッチング電源の場合では、フェライトコアを付けただけでは効果はなさそうだということがわかりました。
このまま終わっても面白くないので、他のノイズフィルターも試してみます。こちらは電源ライン用のフィルターです。内部にキャパシタと0.3mHのコモンモードインダクタが入っています。
実際に使ってみると、このようになりました。低域の部分はほとんど変わっていません。ただ500kHz以上でノイズはかなり少なくなっています。20MHz付近でのピークは変わらずです。このようにかなり効果が見えていますので、フェライトコア単体で使うよりは、このようなACライン専用のノイズフィルターを使った方が良さそうです。
ちなみに、このような電源ラインフィルターは外に出ていく伝導ノイズも減らすのですが、外から入ってくる伝導ノイズも低減する効果があるので、ノイズの多い環境では割と必須のフィルターです。
次の実験は、ノイズカットトランス自体をノイズフィルターとして使ってみます。少し構成を変えて、このような回路にしました。まず、何も繋いでいない状態のバックグラウンドノイズを見ます。今回はNF回路設計のAC交流電源を使っているので、若干のバックグラウンドノイズは見えています。これは仕方ない部分です。
そこにノイズ源をつないでみます。低域の伝導ノイズについてはかなり減衰できています。周波数が高い部分についても、バックグラウンドノイズとほぼ同じくらいです。やはりノイズカットトランスだけあって、かなり優秀です。
ただこのようなノイズカットトランスを装置ごとに用意するのは、特別な事情を除いて現実的ではありません。そのため先ほど使ったような、ACライン専用のノイズフィルターを使うことになります。
これまで使ってきたスイッチング電源はかなりひどいレベルのノイズ撒き散らし電源ですが、では一方で、世間一般でよく使われるような、ちゃんとした会社が作った一般的なスイッチング電源はどうなのかも見ていきます。
では電源を入れます。なかなか良いのではないでしょうか。今ノイズカットフィルターは入れていないのですが、元々のスイッチング電源自体が出すノイズが少ないので、伝導ノイズ自体もやはり元々のレベルがかなり低くなっています。というか、電源の伝導ノイズは普通こうではなくてはならないんですよ。
実際スイッチング電源の中身を見てみると、ここがACラインの入力部分ですが、キャパシタやコモンモードチョークなどがいろいろと入っていますよね。このような電力変換部分でノイズは出ているのですが、回路の中にすでにフィルターが入っているから、外に出ていく伝導ノイズも低いということです。
ちなみに世の中には低ノイズ電源なんてものもあります。低ノイズなのでおそらく伝導ノイズも低いのかなと思うのですが、実際測定してみます。ちなみにこちらはダイトロンの製品です。以前動画でも取り上げていますので、興味のある人は概要欄のリンクからぜひ見てください。
電源を入れます。すごいですね。このように、伝導ノイズ自体はかなり低いレベルとなっています。非常にノイズ性能の高い製品となっています。
このような結果となりましたが、それにはしっかりと理由がありまして、この電源自体の内部回路がソフトスイッチングする設計となっています。そのため電源自体が出すノイズ自体が少ないです。その結果、伝導ノイズも少なくなります。
というわけで、今日はフェライトコアがどれくらい伝導ノイズを減衰できるのかから始まって、いろいろなフィルターで伝導ノイズがどれくらい減らせるのかを検証してきました。結果としては、今回試験した電源に限っては、電源コードについているフェライトコア程度では伝導ノイズはあまり減衰できないということがわかりました。
今回やったようなフィルター回路の後付けは対処療法的なノイズ対策であって、ノイズ源自体が出すノイズを減らすことにはなりません。本気でノイズに向き合っていくのであれば、ノイズ源自体が出すノイズを減らすような設計をしていく必要があります。
というわけで、もしこの動画が役に立ちましたら、高評価・チャンネル登録よろしくお願いします。何か気になることがありましたら、ぜひコメントも残してみてください。それでは最後まで動画のご視聴ありがとうございました。
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