メルカリや海外市場の激安ブランド品は何なのか——サードシフト品から「しつけ」の問題まで

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概要

メルカリで定番のマルジェラのバッグが定価の1割ほどで売られている。東南アジアの屋台ではシュプリームやサロモンの新作が数千円で手に入る。偽物だろうとは思うが、素人目には分からないから買ってもいいのではないか。この動画でMBは、そう考える視聴者に向けて、激安ブランド品がどこから来るのか、見た目で本物と見分けられるのか、そして安ければ偽物でもいいのかを順に論じている。MBは流通の実態を「フラットな目線」で説明すると前置きしたうえで、最終的には偽物を買うかどうかは法律やデメリットの問題ではなく倫理観、つまり「しつけ」の問題だという立場を示す。

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海外旅行やメルカリで出会う「本物っぽい」激安品

MBがまず挙げるのは、多くの人が経験しているであろう場面だ。海外に行くとナイキのスニーカーが日本の半額以下で売られていたり、シュプリームのTシャツが信じられないほど安かったりする。しかも触っても安っぽさを感じず、タグも箱もQRコードもついている。店員に偽物かと尋ねると、「本物と同じ工場で作っているから大丈夫」といった答えが返ってくることもある。メルカリも以前よりは改善されたが、探すと異常に安い商品がまだ見つかるという。

MBは、円安でハイブランドの商品が買いにくくなったことで、こうしたスーパーコピー品にやや需要が集まっている状況もあるとみている。そのうえで、見分け方や、偽物を使うことのメリット・デメリットを整理していく。

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サードシフトとは何か

最初の論点は、冒頭で出した「サードシフト」という言葉の意味だ。ブランド品を作る工場ではシフトが組まれており、工場によって違いはあるものの、多くは2交代制だとMBは説明する。それぞれをファーストシフト、セカンドシフトと呼ぶとすれば、サードシフトはその次、つまり正規ではない深夜などの時間帯にこっそり生産することを指す。

前提として、ブランドは基本的に自社工場を持たない。MBによれば、ユニクロでさえ自社工場を持っていない。自社工場を持つにはかなりうまく運営しなければならず、むしろ生産効率が落ちることもある。工場がファクトリーブランドを立ち上げる例はあっても、デザイナーズブランドが工場を建てて自社生産することは、ないわけではないが基本的にはない。だから、サードシフトのような問題が起きうるのだという。

具体的な流れはこうだ。ブランドから工場に「このTシャツを1万枚作ってほしい」という注文が入る。工場はファーストシフトとセカンドシフトで1万枚を作って納品するが、サードシフトで余剰在庫をさらに1000枚作り、別の業者に安く売る。これがサードシフト品と呼ばれる構造である。

MBは、これが偽物かどうかの境界線は非常に難しいと言う。工場が同じなのでミシンも型紙も縫っている職人も同じで、場合によっては生地やタグ、袋などの付属品まで同じかもしれない。物理的には正規品にかなり近いはずだ。ただ、ブランドが正式に発注していない商品なので正規品としては扱われず、まったく同じクオリティだったとしても「本物」とは言いにくい。

背中につく織りネームについて、MBは、ブランドが1万枚を発注するときは多くても少し余裕を持たせる程度しか用意しないと話す。それならタグが足りないのではと思うかもしれないが、織りネームはすぐにコピーできる。そのため、サードシフト品と正規品は違いが分からないことも多い。型紙と技術がすでにあるのだから、請け負った工場が同じものを作れるのは当然の話だ、とMBは言う。

ただし、完全に同じとは限らない。洋服は完全にマシンメイドで作られるものはなく、裁断は機械でやるにしても、縫製はたいてい人の手による。ブランドの公式品ではないからと縫いが雑になったり作りが甘くなったりすることはありうるとMBは考えている。それでも、サードシフト品と本物を比べて見分けるのはプロでもなかなか難しいという。

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大手ブランドの対策と、中小ブランドの限界

だからこそ、エルメスやルイ・ヴィトンのようなハイブランドはサードシフト品に強く注意を払っているとMBは言う。例として挙げたのがロットナンバーの管理だ。1万個発注したなら、その商品が1万個中の何番目なのかを付けさせる。エルメスについては、発注先の工場に抜き打ちで行き、正しく生産しているか、サードシフトをしていないかを確認するとよく言われる、とも紹介している。

こうした取り組みによって近年サードシフト品は減っているが、中小のデザイナーズブランドには同じことができないとMBは指摘する。資本力がなく、工場に人を送る余裕もない。売上10億〜20億円規模のブランドでも止めるのは難しいだろうという。MBはルメールの売上について「たぶん今20億ぐらいではないか」と推測し、その規模のブランドでもサードシフト品が流通する可能性は十分にあると述べる。

サードシフト品は正規の流通に乗っていないので、販売後の保証も返品や修理も受けられない。それでも物としては本物に近く、作っている工場も同じだ。こうした商品が東南アジアの屋台などで流通しているのは珍しくないとMBは話す。

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激安品の出どころ①:粗悪品とスーパーコピー

では、東南アジアの市場に並ぶ半額以下の商品はすべてサードシフト品なのか。MBの答えは「もちろん違う」だ。MBは出張でタイによく行くといい、ナイトマーケットではナイキ、アディダス、サロモン、オニツカタイガーなどが山積みにされ、サイズも選び放題、新作もあるのに値段は半額以下ということがよくあるという。MBは激安品の出どころをいくつかのパターンに分けて説明する。

1つ目は、粗悪品としての偽物だ。正規品を見て別の工場でコピーしたもので、昔の偽物といえばルイ・ヴィトンのロゴのスペルが違う、縫製がガタガタ、生地がペラペラ、といったイメージだった。しかし今は、工場が正規品を購入して分析し、型紙を取ったり素材を分析して色を合わせたり、タグや箱までコピーしたりできる。見た目だけでは簡単に分からない商品も増えている。MBは、東南アジアで山積みになっている商品の半分くらいは、もしかするとこの普通の偽物ではないかと推測している。

2つ目は高品質コピーで、スーパーコピーやミラー品と呼ばれる。刺繍の密度、プリントの厚み、タグのフォント、ステッチの幅、箱の色、包装紙やショッピングバッグ、場合によってはレシートまで複製していることがある。MBは、このレベルになるとメルカリでスマホの写真を見て判別するのは絶対に不可能で、市場で実物を見てもプロでさえ真贋の判定が難しいと言う。

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激安品の出どころ②:「サードシフト品」というセールストーク

3つ目が、先に説明したサードシフト品、つまり正規工場や関連工場が無断で追加生産したとされる商品だ。MBは、サードシフトという言葉がセールストークとして使われることもあると指摘する。屋台で「なぜこんなに安いのか」と聞くと「サードシフト品だから本物と変わらない」と返される。スーパーコピーと言えば勝手に作った印象になるが、サードシフトと言えば「同じ工場で同じ人が作っているから正規品と変わらない」という言い方ができる。

MBはここまでの3つを、クオリティが高い順にサードシフト品、スーパーコピー・ミラー品、粗悪な偽物というレイヤーとして整理している。

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激安品の出どころ③:検品落ちのB品

4つ目は検品落ちのB品で、MBは「これも実はそこそこある」と言う。物自体はブランドが承認した正規ラインで作られているが、プリントのずれや汚れ、縫製不良などで検品を通らなかったものだ。ブランドには廃棄したと伝えつつ、工場がひそかに取っておいて横流しすることもないわけではない。MBは、日本の工場がそんなことをするとは思わないが、海外の工場ではどんな人がやっているか分からないと話す。

特にデザイナーズブランドで起きやすいとMBは考えている。ユニクロのような大量生産品ではB品はそれほど出ないが、デザイナーズでは工場も慣れていない加工を求められる。MBはコム・デ・ギャルソンを例に、ジャケットを「ここで切ってくれ」と言われれば工場側は「切るんですか」となる、と語る。そうした加工ではB品が出やすく、せっかく作ったのにもったいないから流してしまおう、と考える工場がいても不思議ではない、というのがMBの見方だ。

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激安品の出どころ④:盗難品・横流し品と、MB自身の経験

5つ目は、倉庫や物流、店舗から不正に持ち出された正規品、つまり盗難品や横流し品だ。MBは、自身のブランドでも実際に被害に遭ったと明かす。海外で生産していた商品が、輸入のためのシッピング作業の際に段ボールごと盗まれた。最終的に回収はできたが、盗んだ人が運ぶ途中で商品を傷つけていたため、大きなマイナスが出たという。しかもその工場は安い工場ではなく、イタリアの工場だった。MBは10年以上ものづくりをしてきて1回だけの経験だったが、驚いたと話す。

MBはここで、海外を通さずに服を作るのがいかに難しいかにも触れる。MBアイテムはウールを得意としているが、100%国産のウール製品は基本的に作れないという。一部に「JAPAN WOOL」があるものの量はごくわずかで、しかも基本的には紡毛だと思われるため、「スーパー何S」と呼ばれるようなつるっとした梳毛のウールは日本では基本的に作れない、とMBは説明する。尾州のウールも、原毛は海外から輸入し、それを生地にするのが尾州の仕事だという。日本で生産して日本で流通させるならそこまで意識しなくてもいいが、海外を経由する以上、盗難のようなリスクはどのブランドにも起こりうる、というのがMBの主張だ。

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激安品の出どころ⑤:在庫品とバッタ屋

最後のパターンは在庫品だ。不人気カラーやサイズ欠けで余った正規品や、海外アウトレットの商品などが、いわゆるバッタ屋に売られ、屋台や東南アジアに流れることがあるとMBは言う。

バッタ屋は意外と普通に存在し、東京でも下町のほうにあるという。MBによれば、デザイナーズブランドを仕入れている地方のセレクトショップが倒産することがあり、セレクトショップはもともと在庫を大量に抱えている。在庫金額1億円程度を持ったまま閉店するケースも「そこそこある」という。その在庫は90%オフや95%オフでバッタ屋に売られることがある。ただ、どこから仕入れたかがブランドに知られると問題になるので、バッタ屋はタグを切る。タグに切れ込みがあったりタグ自体がなかったりするものは、正規品だが正規ルートを通っていない売れ残り品であるケースが結構ある、とMBは話す。

MBは、メルカリや韓国、東南アジアの市場で激安販売されているものは、普通の偽物、スーパーコピー、サードシフト品、検品落ちのB品、横流し品・盗難品、在庫品のいずれかだろうとまとめている。

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なぜ半額でも利益が出るのか

サードシフト品が正規品とまったく同じなら、なぜ半額で売っても利益が出るのか。MBの説明では、ブランド側が負担している企画費、デザイン費、サンプル制作費、広告費、販売スタッフの人件費などがすべてかかっていないからだ。服を作る準備段階には膨大なお金がかかる。パタンナーが型紙を考え、生地を手配したり別注で一から作ったりする時間とコストがある。サードシフトはそれらをすべて飛ばし、与えられた生地をそのまま縫うだけなので、非常に低コストで作れてしまう。

MBはこれを「むちゃくちゃずるいフリーライダー的なやり方」と表現する。ブランドが価格をぼったくっているわけではなく、準備のコストや従業員の給与などが乗って定価ができている。それらにすべてただ乗りして余分に作って横流しすれば、半額でも利益が出るのは当然だという。

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偽物は見た目で見分けられるのか

MBが「ここからが本題といえば本題」と言うのが、見た目で見分けられるかという問いだ。結論として、粗悪な偽物なら簡単に見分けられるという。MB自身、メルカリの写真で分かるものもあり、東南アジアの市場でも偽物だと分かるものが結構ある。縫製がガタガタだったり生地が明らかにおかしかったりする。タイのナイトマーケットで見たサロモンの新作は、パッと見では分からないかもしれないが、触れば生地が違うと分かった。靴なら、本物は平らな場所に置くとそのまま安定して立つが、粗悪な偽物は置くとガタガタ揺れることがある、とMBは例を挙げる。

一方、スーパーコピーやミラー品、サードシフト品になると、商品だけで100%判断するのは非常に困難だという。ロゴの形、タグのフォント、縫製やプリントの位置、洗濯表示、品番、QRコード、箱などを総合的に見て判断するしかないが、それでも判断できないことが結構ある。MBは最近のスーパーコピーは「本当にすごい」と言う。本物はブランドのショップに行けば買えるので原品を用意でき、80〜90年代と違って3DプリンターやCADなど技術も発達している。本物を見てコピーを作ることは、正直それほど難しくないというのがMBの認識だ。

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見るべきは商品ではなく「商流」

では真贋はどこで見極めるのか。MBは、自分より詳しいのは中古市場の人たちだと言う。例として挙げるのが「なんぼや」で、MBは代表の方と知り合いだった縁で倉庫を見学したことがあるという。MBは、ハイブランドの取引額では日本で一番大きいのではないかと話し、真贋の技術が非常に高いと評価する。偽物が店に流通しないよう努力しており、それをLVMH側が認めて中古市場の会社でありながら協業するといったこともできる、とMBは紹介する。LVMHも偽物の撲滅を求めているので、真贋判定ができる企業は重宝されるのだという。

そうした専門家もロゴやフォントは見るが、それだけでは判別できないことが多い。そこで考えるのが商流、つまり商品がどこで作られ、どういう経路で流通してきたかだとMBは言う。誰が販売しているのか、どこで販売されているのか、どこから仕入れたのか、購入証明があるのか、返品できるのか、安い理由を具体的に説明できるのか。こうした点を総合的に見るしかないため、消費者レベルで本物か偽物か、正規品か非正規品かを判断するのは極めて難しい、というのがMBの結論だ。

分かりやすい例として、MBは冒頭で触れたメルカリの「並行輸入品なのでご容赦ください」という表記を挙げ、これこそ怪しい商流だと言う。並行輸入品は海外で買ってきただけのもので、日本の代理店を通していない。代理店を通していれば基本的に代理店のタグがつき、日本の企業が本物と認めていることになるので問題ないと判断できる。並行輸入品はどこで買ったか分からず、東南アジアの市場かもしれないし、フランスのバッタ屋かもしれない。もちろんすべてが偽物ではないが、偽物の可能性は比較的高い。特にメルカリでは、出品者が偽物とは言えないため「並行輸入品なので」と言い訳することが非常に多い、とMBは指摘する。

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法律上の境界線:4つのケース

最後のテーマは「安ければ偽物でもいいのか」だ。ここまで聞いて、見た目が同じなら偽物でもいいのではと思った人も少なくないだろう、とMBは認める。まず法的な話として、4つのケースを説明している。

1つ目は、日本国内で自分用に偽物を1点買う場合で、MBは合法だと説明する。偽物と分かっていても、購入や私的な所持だけで通常は処罰されない。商標法が主に取り締まるのは製造、販売、輸入、販売目的の所持だからだ。倫理的にどうかは別として、法的には一応許される行為だという。

2つ目は、海外で偽物を買って日本に送ってもらう場合。MBは「2022年かな」と確認しつつ、2022年以降は個人使用でも輸入不可になったと説明する。知らずに買っても税関で止められ、没収の対象になる。購入者に転売などの事業性がなければ通常は刑事罰までは科されないが、代金が返ってくる保証はない。厳密には違法だが刑事罰はない、というのがMBの整理だ。

3つ目は、韓国で買って自分の旅行荷物として持ち帰る場合。MBはコンバースのCTを例に挙げる。日本のコンバースは伊藤忠が手がけており、日本の正規品は日本国内だけのもので、海外のコンバースとは物がまったく違う。そのため一時期、韓国でCTを2足買い、1足は自分で履いてもう1足をメルカリで売って儲ける、ということがよくあったという。MBによれば、自分用で事業性がない範囲なら、海外業者から送られるケースを対象にした現在の規制には該当しないそうだ。しかし2足買って1足を転売するなど事業性が感じられる場合は取り締まりの対象になり、「結構危ない話」だとMBは注意を促す。

4つ目は、偽物をメルカリなどで販売する場合で、偽物と知りながら販売・転売すれば商標権侵害となり、明確な犯罪行為だという。

MBはこれらをまとめ、偽物を買うこと自体が即犯罪なのではなく、輸入と販売・転売が法律上の大きな境界線になっていると考えるべきだと述べる。

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個人にとっての4つのデメリット

それでも「どうしてもブランド品が欲しい。スーパーコピーなら安く手に入るのだからそれでいいのでは」と考える人に向けて、MBは消費者個人にとってのデメリットを4つ挙げる。ブランドビジネスが崩壊する、チープ化するといった社会的な話は個人には「知ったこっちゃない」だろうから、あくまで個人レベルの話に絞るという。

1つ目は、お金がどこに流れるかだ。コピー品を買えば、それで儲けている反社会的組織やアンダーグラウンドの世界にお金が入る。実害ではないが、心情的には嫌なはずだとMBは言う。ただしMBは、一般に流通している普通のアパレルブランドが実は反社会的勢力のフロント企業というケースも実際にあると話し、厳密に掘り返しても分からない部分があるので、ここをシビアに見るのは難しいとも認めている。それでも非正規品であれば、それを明確に感じられるという。

2つ目は、保証や返品、修理が期待できないこと。ただMBは、これをあまり重く見ていない。そもそも服を修理に出す人は多くなく、非正規のシュプリームのTシャツやナイキのスニーカーを修理に出すことはないだろうし、出すとしても街のお直し屋に頼む。長く使うレザーシューズや時計なら話は別かもしれないが、多くの人にとってはそこまで気にすることではないのかもしれない、とMBは述べる。

3つ目は、リセールできないこと。MBはこれを明確なデメリットとする。自分で使う分には合法でも、転売した瞬間に加害者になり犯罪行為になる。リセールバリューを考えてブランド品を買う人が多い今、それがゼロになるということだ。

4つ目は、安心感や満足感を失うこと。正規品ではなく偽物を着ているという後ろめたさを抱え、安心感や満足感を犠牲にして安く買うことになる、とMBは言う。

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結局は倫理観と「しつけ」の問題

MBは4つのデメリットを論理的に説明したつもりだとしたうえで、偽物を買うかどうかは結局そういう話ではなく、倫理観の問題だと述べる。MBはこれを、電車内で大声を出してはいけないのと同じ「しつけ」の問題だと表現する。

例として挙げるのが電車内の通話だ。犯罪ではないし便利なのに、今ではほとんどの人がダメなことだと分かっている。しかし携帯電話が普及し始めた90年代から2000年代初頭には、MBが高校生として電車通学していた頃、車内でたくさんの人が電話していたという。それが「うるさい、周りに迷惑だ」というしつけによって倫理観として定着し、今では山手線で電話に出れば周囲の人がその人を見る、とMBは話す。タバコも同様で、昔は電車のボックス席の脇に灰皿があり、大人が普通に吸っていた。子どもだったMBは臭いと思いながらもそれが普通だった。10年、20年かけてしつけがうまくいき、違法でなくてもやってはいけないという倫理観が作られた、というのがMBの見立てだ。

MBは、スーパーコピー品もアジアの市場でしつけが進んできたと考えている。韓国の明洞には昔スーパーコピー品があふれ、シュプリーム、ステューシー、オフホワイト、ディオールなどがずらりと並んでいたが、今は探さないと見つからないほど減っているという。中国でも同様の変化があるとMBはみている。日本でも90年代には雑誌の裏表紙の怪しい広告で「ディオールが半額」「在庫処分」といった商品が売られ、本当に在庫処分の場合もあったがスーパーコピーも結構あった。ナンバーナインやエイプの偽物もかなり作られていたという。今の日本でそれが見られなくなったのは、取り締まりもあるだろうが、基本的にはしつけの問題だとMBは言う。竹下通りなどで偽物を集めた店をたまに見かけても、周囲は「あれ偽物でしょ」と嫌な目で見る、というのがその例だ。

MBは、服のような「たかが洋服の話」で、自分に後ろめたいことをして満足を得るのは極めて短絡的だと述べる。家族や自分が生きるか死ぬかという状況なら汚いやり方でも分からなくはないが、シュプリームが着たいがお金がないから偽物を買う、というのはそれとは違うという。

一方でMBは、強制力がないことも認めている。自分用に楽しむ分には明確に違法でも刑事罰があるわけでもなく、「やめてください」と言いたくても止めようがないし、止める気もない。人の価値観はそれぞれで、自分が許せるならそれでいいのかもしれないが、周りがどう思うかは分からない。やめる理由を問われれば、電車内での通話やタバコと同じ、しつけの問題だとしか言えない、とMBは語る。

MBは最後に、偽物はフリーライドによって誰かに損を与えていることは間違いなく、いいことではないので、ぜひやめてほしいと述べる。ただし個人の価値判断であり強制力もないため、倫理観としつけの問題だとして話を締めくくっている。