前駐中国大使・垂秀夫氏が読む習近平の戦略:「国家の安全」を土台にしたAI化、過剰生産、そして「Xデー」
PIVOT 公式チャンネル前駐中国大使の垂秀夫氏(現・立命館大学教授)に、米中首脳会談の分析をふまえて習近平の根本的な戦略を聞いた対談の後編である。聞き手は佐々木氏。中心となる問いは、「国家の安全」を最優先する習近平体制が、なぜ社会を不安定にしかねないAIへ巨額の投資を続けるのか、そしてその路線はどこへ向かうのか、である。垂氏は、国内統制がほぼ完成しているからこそAIに賭けられると見る。一方で、過剰生産や若者の閉塞感、権力の一極集中といった歪みが積み重なり、いずれ「Xデー」が来ると指摘する。
経済発展路線から「国家安全第一」への転換
垂氏はまず、中国の国家目標が定義し直されたことを押さえるべきだと述べる。1978年の改革開放以来、鄧小平の路線は江沢民、胡錦濤へと引き継がれ、経済発展が重視されてきた。しかし胡錦濤政権の後半には、この経済発展路線に相当な矛盾が生じていた。2012年に総書記となった習近平は、2013年から「国家の安全」を前面に掲げるようになったという。
垂氏によれば、ここでいう国家の安全は国防や安全保障に限らない。軍事はそのごく一部にすぎず、経済、社会、教育、文化のすべてに安全意識を持たせる考え方である。そのために国家安全委員会が設けられ、最も重要な機関として習近平自身がトップに就いた。以後、この路線がずっと続いている。垂氏は、多くの日本人はまだこの変化に頭が追いついておらず、経済中心の見方で中国を捉えようとすると時代とずれてしまうと注意を促した。
では、国内統制はすでに完成形に近いのか。垂氏は、習近平が1期目と2期目の10年間で内政を固めたとみる。2期目の終わり、前編で触れた2021年の「時と勢いは我が方にあり」という認識から、秩序観を変え、世界を変えていく対外的な方向に進んだ。その意味で完全な完成形とは言えないが、国内についてはかなりのところまで出来上がっている、というのが垂氏の見方である。
ただし、習近平が掲げる「中国式現代化」はまだ途中にある。垂氏によれば、習近平は自分を中心とする世界を作ったときのモデル国家として中国を示したい。それは監視と管理があらゆるところに行き届き、その上に発展が乗っている国家だという。経済発展は引き続き重要課題だが、その土台に国家の安全がある。そう捉えると分かりやすい、と垂氏は説明した。
「中国製造2025」の先にある、社会全体のAI化
聞き手の佐々木氏は、「製造大国から製造強国へ」を掲げた中国製造2025に触れた。製造業とAIを掛け合わせた分野では、中国が世界一に見える。そう問いかけると、垂氏はこう答えた。中国製造2025は2015年に出たもので、すでに10年以上が経っている。今の中国が目指しているのは、Geminiのような個別のAIを発展させることよりも、社会全体と経済全体をAI化し、AIによって経済を強化するという発想だという。
垂氏は、中国は最先端のチップをまだ自力では作れないと指摘する。個別技術の競争やブレークスルーも大事だが、それだけでなくシステム全体でAI化を進めるのが中国の狙いだという。垂氏によれば、ここ1〜2か月の人民日報を見ると、経済・産業のAI化がしばしば1面トップになる。この1〜2年、特に今年に入ってから、中国はこの取り組みを強く推し進めている。
垂氏はこれを電気にたとえた。今の社会生活は電気がなければ動かない。これまでは電気があって初めて電球やテレビが動く、という関係だった。中国が目指すAIの使い方は、分からないことを尋ねる道具にとどまらない。社会のシステムそのものをAI化し、AIで強化・整備する。電気と同じように、なければ社会が動かない基盤にしようとしているというのが垂氏の説明である。しかも、できるだけ自前でまかなえる形を目指している。
一世代前のGPUをつなぐ戦略と、そのボトルネック
自前主義には制約がある。垂氏によれば、中国は最先端のGPUを作れないため、一世代前のGPUを多数つなぎ合わせて最先端GPUと同等の性能を出そうとしている。HuaweiやAlibabaもこのやり方でチップを作っているという。この方式では電力の消費が非常に大きく、量の面でもボトルネックがある。
メモリーも課題だという。垂氏によれば、中国は最先端のHBMをまだ作れず、数年後には作れる見込みになっている。HBMは韓国がおよそ8割、アメリカが2割を押さえている。中国はGPU、HBM、冷却装置、送電、データセンターをセットで考えている。GPUやHBMで最先端の技術を手に入れられれば一気に上昇できる、という発想だと垂氏は説明する。前編で語られた「上昇気流」の議論につながる話である。
こうした方針を掲げるのが、2026〜2030年を対象とする第15次5カ年計画だ。イノベーション主導の生産力の発展と、科学技術の自立自強の加速がうたわれている。
電力を支えるのは太陽光ではなく原発
AIが電力で決まるなら、太陽光発電を大量に導入できる中国が優位になるのではないか。この問いに垂氏は、太陽光発電では全然足りず、結局は原発だと答えた。垂氏によれば、中国の原発は現在70基近くあり、30数基を建設中で、建設中のものを含めると100基を超える。原発がなければ電力需要をまかなえない、というのが垂氏の見立てである。
「一将功成りて万骨枯る」経済
垂氏は中国経済の全体像を「一将功成りて万骨枯る」という成語で表した。当たっているかは分からないと断ったうえで、まさにそういう状況だという。「一将」にあたるのは一部の先端産業である。AI、ロボティクス、特に人型ロボット、量子コンピューターなどに巨額の補助金が投じられ、育成が進んでいる。
その一方で「万骨」、つまり伝統的な産業が枯れている。垂氏によれば、中国はこれまでGDPの3割が不動産関連だった。消費は大きく落ち込み、投資も別の分野へなかなか向かわず、輸出頼みになっている。中国側が発表するマクロ統計を信じれば「デフレ圧力」としか言えないが、垂氏自身は実際にはデフレだと考えている。経済は二階層になっており、上の先端産業は元気だが、裾野は大変な状況にあるという。
垂氏は、中国で出回っているブラックジョークも紹介した。中国経済をさらに強くするにはどうすればいいかとAIに尋ねると、AIへの補助金を少し抑えて内需を高める政策を取りなさい、という答えが返ってくる。垂氏は、これがまさに実態を突いていると述べた。
なぜ習近平はAIに賭けるのか
国家の安全が最優先なら、なぜ社会を不安定にしかねないAIにここまで投資させるのか。佐々木氏がこう問うと、垂氏は理由を二つ挙げた。
一つ目は、国内統制がすでに完成形にあることだ。垂氏は、先ほどは答えにくかったと前置きしたうえで、この点は完成していると述べた。不満があっても、監視社会のなかで抑え込まれ、ほぼ何もできない。胡錦濤時代のようなデモや暴動は、もうほとんど起こせない状況だという。
二つ目は、アメリカに勝つための主戦場が伝統産業ではなく先端分野にあることだ。垂氏は、米ソが宇宙開発で競ったのと同じ構図だと説明する。ただし、このやり方が本当にうまくいくかについては、垂氏は大いに疑問を持っている。
生産性向上が過剰生産・過剰輸出を生む
垂氏によれば、中国の著名なエコノミストも、今のやり方は雇用や賃金、家計所得の増加につながらないと遠回しに批判している。工場では在庫管理から、どのロボットが故障しやすいか、どの部品をすぐ調達すべきかまで、すべてAIが担うようになり、人間がいらなくなる。生産性は上がり、製品はどんどん出てくる。その結果が過剰生産であり、行き着く先は過剰輸出である。エコノミストたちはこの点に警鐘を鳴らしているが、表現は婉曲で、一読しただけでは批判と分からない書き方になっているという。
垂氏は自動車産業を例に挙げた。数字はうろ覚えだと断りつつ、中国国内の販売は確かマイナス10数%で、売れないため値下げによる潰し合いが起きているという。一方、東南アジアを中心とする輸出は170%ほど増えていたと記憶している、と述べた。こうしたことが各分野で起きれば摩擦も増える。EUはすでにこの問題に気づき、警戒を強めているという。佐々木氏が欧州で中国製エアコンが売れていると触れると、垂氏は今年は暑かったから売れているだろうと応じ、特に家電では日本企業はなかなか勝負できないだろうと述べた。垂氏は、この過程で日本経済と日本企業は中国との厳しい競争を強いられることになると見ている。
アメリカに勝つのが難しい理由:連合チームと国家主導の副作用
最先端分野でも中国がアメリカに勝つのは難しいと考える理由を問われ、垂氏は技術面の構図を挙げた。台湾で半導体を作り、韓国でメモリーを作り、日本が製造装置を作る。アメリカを中心とするこの「連合チーム」が技術的にはまだ優位にある。中国の追い上げは非常に激しいと言われているが、簡単には逆転できないというのが垂氏の見方である。
社会のAI化はアメリカも日本も同じ方向を向いている、と垂氏は認める。違うのはやり方とスピードだという。アメリカは民間に任せ、データセンターを次々に作り、政府は民間が動きやすい土台や環境を整える。日本は政府と民間が協力して進める考え方のようだと垂氏は言う。中国は国家主導で、上から指示が下りてくる。2030年までにどこまで、2035年までにどうするといった目標がすべて示されている。これは「人工知能+(AIプラス)」と呼ばれ、「人工知能+農業」なら農業のAI化、「人工知能+造船」なら造船のAI化というように、国主導で強力に推し進められている。
一見すると資源がうまく配分される合理的な仕組みに見える。だが垂氏は、補助金が大量に投じられると補助金目当ての参入が殺到すると指摘する。党や政府もそれに気づいており、意味のあるものだけに補助金を使えるよう抑えをかけているが、簡単には収まらない。電気自動車のときは300社が参入した。作れば儲かったからだ。その結果が、報道でたびたび取り上げられた「電気自動車の墓場」だった。垂氏によれば、同じことが今、人型ロボットで起きている。とんでもない数のメーカーがあり、何に使うのかもよく分からない状況だという。
中国製品への「情報を取られる」不安と、国内でしか通用しない成功
垂氏は、あくまで個人的な見方だと断ったうえで、もう一つの限界を挙げた。中国が作ったもの、正確には共産党が統治する国が作ったものには、情報を抜かれたり会話を盗まれたりするのではないかという不安がつきまとう。アメリカも同じことをしていると指摘する人もいるかもしれないが、少なくともアメリカの方がまだましだと垂氏は考える。日本自身が作れるのが望ましいとしたうえで、ChatGPTやGeminiは完全に安心はできなくても一応使えるが、中国のものは怖くて使えない、と述べた。人型ロボットがオフィスに入ってくるようになったとき、中国製を安心して使えるのか。垂氏は、使えないと判断する国が相当数出てくると予想する。
ただし中国製はおそらく安い。そうした点を気にしないグローバルサウスの国々は買うだろうし、市場は大きいかもしれない。それでも、西側で中国製品がどこまで使われるかには疑問が残るという。垂氏は電気自動車でも、車内の会話がすべて取られているかもしれないと思われれば使えなくなると述べた。例として挙げたのがドローンである。かつては日本の公的機関も含めて中国製ドローンを使っていたが、今はもう使われていないという。
垂氏は大使時代、ある巨大企業を訪ねたときの経験も語った。企業名は挙げなかった。開発責任者の一人が説明に出てきたので、垂氏はかなり厳しいことを言った。そのサービスは素晴らしく、正直LINEより使いやすく、金融も含めて何でもできる。しかし世界では通用しておらず、使っているのは中国人と華人ぐらいだ。14億の人口がいれば規模の経済である程度は成功できるが、それを超える次のゲームチェンジはあるのか。そう尋ねると、相手は答えに詰まったという。垂氏によれば、中国で成功した企業の多くはこのパターンである。Huaweiのスマートフォンも性能が非常に良いと言われるが、使っているのは中国人だけだ。垂氏は、こうした構図には限界があると今は考えている。
輸出先がなくなったとき
佐々木氏は、国内のダンピング競争で供給過剰になり、今はまだ輸出先があるからしのげているが、輸出先がなくなったり規制が強まったりしたら供給過剰の行き場がなくなるのではないか、と問うた。垂氏は、グローバルサウスで成長している国には一定の需要があるものの、まだ十分に成長していない国にどこまで市場があるかは疑問だとした。鉄鋼では価格が崩れ、中国自身が生産量を抑えざるを得なくなったこともある。同じことの繰り返しになりうるという。ただし鉄鋼では情報漏洩の問題を考えなくてよかった。AIやロボット、電気自動車ではその問題が加わる点が違う、と垂氏は付け加えた。
内巻と寝そべり族:閉じ込められる人々
佐々木氏は、国に指示された産業でひたすら突っ走る中国のエリートは、人生の何に喜びを感じているのかと問うた。垂氏は、人にもよるとしたうえで、うまくいっている人たちは新しい試みをどんどんやれるので楽しくて仕方がないだろうと答えた。ただしそれはごく一部で、多くの人は逆の状況にあるという。
垂氏によれば、ゼロコロナ政策の下でアパート全体や都市全体が数か月にわたって封鎖され、人々は初めて自由のありがたさを知った。そこから国を捨てて出ていく人が増えた。これに対し中国当局は9月15日から、出国を規制する措置を施行したという。技術を持った人材が出ていくのはまずいという判断だと垂氏は見る。出国者は裸一貫ではなく相当の資金を持って出ていくため、それも大きな問題になっているという。
国を出る条件を持たない人、特に若者の間では、何のやる気も持たない「寝そべり族」が増えている。垂氏は中国語の「内巻(ネイジュアン)」にも触れた。社会のあらゆるところで過酷な競争が起きているが、それに参加したくないと感じる現象である。日本語にぴったりの言葉はなく、社会全体を覆う非常に強い閉塞感のようなものだと垂氏は説明する。
垂氏は、中国を全体として見る必要があると強調した。うまくいっている一部の人たちだけを見れば「中国はすごい、日本は絶対に追いつけない、中国と喧嘩している場合か」という見方になる。伝統産業のデフレ状況だけを見れば「中国経済は崩壊する」と言う人も出てくる。そのうえで垂氏は、閉塞感を抱える層を決して過小評価してはならないと言う。そうした不満は確実に積み重なっていくからだ。
佐々木氏が、国外に出ることも難しくなり、AIによる監視も厳しくなって閉じ込められた人々はどうなるのかと問うと、垂氏はそれがどこかで「Xデー」につながりうると応じた。ただ現状では監視されているため、基本的には何もできないとも認めた。
共産党が管理できないAIという不安
AIに詳しい誰かがAIを使って体制を打ち破るようなことは起きないのか、と佐々木氏は問うた。垂氏は、中国国内の友人から聞いた話として、AIが進みすぎることへの警戒を紹介した。今回の米中会談でAIをめぐる協議を行うことになったのもその表れだろうと垂氏は見る。
中国自身が恐れているのは、AIが人の手を離れ、AI同士で会話を始めて、共産党体制は本当に良いのかと考え出すことだという。逆に、これがベストだという結論になる可能性もある。AIは人間に無関心で、人にとって最悪でもAIがそれを良いと判断するかもしれない。いずれにせよ、習近平はAIについても人間による管理が大事だと繰り返し述べており、党が管理できないAIへの懸念は根強いと垂氏は説明する。
その一例として垂氏が挙げたのが、Anthropicの指摘である。垂氏によれば、中国のAIがClaudeに蒸留のための質問を大量に送り、その数は何千万件にのぼり、一部には人民解放軍の関係者によるものも含まれていたという。垂氏は、中国は管理しているつもりでも、知らないうちにこうしたことが起き、管理できなくなる可能性すらあると述べた。AIを管理すべきか、さらに発展させるべきかという議論は、今まさにAIの開発者自身が行っているとも付け加えた。
権力集中と「哲人政治」の破綻
佐々木氏は次に、権力が一人に集中し、決定や指示を修正する制度的な仕組みが弱まっている点を取り上げた。垂氏の答えは、これはもう変わりようがない、というものだった。AIに聞けばそのやり方は一番まずいと答えるだろう、下手をすればそれがベストだと言うかもしれないが、と垂氏は冗談めかした。
垂氏はプラトンの哲人政治に触れた。本当に優れた人物が治めるのであれば、それも良いのかもしれない。しかし問われるのは、習近平が本当に哲人なのかという点である。一人の人間が考えられることには限りがあり、時間も1日24時間しかない。垂氏は、制度としてはもう破綻していると思うと述べた。その体制が現実に続く一方で、AIはどんどん推し進められている。矛盾したことが起きつつある、というのが垂氏の認識である。
「主要矛盾」の管理のブレ:なぜ日本が叩かれるのか
佐々木氏は、中国外交が主要矛盾そのものを見誤ったというより、主要矛盾を管理する高度な戦略技法が、国力拡大と権力集中のなかで粗雑になりつつある、という見方を示した。垂氏はこれを、中国の戦略的思考と毛沢東の統一戦線工作理論という伝統から説明した。垂氏は、これは中国人一般ではなく中国共産党の伝統的なやり方だと区別している。
統一戦線工作の考え方では、まず主要矛盾を決める。今の中国にとって、長期的・戦略的な主要矛盾はアメリカである。主要矛盾が決まれば、それまで都合の悪かった相手も副次矛盾になる。副次矛盾の相手は少なくとも敵に回さず、できれば自分の側に引き寄せる。主敵を孤立させ、打撃面はできるだけ小さくする。垂氏は、農村で都市を包囲し、敵をその味方から引き離して殲滅する、という毛沢東の発想を例に挙げた。
この論理に従えば、アメリカの周囲にいる日本、韓国、ヨーロッパは、本来は中国が引き寄せるべき副次矛盾である。ところが中国は、アメリカとの敵対を避けながら、これらの国を叩いている。今は日本が叩かれているが、少し前には韓国、オーストラリア、カナダ、さらに前にはフランスが叩かれた。ヨーロッパや日本、オーストラリア、カナダは国際世論に大きな影響力を持つため、叩けば反発の声が一気に上がる。一時期「戦狼外交」と言われたのもこの結果だという。垂氏は、中国の伝統的なやり方にブレが出ていると見ている。
習近平の「締め切り」とXデー後の中国
最後に佐々木氏は、時間を稼ぐ戦略をとる習近平は自分の寿命をどこまで見ているのか、締め切りのあとどういう体制で続けるつもりなのか、と問うた。垂氏の答えは、正直に言って分からない、習近平自身も分からないだろう、というものだった。健康について深刻な説が流れたこともあるが、実際の状態がどこまで悪いのかは分からない。最近はインドなど各地を精力的に訪れ、アメリカにも行き、もう一度アメリカを訪れるとも言っている。それを見ても、やはり分からないと垂氏は述べた。
そのうえで垂氏は、習近平後にはハードランディングからソフトランディングまで、あらゆることが起こりうると述べた。先に触れたように不満は積み重なっており、Xデーには爆発するだろうと垂氏は見る。どういう爆発の仕方になるかについては、ハードかソフトかの二者択一ではなく、その間にさまざまなシナリオがあるという。
垂氏は、日本はそのために戦略的な準備をしておくべきだと主張する。ただ、日本の時間軸は長くても2〜3年しかなく、それでいいのかと疑問を示した。10年、20年の単位で考える必要があるという。10年後ではまだ習近平は健在かもしれないが、いずれXデーは必ず来る。そのとき日本がどういう立場に立てるのかが今問われている、と垂氏は述べた。「歴史は繰り返さないが韻を踏む」という言葉を引き、それまでは臥薪嘗胆で、何もしないのではなく、やるべき準備をしっかり進めておく必要があると語って対談を締めくくった。
製造から製造強国ってことで、やっぱり製造かけるAIの分野でいくと、中国って世界一なんじゃないかっていうふうに見えるんですけど。
個別のところの発展というよりも、社会全体、経済全体をAI化する、こういう発想ですね。AIによって経済を強化していくと。
結局、AIも電気で決まるんですか。電力も中国が優位になっていくんですかね。結局、原発よ。原発ですね。建設中のものを入れると超えてるんです。
習近平としては国家の安全が一番大事なのに、なぜ社会を不安定化しかねないAIにここまで投資をさせるんですかね。
今回のこの米中首脳会談の話、分析をベースに、ここから習近平の根本的な戦略は何なのかってことを深掘りしていきたいんですけれども、やっぱり最初に大きいのは、この国家戦略目標の再定義ということで、国家の安全、この総体的国家安全観という、これを知ることがまず大事なんでしょうかね。
鄧小平路線っていうものを、1978年からということにすれば、1978年に改革開放っていうことで、ずっと来て、92年には亡くなってますが、その時の江沢民、それから胡錦濤、いわゆる経済発展を重視するっていう、そういう方針だったのを、2012年、13年、この経済発展路線が胡錦濤の後半ぐらいにも相当矛盾が出てきたんで、習近平はそれを国家の安全っていうと、どうしてもナショナルセキュリティというか、防衛、国防みたいなことだけじゃなくて、それはもうほんの一部だと。
あらゆる社会全体、国全体、全てのこと、経済から社会から教育から文化から、全てにおいて安全意識を持たせる。これが始まったわけですね。これが2012年に総書記になって、13年から始まってるわけです。国家安全委員会っていうものを作って、そこが一番重要な機関になって、そのトップに習近平がついてるわけです。以降、ずっとこれで来てるんです。
なかなか多くの日本の方は、まだ頭がついていってなくて、どうしても経済中心の見方で中国を見ようとすると、もう相当時代は変わってて、あらゆるものについて国家安全という意識が大事になってくるわけですね。
国家の安全のところは、AIでいろんな監視網を広げたりであるとか、自分の政敵も倒していったりであるとか、かなり完成形に近づいてきてるんですかね、習近平としては。
社会全体がどんどんまだ動いてるので、確かに習近平自身は10年間で内政を固めるっていう、1期、2期ですね。2期の最後の終わりで、先ほど言った2021年の、先ほどの「時と勢は我が方にあり」って言ったですね。これで秩序観的な話になって、世界を変えていかないといけない方向につながっていくという意味においては、対外的な意味のことを言ってるという意味においては、完全な完成形ではないですが、ある程度のところまでは国内はできてるっていう見方はできると思いますね。
ただ、現代式中国家っていうようなことを言ってて、これはまさにまだやっていく、今途中にあって、自分中心のこの世界を作った時のモデル国家として、中国っていうものを示したいわけですよ。だからこれはあらゆるところに監視、管理が行き届いた国家と、その上に発展が乗っかってるんです。そういう国家作りを、まだそういう意味において途中であるのかも分からないですが、そういう方向に行ってるんです。内政を抑えたのは10年間ですね。
かつ、経済発展が一辺倒ではないですけれども、そこが重要課題であることは継続してるわけですよね。
そうです。その土台に国家の安全がある。こういう考え方で考えてもらったら分かりやすいと思うんですよね。
そういうことですよね。その中での核となるこの製造業ですけど、中国製造2025、これ、まさしく戦略的時間形成ってこともありましたけど、製造大国から製造強国ってことで、やっぱり製造かけるAIの分野でいくと、中国って世界一なんじゃないかっていうふうに見えるんですけど、そこをどう考えればいいんですかね。この強国へのシフトはかなり成功してるって考えられるんですかね。
これ、2015年に出たもので、もうそれから10年以上経ってるんで、今やろうとしてるのは、AIということで言えば、Geminiだとか個別のところの発展というよりも、社会全体、経済全体をもうAI化する、こういう発想なんですね。AIによって経済を強化していくと。個別の、例えばチップを、アメリカにまだどうしても、例えば作れないわけですよ。争うだけではなくて、そういうところも重要なんです。だから先ほどのブレークスルーっていうのは大事なんですが、そういうところだけではなくて、もっとシステム全般で凌駕していくんだと。
それは今、もうここ1か月、2か月、人民日報を見てたら、しょっちゅう1面トップにもなりますが、経済、産業のAI化。彼らはそれを今、この1、2年すごく進めてきて、特に今年に入ってからすごく進めてるんです。
それで分かりやすく言えば、このAIを例えば電気みたいなもの、今、電気がなかったら今の生活、社会生活も動かないですよね。電気を使って何かを行うっていう、今までは例えば電球を作ります、テレビを作りますとか、電気があって初めて動くっていう話ですよね。そういうものではなくて、AIそのもので何か自分が分からないことを聞くとか、そういう話ではなくて、もう社会全体のシステムそのものをAI化しちゃうと。AIによって強化する、あるいは整備するって、そういう考え方のものをどんどん今進めてきているんです。
発想がどんどん変わってきてて、なおかつ、できるだけ自国でやれるような、その中のものですね。GPUなんかどうしてもまだ最先端を作れないんで、昔のGPUを並べて、最先端のGPUと同じような性能を出させようとしてるわけなんですが、本来であればそういうところのブレークスルーは欲しいんですけれども、それはそれでしょうがないということで、社会全体のAI化を進めようとしていると。
この今のやり方だと、中国はどうしても最先端の部分を作れないと、たくさんの1世代前のGPUをつぎ合わせて、今の最先端のGPUと同じ性能を出させると。そういうことを今やりながら、ファーウェイとかアリババとか、そういうところで今チップを作ってるんですよ。まだでも、そういう作り方なんです。そうすると電力がむちゃくちゃかかるんです。電力がむちゃくちゃかかって、なおかつ量がですよ。そういうボトルネックがどうしてもあるんですね。
そこはそこで大事なんだけれども、っていうことで、全体のっていう。だからGPU、それからHBM、メモリーですね。これが中国はまだ最先端のHBMは作れないんです。数年後には一応作れることになってるんです。これがもうほとんど韓国が8割ぐらい抑えて、アメリカが2割ですよね。だからこういう状況で、HBM、それからあと冷却装備、それから送電、それからデータセンター、こういうセットですね、という考え方なんですね。
だから、このGPUのところの性能が取れないか、HBMも最先端の技術が取れないかとか、こういうのが彼ら、今、先ほど言いました上昇気流と下降気流で、下降気流でぐっとドライブが上がるところは、これを取れたらぐっと上がれるだろうと、こういう考え方なんです。
そこを掲げてるのが、この第15次5か年計画で、2026年、2030年ってことで、イノベーション主導の生産力の発展、科技のまさしく自立自強の加速ということで、今の話を伺ってると、結局AIも電気で決まるじゃないですか。電力も中国が優位になっていくんですかね。例えば太陽光発電とか、ばんばんやれますよね。
いや、もう太陽光発電じゃ全然足らないから、結局原発なんですよ。原発ですね。原発、今70近くあるんですよ。今もう30いくつか作ってて、100を超えるんですよ。今、少なくとも建設中のものを入れると超えてるんです。だからもう原発なんですよ。原発がないと、やっぱり太陽光とかでは全然足らないですから。だから結局そこなんですね。それが中国のもう一つの。
でも、一つ笑い話なんですよ。中国経済全体を見た時に、当たってるかどうか分からないんですが、「一将功成り万骨枯る」っていう、こういう成句がありますよね。まさにそういう状況で、一将っていうのは一人の将軍じゃないけど、一部の先端産業、まさにAI、ロボティックスとか、特に人型ロボティックスとか、量子コンピューターとか、こういうのにすごい補助金を入れて、すごい育ててるわけですよ。
先ほど申し上げました、もう都市全体が、社会全体が、経済全体がAI化していくと。いわゆる電気のようにすると。今、我々の生活で電気がもう絶対必要なのと同じように、そんなような発想で今やっていってるわけですよね。こういうようなことを一生懸命やってて、一方で万骨枯れてるわけです。伝統的な産業。特に今まで中国は、GDPの3割が不動産関連だったわけですね。消費が今むちゃくちゃ落ちてて、投資もなかなか別のところではいかないと。輸出頼みになってるわけですね。
こういうような状況で、デフレ圧力、私はもうデフレと本当は言った方がいいと思うんですが、少なくとも中国側が発表してるマクロ数字だけを信じると、まだデフレ圧力としか言いようがないんですが、実際は私はデフレだと思いますが、依然こういう状況なんです。正直言って、もう二階層になってるわけですよ。一部の産業で、裾野は大変な状況になってると。
笑い話があって、まさにAIに「じゃあ中国経済をさらに強くしたいと、どうしたらいいか」と質問したら、AIの答えが「AIに力を入れるのではなく、AIに今これだけ力を入れて、補助金を入れてやってるのをちょっと抑えて、内需を高める、そっちの政策を取りなさい」という答えが来るっていうね。これはブラックジョークなんですが、まさにそういうことなんですよね。
習近平としては国家の安全が一番大事なのに、なぜ社会を不安定化しかねないAIにここまで投資をさせるんですかね。
一つは、先ほど私は若干答えにくかったんですが、佐々木さんがおっしゃられた「もう完成形か」っていうね。そこの部分は完成形なんですよ。不満を言ったら、ほぼ何もできないんですよ、正直言って。もう抑え込んじゃってるわけですよ。胡錦濤時代のように、デモを起こしたり、暴動を起こしたりなんてのが、もうほとんどできない状況になってるわけですよ。監視社会ですごい状況になってるわけです。
だからそういう意味において、そういうことが一つ可能だということと、アメリカに勝つためにはここじゃないんですよ。確かに伝統産業、この伝統産業じゃないんですよ。ここで勝たないとだめなんです。このソ連とアメリカが宇宙で戦ったの、みたいなことですね。そういうことですね。
だから、これが本当にうまくいくかどうかっていうのは、私はすごく疑問なんですね。実際、中国での著名なエコノミストなんかも、非常に婉曲的に、今のこのやり方は雇用とか賃金とか家計所得の増加につながらないと。結局、生産性を上げていってるわけですね、どんどんAIで。
工場で、もう在庫の管理から、いろんなロボットで今作らせて、ロボットがどこが故障しやすいかだとか、何の部品をすぐ調達しないといけないかと、これ全部AI化ですから。もう全部AIで、人間いらないわけですよね。そうすると生産性が上がりますよ。どんどん製品が出てくると、結局過剰生産になるわけです。過剰生産になったらどうなるかというと、過剰輸出になるわけですよ。
これ、エコノミストが、このまま行くと過剰生産で過剰輸出になってしまうっていうことを、もう警鐘を鳴らしてるんですよ。これは非常に婉曲的に、ちょっと批判って、ぱっと読むと批判にはならないけれども、まさにそういうことなんですよね。
今、自動車産業も雇用が減ってるんですね。中国はこんだけ伸びて、中国内部ではAIは、ちょっと数字忘れましたが、確かマイナス10数%ですよね。もう売れないんですよ。だから価格がどんどん安くなってると。もう潰し合いをやってるわけですよ。ところが対外輸出、東南アジアを中心に対外輸出、これ170%だったと思いますが、増えてるわけですよ。
そういうようなことが今後もどんどんなところで起きてくると、摩擦がまたどんどん起きるわけですよ。EUはもう完全にそこに気がついて、ちょっとまずいっていうことになってるわけですね。
世界にダンピングを、もうどんどん輸出していって、そのうち抑えにかかる国が増えてくるってことですね。
だからその過程において、日本は非常に、日本経済、日本企業は非常につらいんですよね。中国と競争しないといけないことになるわけですね。
エアコンなんかも売れてるみたいですね、欧州で。
もう売れてるでしょうね。今年暑かったですからね。家電なんかもう特にそうですね。もうなかなか勝負できないでしょうね。
このAIも含めた最先端産業で、とはいえアメリカに勝つのは難しいだろうと思われる理由は、どこにあるんですか。
やっぱりまだ少なくとも、アメリカをはじめ、アメリカだけじゃないんですよね。アメリカをはじめとする、結局台湾の方で、メモリーは韓国で作ってるとか、製造装置は日本が作ってるとか、こういうような状況で、このいわゆるアメリカを中心とする連合チームみたいなものが、技術的にはまだ優位ですから。だからそこはそう簡単にはなかなか。ただ、追い上げはすごい激しいっていうふうに言われてますけれどもね。
アメリカ自身も、先ほど言いました社会のAI化っていうものは、アメリカも日本も同じような方向で行ってるのは事実なんです。
将来的にはずっともうそうなっていきますよね、今後。
ただ、一つはスピードは違うわけですね。アメリカはもう本当に民間に任せて、「データセンターはいっぱい作っていきますよ」と。民間がこうやっていくには非常にいい土場は作っていただけますと、環境は作りますと。日本は一応、政府と民間が協力的に共同してっていう考え方でやってるみたいですけれども、とにかく中国の場合はもう国家主導ですから、指示してくるわけですよ。
これが今出てるわけですよ。2030年までどこまで行く、2035年まではどうするとか、こういうのは全部出てるわけです。これはAIプラスと言われてるんですが、AIって人工知能って言うんですけど、人工知能、知能プラスっていうふうに言ってて、だから人工知能、知能プラス農業とかは、農業のAI化のことなんです。こういうような知能プラス造船とか、こういう発想でどんどん今、国家主導ですごい押してやってるわけですよ。
それは一見すると非常に合理的、このリソースがうまく動くようにも見えますけれども、中国の場合は得てして、結局、先ほど来申し上げてるように過剰生産。要は補助金を相当入れてやるわけですよ。そうすると補助金狙いでばーっと来るわけですよ。中国も党も政府もそこに気がついて、そうでないものについての抑えはかかってるんですが、本当に意味があるものだけ補助金を使えるようにするような形でやるんですが、でもそれはそんな簡単に収まらないんですよ。
そうすると電気自動車の時だって300社入ったんですよ。作ればいいんですから。作ったら儲かるんですよ。だからその電気自動車の、よく捨てられた電気自動車のゴミの山みたいなのが、よく報道がありましたけど、ああいうことが起きるわけですね、補助金で。
そうすると、一見するとリソースがうまく、今、自分たちがやりたいことをやってる、必要なところをやってるように見えるんですけれども、結局どうしてもすぐ行きすぎて、みんなそれを作ったりするわけですね。今それが起きてるのが人型ロボットですよ。人型ロボットもとんでもない数ありますよ。
何に使うかよく分かりませんよね。
それも含めてですね。もう一つは、これは私の個人的な見方ですが、結局中国が作ったもので、少なくとも中国だからというよりも、共産党が統治している国が作ったもので、人型ロボットでも何でもいいんですが、情報を取られるんじゃないかと、いろんなものの。あるいは会話を盗まれるとか、アメリカも同じことをしてるっていうふうに指摘する人がいるかも分からないですが、少なくともアメリカの方がまだいいかなと。
できたら日本自身がちゃんと作ってほしいですが、いわゆるAI、ChatGPTにしろ、Geminiにしろ何にしろ、完全に安心できないけれども、一応使えますけど、中国のものはやっぱり怖くて使えないですよね。それが普通の人型ロボットで、いろんなところに入ってきて、オフィスの中に入ってきて云々となった時に、本当に安心して使えるのかってなると、私は結局使えない国が相当数あるんじゃないかなと。
ただ、多分中国側の方が安いんですよね。そうすると何が起きるかというと、グローバルサウスのような国は、あまりそういうのを気にしないような国があると思うんですよね。ただ、まだAIがそこまで進んでないとはいえ、そういうところはすごいマーケットが大きいのかも分からないんですけれども、西側の国で本当に中国のものをどこまで使えるのかなと。
私、行ったことがあるんですね。開発して、もう超でかい企業になりましたが、その時に責任者の一人が出てきて、日本大使が来たということで、いろいろ説明してくれたんですが、僕は相当きついこと、厳しいことを随分言ったんですね。「素晴らしいと、非常に使いやすいと。正直言ってLINEよりも使いやすい。それで金融も何も全てのことができるんですよね。世界で通用してないですよ。中国だけ、及び全世界の華人ぐらい。これは14億の人口がいれば規模の経済である程度成功しますねと。それを超える発想の、この次のゲームチェンジなんかあるんですか」って言ったら、その時は答えられないんですよね。
詰まってたんですよ。中国で成功した企業、大体そういうのが中心ですよね。だからファーウェイの携帯電話ってむちゃくちゃ性能がいいって、僕は使ったことないんですが、って言われてるわけですよ。すっごいいいと。でも中国人しか使わないですよね。私はそういうふうになってしまうと、限界があるんじゃないかなというふうに、今の私は思いますけれどもね。
そうそう。国内でダンピング競争で供給過剰になっていく。それを今はまだ輸出していく場所がどうにかあるので、どうにか。
まだグローバルサウスなんかはある程度、グローバルサウスでそれなりに成長してる国のところに必要性があると。例えば電気自動車とかでも、電気自動車だって中国製のもの、怖いですよね。やっぱり乗ってる時の会話、全部取られてしまってる可能性があるなんて思われると、そうするともう使えないですよね。
だから一昔前に、このドローンが日本の公共機関も含めて、中国製をみんな使ってたわけですよ。公的機関も使ってたわけですよ。具体的に言いませんがね。もう使えないでしょと。もう使ってないわけですね、当然ながら。こういうことにどんどんなるんじゃないかなと。そうすると先進国で、アメリカ、日本だとか、西側の国は大体もう使えなくなるんじゃないかなと私は思いますね。
そうするともちろんグローバルサウス、国は多いですけれども、まだでも成長がそこまでしてない時に、どこまでマーケットがあるのかという話ですよね。
すると今後数年ぐらいは、まだ輸出して伸ばすことができたとしても、どこかで伸ばすところがなくなったり、規制が厳しくなって輸出できなくなった時に、この供給過剰の行き先がもうなくなっちゃいますね。
いや、供給過剰の行き先がないっていうのは、もう鉄鋼は価格がむちゃくちゃだから、彼ら自身が結局生産量を抑えたりせざるを得なくなったこともありますしね。同じようなことの繰り返しではありますけどね。ただ、このところはそういう情報の問題、この鉄のところはそんなことを考えなくてよかったんですけれども。
ありえますよね。不思議だ。中国の今のエリートの人たちって、経済エリートの人たちとかも、国に言われた産業でやって、とにかく突っ走って、一番何が楽しいんですかね。そこでお金持ちになることなんですかね。何が人生の喜びなのかなっていうのをちょっと感じて。
それは人にもよるでしょうけれども、多くの人いて、そういうふうな、うまくいってる人たちは本当に楽しくてしょうがないと思いますね。試みをどんどんやれるんですから。でもそれはごく一部であって、多くの人は反対なわけですね。
こないだ、前回のコロナの時に、ゼロコロナ政策によって初めて自由のありがたみとか分かったわけですよ。アパート全体が封鎖されたりとか何とかあって、数か月間とか、都市全体が封鎖みたいになるわけですね。だから先ほど申し上げましたように、どんどん国を捨てると。
今回9月15日に、出入ですが、出境を規制する。だから中国自身が、中国政府自身、党自身が、これまずいと。技術を持った人間が出ていったらまずいっていうことで、9月15日から施行されてるんですが、それからあと、裸一貫で出ていくはずないですから、相当の資金を持って出ていくわけですよ。キャピタル流出で大きな問題になってると。
そういう条件のない、特に若者なんかは、佐々木さんも聞かれたことがあると思いますが、寝そべり族みたいなね、もう何のやる気もなくなると。こういうような人たちがどんどん増えてるわけですよ。これを中国語でネイジュエンっていう、内巻現象っていうのがあって、すごい過酷な競争状況がいろんなところで起きてて、でも参加したくないと思う。
日本語にぴったりする言葉はないんですよ。何て言うんですかね。社会全体の雰囲気では、超強力な閉塞感みたいな、そういうものがあるっていう状況に今なりつつあるわけですよ。だから一部のうまくやってる人はもちろん元気なんですよ、すごく。そういう人、そういう部分だけ見てたら、「中国はもうすごいと、日本は絶対追いつかないと。中国とけんかしてて何してるんだ、日本は」。
一方で、この伝統産業での今のデフレみたいな状況を見てたら、「もう中国は崩壊する、中国経済崩壊だ」みたいなことをまた言う人も結構いるわけですよね。私は全体を見て中国っていうことを理解しないといけないんですが、ただ、後者のところは決して過小評価しちゃいけなくて、そういう層はどんどん、鬱積は積もってきますよね。
その人たちが積もっていく。ただ、国を捨てて外へ出ていくこともどんどん難しくなる。かつ、AIでの監視も厳しくなる。そうやって閉じ込められた時って、人間どうなるんですかね。それがどんどん増えていくわけですよね。
それはどこかでXデー、ありますよね。
けど、何もしようがないわけですよね。もう監視されてて。
普通はそうですね、基本的には。
逆にAIに詳しくて、そのAIを何かぶち破ってやるみたいな人って出てこないんですかね。
今は、若干中国内で友人からいろいろ連絡があって教えてくれたんですが、AI自身で、これはどこも今まさにAIが進展しすぎて、今回だから米中でAIの協議、AIの協議をやることになったのもその一つでしょうけども、危険性っていうこと。中国自身が、普通AIがどんどん考えていって、もう人の手を離れて、AI同士で会話し始めて、今この共産党の政体っていうのは、これは本当にいいのかとか。あるいはもしかしたら逆に、これがベストだとなる可能性もあるわけですね。
AIって大体人に無関心ですからね。人にとっては最悪であったとしても、もしかしたらいいと思うのか、悪いと思うのか。いずれにしろ、習近平はとにかく人間による管理っていうことは大事だっていう趣旨のことを言ってるんですよね、AIについても。
だから、それを知らない間に共産党の管理できないAIっていうことについての心配みたいなものは結構あって、実際、Anthropicが指摘しましたが、中国のAIがClaudeに推論の部分をどんどん聞いて、だから自分たちの質問を聞いて、これは何千万件あっちに行ってたと。一部、人民解放軍の関係者のあれも向こう、アメリカに行ってたみたいなね。こんなことが知らない間に起きうるわけですよ。
そんなつもりで中国は管理してるつもりが、管理できなくなってくる可能性すらありうるかも分からないですよね。
そうですね。
だからそれは、本当に何が起きるか分からない状況になるかも分からないですね。そういうことがあって、今AIを管理すべきか、さらにもっと発展させるべきかみたいなことを、AIの開発者自身が今やってますからね。
AIに強い部みたいな人が出てくるかもしれませんよね。そこも含めて、習近平の政治的野心と統治構造の変質っていうところで、先ほども話がありましたけど、権力が一人に集中し、決定や指示を修正する制度的な仕組みが弱くなっている。この辺り、今後どう考えればいいんでしょうかね。
そうです、そうです。
いや、これはもう変わりようがないですね。多分AIに聞いたら、そんなやり方が一番まずいっていうふうに言うんじゃないかなと思うんですが、下手したら「いや、それがベストだ」と。ただ、プラトンみたいに哲人政治だから、アカデミー、プラトンが作った学校、本当に素晴らしい人たちがやる政治っていうのは、そういうものであればいいのかも分かりませんが、正直言って習近平氏が本当に哲人なのかっていうことが問われるわけですね。
一人の人間の考えられる能力なんて限られてるし、なおかつ時間も1日24時間しかないわけですね。こんなのもう、正直、制度としては私は破綻してると思うんですね。でもそれを実際はやってるっていう部分。一方でAIはどんどん進めるっていうね。何か矛盾してるようなことが起きつつあるんですよね。
ここはもうどう考えればいいんですかね。そしてもう一つの文章として、「中国外交が主要矛盾そのものを見誤ったというよりも、主要矛盾を管理するという高度に洗練された戦略技法が、国力拡大と権力集中の中で粗雑化しつつあると理解するのが妥当です」。
これは中国の戦略的思考の、時間を大事にするということと、あと毛沢東の統一戦線工作理論っていう、この大きな伝統的な考え方の癖があるわけです。これは何かというと、まず主要矛盾を決めると。先ほど言いました、今は長期的、戦略的にアメリカだということになる。この主要矛盾を決めたら、今まで自分にとって都合の悪かった人間も、みんな副次矛盾になるわけですよ。
副次になれば、少なくとも自分の敵にはならないように、できたら自分の方に引きつけるっていうのが、中国の伝統的な、中国共産党のって言った方がいいでしょう。これ、中国人じゃなくて中国共産党の伝統的なやり方なんです。
そういう意味においては、アメリカがいて、アメリカの周りに日本だ、韓国だ、ヨーロッパだ、こういうようなところは自分たちの方に寄せないといけない。ところが今は日本だけ叩かれてますが、ちょっと前まで韓国が叩かれたり、オーストラリアが叩かれたり、カナダが叩かれたり、ちょっと前だとフランスが叩かれたりとか、いろいろあるわけですよ。
こういうようなことをやってるっていうのは、この本来的な主要矛盾を孤立させるっていうのが、彼らの伝統的なやり方なわけですね。大量の農村っていうか、農村によって都市を包囲すると。敵を自分たちの味方によって包囲して、これを殲滅すると。打撃面は小さければ小さい方がいいと。「打撃面は小さく」って言うんですが、こういうような考え方からすれば、副次矛盾で本来あるはずのヨーロッパだとか日本だとかを、どちらかというと自分たちに引きつけないといけないのを、よくそこを、アメリカとは敵対しないようにしながら、ここを叩いてると。
例えばヨーロッパだとか、日本もそうでしょう、豪州とかカナダとかっていうのは、国際世論にやっぱり大きな影響力を持ってるわけですよ。だからああいう戦狼外交って一時期わーっと言われたのは、こういうところを叩くと、そういう声ががーっと出てくるわけです。だからそういうふうな中国の伝統的なやり方の揺れが、ブレが出てきてるっていうことですね。
そうそう。最後の質問で、時間を稼ぐと考えた時に、習近平は自分の寿命ってどこまで見てるんでしょうかね。締め切りはいつ。そして締め切りが終わった後に、どういう体制でこの時間稼ぎを継続していくっていうふうに考えているんでしょうかね。
彼の締め切りは正直言って分かりません。
分かりませんか。
それは彼も分からないと思いますよね。あんまり健康的な体形には見えないですけれども。ああいうちょこっと小太りで。それはでもよく分からないです。正直申し上げて、重病説も言われたこともありますし、でも本当にどこまで状況がひどいのか分からないんです。最近相当外遊してますから。
インドにも行ってました。
インドも行きました。そのままエジプト、中央アジアに行ってますからね。それでアメリカに来て、これは相当なもんですね。もう一回アメリカに来るって言ってるんですから、正直分からないです、正直申し上げて。
ただ、その後に何が起きるかということについて言えば、私はハードランディングからソフトランディングまで、あらゆることが起きると。先ほど言いました、鬱積してるわけですよ。
そうですね。
Xデーで爆発するんだと思うんですね。爆発する時にどういう爆発の仕方になるのかっていうものは、これはいろんなシナリオがありうる。ハードランディングからソフトランディング。この二者択一じゃなくて、その間もいろんなやつがあるわけですね。そのために日本は戦略的な準備を行っておくべきだと。将来の……を支援するっていうのも一つであるし、いろんなことをやれると思うんですが、若干日本の時間軸は長くて3年ぐらいなんで、2、3年なんで、私はこれでいいのかなと思いますけどもね。
10年、10年ぐらいで考えて。
10年、20年で考えていくと。10年じゃまだお元気かも分かりませんから。いずれにしろXデーは必ず来るんですから。その時にどういう立場に立てるのか、日本がどういう立場にいるのか。ここは私は今、日本に問われてるところだと思いますね。歴史は繰り返さないけども、韻を踏むはずなんですよ。
そのためにも、それまで戦略的我慢をすべき。
そうですね。あるいは、やるべきことをやっておく必要が。そのためには何もしないということではなくてね。
準備はしっかりやるということですね。
分かりました。ありがとうございます。より深く知りたい方、ぜひこちらの本をお読みいただければと思います。ということで、本日はお話ありがとうございました。どうもありがとうございました。
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