猪子寿之と堀江貴文が語るAI時代のアート、料理の起源、そして興行ビジネス

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概要

堀江貴文の料理番組「ホリエキッチン」の第3回に、チームラボ代表の猪子寿之がゲストとして登場した。堀江がサンフランシスコの魚介料理チョッピーノを作る横で、二人は近況、AIとアートの関係、チームラボの新作の考え方、初めて会った頃の話をした。中盤は「人間はなぜこれほど旨味を求めるのか」という猪子の問いから、料理の起源をめぐる議論に進んだ。終盤は堀江が、アメリカで開かれたワールドカップ、F1、日本のスポーツ中継、阿波踊りについて語っている。猪子は自分の考えを「科学的ではない」「勝手な結論」と断りながら話し、堀江は既存の知識で応じたり、ビジネスの事例を持ち出したりする。この組み合わせで会話が進んだ。

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チョッピーノという料理と、この日の食材

この日の料理は猪子のリクエストで決まった。堀江はチョッピーノという料理を知らなかったという。猪子の説明では、チョッピーノはサンフランシスコのイタリア料理である。イタリアは地域ごとに料理がまったく違うが、サンフランシスコにはさまざまな地域からイタリア系移民が集まったので、それらが混ざった料理になった。港町の料理なので、日本でいう漁師飯に近い。その日に獲れたものをどっさり入れる料理で、サンフランシスコでは必ずカニが入り、エビも入る。猪子にとってチョッピーノは「一応カニ料理」だった。ところがこの日の鍋にカニは入っておらず、堀江が謝る場面もあった。

堀江は旬の食材をそろえていた。北海道産のツブ貝、今が旬だという千葉県産のキス、むきエビ、石川県産のスルメイカである。キスは天ぷら粉でフライにしてから加えることにし、猪子はそのままでも十分おいしいと喜んだ。スープの味付けはトマトとニンニクが中心で、野菜は玉ねぎとセロリくらいしか入れていないと堀江は説明した。締めのパスタには淡路島の製麺会社の生パスタ「もっちリーニ」を使った。堀江によれば、この会社はもともとうどんやそばを作っていたが、儲からないので全国のイタリアンやフレンチに卸す生パスタへ事業を移したという。

酒は、カリフォルニアの白ワイン「ブレッド・アンド・バター」のシャルドネだった。堀江は5,000〜6,000円程度で買えるはずだと話し、サンフランシスコの料理によく合うと二人で盛り上がった。最後はスープとして食べるより具とパスタを一緒にしてしまい、堀江は「チョッピーノではなくペスカトーレになった」と笑っていた。

和牛マフィアはチームラボを「ベンチマーク」している

近況の話になると、堀江は自身が関わる飲食店「和牛マフィア」が最近「ウルトラ」という店を作り、チームラボを参考にしていると明かした。猪子は即座に「しないで」と返している。

堀江によれば、店の客の約7割は外国人で、チームラボも来場者の7割ほどが海外からの客なので、構造が似ている。来店した外国人にスマートフォンのカメラロールを見せてもらったところ、ほとんどがチームラボの写真だったという。浅草寺や東京タワーの写真もあるが、そうした場所では何枚も撮らない。チームラボでは何十枚も撮っていて、カメラロールがチームラボに「独占」されている。堀江はこれに気づき、自分たちの店もカメラロールに残るように設計しようと考えた。

具体的には、店内にレーザーを入れ、炎を使った演出や菊の花を撒く演出を取り入れた。炎の演出はダクトから火事になるのではないかと批判され、菊の花は料理研究家のリュウジから食べ物を粗末にするなと言われて炎上したという。堀江は、ダクトは炎用のものにしてあり消防も理解していると反論した。菊の花についても、刺身のつまの菊は誰も食べないし、結婚式では昔から花やライスシャワーを撒き、相撲では塩を撒くと述べ、食べ物を粗末にしているわけではないという立場をとった。京都の団扇に菊の花を載せて舞わせ、スローモーションで撮るとみんなが写真を撮ってくれるとも話している。

堀江は、客層も「知的で裕福な人たち」という点でチームラボと重なっていて、「チームラボ戦略」が当たってきていると語った。猪子は、自分にそんな戦略はない、もともと誰も来ないところでのんびり生きていたかったのだと応じている。

AI時代にアートの価値は高まるのか

堀江は猪子に、AI時代にアートの価値は高まるのかと尋ねた。猪子は最初「わからない」と答えた。自分たちの話をするとややこしいので一般論にしたいと言って、キーファーという作家を例に挙げた。

猪子の説明はこうだ。キーファーはかなり高齢の作家で、人生をかけて作品を作ってきた。作り方も複雑である。その作品は情報から始まって情報で終わるものではなく、そもそも情報から始まってすらいない。最終的には物質の塊、溶岩が冷えて固まったような物体になる。すべてではないが、こうした作家の多くの作品は情報とあまり関係がないので、AIにすぐ駆逐されるという話にはならず、影響をあまり受けないかもしれない。

堀江は、以前秋元康から聞いた話を持ち出した。ピカソがなぜすごいのかといえば作品数だ、という話である。創作は試行錯誤しなければ何が正解かわからない。どの作品にも全力で取り組むが、何が当たるかはやってみないとわからない。だから秋元はあれほど多くの作品を作っている。堀江自身も最近秋元に歌を書いてもらったという。この考え方に立つと、AIは作品を大量に作るための格好の道具ではないか、と堀江は問いかけた。猪子の返答は、それは現状では情報の中の話であり、実際に扱っているのは情報ではない世界の話だ、というものだった。

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チームラボはAIをどう使っているか

では、チームラボはAIで作品を作っているのか。猪子は「あまり作っていない」と答えた。調べものや作業の削減には使うし、チームラボには情報の部分、つまりソフトウェアの部分が多いので、ソフトウェアを書くことなどには大いに使う。しかし、AIそのもので表現することにはあまり興味がないという。

堀江が「創作には使わないという線を引いているのか」と確認すると、猪子は線を引いているというより興味がないのだと言い直した。ツールとしては非常に使えるが、AIそのもので表現を作ることには関心が向かない、という説明である。

堀江はさらに、Midjourneyが「Midjourney Medical」を立ち上げ、数十万個の半導体素子で超音波を使い、MRIのように全身をスキャンするデバイスを発表して話題になっていると紹介した。フィジカルAIのように、物理世界にAIが生かされる文脈ならありではないかという問いである。猪子は、ありだがそういう分野は過酷な競争になる、と答えた。堀江は、猪子はいつも「競争のないところに行きたい」「誰も興味がないところでのんびり生きたい」「自分に注目するな」と言っている、と笑った。

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光だけでできた球体と、「流れ」が生む存在

猪子はスマートフォンで作品の写真を見せながら、最近の制作について説明した。京都の施設とロンドンの展示に出している作品は、光が球体になっているものだという。ガラスの膜もなく光だけで球体ができるのは、物理的にはおかしい。しかし実際には、人間の認識がそれを勝手に球体にしている。堀江が「錯覚のようなものか」と尋ねると、猪子は錯覚ではないと答えた。錯覚は現実の姿と人間が認識する姿が違うという話だが、この作品が扱っているのは、光は存在するけれどもどこに存在しているかわからない、という物理的な現象なのだという。猪子はここでも、だからAIとはあまり関係ないかもしれないと付け加えた。

麻布台の施設にも一部新作が入る予定で、猪子は前日に撮ったばかりだという写真を見せた。光だけでできているのに、そこに本当に物体があるかのように見える立体物である。どうやって思いつくのかと堀江が聞くと、猪子は「すごくマニアックな話」と前置きして大枠を説明した。

身の回りの物は物質的な結合によって存在している。一方、人間はそうではない。食べて、出して、流れ続け、その流れの中に秩序や構造が生まれている。人類はずっと物質的な結合による物体ばかりを作ってきたが、猪子はそうではない作り方をしたい。エネルギーの秩序を上げることで存在を生むような作り方で、最近はいろいろなものを作っているという。以前は違ったのかと聞かれると、以前も結局はずっとこういうことを考えていた、と答えている。

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「会うべきだ」と言われて訪ねた文京区のオフィス

話は二人の出会いに移った。堀江によれば、出会ったのは刑務所に入る前なので、もう20年近く前になる。周囲の人間が全員そろって「猪子に会うべきだ」「会ったことないのか」「絶対に合うと思う」と熱心に勧めてきたので、そんなにすごい人物なのかと思い、文京区にあった猪子のオフィスを訪ねたという。当時のチームラボはまだアート的な活動を表に出しておらず、産経新聞社のウェブサイトなど、ウェブ制作を手がけていた。猪子によれば作品はその頃から作っていたが、誰も興味がないだろうと思って誰にも言わなかった。

アートへと活動が広がったきっかけについて、猪子はいくつか挙げた。海外から作品が呼ばれるようになったこと。いちばんわかりやすいのは村上隆のギャラリーでデビューさせてもらったこと。そして最も大きいのは、呼ばれるのを待つのではなく、自分たちで場を作り展覧会を始めたことだという。

最初の展示がどれかは難しいとしつつ、猪子はわかりやすい例として、沖縄のデパートの催事場のような場所で開いたポップアップを挙げた。2001〜2002年の創業期から、展示をすると人はぎゅっと集まった。ただ、チームラボに入っても、それが何なのかは誰にもよくわからなかった。人は来ても次にはつながらず、どう継続すればいいのかもわかっていなかった。それでも誰もそんなに興味はないだろうと思っていたが、実際にはどんどん大きくなっていった、と猪子は振り返っている。

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旨味への疑問から毎日料理を始めた

猪子は料理を毎日していると言い、堀江は驚いた。料理を始めた理由も独特だった。20歳くらいで初めて海外へ行った先がたまたまロンドンで、当時のロンドンの食事には旨味がなく、耐えきれなくなった。そこで「人間はなぜこんなに旨味を求めるのか」と考えたという。

猪子の整理はこうだ。人間がおいしいと感じるものには、まず糖や炭水化物がある。次に脂肪や油がある。これらはカロリーが高いので、生物としておいしいと反応するよう進化してきたことはよく理解できる。しかし旨味については、中毒になるほど、頭がおかしくなるほど求める理由が理解できなかった。調べても「タンパク質のサーチ」と書いてあるだけで、しっくりこない。わからないので毎日作ってみることにした、と猪子は語った。

堀江は「旨味はタンパク質の原料だからだ」と答えた。猪子は、それならタンパク質そのものをおいしいと思うほうが合理的ではないかと返し、昆布とかつお節の例を出した。どちらも単独でおいしいが、両方合わせると旨味が8倍、10倍ほどになる。タンパク質のサーチなら、そのような構造にはならないはずだという。堀江は、アミノ酸系の旨味と核酸系の旨味があり、核酸はDNAの原料だと説明した。猪子は、体の構成要素ならビタミンや食物繊維などほかにもたくさんあるのに、なぜ旨味だけを異常なほど求めるのかと食い下がった。

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「料理は旨味を跳ね上げるためにある」

毎日料理をするうちに猪子が気づいたのは、次のことだった。油の量は食材の合計と料理の後とで変わらず、むしろ減ることもある。糖や炭水化物も合計値は変わらない。ところが旨味だけは料理によって跳ね上がる。堀江は「自分はそうは思わない」と笑ったが、猪子はそこから、料理とは旨味を跳ね上げるためだけに存在するのだ、という一つ目の結論を出した。

次に猪子は、ある科学者の説として、火を使った料理と人間の進化の関係を紹介した。猿は基本的に料理をせず、人間だけが料理をする。料理をするようになって消化の効率が大きく上がり、腸がとても小さくなった。それまで消化に使っていた栄養を脳に回せるようになり、脳が巨大化して人間が人間になった、という説である。

堀江はこの説を「しっくりくる」と受けた。脳神経はもともと腸から発達したものだからだという。堀江の説明では、単細胞生物は細胞膜から直接栄養を取れるが、多細胞生物は内側の細胞にまで栄養を届けなければならないので消化管が生まれ、より効率的に栄養を取り込むために神経系が生まれた。つまり腸が先にあって、そこから脳ができたのだという。猪子は、人間は血液やエネルギーの大半を脳に使っていると述べ、堀江が「だいたい3分の1くらい」と応じた。草食動物の腸が長いことにも二人は触れている。

獲得と消化で一日が終わる、という仮説

ここから猪子は、「これはオリジナルの意見で、科学的ではない」と断ったうえで自分の見方を話した。世の中を見ていると、動物の一日は食物を獲得する時間と消化する時間の合計でできているように見えるという。

ライオンは肉を食べるので消化は効率的だが、獲物の獲得に非常に時間がかかる。牛は周りにある草を食べればいいので獲得は簡単だが、消化に時間がかかる。豚やイノシシ、そして人間のような雑食動物は、獲得はライオンほど過酷ではないが、消化はライオンより長い。どの動物もなんだかんだで獲得と消化に一日を使っている。料理をするようになって消化の時間が大きく減り、人間には初めて生きるのに不必要な時間、つまり遊びの時間が生まれた。猪子はそれを文化的な時間だと考えていて、人間は料理をするようになって人間になれた、と述べた。

そう考えると、料理とは一種の「腸の外部化」だと猪子は言う。腸の外部化がうまくいっているときに、人はとてもおいしいと感じるのだという。堀江は「面白いことを言うね」と反応した。

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最初の料理は発酵だったのではないか

猪子はこの説の矛盾にも触れた。火を使う料理は、頭が大きくなっていなければできない。脳の巨大化が料理によって起きたのなら、脳が巨大化する前にはどうやって料理をしたのか。鶏と卵のような問題である。そこで猪子は、料理の原型は何かに興味を持ち、「勝手な結論」として、最初の料理は発酵だったのではないかと考えている。腸は腸内細菌の活動によって消化をしているので、それを体の外に出したのが発酵だと考えれば納得がいく、というのが猪子の理屈だった。

堀江は、ちょうど前日に同じような話をしていたと応じた。最近買収したラジオ局のスポンサーに、発酵高麗人参のサプリメントを販売する会社がある。社長はもともと歯科医で、体が弱ったときに高麗人参を見つけてサプリにしたという。堀江の説明では、高麗人参の有効成分は分子量の大きい糖類で、韓国人の腸内フローラは日常的に食べているので分解できるが、日本人で分解できるのは3割ほどしかいない。そのため日本人が高麗人参を飲んでも効きにくく、それを麹などで発酵させたのだという。堀江はさらに、日本人は昆布などの海藻を分解する腸内細菌を持っているが西洋人は海苔を食べると下痢をすることがある、逆に日本人は乳糖を分解できない人が多い、という例も挙げた。

猪子はこれを受けて、ある文化圏では体に良いが別の文化圏ではあまり効かないものも、発酵させると消化できるようになると話した。ウコンもほとんど消化できないものの一つで、インドの人たちは消化できるのかもしれない、牛乳もヨーグルトにすればだいぶいいのだろう、と続けている。

猪子はさらに、初期の人類が発酵食品を食べていた経緯を想像した。初期の人類は競争に弱く、他の動物が残した屍肉を拾って食べていたかもしれない。せっかく手に入れた食べ物を木などに隠しているうちに発酵し、無自覚に発酵したものばかり食べていたのではないか。堀江は「おそらくそうだね」と同意し、料理の要素を混ぜる、加熱、発酵と整理した。自分も考えるほうだが、そのロジックでそこまではたどり着かない、とも言っている。

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人間とAIの違いはエネルギー効率にある

堀江は、この話がAIとどうつながるのかと問いかけた。AIは発酵食品を食べないので、その辺が進化のポイントなのではないか、という投げかけである。

猪子の答えはエネルギー効率だった。AIのエネルギー効率は、堀江の言葉では「激悪どころの騒ぎではない」。一方、人間のエネルギー効率は非常に良く、猪子は「神の領域」と表現した。二人はそこが両者の大きな違いだという点で一致し、この話題は料理の完成とともに終わった。

日本人は格闘技のフォーマットを作るのがうまいが、最後は持っていかれる

食事をしながら、堀江は自身がプロデュースする「クレイジーマッスルショー」の話をした。インバウンド客に注目されているものを狙っていて、今はマッチョが注目されているので、それをミュージカルにしたという。

堀江は、日本人は筋肉や格闘技のフォーマットを作るのはうまいと話した。K-1もPRIDEも日本から始まった。しかし今はUFCに押されていて、最後はアメリカ資本にパワープレーで持っていかれる、というのが堀江の見方である。

40:00

アメリカ開催のワールドカップとF1の変化

堀江は最近、ワールドカップの日本対オランダ戦を現地で観戦した。編集者の箕輪厚介が「サッカーは陰キャのスポーツだったのに、アメリカに来て一気に陽キャのスポーツになった」と言っていたのが面白かったという。45分間走ってダッシュし続けるサッカーは「ドMのスポーツ」だが、今大会はアメリカ開催なので、前後半それぞれの中間に3分間の強制的な給水休憩が設けられた。その間、DAZNではCMが流れ、会場ではLEDビジョンにスポーツドリンクのCMが映される。試合前にはK-1のような両チームの煽りVTRも流れた。堀江は「ほとんどNFLの試合」と表現している。

チケットには公式の二次流通があり、堀江の話では決勝の最も高い席は1人500万円ほどになっている。外で転売されるくらいなら自分たちで儲けよう、という発想だという。アメリカではサッカーは人気がないと思われていたが、意外に多くの人が観に来て、チケット価格がどんどん上がっているそうだ。

堀江は、同じことがF1でも起きていると続けた。Netflixが4、5年前にドキュメンタリーを始め、1年を通して24時間チームに密着し、プライベートジェットでの移動や無線、監督がミスした選手を叱る様子まで見せた。これが話題になってアメリカ人がF1の面白さに気づき、今はインディカーではなくF1が人気になって、アメリカで3都市開催されているという。放映権料が上がってメディアからの分配金が高騰し、最下位のチームでも年間60億円ほど受け取れる。バブルの頃のように日本人がお金の力でシートを買うことは通用しなくなり、完全な実力主義になった、と堀江は語った。

100万円以上するホスピタリティルームの席は毎回完売し、そこには半分F1を見ていない人たちがいる。経費で行けてセレブと交流できるからだ。逆に、そうしたホスピタリティルームを用意できない開催地はどんどん撤退していて、フランスでももう開催されていない。モナコも2、3年前に廃止されかけ、「言うことに従うし、ホスピタリティルームも増やすから、F1は自分たちのアイデンティティなので撤退しないでくれ」と頼み込んだという。日本の鈴鹿も危ない、と堀江は見ている。

44:52

日本のスポーツビジネスが伸びなかった理由は地上波にある

堀江の考えでは、日本のスポーツビジネスがだめになった原因は地上波テレビ局であり、問題はスポンサーモデルにある。サブスクリプションなら、一度加入した人はある程度の期間やめないので、LTV(ライフタイムバリュー)を見越して投資ができる。スポンサーモデルでは、スポンサーがその回に出す金額以上のお金は出せない。

これを衛星放送で最初にやったのがルパート・マードックだと堀江は説明した。オーストラリアの新聞社出身のマードックは、イギリスの大衆紙を買収してメディア業界に入り、人工衛星が登場すると衛星放送スカイを始めた。瀕死だったイングランドの1部リーグをプレミアリーグとして名前を変え、フーリガンを排除し、サブスクで放送して大成功した。このモデルが世界に広がったという。

しかし日本では地上波テレビ局の力が強すぎて衛星放送が潰され、CS放送で残っているのはスカパーJSATくらいだと堀江は言う。そのためサブスクリプションがビジネスとして立ち上がらず、日本人はサブスクに慣れていなかった。NetflixやAmazonプライム・ビデオが出てきてようやく気づいた状態だ。一方アメリカ人はサブスクに慣れていて、スタジアムを埋め、来られない人はサブスクで観るというビジネスモデルができている、というのが堀江の対比だった。

47:55

阿波踊りと「東大連」

最後の話題は阿波踊りである。猪子は徳島出身で、歯科医の息子だ。堀江によると、二人が親しくなったのは阿波踊りがきっかけだった。2010年、収監される前の年に、猪子が突然先輩面をして「阿波踊りに行きませんか、とにかく面白いから」と誘い、堀江はよくわからないまま参加したという。

阿波踊りには「連」と呼ばれるチームがあり、その中に「東大連」がある。徳島に縁がなければ、いくら東大生でも阿波踊りには行かないので、先細りしていたらしい。そこで東大の後輩で徳島出身の猪子がなんとかするよう求められ、インカレサークル方式を考えた。東大のサークルには他大学の女子学生が多く参加していることにならった仕組みで、今の東大連は東大生ではないメンバーが多く、7〜8割は他大生だと堀江は言う。みんな「東京大学」と書かれた法被を着て踊っている。堀江が参加したのは復興1年目で、後から聞くと、東大生の割合が減るので強烈な「東大成分」を入れるために呼ばれたらしい。その後もテレビの取材があるたびに「東大成分が足りないので来てください」と頼まれているという。

堀江は、阿波踊りが最近ようやくインバウンドで知られるようになったと話した。祭りには古くからの利権や慣習があって、海外向けに強化する人がいなかったが、勝手に知られ始め、去年から外国人が増えている。これが本格化すれば阿波踊りはすごいコンテンツになる、と堀江は見ている。

堀江が特に好きなのは、「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らな損々」というお囃子の構造だという。見ているだけでなく踊れと巻き込む参加型の仕組みで、今みんなが参加型やイマーシブと言っているが、元祖イマーシブは阿波踊りだと堀江は述べた。猪子も「元祖だよね」と同意している。歴史は起源不明ながら400年とされ、よさこいは戦後約70年前に土佐の人たちが阿波踊りに憧れて作ったものだと堀江は紹介した。四国の4県が互いに張り合っている様子や、徳島の空港が「阿波おどり空港」という愛称になっていることも笑いながら話している。日程は毎年8月12日から15日で、堀江は2010年以降、刑務所にいた時期とコロナ禍を除いて毎年参加しているという。

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チームラボの常設施設と今後

堀江が「京都のほうはまだやっているのか」と聞くと、猪子は、京都は建物を建てた常設施設で、日本で一番大きいと答えた。これまでは仮設が多かったが、麻布台も常設である。海外はサウジアラビアとアブダビ、シンガポール、マカオにあり、来年の頭にはドイツのハンブルクにもできる。シンガポールではもう一つ、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイの中に非常に大きな施設を作っていて、アメリカにもまだ言えない計画があるという。冒頭では、ロンドンでとても小さな展示が始まったばかりで、翌週からはムンバイでも展示があると話していた。

堀江は「和牛マフィアもベンチマークしながら負けないように頑張る」と言い、阿波踊りのタイミングで京都にも行くと約束した。猪子はこの夏、阿波踊りに一番行きたいと話していた。旨味と料理の起源についての猪子の仮説は、本人の言葉どおり「勝手な結論」のままで、AIとの関係もエネルギー効率の違いを確認したところで話が終わっている。