前駐中国大使・垂秀夫氏が読む習近平の戦略:「国家の安全」を土台にしたAI化、過剰生産、そして「Xデー」

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概要

前駐中国大使の垂秀夫氏(現・立命館大学教授)に、米中首脳会談の分析をふまえて習近平の根本的な戦略を聞いた対談の後編である。聞き手は佐々木氏。中心となる問いは、「国家の安全」を最優先する習近平体制が、なぜ社会を不安定にしかねないAIへ巨額の投資を続けるのか、そしてその路線はどこへ向かうのか、である。垂氏は、国内統制がほぼ完成しているからこそAIに賭けられると見る。一方で、過剰生産や若者の閉塞感、権力の一極集中といった歪みが積み重なり、いずれ「Xデー」が来ると指摘する。

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経済発展路線から「国家安全第一」への転換

垂氏はまず、中国の国家目標が定義し直されたことを押さえるべきだと述べる。1978年の改革開放以来、鄧小平の路線は江沢民、胡錦濤へと引き継がれ、経済発展が重視されてきた。しかし胡錦濤政権の後半には、この経済発展路線に相当な矛盾が生じていた。2012年に総書記となった習近平は、2013年から「国家の安全」を前面に掲げるようになったという。

垂氏によれば、ここでいう国家の安全は国防や安全保障に限らない。軍事はそのごく一部にすぎず、経済、社会、教育、文化のすべてに安全意識を持たせる考え方である。そのために国家安全委員会が設けられ、最も重要な機関として習近平自身がトップに就いた。以後、この路線がずっと続いている。垂氏は、多くの日本人はまだこの変化に頭が追いついておらず、経済中心の見方で中国を捉えようとすると時代とずれてしまうと注意を促した。

では、国内統制はすでに完成形に近いのか。垂氏は、習近平が1期目と2期目の10年間で内政を固めたとみる。2期目の終わり、前編で触れた2021年の「時と勢いは我が方にあり」という認識から、秩序観を変え、世界を変えていく対外的な方向に進んだ。その意味で完全な完成形とは言えないが、国内についてはかなりのところまで出来上がっている、というのが垂氏の見方である。

ただし、習近平が掲げる「中国式現代化」はまだ途中にある。垂氏によれば、習近平は自分を中心とする世界を作ったときのモデル国家として中国を示したい。それは監視と管理があらゆるところに行き届き、その上に発展が乗っている国家だという。経済発展は引き続き重要課題だが、その土台に国家の安全がある。そう捉えると分かりやすい、と垂氏は説明した。

3:58

「中国製造2025」の先にある、社会全体のAI化

聞き手の佐々木氏は、「製造大国から製造強国へ」を掲げた中国製造2025に触れた。製造業とAIを掛け合わせた分野では、中国が世界一に見える。そう問いかけると、垂氏はこう答えた。中国製造2025は2015年に出たもので、すでに10年以上が経っている。今の中国が目指しているのは、Geminiのような個別のAIを発展させることよりも、社会全体と経済全体をAI化し、AIによって経済を強化するという発想だという。

垂氏は、中国は最先端のチップをまだ自力では作れないと指摘する。個別技術の競争やブレークスルーも大事だが、それだけでなくシステム全体でAI化を進めるのが中国の狙いだという。垂氏によれば、ここ1〜2か月の人民日報を見ると、経済・産業のAI化がしばしば1面トップになる。この1〜2年、特に今年に入ってから、中国はこの取り組みを強く推し進めている。

垂氏はこれを電気にたとえた。今の社会生活は電気がなければ動かない。これまでは電気があって初めて電球やテレビが動く、という関係だった。中国が目指すAIの使い方は、分からないことを尋ねる道具にとどまらない。社会のシステムそのものをAI化し、AIで強化・整備する。電気と同じように、なければ社会が動かない基盤にしようとしているというのが垂氏の説明である。しかも、できるだけ自前でまかなえる形を目指している。

5:50

一世代前のGPUをつなぐ戦略と、そのボトルネック

自前主義には制約がある。垂氏によれば、中国は最先端のGPUを作れないため、一世代前のGPUを多数つなぎ合わせて最先端GPUと同等の性能を出そうとしている。HuaweiやAlibabaもこのやり方でチップを作っているという。この方式では電力の消費が非常に大きく、量の面でもボトルネックがある。

メモリーも課題だという。垂氏によれば、中国は最先端のHBMをまだ作れず、数年後には作れる見込みになっている。HBMは韓国がおよそ8割、アメリカが2割を押さえている。中国はGPU、HBM、冷却装置、送電、データセンターをセットで考えている。GPUやHBMで最先端の技術を手に入れられれば一気に上昇できる、という発想だと垂氏は説明する。前編で語られた「上昇気流」の議論につながる話である。

こうした方針を掲げるのが、2026〜2030年を対象とする第15次5カ年計画だ。イノベーション主導の生産力の発展と、科学技術の自立自強の加速がうたわれている。

7:48

電力を支えるのは太陽光ではなく原発

AIが電力で決まるなら、太陽光発電を大量に導入できる中国が優位になるのではないか。この問いに垂氏は、太陽光発電では全然足りず、結局は原発だと答えた。垂氏によれば、中国の原発は現在70基近くあり、30数基を建設中で、建設中のものを含めると100基を超える。原発がなければ電力需要をまかなえない、というのが垂氏の見立てである。

8:10

「一将功成りて万骨枯る」経済

垂氏は中国経済の全体像を「一将功成りて万骨枯る」という成語で表した。当たっているかは分からないと断ったうえで、まさにそういう状況だという。「一将」にあたるのは一部の先端産業である。AI、ロボティクス、特に人型ロボット、量子コンピューターなどに巨額の補助金が投じられ、育成が進んでいる。

その一方で「万骨」、つまり伝統的な産業が枯れている。垂氏によれば、中国はこれまでGDPの3割が不動産関連だった。消費は大きく落ち込み、投資も別の分野へなかなか向かわず、輸出頼みになっている。中国側が発表するマクロ統計を信じれば「デフレ圧力」としか言えないが、垂氏自身は実際にはデフレだと考えている。経済は二階層になっており、上の先端産業は元気だが、裾野は大変な状況にあるという。

垂氏は、中国で出回っているブラックジョークも紹介した。中国経済をさらに強くするにはどうすればいいかとAIに尋ねると、AIへの補助金を少し抑えて内需を高める政策を取りなさい、という答えが返ってくる。垂氏は、これがまさに実態を突いていると述べた。

10:05

なぜ習近平はAIに賭けるのか

国家の安全が最優先なら、なぜ社会を不安定にしかねないAIにここまで投資させるのか。佐々木氏がこう問うと、垂氏は理由を二つ挙げた。

一つ目は、国内統制がすでに完成形にあることだ。垂氏は、先ほどは答えにくかったと前置きしたうえで、この点は完成していると述べた。不満があっても、監視社会のなかで抑え込まれ、ほぼ何もできない。胡錦濤時代のようなデモや暴動は、もうほとんど起こせない状況だという。

二つ目は、アメリカに勝つための主戦場が伝統産業ではなく先端分野にあることだ。垂氏は、米ソが宇宙開発で競ったのと同じ構図だと説明する。ただし、このやり方が本当にうまくいくかについては、垂氏は大いに疑問を持っている。

10:57

生産性向上が過剰生産・過剰輸出を生む

垂氏によれば、中国の著名なエコノミストも、今のやり方は雇用や賃金、家計所得の増加につながらないと遠回しに批判している。工場では在庫管理から、どのロボットが故障しやすいか、どの部品をすぐ調達すべきかまで、すべてAIが担うようになり、人間がいらなくなる。生産性は上がり、製品はどんどん出てくる。その結果が過剰生産であり、行き着く先は過剰輸出である。エコノミストたちはこの点に警鐘を鳴らしているが、表現は婉曲で、一読しただけでは批判と分からない書き方になっているという。

垂氏は自動車産業を例に挙げた。数字はうろ覚えだと断りつつ、中国国内の販売は確かマイナス10数%で、売れないため値下げによる潰し合いが起きているという。一方、東南アジアを中心とする輸出は170%ほど増えていたと記憶している、と述べた。こうしたことが各分野で起きれば摩擦も増える。EUはすでにこの問題に気づき、警戒を強めているという。佐々木氏が欧州で中国製エアコンが売れていると触れると、垂氏は今年は暑かったから売れているだろうと応じ、特に家電では日本企業はなかなか勝負できないだろうと述べた。垂氏は、この過程で日本経済と日本企業は中国との厳しい競争を強いられることになると見ている。

13:01

アメリカに勝つのが難しい理由:連合チームと国家主導の副作用

最先端分野でも中国がアメリカに勝つのは難しいと考える理由を問われ、垂氏は技術面の構図を挙げた。台湾で半導体を作り、韓国でメモリーを作り、日本が製造装置を作る。アメリカを中心とするこの「連合チーム」が技術的にはまだ優位にある。中国の追い上げは非常に激しいと言われているが、簡単には逆転できないというのが垂氏の見方である。

社会のAI化はアメリカも日本も同じ方向を向いている、と垂氏は認める。違うのはやり方とスピードだという。アメリカは民間に任せ、データセンターを次々に作り、政府は民間が動きやすい土台や環境を整える。日本は政府と民間が協力して進める考え方のようだと垂氏は言う。中国は国家主導で、上から指示が下りてくる。2030年までにどこまで、2035年までにどうするといった目標がすべて示されている。これは「人工知能+(AIプラス)」と呼ばれ、「人工知能+農業」なら農業のAI化、「人工知能+造船」なら造船のAI化というように、国主導で強力に推し進められている。

一見すると資源がうまく配分される合理的な仕組みに見える。だが垂氏は、補助金が大量に投じられると補助金目当ての参入が殺到すると指摘する。党や政府もそれに気づいており、意味のあるものだけに補助金を使えるよう抑えをかけているが、簡単には収まらない。電気自動車のときは300社が参入した。作れば儲かったからだ。その結果が、報道でたびたび取り上げられた「電気自動車の墓場」だった。垂氏によれば、同じことが今、人型ロボットで起きている。とんでもない数のメーカーがあり、何に使うのかもよく分からない状況だという。

中国製品への「情報を取られる」不安と、国内でしか通用しない成功

垂氏は、あくまで個人的な見方だと断ったうえで、もう一つの限界を挙げた。中国が作ったもの、正確には共産党が統治する国が作ったものには、情報を抜かれたり会話を盗まれたりするのではないかという不安がつきまとう。アメリカも同じことをしていると指摘する人もいるかもしれないが、少なくともアメリカの方がまだましだと垂氏は考える。日本自身が作れるのが望ましいとしたうえで、ChatGPTやGeminiは完全に安心はできなくても一応使えるが、中国のものは怖くて使えない、と述べた。人型ロボットがオフィスに入ってくるようになったとき、中国製を安心して使えるのか。垂氏は、使えないと判断する国が相当数出てくると予想する。

ただし中国製はおそらく安い。そうした点を気にしないグローバルサウスの国々は買うだろうし、市場は大きいかもしれない。それでも、西側で中国製品がどこまで使われるかには疑問が残るという。垂氏は電気自動車でも、車内の会話がすべて取られているかもしれないと思われれば使えなくなると述べた。例として挙げたのがドローンである。かつては日本の公的機関も含めて中国製ドローンを使っていたが、今はもう使われていないという。

垂氏は大使時代、ある巨大企業を訪ねたときの経験も語った。企業名は挙げなかった。開発責任者の一人が説明に出てきたので、垂氏はかなり厳しいことを言った。そのサービスは素晴らしく、正直LINEより使いやすく、金融も含めて何でもできる。しかし世界では通用しておらず、使っているのは中国人と華人ぐらいだ。14億の人口がいれば規模の経済である程度は成功できるが、それを超える次のゲームチェンジはあるのか。そう尋ねると、相手は答えに詰まったという。垂氏によれば、中国で成功した企業の多くはこのパターンである。Huaweiのスマートフォンも性能が非常に良いと言われるが、使っているのは中国人だけだ。垂氏は、こうした構図には限界があると今は考えている。

18:15

輸出先がなくなったとき

佐々木氏は、国内のダンピング競争で供給過剰になり、今はまだ輸出先があるからしのげているが、輸出先がなくなったり規制が強まったりしたら供給過剰の行き場がなくなるのではないか、と問うた。垂氏は、グローバルサウスで成長している国には一定の需要があるものの、まだ十分に成長していない国にどこまで市場があるかは疑問だとした。鉄鋼では価格が崩れ、中国自身が生産量を抑えざるを得なくなったこともある。同じことの繰り返しになりうるという。ただし鉄鋼では情報漏洩の問題を考えなくてよかった。AIやロボット、電気自動車ではその問題が加わる点が違う、と垂氏は付け加えた。

19:58

内巻と寝そべり族:閉じ込められる人々

佐々木氏は、国に指示された産業でひたすら突っ走る中国のエリートは、人生の何に喜びを感じているのかと問うた。垂氏は、人にもよるとしたうえで、うまくいっている人たちは新しい試みをどんどんやれるので楽しくて仕方がないだろうと答えた。ただしそれはごく一部で、多くの人は逆の状況にあるという。

垂氏によれば、ゼロコロナ政策の下でアパート全体や都市全体が数か月にわたって封鎖され、人々は初めて自由のありがたさを知った。そこから国を捨てて出ていく人が増えた。これに対し中国当局は9月15日から、出国を規制する措置を施行したという。技術を持った人材が出ていくのはまずいという判断だと垂氏は見る。出国者は裸一貫ではなく相当の資金を持って出ていくため、それも大きな問題になっているという。

国を出る条件を持たない人、特に若者の間では、何のやる気も持たない「寝そべり族」が増えている。垂氏は中国語の「内巻(ネイジュアン)」にも触れた。社会のあらゆるところで過酷な競争が起きているが、それに参加したくないと感じる現象である。日本語にぴったりの言葉はなく、社会全体を覆う非常に強い閉塞感のようなものだと垂氏は説明する。

垂氏は、中国を全体として見る必要があると強調した。うまくいっている一部の人たちだけを見れば「中国はすごい、日本は絶対に追いつけない、中国と喧嘩している場合か」という見方になる。伝統産業のデフレ状況だけを見れば「中国経済は崩壊する」と言う人も出てくる。そのうえで垂氏は、閉塞感を抱える層を決して過小評価してはならないと言う。そうした不満は確実に積み重なっていくからだ。

佐々木氏が、国外に出ることも難しくなり、AIによる監視も厳しくなって閉じ込められた人々はどうなるのかと問うと、垂氏はそれがどこかで「Xデー」につながりうると応じた。ただ現状では監視されているため、基本的には何もできないとも認めた。

共産党が管理できないAIという不安

AIに詳しい誰かがAIを使って体制を打ち破るようなことは起きないのか、と佐々木氏は問うた。垂氏は、中国国内の友人から聞いた話として、AIが進みすぎることへの警戒を紹介した。今回の米中会談でAIをめぐる協議を行うことになったのもその表れだろうと垂氏は見る。

中国自身が恐れているのは、AIが人の手を離れ、AI同士で会話を始めて、共産党体制は本当に良いのかと考え出すことだという。逆に、これがベストだという結論になる可能性もある。AIは人間に無関心で、人にとって最悪でもAIがそれを良いと判断するかもしれない。いずれにせよ、習近平はAIについても人間による管理が大事だと繰り返し述べており、党が管理できないAIへの懸念は根強いと垂氏は説明する。

その一例として垂氏が挙げたのが、Anthropicの指摘である。垂氏によれば、中国のAIがClaudeに蒸留のための質問を大量に送り、その数は何千万件にのぼり、一部には人民解放軍の関係者によるものも含まれていたという。垂氏は、中国は管理しているつもりでも、知らないうちにこうしたことが起き、管理できなくなる可能性すらあると述べた。AIを管理すべきか、さらに発展させるべきかという議論は、今まさにAIの開発者自身が行っているとも付け加えた。

24:47

権力集中と「哲人政治」の破綻

佐々木氏は次に、権力が一人に集中し、決定や指示を修正する制度的な仕組みが弱まっている点を取り上げた。垂氏の答えは、これはもう変わりようがない、というものだった。AIに聞けばそのやり方は一番まずいと答えるだろう、下手をすればそれがベストだと言うかもしれないが、と垂氏は冗談めかした。

垂氏はプラトンの哲人政治に触れた。本当に優れた人物が治めるのであれば、それも良いのかもしれない。しかし問われるのは、習近平が本当に哲人なのかという点である。一人の人間が考えられることには限りがあり、時間も1日24時間しかない。垂氏は、制度としてはもう破綻していると思うと述べた。その体制が現実に続く一方で、AIはどんどん推し進められている。矛盾したことが起きつつある、というのが垂氏の認識である。

25:57

「主要矛盾」の管理のブレ:なぜ日本が叩かれるのか

佐々木氏は、中国外交が主要矛盾そのものを見誤ったというより、主要矛盾を管理する高度な戦略技法が、国力拡大と権力集中のなかで粗雑になりつつある、という見方を示した。垂氏はこれを、中国の戦略的思考と毛沢東の統一戦線工作理論という伝統から説明した。垂氏は、これは中国人一般ではなく中国共産党の伝統的なやり方だと区別している。

統一戦線工作の考え方では、まず主要矛盾を決める。今の中国にとって、長期的・戦略的な主要矛盾はアメリカである。主要矛盾が決まれば、それまで都合の悪かった相手も副次矛盾になる。副次矛盾の相手は少なくとも敵に回さず、できれば自分の側に引き寄せる。主敵を孤立させ、打撃面はできるだけ小さくする。垂氏は、農村で都市を包囲し、敵をその味方から引き離して殲滅する、という毛沢東の発想を例に挙げた。

この論理に従えば、アメリカの周囲にいる日本、韓国、ヨーロッパは、本来は中国が引き寄せるべき副次矛盾である。ところが中国は、アメリカとの敵対を避けながら、これらの国を叩いている。今は日本が叩かれているが、少し前には韓国、オーストラリア、カナダ、さらに前にはフランスが叩かれた。ヨーロッパや日本、オーストラリア、カナダは国際世論に大きな影響力を持つため、叩けば反発の声が一気に上がる。一時期「戦狼外交」と言われたのもこの結果だという。垂氏は、中国の伝統的なやり方にブレが出ていると見ている。

28:11

習近平の「締め切り」とXデー後の中国

最後に佐々木氏は、時間を稼ぐ戦略をとる習近平は自分の寿命をどこまで見ているのか、締め切りのあとどういう体制で続けるつもりなのか、と問うた。垂氏の答えは、正直に言って分からない、習近平自身も分からないだろう、というものだった。健康について深刻な説が流れたこともあるが、実際の状態がどこまで悪いのかは分からない。最近はインドなど各地を精力的に訪れ、アメリカにも行き、もう一度アメリカを訪れるとも言っている。それを見ても、やはり分からないと垂氏は述べた。

そのうえで垂氏は、習近平後にはハードランディングからソフトランディングまで、あらゆることが起こりうると述べた。先に触れたように不満は積み重なっており、Xデーには爆発するだろうと垂氏は見る。どういう爆発の仕方になるかについては、ハードかソフトかの二者択一ではなく、その間にさまざまなシナリオがあるという。

垂氏は、日本はそのために戦略的な準備をしておくべきだと主張する。ただ、日本の時間軸は長くても2〜3年しかなく、それでいいのかと疑問を示した。10年、20年の単位で考える必要があるという。10年後ではまだ習近平は健在かもしれないが、いずれXデーは必ず来る。そのとき日本がどういう立場に立てるのかが今問われている、と垂氏は述べた。「歴史は繰り返さないが韻を踏む」という言葉を引き、それまでは臥薪嘗胆で、何もしないのではなく、やるべき準備をしっかり進めておく必要があると語って対談を締めくくった。