データで読み解く大谷翔平の打撃異変と山本由伸の進化
PIVOT 公式チャンネルポストシーズンを直前に控えるメジャーリーグ(MLB)において、日本人選手の果たす役割は年々大きくなっている。元ヤクルトスワローズ監督の高津臣吾氏、野球データ分析を手掛けるDELTA社長の岡田友輔氏、スポーツライターの西尾典文氏を迎え、最新のトラッキングデータやセイバーメトリクスをもとに、ドジャースの大谷翔平および山本由伸の現状と技術的な変化について分析が行われた。
日本人メジャーリーガーの現在地と多様化する挑戦ルート
MLBでプレーする日本人選手について、元監督の高津氏は、故障等で休養したダルビッシュ有の投球を今季もっと見たかったとしつつも、投手も野手もそれぞれのチームで重要な役割を担い、優勝争いやポストシーズン進出に大きく貢献している点を高く評価する。
アマチュア野球を長年取材してきた西尾氏は、現役メジャーリーガーの顔ぶれを見ると「高卒ドラフト1位」出身者が依然として多数派を占めている点を指摘する。プロの世界へ早い段階で身を置き、基礎と経験を積むことがメジャーで活躍する上でのひとつの優位性であることは変わらない。しかし近年では、日本の高校から直接米国の大学へ進学し、そこからメジャーを目指す選手が登場するなど、挑戦のルート自体に新たな広がりが見られる。西田陸浮のように米大学を経てメジャー昇格を果たした実例や、佐々木麟太郎のように高校卒業後に直接米国の大学へ進む事例を挙げ、今後10年のスパンで見れば、NPBを経由する従来型以外のルートからメジャーへ到達する日本人選手が増加する可能性があると論じた。
大谷翔平の打撃異変:スイングスピード低下と二刀流の代償
大谷翔平の今季の打撃成績について、岡田氏はデータ面から「打撃の質」に生じた変化を解説した。打席あたりの得点創出力を示す「wRC+」やOPSといった指標が、前年に比べて落ち込んでいる点が挙げられた。
興味深い比較対象として示されたのが2022年のデータである。2022年は大谷が打者として666打席、投手として166イニングを投げ、投打の両方で規定に到達した「二刀流が最も機能したシーズン」であった。しかし、打撃単体の成績(本塁打数、長打率、OPS、wRC+)を精査すると、二刀流をフル稼働させた今季の数値と酷似している。この傾向から岡田氏は、投手と打者の両方をフルに継続することは、どうしても打撃パフォーマンスにある程度の影響を及ぼすという構造が改めて確認できたと説明する。
特に顕著な変化が現れているのが「バットスピード(スイングスピード)」である。MLB上位1%以内を示す「100」というトップ水準にあった2023年と比べ、その後は97、93と推移し、今季は79まで低下した。
月別のスイングスピード推移を追うと、その要因がより鮮明になる。2023年から全体的に下降傾向にある中で、2025年9月に二刀流登板を再開した直後から数値が急激に低下していた。今季も同様に、登板を重ねる中でスイングスピードが落ち込んでいる。これに加えてシーズン終盤の故障の影響も重なり、数値が一段と押し下げられた形である。
一方で、大谷はバットとボールが最適な角度でコンタクトする割合を示す「ランチアングル・スイートスポット率」を年々向上させている。低下しつつあるパワーやスイングスピードを、コンタクト技術の向上によって補い、成績を維持しようとするアプローチが機能していると岡田氏は分析する。
年齢的な節目と今後の起用法という課題
スイングスピードの低下は、身体能力や打球速度と密接に連動する。通常、スイングスピードが速いほど強い打球が生まれる確率(ハードヒット率やバレル率)が高まり、安打になる割合も上がる。岡田氏によると、打者に専念していた2024年シーズン(50本塁打・50盗塁を達成した年)は、シーズンが進むにつれて打球速度が上昇しており、フィジカル面でも打撃に全力を注ぎ込める状態にあった。
しかし今季の大谷の最大打球速度は114マイルにとどまっている。この数値自体はメジャー全体の上位20%程度に位置し、平均を大きく上回る優秀な数字ではあるものの、かつてのように「メジャートップクラス」に君臨していた水準からは後退している。
一般に野手の打撃成績の全盛期は27歳から28歳前後とされる。大谷は規格外の身体能力によって高い水準を維持してきたが、32歳という年齢を迎えた現在、経年による肉体変化と二刀流の負担が重なっていることは否定できない。
このデータを受けた高津氏は、監督の立場からすれば投打ともにチームの柱である大谷の起用法は極めて難しい判断になると述べる。勝つためには先発ローテーションに入って投げてほしい一方で、打撃を優先させるために登板をセーブさせるべきかという葛藤が生じる。
岡田氏は、今オフ以降、球団フロントと首脳陣が大谷の起用法について綿密な対話を持つタイミングが来ていると指摘する。例えば、先発登板の間隔を中5日や中6日からさらに延ばし、年間登板数を15〜20試合程度(月2〜3回登板)に抑える、あるいは定期的に打者としての休養日を挟むといった、徹底した稼働管理を行うことが、長期的な戦力維持のために現実的な選択肢になるのではないかとの見解を示した。
投手・大谷の現在地:三振奪取からゴロ誘殺へのシフト
打撃面での負荷が議論される一方、投手・大谷のパフォーマンス自体は、故障離脱前までは極めて高水準にあった。奪三振率は以前よりやや低下したものの、今季はスプリットの投球割合を増やし、打者にゴロを打たせる投球スタイルへと舵を切っていた。
高津氏は投球フォームのマイナーチェンジなどにも触れつつ、2021年のスイーパーを多投して空振りを奪うスタイルから、スプリットで効率よく打ち取るスタイルへと、大谷自身が毎年思考を重ねてモデルチェンジを遂げている点を評価した。岡田氏も、登板さえ継続できればサイ・ヤング賞を視野に入れられるほどの質の高い投球内容を披露していたと認める。それだけに、いかに肉体への過負荷を避けながらその能力をチームの勝利に還元させるかが、ドジャースにとっての最重要命題となっている。
山本由伸の投球革命:曲がり球から「小さく動かす球」への移行
ドジャースの先発陣を支える山本由伸については、球種構成の大胆な変更と、それに伴う課題の克服がデータによって浮き彫りになった。
今季の山本は、奪三振率こそ前年よりわずかに低下したものの、与四球率を減らし、非常に安定した投球を続けている。その背景にあるのが、過去3年間の球種配分の劇的な変化である。
- フォーシームの投球割合を減らす一方、ボール自体の質が向上し、空振り率は上昇。
- かつて山本の代名詞とされていたカーブやスライダーといった「大きく曲がる球」の割合を大幅に削減。
- 代わりにカッターやシンカーといった「手元で小さく動く球」の割合を急増させた。
スライダーを除いても、5つの球種をそれぞれ全体の10%以上の割合で投じることができる構成となっており、打者にとっては的を絞ることが極めて困難な投球スタイルを確立している。
高津氏は、空振りを狙うだけでなく「打たせて取る」方向へマイナーチェンジしていると分析する。曲がり球を減らして動く球を増やし、たまに投じるカーブの緩急効果を際立たせることで、結果的にフォーシームの威力や空振り奪取力も引き上げられているという。
シンカーが生んだ対右打者の克服
この球種変更が最も大きな成果として表れたのが、「対右打者」の被打撃データである。
山本は本来、左打者を得意としていた反面、右打者の対応にやや課題を抱えていた。右打者に対するハードヒット率(強い打球を打たれた割合)は、2020年が44.9%、前年が47.4%と高い数値を記録していた。しかし今季、右打者に対してシンカーを積極的に投じる配球へ転換した結果、右打者のハードヒット率は38.1%へと10%近く改善した。強い打球を抑制することは長打や本塁打の劇的な減少に直結するため、投手として極めて本質的な進化を果たしたと言える。
さらに特筆すべきは、新球種としてのシンカーの急速な「質的向上」である。投球の威力(スタッフ)やコースへの制球力(コマンド)を総合した指標「Run Value(100球あたりで平均的な投球より何点失点を防いだか)」において、山本のシンカーは劇的な推移を見せている。
- 2024年のシンカーのRun Valueは「-1.7」(平均より失点を増やしていた)
- 今季のシンカーのRun Valueは「+2.2」(平均より2点以上失点を防ぐボールへ変化)
わずか2年足らずの間に、投げるほど失点につながっていた発展途上の球種を、メジャートップクラスの失点抑止力を持つ絶対的な武器へと昇華させた。
制球力とピッチデザインが支える適応力
右投手が右打者に対してシンカーを投じる難しさについて、高津氏は技術的な観点から補足を行った。腕を内旋させて投げる性質上、自然とシュート回転はかかるものの、右打者の外側からストライクゾーンに入れる「バックドア」や、左打者の内側から入れる「フロントドア」を投げ分けるには、極めて繊細なコントロールが要求される。山本はその高度な制球力を短期間で実戦レベルに引き上げた。
メジャーの投手のなかでは小柄な体格に属する山本が、これほどの適応を見せる背景には、すべての球種をストライクゾーンの四隅へ投げ分ける圧倒的な「コマンド(狙った場所へ投げる能力)」の高さがある。
また、打者の目から自分の球種や軌道がどう見えているかをアナリストとともにデータで可視化し、シーズン中であっても課題に合わせて柔軟に持ち球の比率や質をアップデートできる環境も大きい。大谷やダルビッシュにも共通するように、データを論理的に理解した上で実戦で即座に体現できる日本人投手の器用さと適応力が、現代MLBの高度なピッチデザインと結びつき、進化を後押ししている。
大谷翔平の身体的負荷への向き合い方と打撃・投球スタイルの再構築、そして山本由伸が見せるデータと技術を融合させた柔軟なモデルチェンジは、ポストシーズンの勝敗を分ける重要なファクターとなる。番組はその後、MLBへ挑戦する日本人打者の指標分析として、村上宗隆や岡本和真らのデータ検証へと議論を展開させていった。
この16人いますけれども、今日は岡田さんからデータをたっぷりと持ってきていただいているということで、大谷選手のスイングスピードの月ごとの平均になるんですね。ガクンと数字が下がっているんですね。
山本選手になります。こちらが過去3年分の球種の変更になるんですけど、スライダーを抜いても5球種が10%以上投げられるんで、相手にとってはかなり厄介です。明らかにカーブとスライダーという曲がり球を少なくして、カッターだったりシンカーだったり、ちょっと動かす球を増やしていくというのは、日本人ピッチャーってそういう意味で本当に器用ですよね。
PIVOT BASEBALLです。皆さんよろしくお願いします。ではゲストをご紹介していきます。DELTA代表の岡田友輔さんです。そしてスポーツライターの西尾典文さん、そして再登場していただきました、元ヤクルト監督の高津臣吾さんです。お三方よろしくお願いします。
お二人が共演されるのは初めてですか?
初めてです。もう僕も昔から見ていたので。
いや、僕もずっと見てます。特にこの時期はよく見てます。
そうですか。監督時代もやっぱりいろんな選手を直接見に行くことはなかなか難しいでしょうからね。
そうですね。それこそネットの情報というのは、今は絶対活用していかなきゃと思ってますし、よく見てました。
西尾さん、ヤクルトのドラフト選手とかはどうですか?今までいろいろ見てきて。
そうですね、あんまりヤクルトは、僕が終わった後に採点記事とかを書くんですけど、あんまり高得点をつけたことがなくてですね。村上選手が外れ1位だった時も、正直あの点数はそんなに高くなかったんです。ただ村上選手に関しては僕はめちゃくちゃ評価していたので、2位以下のピッチャーが厳しいんじゃないかというテイストで書いたら、結構ヤクルトファンから叩かれた記憶がありました。すいません。
でも難しいですよね。そこから育成していくわけですからね。
そうですよ。入ってみなきゃわからない部分もたくさんあるので。
日本ではドラフトのシーズンですけれど、アメリカでは来週からポストシーズンが始まるということで、今9月21日ということになります。今こちらに日本人選手一覧をご覧いただいておりますが、個別の選手はそれぞれまた聞いていきますけれども、全体の印象として高津さん、どうですか?日本人が増えてきている中で。
そうですね。ピッチャーなり野手なり、それぞれみんな本当によく頑張っているのかなと思いますね。個人的にはダルビッシュが今年休んだのは、この歳になってまたどのぐらいのピッチングをするのかすごく見たかったんですけど、それは来年以降の楽しみということで。でもそれぞれのピッチャー、バッターもそうですけど、いろんな役割で本当によく頑張っているんじゃないかなと思いますけどね。
確かに。しかもチームで活躍して、そのチームが優勝するとかポストシーズンまで行くみたいなところがやっぱりすごいですから、これだけいたらその可能性がどんどん高まるので、すごく楽しみですよね。そして西尾さん、アマチュア野球を中心に見られていますけれども、どうですか、このメジャーリーガーの顔ぶれは。
そうですね。今こう並んでいると、やっぱり高卒ドラ1が一番多いんですよ。大谷選手、佐々木選手、ダルビッシュ投手、松井投手もそうですね。菊池投手、今井投手、岡本選手。ドラ2でしたけど鈴木誠也選手もいて、やっぱり上位とかそういう選手が多いんです。僕がアマチュア時代に見ていないのは、ヌートバー選手は当然見ていないですし、千賀投手がちょっと育成だったんで見ていなくて。
今年ちょっと僕の中で一番エポック的だったのは、やっぱり西田選手ですね。高校時代にも見ているはずなんですけど、全く記憶にないぐらいの選手だったんですよ。アメリカの大学に行って、そこからレベルアップしてメジャーまで行ったので、こういう選手が増えてくるんじゃないかなと思うと、ここはすごく大きい年だなと思います。あとはやっぱりメジャーで活躍するとなると、早くからプロの世界に入っておいた方がどうしても有利なんだなというのは、これを見ても改めて思いましたね。
メジャーへの道というのが、少しずつ変わってきているんですかね。
今までは高校からNPBに行って、早めにポスティングというのがありましたけど、直接かもしれないですし、西田選手みたいに日本からアメリカの大学に行ってそっちを目指すというのも、これから多分増えてくるような気がするので、例えば10年後とかなったら違うルートの選手が増えてくるのかなという気はしますよね。佐々木麟太郎選手はまさにそうじゃないですか。それは思いますね。
わかりました。では、今日は岡田さんからデータをたっぷりと持ってきていただいているということですので、それぞれ気になる選手を挙げていただいてという形で行きたいと思います。岡田さんからまずお願いしてもいいですか?
ドジャースの大谷選手と山本選手から始めさせていただければと思います。大谷選手に関しては、今年はちょっと不本意な成績になってしまって、投球イニングに関しても過去2番目に少なかったというところで、稼働面もそうですし、質のところですね、OPSとかwRC+というところも、1打席あたりのパフォーマンスにしても昨年に比べると大きく落ちてしまったというところになるかと思います。
注目していただきたいのが2022年とすごく数字が似通っていまして、22年の年は投打の二刀流が一番機能したシーズンだったんですね。打席も666打席で、投球イニングも166イニングだったので、両方で規定に到達してパフォーマンスが一番高かったシーズンだったんですが、ただ打撃成績単体で見ると、ホームランや長打率、OPS、WARがほぼほぼ一緒なんです。こういったことを考えると、二刀流をずっと続けるとおそらく打撃にやっぱりある程度影響が出てしまうんじゃないかなというのが、改めて確認できたシーズンだったのかなというところですね。
特に顕著なのが、スイングスピードがだんだん悪くなってきてしまっているんですね。バットスピードが2023年は100だったんです。メジャーでも上位1%以内にいますよという数字だったのが、97、93、今年は79ということで、スイングスピードが低下してきてしまっているんです。これはどうしても年齢によるものが大きいので、大谷選手といえども30代に入ってきて、だんだんスイングスピードが落ちてくるというのはしょうがないですね。
ただ、もう一つ上の指標でローンチアングル・スイートスポットというところで、バットに当たっていい角度、いい打球を打てる割合に関してはだんだん上がってきているので、パワーの落ちているところを技術で挽回はしていたというのは間違いなくあったんですけど、それにしてもパワーの落ちているところは見過ごせないかなと思います。
これ、年齢とおっしゃっていましたけど、年齢とその二刀流という2つがあるんですか?
両方作用したんじゃないかと思うんですけど、これが大谷選手のスイングスピードの月ごとの平均になるんですね。23年からだんだん下がっているのがわかるかと思うんですけど、去年が特に顕著で、二刀流を再開した9月ですね、2025年の一番後ろのポイントになるんですけど、そこがガクンと数字が下がっているんですね。
今年再開したシーズンもやっぱり同じぐらいのスイングスピードになっているので、投打を両方ともやろうとすると、どうしても体の負担で大谷選手の打撃のマックスは再現できないんだというのが、改めてデータから確認できるんじゃないかと思います。シーズン後半に落ちるだけじゃなくて、年間で見てもこの4シーズンで落ちてきていると。
これは二刀流の影響が大きくて、去年から今年を見ると、二刀流をフルで始めるとどうしても打撃成績の元になるスイングのところも変わってきて、さらに今年は一番右側は故障を抱えていたというのもあって、それも含めてガクンとスピードが落ちちゃっているのがよくわかるので、大谷選手といえどもなかなか体調面をずっと維持するのは難しいというのが、こういったデータから出てきています。
スイングスピードに全て比例していくんですか?例えば平均の打球速度とか、ハードヒット率とかバレルとかっていうのも、スイングスピードが遅くなると全部その数値も下がっていくんでしょうか。
基本的にはそれと連動する割合が高くて、もう一つは最大打球速度を見ていただきたいんですけど、あそこがバッターとしてのポテンシャルなんですね。速いスイングスピードの方が速い打球が打てるので強い打球の割合が高まり、そうするとヒットになる割合が高くなっていくんです。どうしてもスイングスピードが下がってくると打球に対するエネルギーが落ちてくるので、ヒットになる割合が下がってしまって、ハードヒットの割合だったりバレルの割合というのは下がってきてしまうということになるかと思います。
2024年は打者に専念すると、シーズンが進んでいっても打球速度が上がっていくんですね。途中から上がっていったじゃないですか。あれはやっぱり打撃を改善していたということですか?
そうですね。自身も調子が良かったりというところも含めて、打撃成績が上がっているというのは、50-50をやったシーズンは体調も良くて、打者・大谷のポテンシャルをよく表しているかなと思いますね。
ちなみに今年、最大114マイルじゃないですか。それってメジャーの中で大体上から20%ぐらいですか?平均よりかなりいい方ではあるんですか?
全然上位なんですけど、ただこれまでの大谷選手のパフォーマンスはメジャートップクラスだったので、トップではなくなったんです。もちろん故障の影響もあるんですけど、徐々に下がっていますよというところは考えなきゃいけないところです。
オフ以降でピッチャーとバッターの割合だったり、どうやってチームが大谷選手を一番勝利に貢献できる使い方を考えなきゃいけないタイミングはもう来ているんだろうなと思います。二刀流をやるにしても、もうちょっと登板の間隔を空けるとか、バッターで休養日を作るとかも考えないといけない時期になってきているので、フロントや首脳陣と色々お話をしなければいけない割合は高くなるんだろうなと思いますね。
本人が先発をやりたい、1番がいい、2番がいいとか、そのあたりを全部やらせてあげるわけにもだんだんいかなくなってきたということですね。32歳ですよね。だから30歳ぐらいから下がっていくというのは、当たり前といえば当たり前ですか。
そうです。野球界で言うと、野手のピークは大体27〜28歳ぐらいです。ただ大谷選手は規格外なので、これまでもずっと成績は良かったんですけど、さすがに32歳のシーズンなので、これがずっと続くというよりかは、コントロールしながら大谷選手を起用していかなきゃいけないタイミングはそろそろ来るかもしれないなというところですね。
高津さん、これ監督をやってたら困りますね。見せられたら「困るな」ってなりますよね。
一人二役でここまでチームを引っ張ってきて、どっちも外せないですよね。バッターを辞めろというのはもちろんないんでしょうけれども、例えばピッチャーをもうちょっとセーブして打つ方に専念してくれというのも、もちろん言えますけど、本当にチームが勝とうと思ったら彼のピッチングというのはローテーションに入ってやった方が絶対にいいと思うので、難しい選択をこれからドジャースはしていくんでしょうね。
投手としては全然悪くなかったですよね、怪我するまでは。
そうですね。今年の投球内容に関してはほぼほぼ良くて、三振を取る割合は下がっていて四球が若干増えちゃっているんですけど、ただ今年スプリットを増やしてゴロをたくさん打たせているんですね。そういう意味で、去年の復帰からの投球に関しては、ちゃんと登板できればサイ・ヤング賞を狙えるぐらいのパフォーマンスをしているので、これをずっと続けてもらいたいんですけど、ただ二刀流前提でこれを続けてもらうというのはなかなか難しいので、両方ともすごいが故に悩ましいですね。
難しいシーズンになると思いますね、今後も。中10日とかですかね。うちの監督みたいになっちゃったな。
メジャーは他のピッチャーが基本的に定期的な同じ間隔で投げたいという人が多いと思うんですけどね。
クローザーは無理かな?
確かにイニングを考えればありですけど、ただ毎回どれだけ準備しなきゃいけないかというところですよね。打者として出ながらクローザーの準備もなかなか難しいですね。
ただ、メジャーリーグの方もローテーションが5人じゃなくて6人になってきたので、ドジャースの先発陣も比較的年齢の高いローテーションなので、そこも踏まえてチームが綺麗に回していけると、大谷選手の良さを維持しながらチームが強くなる可能性はあるかなと思いますね。
高津さんご自身もピッチャーの目線から見て、まず大谷投手としての今シーズンの評価はどう見ますか?
数字が少ないので一概にそれまでの21年からの3シーズンとかに比べると比較はしづらいんですけど、ただやっぱり前半投げた安定感だったりは素晴らしかったなと思いますね。それを継続するのがなかなか難しいんですけど、これだけの数字を見ても前半はよく頑張ったんじゃないかなと思いますけどね。
2021年から見た時に、ピッチャーとしてもスイーパーを投げて三振を取る形から、今はスプリットでゴロを打たせる形へと進化しているわけですよね。
いろんな選手がいろんなことをしながら毎年成長していこうとする中で、大谷投手も例外ではなく、バッティングはもちろん投げる方も色々考えながら、ピッチングフォームも僕は途中で変わってきたんじゃないかなと思ったんですけど、そんなことも色々入れながらここまで来たのかなという感じはしますね。
高津さんご自身は、年齢的にこのぐらいからちょっとしんどくなってきたなというのはありましたか?
僕の場合は20代後半、30歳手前から32〜33歳ぐらい、大谷選手ぐらいの時は一番いいと思っていました。結局僕は35歳でアメリカに行ったんですけど、35歳の時が数字が一番良かったですね。イニングもたくさん投げたし、試合数もたくさん投げましたし。人によって違うんでしょうけど、大谷選手は打つ方もやっているわけなので、なかなか同じような比較にはできないとは思いますけどね。
まだポストシーズンはありますけれども、来シーズンに向けてどうまた修正・対応していくのかというところになりますよね。
そうですね。健康で出ていればトップクラスなのは間違いないので。ちょっと休みながらやったらいいんですよね。年間25試合以上先発するのか、普通にローテーションで行ったら15試合とか20試合未満とか、そうなると月に2〜3回ですか。十分ですね。あとは他のピッチャーとの調整というところが一番大きいポイントかなと思います。
わかりました。では、大谷選手の次に見ていく選手は誰になりますか?
山本選手になります。今年は三振を取る割合というのは若干下がったんですけど、フォアボールを出す割合が減ったり、新しい球種を導入してバッターの先手先手で自分が変わっていって、バッターに慣れさせないというようなところが顕著だったシーズンかなと思います。
こちらが過去3年分の球種の変更になるんですけど、全然違いますね。フォーシームがグッと減ってきたんですね。ただフォーシームも割合は減っているんですけど空振りを取る割合は高まっていて、ボールの質は良くなっているんですね。カッターだったりシンカーが大きく増加していまして、逆に山本選手の代名詞みたいなカーブは、だいぶ使用割合が減っているんですね。
おそらくドジャースのコーチ陣やアナリストなんかと話していると思うんですけど、空振りが取れなくなりつつあったカーブをちょっと少なくして、新しい球種を加えて相手バッターに慣れさせないというようなことをやっていたんじゃないかなと思います。しかも、スライダーを抜いても5球種が10%以上投げられるので、相手にとってはかなり厄介ですよね。前の年と比べても明らかにいろんな球種を使えているということですね。
これは本当に相手バッターにとっては厄介だと思っていて、それがよく出ているのが左右の球種構成とハードヒット率というところになります。特に右バッターの方に注目していただきたいんですけど、シンカーをここ2年でグーンと使い方を伸ばしているんですね。山本投手は実は右バッターの対応がちょっと苦手だったんですね。
真ん中の表を見ていただくと、ハードヒット率が2024年が44.9%で、昨年が47.4%と、右バッターに強い打球を打たれる割合が高かったんですけど、今年に関してはシンカーなどを導入してハードヒット率が38.1%まで抑えているんです。元々左バッターに対してはかなり上手に対応していたのが、課題だった右バッターに対して新しい球種を入れて長打を打たれる割合がめちゃめちゃ減ったので、今年も安定した成績を残していますよというのがわかるかなと思います。
これって、そんなに簡単に習得できて実戦で使えるレベルになるものなんですか?ゲームだったらできそうですけど。
めちゃくちゃ器用なんでしょうね。大きなチェンジはしなくても、明らかにカーブとスライダーという曲がり球を少なくして、カッターだったりシンカーだったりちょっと動かす球を増やしていくというのは、空振りを取る・取らないというのもあるけれども、そうやって打たせて取るという方向にちょっとマイナーチェンジしてきているのかなという感じはしますね。でもどれを投げても一級品なんですけどね。
たまに投げるカーブとかめちゃくちゃ効くじゃないですか。その後に投げる球がすごく効いてくるので、それでフォーシームも多分空振りが取りやすくなるんでしょうね。
対右打者のハードヒット率38.1%というのは、去年の47.4%から見ると10%近く下がったということですよね。
強い打球はヒットになる割合が高くなるので、ここを抑えるのがピッチャーとしてやれることとしては最大級の改善をしたと言っていいと思いますね。
まだまだ進化途中と見ていいんですよね。
また来年も多分ちょっとずつマイナーチェンジを毎年やっていくんだろうなと思っていて、こうやって戦略的に変えているのは大谷選手もそうですし、ダルビッシュ投手もそうです。日本人選手はそういう意味で本当に器用で、しかも相手に慣れさせないために自分の持っている武器を戦略的に変更できるというのは、本当に特別な特性なのかもしれないですね。
現役の時ってどうでしたか?
慣れる・慣れないというのはやっぱりすごく大きなことですよね。それに対してちょっとずつ変化を加えていけるかどうかに繋がっていくので。山本投手は今年2年目でしたっけ?2024年からですよね。だからもう環境にも慣れて、色々変化を加えていけている途中なのかなと思いますね。
体のサイズ的にはメジャーの中でもだいぶ小さい方じゃないですか。これでここまでできているというのは、さっき言ったボールを器用に操れるみたいなところがあるんですかね。
そうですね。ボールの質も元々持っているボールがみんなハイレベルなんですよね。しかもコマンドがめちゃくちゃ良くて、山本選手のボールは平均的にデータを見ても際に行っているんですよね。本当にコマンドが素晴らしくて、たくさんの球種を四隅の端に投げられるので、バッター側としてはなかなか難しい対応を迫られるんだろうなというのがよくわかるかと思います。
コントロールがいいですよね。どの球種もきっちり投げられるので。
まさに今回シンカーとかカッターなんですけど、年度別に「スタッフ」というのがボールの威力自体の数値で、「コマンド」が打ちにくいコースに投げ分けられたかという総合評価になるんですけど、ボールの威力も今年は上がっている中でコントロールも良くなっています。一番右の「ランバリュー」というところが、100球投げたらシンカーは平均的なボールより失点を2点ぐらい減らしますよとか、カッターも1点ぐらい減らしていますよという数値です。
24年のシンカーはマイナス1.7じゃないですか。投げる球じゃなかったのが、それを2年でプラス2.2にするわけですか?
そうです。しかもスプリットやストレートなど他にもいいボールがある中で、これをさらに武器に追加したということなので、バッターにとっては本当に厄介なピッチャーなんだろうなというところですね。
高津さん、これ数字的にすごいですよね。投げたら悪くなるボールがあるのって、基本的にはもう投げないという選択肢になりますよね。それをいい方向にするってなかなかないですよね。
しかも2年でね。結構時間がかかることだと思いますよ。でもそのシンカーはやっぱり外のバックドアだったり、左バッターのインサイドからフロントドアだったり。右の外に投げる右ピッチャーのシンカーってすごく難しいんですよ。それを操れるようになったのでこの数字になったのかなと思いますけどね。右のインコースに投げるのはよく投げていましたけど、右の外にも外からストライクを投げてくるコントロールができたので、バッターとしては厄介ですね。
僕が野球をやったことがなくて恐縮なんですけど、右投手だったらスライダーとかカーブって結構簡単に習得できるのかなというイメージがあるんですよ。逆にシンカーって習得がすごく難しいイメージがあるんです。
でもね、基本的には投げたら内旋を使うから、こういうシュート回転はしていくんですよ。自然にシュートしますよね。ただ、それを外から曲げるのがすごく難しいんです。こっちに行くのはもう勝手に行っちゃうので、抜けていくのはありますけど、ゾーンに入れるのは確かに難しいですよね。
実戦でトップレベルで活躍しながら、裏で習得もしているんですね。いつできるようになったんだろう。中何日の間に練習して、実戦で何球かだけ使っていくみたいな感じですかね。
2024年はシンカーとかは本当に2.8%だったので少なかったんです。だんだん武器化していく中で割合を増やしているので、自信だったりボールの動きを見て「これいい動きだ」というのをチーム側と共有しながら、「じゃあこういう攻め方をしようか」とやっていったんだと思います。
さっき高津さんがおっしゃったように、こういうデータが出てきたら「もう使うな」とコーチとかも言っちゃいそうじゃないですか。普通そうですよね。「もうこれでいいから」みたいな。でもそうじゃなくて、使えるようにするんだというのが新しいですね。
逆に言うと、全然使っていない球数が少ない球種が、数年後には武器になっている可能性があるということですね。
全然ありますね。山本投手に関してもほぼ全部投げている感じなので、あとは割合を変えるしかないのかなというぐらいになるとは思うんですけど。大谷選手とかもシーズン中にいきなりツーシームを投げ始めたり、バッター側から見てどういう軌道に見えてボールの質が見えているかというところで、「これがあったらもっとバッターが打ちにくくなるよ」という分析が、今はアナリストとピッチャーでどんどんできる時代になっています。ピッチャーがどんどん変わっていく環境には今なっているんだろうなと思いますね。
わかりました。では山本投手の次に行きましょうか。村上選手、岡本選手もぜひお願いします。アダム・ダンにそっくりですよというようなデータになるんです。めちゃくちゃ似ていますね。昔は長距離砲のホームランを打つ日本人は無理なんじゃないかと言われていた時代を見てきたものからすると、嬉しいですよね。
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