会話を「資産」として残し、探し、使うには:Notta 田村清人氏と澤円氏が語る音声AIプラットフォーム

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概要

パシフィコ横浜で開催された「Rakuten AI Optimism」で、PIVOTのセッション「いまビジネスで価値が高まる“会話資産” 音声AIプラットフォームが変える未来」が行われた。登壇したのは、Notta COOの田村清人氏と、圓窓代表の澤円氏である。司会はPIVOTの柴田氏が務めた。

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このセッションの中心にある問いは、会議や雑談、電話で交わされる会話を、どうすれば記録するだけで終わらせず、ビジネスに使える資産にできるかというものだ。田村氏は、NottaをAI文字起こしツールから、音声を価値に変える「音声AIプラットフォーム」へ広げようとしていると説明した。澤氏は、会話をデータとして扱えるようになると、「言った言わない」問題の解消やイノベーション、若手の評価にまで影響が及ぶと論じた。

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文字起こしツールから音声AIプラットフォームへ

冒頭で田村氏は、会場にもNottaを文字起こしツールとして使った人がいるだろうと述べたうえで、そこを起点に「音声を価値に変える」プラットフォームを作ろうとしている会社だと自社を紹介した。

司会の柴田氏は、今年3月まで大学院に通っており、修士論文のインタビューの文字起こしでNottaを使ったと話した。速く正確で、インタビューのどの時点にどの発言があるかも示してくれたため助かったという。

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音声とAIの組み合わせが広がるのは「必然」

テキストとAIの組み合わせはGeminiやChatGPTで身近になったが、音声とAIの組み合わせも広がっているのか。この問いに澤氏は「必然」と答え、理由を二つ挙げた。

一つ目は、音声データの扱いにくさが解消されたことだ。澤氏によれば、文字起こしはかつて「テープ起こし」と呼ばれていた。カセットテープのような音声はシーケンシャルなデータで、最初から順に聞かなければ中身が分からない。そのため時間がかかるという制約がずっとあった。AIは音声を瞬時にデータ化して処理できる。澤氏はこれを大きな変化だと位置づけた。

二つ目は、日本人の英語へのコンプレックスである。澤氏は、日本は人口あたりの英会話学校の多さが世界的に見ても非常に高いと述べた。だからこそ、ドラえもんの「ほんやくコンニャク」は夢の道具だった。それが今や現実味を帯びており、このセッションでも登壇者の背後に翻訳表示が出ていると澤氏は指摘した。

さらに澤氏は、日本の「勝ち筋」になりうる点も挙げた。日本はロボットが最初から友達だった国だという。鉄腕アトム、ドラえもん、アラレちゃんがいて、味方として描かれた存在には鉄人28号、マジンガーZ、ガンダムがいる。一方、欧米ではターミネーターのようにロボットは襲ってくる存在として描かれることが多い。澤氏は、最初からフレンドリーだったという違いから、日本人はAIと付き合いやすいのは間違いないだろうと述べた。

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コロナ禍を経て見直された「話したほうが早い」

前半のテーマは「見直される会話の価値」である。連絡手段の主流はテキストへ移ったのに、なぜ会話の価値が見直されているのか。澤氏は、「言ったほうが早い」という感覚は誰にでもあると述べ、そのうえでテキストやツールを介したやり取りに人々が疲れたことを挙げた。

2020年以降のコロナ禍では、ツールを介さなければ人とやり取りができなかった。隣の人に少し話しかけることができず、「ここからここまでが会話の時間」と区切り、その前にテキストで調整する必要があった。コロナ禍が明けて、やはり話したほうが早いという感覚が戻ってきた。ただし澤氏は、これは不可逆でもあると強調する。リモートワークで仕事をした経験はなかったことにはならない。ツールを介するやり取りと直接の会話という複数のパターンがあることを誰もが知っている。その前提をコンテキストとして踏まえたうえで会話する必要がある、というのが澤氏の見方である。

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「言った言わない」から人類を解放する

澤氏は、ビジネス上のトラブルの王道として「言った言わない」を挙げた。会場に経験者を尋ねると、質問を言い終える前に多くの手が挙がった。澤氏は自身の家庭でもよく起きると笑い、たいていはお互いに覚えていないだけだと述べた。

ただし澤氏は、これを単なる記憶違いの問題とは見ていない。「言った」という行為は、発言者が最も覚悟を持って口にしているものであり、重要な意思決定であることも多い。その重みが共有されていないことが問題になる。だからこそ会話をデータにしておくことが、「言った言わない」問題から人類を解放することにつながる、と澤氏は語った。昔は電話のあと、揉めないように「いま話したことをメールで送ります」とやっていたという。柴田氏も、同じ理由で「テキストでください」と頼んでいたと応じた。

田村氏も、先週同僚との間で「言った言わない」が起きたと明かした。Nottaを使っている会社でも起きる理由は、立ち話のような会話はNottaで録音しておらず、Zoomの会議でもないからだという。そうした会話もより自然な形で録音し、文字起こしして後から振り返れるようにしたい。ただし田村氏は、そこは自分たちもまだ発展途上だと述べた。

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議事録は「取るだけで誰も見ない」

田村氏は、録音して終わりではなく資産に変えることが重要だと述べる。顧客を見ていても、議事録は取るだけ取って、後で誰も見返さないことが多いという。

その理由として田村氏がいつも挙げるのが、「人間はみんな話すのが好きで、読むのが嫌いで、人の話は最後まで聞けない」という見方だ。忙しい中で20個、30個の議事録から「あのとき誰々にあれを言った」という箇所を探すこと自体が、今度は新しい問題になる。田村氏は、この「探す」作業こそAIが得意とするところであり、探す部分にAIを使うのがこれからのやり方だと述べた。

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重要事項説明や経営者のアイデアメモでの使われ方

会話が記録されないことで起きる課題として、田村氏が顧客から最もよく聞くのは重要事項説明に関するものだという。説明の言い方や内容について、後から顧客に「聞いていない」と言われる。重要事項説明には標準やルールがある。ルールをテキストに当てはめて確認することはできても、人が話した内容の判定にはこれまで主観が入っていた。田村氏は、AIがより客観的な助手として、ルールに照らすと「あなたの言い方では重説のルールに当てはまらない」と指摘できるようになってきたと説明した。

経営者の使い方も紹介された。田村氏が話す経営者たちは、これまで自分の考えを執行役員や秘書、社長室長などに伝え、全社向けに「翻訳」してもらっていたという。アイデアは思いついたときに口にしないと消えてしまうが、その場で書ける状態にあるとは限らないからだ。今はAIがその役割を代替し始めている。ただしChatGPTを使うにもタイピングが必要で、移動中には打てない。そこでとりあえず録音してテキスト化する。テキスト化さえすれば「AIは最強」なので、これが最近の経営目線でのAIの使い方だと田村氏は語った。

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現場で何が起きているかを見える化する

AIで仕事がなくなるという議論についても、田村氏は自身の経験から話した。最近家を買った田村氏は、家を買うときは人間に説明してほしいと感じたという。人生の大きなライフイベントでは、人と人との関わりが必ず残るというのが田村氏の見方である。

しかし人間同士の会話は、その場にいなければ中身が見えない。現場で何が起きているかは本社から見えない。田村氏は、それがようやく見えるようになったのがこの2、3年の発展だと述べた。ハラスメント、詐欺、カスタマーハラスメントなど、社内だけでなく会社と顧客の間でも、どちらの立場からも問題は起こりうる。ブランドにも関わる領域をAIで管理できるようになることは大きな進歩だ、と田村氏は評価した。

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記録するだけでは「古新聞」になる

澤氏は、記録するだけでは古新聞のように箪笥の肥やしになり、場所を取るだけだと述べた。記録は第一歩にすぎない。次に「見つけられること」、さらに「使える状態であること」、そして複数の目的に応じて使い分けられることが必要だという。

目的の一つとして澤氏が挙げたのがイノベーションである。澤氏によれば、イノベーションとは「新結合」の意味であり、「技術革新」と訳すのは誤りだ。AというアイデアとBというアイデアを組み合わせ、新しいCを生み出す。組み合わせが新しければそれはイノベーションである。そのためには、ある程度粒度のそろった要素が複数あり、組み合わせられる状態になっていると起きやすい。雑談の中でリアルタイムにアイデアが生まれることはよくあるが、そうした機会が必ず訪れるとは限らない。それを機会損失にしないために、発言が加工・結合・再利用できる状態にしておくことが大事だと澤氏は語った。

見つけやすさについて、澤氏は「ググれカス」という言葉を引いた。検索語は人間が思いつかなければならないので、実は残酷な言葉だという。澤氏は、自分くらいの年齢になると会話が「あれ」「これ」「それ」といった指示代名詞ばかりになると笑う。会話データであれば、言葉を正確に思い出せなくても、何月何日に誰が言ったか、あるいはその人の顔といった周辺情報からたどり着ける。ぴったりの言葉を思いつかなければ見つけられなかった情報に、別の手がかりから到達できるようになる。澤氏はそこに、会話をデータにしていく意味があると述べた。

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音声AIプラットフォームの定義とNotta Brain

後半のテーマは「音声AIプラットフォームの存在意義」である。田村氏の定義はシンプルだ。「読むのは嫌い、書くのは面倒」という人でもAIを使いこなせるようにするのが音声AIプラットフォームだという。

田村氏によれば、同社が計算したところ、Nottaには毎月およそ100年から120年分の会話が入ってきている。それは大きな資産である。しかし資産は運用しなければ増えない。これをどう運用するかが音声AIプラットフォームの本懐だと田村氏は述べた。人それぞれ異なるコンテキストを持つ中で、澤氏の言うように正しいコンテキストを組み合わせ、そこから知見を得ることがこれからの課題だという。

その一つの答えが、AIエージェント「Notta Brain」である。検索や、点と点を線でつなぐような作業を、使い慣れたチャットインターフェースで提供する。田村氏自身の使い方としては、COOとして「先週の会議で自分が把握しておくべきキーポイントは何か」と尋ねると、先週というコンテキストに絞ったうえで、田村氏が普段何に注意しているかを踏まえてレポートを作ってくれるという。

営業部門を見ている立場からは、うまくいった商談とうまくいかなかった商談の比較にも使う。失敗が顧客との相性によるものなのか、特定の営業担当者のやり方に皆が参考にすべき点があるのか。1、2回の商談では分からないことも、10回、20回と積み重ねればパターンが見えてくる。それをAIが一度にやってくれるというのが田村氏の説明だ。成果物として、いわゆる「ペライチ」を作ることもでき、PowerPoint形式で10〜20枚のスライドにまとめることもできる。記録、分析、出力までを一つの中で完結できるという。

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「10人中10人がChatGPTに貼っていた」

このコピー&ペースト不要の設計は、ユーザーの声から生まれたと田村氏は明かした。最もアクティブにNottaを使っている顧客に、文字起こしをダウンロードした後に何をしているのかを聞いた。すると10人中10人が、ChatGPTに貼り付けてプロンプトを書いていると答えた。それならコピペしなくて済むプロダクトを作ればよい、というのが開発のヒントになったという。

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テクノロジーの本質は「外部化」

Notta Brainについて意見を求められた澤氏は、テクノロジーの本質に触れた。テクノロジーの一つの機能は「外部化」だという。車は歩行という行動の外部化であり、AIは思考の外部化、つまり自分が考えることを拡張するものだと位置づけた。

澤氏は、ビジネスパーソンの作業の6割は繰り返しだと述べる。歩行も手足を交互に出す繰り返しであり、それを外部化したのが車だ。同様にAIは、繰り返しの作業ややり直しを解決してくれる。Notta Brainのように一気通貫で処理してくれるものは、その繰り返しをぎゅっと圧縮する。圧縮によって生まれる最も大事なものは時間であり、その時間は自分の頭で考えることに充てられる。作業している間は考えられないからだ。澤氏は、自分の時間を思考に投資できるようになることの価値を強調した。

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AIレコーダー「Notta Memo」とUSB-C対応ケース

Nottaはソフトウェアだけでなくハードウェアも手がけている。田村氏が紹介したのは、同社が「AIレコーダー」と呼ぶボイスレコーダー「Notta Memo」である。

今回見せたのはケース付きのものだ。ケースはスマートフォンの背面に貼り付けられるため、なくしにくい。電話がかかってきた際には、相手の許諾を取ったうえで、通話内容を自動的に録音・文字起こしできるという。

田村氏の「一押しポイント」はケースの充電方式である。本体を薄くして胸ポケットに入るようにしたため、昨年のリリース時には専用の充電ケーブルが必要だった。これが大変不評で、ケーブルをなくしたらまた買わなければならないのかという声があったという。そこで今年、USB-Cに対応したケースを出した。USB-C端子がぎりぎり入る薄さまで頑張って作ったといい、より頑丈になり、スマートフォンの裏にも付き、スマートフォンと同じUSB-Cケーブルで充電できるようになった。

使い方は、ボタンを押すと録音が始まり、半径3〜5メートルほどの会話を録音できる。録音を停止すると自動的にクラウドにアップロードされ、話者を識別した文字起こしが出てくる。そこからNotta Brainなどを使って、「あのとき誰とどんな話をしたか」を分析することもできる。柴田氏は、大量の取材をしていると自分が何を話したかも覚えていないため、話者識別に助けられたと話した。

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スマートフォン録音との違いも「顧客の声」から

スマートフォンでも録音できるのに、なぜ専用機なのか。田村氏によれば、これも顧客の声から生まれた。スマートフォンで録音している人には、Nottaのアプリでリアルタイム文字起こしをする人と、録音ファイルを一生懸命アップロードする人の2種類がいた。後者にモバイルアプリの存在を知っているか尋ねると、知っているが、アプリで文字起こしするとすぐに電池がなくなると答えたという。そこで録音という仕事を専用機に外部化し、スマートフォンはAIの入り口として使えばよい、という発想に至ったと田村氏は説明した。

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3000回超の音声配信と「30分話せばブログ10本」

澤氏は自身のケースを紹介した。8年間、1日も休まず毎日音声配信を続けており、回数は3000回を超える。最初は台本を書いていたが、面倒になり、500回目あたりから書かなくなった。その結果、前に何を話したかをまったく覚えていないという。おそらく同じ話を何度もしているはずだと澤氏は言う。一度ある人に頼んで文字起こしをしてもらったが、また500回分ほどたまっている。これからはスマートフォンに向かって話す録音をそのままAIに入れておけば、何を話したかをすべて把握できるのではないか、と澤氏は語った。

田村氏も、商談以外の「ちょっと恥ずかしい」使い方を披露した。田村氏は筆不精で、部下から「ブログやnoteを書くと言っていた件はどうなったか」と、2週間後に聞かれることがよくあるという。先日は部下から、どうせ書かないのだから30分のミーティングを予約した、30分黙らずにいま考えていることを話してほしい、編集は自分たちがやる、と言われた。田村氏によれば、30分話すと普通にブログやnoteが10本ほどできる。忙しい経営者やコンテンツを作る必要がある人に勧めたい使い方だという。

1500万ユーザーの記録が出発点

なぜNottaは音声を資産に変えるところまで踏み込めるのか。田村氏は、すでに記録の段階までNottaを使っている顧客が多いことを最大の理由に挙げた。田村氏によれば、グローバルの登録ユーザー数は1500万人を超え、日本国内の企業ユーザーは5000社に上る。記録していなければ、組織の記憶や資産にはできない。

同社は昨年、今後何をすべきか、文字起こしだけでよいのかを社内で議論したという。その結果、既存ユーザーやこれから使う人に「より遠くの未来」を見せられるプラットフォームにならなければならないという話になった。その答えの一つがNotta Memoで、これまでNottaで記録できていなかった新しい会話を記録できるようにする。もう一つがNotta Brainで、検索に加え、たとえば澤氏の3000回以上の配信から、どの回の内容が重複しているか、どのテーマが繰り返し語られて醸成されてきたかを分析できるのではないかと田村氏は述べた。

データの預け先としての安全性

会話データを預けることへの不安について、田村氏は「当然です」と応じた。人は「ここだけの話だけど」と話すことが多く、会話の内容はそれほどセンシティブだからだ。田村氏によれば、Nottaは日本国内にデータセンターを持ち、すべてのデータをそこで処理している。また顧客のデータを使ってAIを学習させることは一切行っていないという。AIは進化していく必要があるが、同社は進化しつつあるAIを応用して顧客に価値を届ける立場であり、顧客の音声データを厳重に守ることが使命だと田村氏は語った。

28:29

AIが奪うのは「下積み」、声に出したアイデアが証拠になる

音声プラットフォームの存在意義について、澤氏はキャリアの観点から論じた。AIが仕事を奪うとよく言われるが、澤氏によれば、実際に奪うのは「下積み」である。新卒社員が修行時代にやるような作業を、AIは一瞬で終えてしまう。そのため新卒採用の意義が今ビジネス界で問われている。澤氏は、社会人を育てることは社会的な使命なのでそれは別の問題として取り組むべきだとしつつ、下積みの作業がなくなるのは事実だと述べた。

では若手はどうすればよいのか。澤氏は、下積みを飛ばして一足飛びに「何者か」になることを狙ってよいのではないかと提案する。そのためには、思いついたことを声に出す。声は消えていくが、誰が言ったかが紐づいていれば、「あの人がこのアイデアを出した」というエビデンスが残る。そのエビデンスによって、面白いアイデアを出した人というポジションを取れれば、それを実行して社会に貢献できる。これまでは作業によって自分の価値を証明していたが、これからは声に出し、アイデアをどんどん出すことで証明する。9割は大外れかもしれないが、1割当たれば御の字だと澤氏は言う。それが資産化されれば、若手の誰々がこうしたアイデアを持っているという証拠になり、本人のキャリアにも会社にもプラスになるという見方だ。

澤氏は、良いアイデアは一人歩きし、発案者から切り離されてしまうことも問題だと考えてきたと述べた。自分が言ったはずのアイデアを、マネージャーがさらっと自分のものにしてしまうことも世の中には多い。発言が記録されればそうしたことは起きにくくなる。声に出すことが自分にとってプラスになると分かれば、意見がどんどん出るようになり、会社としてもイノベーションが起きやすくなるのではないか、と澤氏は語った。柴田氏は、評価軸まで変わるなら素晴らしいと応じた。

雑談から生まれたポスト・イット

締めくくりに田村氏は、多様な能力を持つ人を生かせる組織が強くなっていくと述べ、その基盤、インフラになりたいと語った。会話は資産であり、資産である以上、意識的に運用しなければたまらないし増えない、というのが田村氏の結論である。

澤氏は、世の中の面白いものはきっちりした会話ではなく雑談から生まれることが多いと述べ、ポスト・イットの例を挙げた。澤氏の説明によれば、失敗作としてまったくくっつかない接着剤を作ってしまった人と、音楽をやっていて楽譜に挟んだしおりが落ちることに悩んでいた人との雑談から、「あまりくっつかず、ぴっと剥がせる接着剤がいいのでは」という発想が生まれたという。

雑談をデータ化して価値を与えられれば、さまざまな場所でイノベーションが起きる。さらに、それを誰が言ったのかまでフェアに評価されるようになれば、皆が幸せになるのではないか。澤氏はそう述べて、セッションを締めくくった。