マッチングアプリの利用者の多くが不幸になる、と高須幹弥氏が考える理由

YouTubeで開く ↗
概要

マッチングアプリは出会いのない人に出会いの場を提供し、多くのカップルを生んでいると思われがちだ。高須幹弥氏はこの見方に異を唱える。アプリで恩恵を受けているのはごく一部で、課金している利用者の大半はむしろ不幸になっている、というのが氏の意見である。氏は、これは自分一人の考えではなく、多くの有識者も同じ意見だと述べている。その上で、根本的な原因は「異性を選ぶ選択肢が多すぎること」だと結論から示し、理由を順に説明していく。

7分で読めます
2:07

スペックで異性がランキングされてしまう

アプリでは、男性が女性を探す場合も女性が男性を探す場合も、膨大な数の異性が一覧で表示され、そこから「いいね」を送り、うまくいけばマッチングする。表示される情報は、顔立ち、身長、体型といった見た目のほか、年齢、職業、年収、趣味などだ。

氏によれば、多くの男性は正直なところ若い女性、特に20代を好み、40代よりは30代を好む。一方で女性側は、自分と同年代か少し年上くらいを望み、あまりに年上の男性は避ける傾向がある。氏は趣味が合うことも大事だとしている。

こうした条件が数値や項目として並ぶため、性格は実際に会わないと分からないにもかかわらず、男女ともスペックごとにランキングされるような状態になってしまう。人間である以上、誰もがハイスペックな異性を求めてしまう、というのが氏の見立てである。

4:18

ダニング=クルーガー効果と自己評価のずれ

ここで氏が持ち出すのがダニング=クルーガー効果だ。スペックが下の人ほど自分を高く評価し、上の人ほど自分を正しく評価できる。平均以下の人の大半は自分を平均以上だと思っており、これは様々な実験データで示されている、と氏は説明する。

氏はこの傾向がマッチングアプリでも同じように表れると考える。つまり、下に行くほど自分に甘く他人に厳しい人が増える。相手の条件を見て「この人は自分に釣り合わない、自分のほうがスペックが上だ」と判断し、たくさんの選択肢からさらに選ぼうとし続けてしまう。上位の人同士は自己評価が正確なのでマッチングすることもあるだろうが、下に行くほどマッチングしなくなる、というのが氏の推論である。

5:13

「恋愛強者3割」はアプリに来ない

さらに氏は、恋愛市場の構造にも触れる。氏の説明では、恋愛強者が3割、恋愛弱者が3割、中間層が約4割いる。上位3割の男女はその3割の中で付き合ったり別れたりを繰り返し、常に恋人がいることが多い。下位3割には一生恋人ができない人が多く、中間の4割は恋人ができたりできなかったりする。

こうした上位層は、職場や学校、知人の紹介などで「可愛い子」「イケメン」「いい人」として声がかかるため、アプリを使わなくても恋人がいることが多い。アプリ利用者が求めているのはおそらくこの上位3割だが、そもそも彼らはアプリをあまり使わない。出会いがなくて使っている人もいるが、そういう人はすぐに相手が決まってしまう。その結果、アプリでは恋愛市場の下位7割、あるいはそれより下の層が常に異性を探し続ける状態になる、と氏は分析する。

7:47

選択肢が多すぎると人は決められない

氏がもう一つ強調するのは、選択肢そのものの多さだ。アプリでは新しい登録者が次々に入ってくるため、選択肢はほぼ無限にある。人間は選択肢が多すぎると脳の処理が追いつかず、かえって決断できなくなる、と氏は言う。

例として挙げられたのが買い物と外食である。服やバッグ、靴を買う時に膨大な種類の商品が並んでいたり、ECサイトで大量の商品が表示されたりすると、正直選べない。レストランのタッチパネルでも、豚汁セットの豚汁を味噌汁に変えるといった組み合わせまで含めると選択肢が多すぎて決められない。逆に選択肢が3つ程度なら、条件を照らし合わせて比較的短時間で決められ、自分の頭で考えて決めたので後から後悔することも少ない。

氏によれば、人間が選択肢から選ぶ情報処理能力はせいぜい2〜4程度で、9つでも難しく、4〜5くらいが望ましい。その理由として氏は、人間の脳は約10万年前の石器時代からほとんど変わっていないと述べる。当時の人間は集落で暮らし、同じ集落の同年代の異性や隣の集落から相手を選んでいた。選択肢は場合によっては1人しかなく、多くても数人で、巨大な集落なら別かもしれないが、2桁に達することはそうそうなかったのではないか、と氏は推測する。

11:04

選んだ後にも後悔が残る

選択肢が無限にある状況では、自分に合う相手を選ぶこと自体が難しいうえ、仮に「この人でいいや」と選んでも、後になって「本当はもっといい人がいたのではないか」「本当にこの人でいいのか」と後悔する、と氏は言う。選択肢が3人しかなければ、他の2人と比べてこの人が一番いいと自分の頭で判断できる。付き合った後に「やっぱりあの人がよかった」と思うことはあっても、無限の選択肢から選んだ人に比べれば後悔は少なく、そもそも比較がしやすい。

そのため、アプリ内でスペックが上位の人であってもなかなか選べないことがあり、選んだ後も後悔を抱えたまま付き合えば充実しない恋愛になる、と氏は述べる。職場や学校で「この人なら付き合えそう」と数人から選んでうまくいった場合は、性格が合わずに終わることがあっても、直接会って選んだ分だけ納得でき、後悔しにくいという。

結果として、アプリでは延々と相手が決まらない、あるいは延々と選ばれない人が出てくる。マッチングしない人は劣等感を深めて不幸になり、課金したお金だけが消え、運営会社だけが儲かり続ける、と氏は指摘する。

12:50

アプリの情報は表面的で、盛られやすい

ネット上では、少しでもマッチングしたい、少しでも条件の良い相手と付き合いたいという思いから、嘘をついたり、自分を盛ったりすることが起こりやすいと氏は言う。その場合、実際に会うと「全然違う」と失望することになる。アプリ上の情報は単なる表面的なデータにすぎず、内面は会わなければ分からないため、氏はアプリでの繋がりを希薄なものだと見ている。

これに対し、職場や仕事関係、近所、幼なじみ、学校のクラスやサークルといったリアルな場では、普段から顔を合わせて会話ができ、その人の人間関係や周囲からの評判も分かる。話のテンポ、話を聞いてくれるか、趣味が合うか、ギャグのセンスや笑いのツボといったフィーリングは、アプリのデータでは分からない。

リアルな場なら、最初はそれほど好きでなかった相手の良いところが接するうちに見えてきて、気づいたら好きになっていることもある。逆に、イケメンで一目で好きになった相手でも、しばらく行動を見ていると変な癖や愚痴っぽさが目について嫌いになることもある。だからこそ、ある程度の期間相手の行動を見て、話をする中で恋が芽生えて付き合うほうが本来は望ましく、うまくいくし納得できる、というのが氏の考えである。

15:25

アプリをすべて否定するわけではない

ただし氏は、現代ではリアルな場でコミュニケーションを取ること自体が難しく、どうしてもアプリに頼らざるを得ない人がいることも認めている。アプリでうまくマッチングし、いい恋愛をして結婚する人も一定数いるため、アプリのすべてが悪いとは言わない。そのうえで、アプリは完璧ではなく、かえって不幸になり、劣等感を抱え、お金だけを吸い取られていく人もいるのではないか、と述べている。

16:06

お見合いの時代との比較

最後に氏は、昭和のアナログな時代を振り返る。当時は出会いこそ少なかったが、選択肢が少ないぶん選ぶのは難しくなく、後で後悔することも少なかったのではないかという。また、当時はお見合い結婚が大半を占め、20代のうちに周囲が「早く結婚しなさい」と斡旋してくれたため、ほとんどの人が結婚できた。親類や家族同士の繋がりの中で周囲が固めてくれるので、最初は好きでなくても、結婚して一緒に暮らすうちに長続きするケースがあった、と氏は語る。

一方、恋愛結婚ではドーパミンやフェニルエチルアミンといった恋愛ホルモンが出て相手を好きになるが、その状態はせいぜい2〜3年で落ち着くと氏は説明する。恋愛の絶頂期にはすべてが愛おしく感じられたのに、それが低下すると相手のすべてが鬱陶しくなり、「なぜこの人を好きだったのだろう」と思ってしまうこともある。そう考えると、アナログ時代のお見合いも意外と良かったのではないか、というのが氏の見方だ。

ただし今の時代では、「早く結婚しなさい」「いい人を紹介する」といった働きかけはお節介であり、ハラスメントとして受け取られかねないため、もうできない。だからこそ、仕方なくマッチングアプリに頼るしかない面もある。氏は、アプリにはこうした仕組み上の問題があることを理解したうえで、正しく使うことが大事だと締めくくり、視聴者にも意見を求めている。