米軍の珍兵器5選・後編:空飛ぶジープからゲイ・ボムまで

YouTubeで開く ↗
概要

この動画は、米軍が冷戦期から現代までに開発・構想した「珍兵器」を紹介するシリーズの後編である。今回取り上げるのは、空飛ぶジープ「エアジープ」、ステルス実験艦「シーシャドウ」、四足歩行ロボット「LS3」、ハチドリ型ドローン「ナノ・ハミングバード」、そして構想段階で消えた「ゲイ・ボム」の5つだ。動画は、いずれも笑い話に見えながら当時は本気で検討された計画だったという点に注目している。

6分で読めます
0:28

空飛ぶジープ「エアジープ」

最初に紹介されるのは、ピアセッキ・エアクラフトがアメリカ陸軍の「フライングジープ計画」のもとで1950年代末に開発したVTOL実験機、エアジープ(VZ-8 Airgeep)である。車体の前後に3枚ブレードのダクテッドローターを1基ずつ配置し、その間に座席を置くという独特のレイアウトだった。

基本はパイロットとオペレーターの2人乗りである。改良型のエアジープIIでは3人分の座席が追加され、最大5人が搭乗できる設計になった。エアジープIIには射出座席も設けられ、地上を3輪バギーのように自走する機能まで盛り込まれていたという。

開発当初はピストンエンジン2基を積み、地形に沿って低空を飛び回る「空飛ぶジープ」として、ヘリコプターより小型で扱いやすい戦術輸送機を目指した。試験では時速100kmを超える飛行も達成したが、操縦の難しさや、安全性、機構による整備負担の大きさが課題として残った。最終的には「やはりヘリコプターの方がいい」という結論になり、実戦配備には至らず、博物館に残るだけの珍兵器になったと動画は説明している。

2:09

ステルス実験艦「シーシャドウ」

2つ目は、ロッキードがアメリカ海軍とDARPAのために1980年代前半に建造したステルス実験艦、シーシャドウ(IX-529)である。全長は約50m。船体の下にある2本のフロートで船体を支えるSWATH(小水線面双胴船)方式を採用しており、この構造によって波高5mの荒れた海でも高い安定性を示したと紹介されている。

外観は通常の艦艇とは大きく異なる。艦橋のような突起がなく、窓や凹凸もほとんどない。船体の面を斜めに切り落としたような形にしてレーダー反射を抑える構造を組み合わせていた。夜の海で試験航行させ、レーダーからどれだけ姿を消せるかを極秘にテストしていたという。

動画は、以前紹介した高速ステルスボート「ゴースト」とも似たコンセプトだと触れている。ゴーストは2000年代後半に試作艇が完成し、高速性とステルス性のデモでは高い評価を得た。しかし技術や特許をめぐってアメリカ政府と裁判沙汰になり、悲しい結末を迎えた一隻だと説明されている。

シーシャドウの試験は1984年頃から行われ、1993年に公開されるまで長く機密扱いだった。排水量は約560t、乗員は4名程度とごく少人数で動かせた一方、居住や積載のスペースは限られており、あくまで実験艦にとどまった。自動化による少人数運用の実証も行われたが、量産されることはなく、2012年にスクラップ処分となっている。

動画によれば、斜めの面で構成された上部構造やレーダー反射を抑えたシルエットには、ズムウォルト級や沿海域戦闘艦など、後のアメリカ海軍のステルス艦設計と共通する要素が多く見られる。そのためシーシャドウは、こうした次世代ステルス艦のための技術実験艦だったと考えられている、と紹介している。

4:24

四足歩行ロボットラバ「LS3」

3つ目は、DARPAがボストン・ダイナミクスと共同で進めた四足歩行のロボットラバ、LS3(Legged Squad Support System)である。分隊の荷物や装備を自律的に運び、悪路や山岳地形でも兵士についていくことを目標としていた。2010年代初頭には海兵隊とのフィールドテストが行われた。

しかし実験では、エンジン音がうるさすぎて敵に位置が知られてしまうことや、整備負担が大きいことといった問題が浮上した。2015年に計画は棚上げとなり、LS3はお蔵入りになった。動画は、映像のインパクトは抜群だったが実戦投入には一歩届かなかった兵器だと評している。

ただし四足歩行ロボットの研究そのものは続いた。ボストン・ダイナミクスの「スポット」をはじめとするロボット犬は、現在ではアメリカ軍が監視、偵察、基地警備、物資運搬などの試験運用に使い始めているという。動画はLS3を、失敗作というより、ロボット犬の時代に少し早くたどり着いてしまった先駆け的な兵器として位置づけている。

6:09

ハチドリ型ドローン「ナノ・ハミングバード」

4つ目は、本物のハチドリにそっくりな極小ドローン、ナノ・ハミングバードである。アメリカのエアロバイロンメント社が、DARPAのナノ・エア・ビークル計画の一環として開発した。

動画はまずモデルとなったハチドリについて、毎秒50〜80回の高速で羽ばたき、空中で静止するホバリング能力を持つ世界最小の鳥だと説明する。このハチドリに似せたドローンは翼幅およそ16cm、重量わずか19gという極小サイズで、その機体にカメラと通信装置を搭載している。羽ばたきだけでホバリング、前後左右への移動、旋回ができ、時速18kmで飛行し、最大11分飛べるとされている。

2011年には、屋外から建物内へ侵入して室内を偵察するデモ映像が公開された。窓辺をつたっても気づかれにくいシルエットで、建物内に入って周囲を観察し、カメラ映像をオペレーターに送信する様子が示された。

動画によれば、米軍は現在こうした超小型ドローンの開発に力を入れており、小さなヘリコプター型のナノドローン「ブラックホーネット」を実際に運用している。ポケットに入れて持ち運べ、飛行時間は30分程度。動作音は非常に静かで、曲がり角の向こうを安全に確認する用途などに使われているという。ナノ・ハミングバード自体の実戦配備の詳細は公開されていないが、本物の鳥にしか見えない監視ドローンというコンセプトは、まさに現代の珍兵器だと動画はまとめている。

8:20

構想だけで終わった「ゲイ・ボム」

最後は、実物が作られる前に没になった「紙の上の兵器」、ゲイ・ボムである。1994年、アメリカ空軍のライト研究所は、敵に不快な症状や混乱を引き起こす、あるいは匂いや色で識別しやすくするといった化学物質など、いくつもの非致死性化学兵器のアイデアをまとめた提案書を作成した。

その中の1つに、敵兵同士が性的に強く惹かれ合うような強力な媚薬を散布するという、動画の言葉を借りれば「現代では考えられないような」アイデアが含まれていた。メディアがこれを「ゲイ・ボム」と呼んで報じたという。

しかし、散布するだけで敵兵同士が急に互いに欲情し出すような薬は存在せず、実現可能性も極めて低い、現実離れした机上の空論だったと動画は説明する。この構想は予算要求こそ行われたものの、実際の研究開発には進まなかった。後に機密文書の公開で存在が明らかになり、冷戦後の米軍が生んだ「黒歴史系兵器」として語り継がれることになった。

9:32

珍兵器に共通するもの

動画は締めくくりとして、紹介した兵器はどれも一見すると笑い話のようだが、当時は本気で検討され、莫大な予算と人材が投入された現実の計画だった点が共通していると述べる。結果的にほとんどは試作や実験の段階で終わり、中には実戦で使われなくて本当に良かったと言いたくなるものもあった。

そのうえで、こうした兵器の裏側には、敵にどう勝つかだけでなく、どこまでやってよいのかという倫理の問題や、技術の使い方をめぐる悩みが常について回っていることも見えてくる、と動画は結んでいる。