約70本のスタートアップ紹介を終えて:FoundX「IdeaCast」シーズン2の振り返り

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概要

FoundXのポッドキャスト番組「Startup IdeaCast」は、海外スタートアップの事例をAIを使って調べ、紹介してきた。今回はそのシーズン2を締めくくる回で、番組の進行役と、もう一人の出演者が約1年の取り組みを振り返っている。なぜ番組を始めたのか、事例を重ねて何が見えたのか、AIを番組制作にどう使ったのか。そして、AIは起業の「最初の一歩」をどこまで支えられるのか。二人はシーズン2を一区切りとし、今後の支援のあり方を考え直すと述べている。

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番組を始めた理由:難しくなったスタートアップ戦略を事例から整理する

シーズン2の配信は約70本に達した。毎週2本ずつ、およそ35週、1年ほど続けた計算になる。

進行役によれば、番組を始めたきっかけは、スタートアップの伸ばし方や戦略が難しくなってきたという問題意識だった。特にディープテック系の攻め方を、事例ベースでまとめて考えるとよいのではないかと考えたという。進行役はFoundXの「スタジオプログラム」で初期のスタートアップを支援している。その経験から、初期の起業家が中長期を考えつつ短期的に何をすべきかを整理したいという狙いもあった。

もう一つの背景はAIである。進行役は、ここ1年ほどでAIが実用的に使えるようになり、それを使えばこうしたコンテンツを作れるのではないかと考えたと話す。出演者は、FoundXをより広く知ってもらうことや、スタートアップを知る手がかりを提供することが動画を出す目的にあったと振り返る。そのうえで、何を題材にするかを話し合った結果がスタートアップ紹介だったという。出演者は、AIがなければ大量の資料を読み込んでまとめることは難しかったとも述べている。

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事例を重ねて見えた「パターン」と、区切りをつけた理由

出演者は当初、ついていくだけで精一杯だったという。用意された資料やスライドを見て理解するのが限界で、AIがあっても最初の頃はほとんど何もできなかったと振り返る。ところが慣れてきて「こういうパターンか」と分かるようになると、吸収が速くなった。AIを使ったうえで、さらに自分のものとして理解し始められた感覚があったという。

進行役は、シーズン2をいったん止めることにした理由の一つとして、ネタが出尽くしてきたことを挙げる。新しい手法があまり見つからなくなり、慣れるほどパターンが見えてきた。出演者も「前にこれに似た話を聞いたことがある」と感じる場面が増えたと同意している。

題材の探し方と、創業者ポッドキャストの価値

紹介する企業は、資金調達のニュースを見ながら良さそうなものを選んだ。その後の情報収集ではAIを使ってさまざまな資料を読み、音声を聞いた。進行役が特に有用だと感じたのはポッドキャストで、理由は裏話が入っているからだという。

出演者も、起業家が直接インタビューを受けているポッドキャストには創業初期の情報がかなり含まれていると話す。そうした情報があると内容がずっと豊かになる。進行役は、FoundXが支援している起業家は本当に初期段階の人が多いので、他社が初期に何をしていたかを知ることには気づきがあると述べる。

出演者が印象に残った例として挙げたのは、顧客を一軒一軒回っていた企業や、ガレージで製品を作っていた企業だ。「やはりそうなのか」と思ったという。自分が起業する立場なら、最初の一歩は自分でやらなければならないという気持ちになるだろうとも語っている。実際、スタジオプログラムの参加者がよく聞いてくれている感触があるという。出演者は、自分の説明でよいのか自信がない気持ちもあると明かす。ただ、自分の話ではなく「こういう企業がある」というパターン自体は役に立つはずだと考えている。

週2本の制作負荷と、理解して話す難しさ

番組は二人が1本ずつ担当し、週2本を用意してきた。出演者はこれを「大変だった」と振り返る。AIを使っているなら簡単だと思われるかもしれないが、進行役が組んだAI活用の手順として、各工程でAIを通すプロセスがあり、それ自体に時間がかかる。それ以上に大変だったのは、出来上がったスクリプトを見て、きちんと話せるようになることだった。特に専門性の高い分野では苦労したという。出演者は、間違ったことを言っているのではないかという不安は今でもあると率直に述べている。

それでも、ゼロから調べるよりはAIを使ったほうがずっと理解しやすい。この点は起業家にもぜひ活用してほしいと二人は話している。

AI活用の工夫:一度で終わらせず、繰り返し問いかける

出演者は進行役に、AIを使ううえで気をつけた点を尋ねた。起業志望者が自分でAIを使うときの参考にするためである。

進行役によれば、番組では各工程でプロンプトを使って最終成果物を作っている。ただしプロンプトの作り方は最新モデルによって変わり、モデルごとの癖もある。細かいところでは、出力される文章の癖をどう取り除き、修正するかも手間がかかるという。

そのうえで進行役が意外と大事だと感じたのは、一度調べて終わりにしないことだ。AIとチャットで何度もやり取りする必要がある。学生などを見ていると一回で終えてしまう人が多いので、分からない点を繰り返し問いかけて理解を深めることが大事だと述べている。

NotebookLMの使い方:英語情報を日本語で、音声で予習する

二人ともNotebookLMをよく使っていた。公開情報のURLを入れて質問する使い方で、出演者は英語の情報を日本語で聞けることが本当にありがたかったと話す。

進行役は、NotebookLMでは音声コンテンツを自分で作れるにもかかわらず、意外と作らないと話す。プッシュ型で流れてくれば聞くが、自分からは作らないという。これに対して出演者は、毎回作っていたと明かした。自分が担当する回では、スクリプトを読み込む前に概要を頭に入れておきたい。そこで「起業志望者向けに二人で対談するポッドキャストを作ってほしい」と指示し、おおむね20分ほどの音声を聞いて予習してからスクリプトに取りかかっていた。進行役はこれを知らなかったという。

出演者は効果として三点を挙げる。概要がつかめること、スクリプトだけでは出てこないエピソードも紹介されること、例え話がうまいことだ。たまに変な例えも入るが、直感的に理解するのに助かったという。品質も上がってきていると感じている。当初は読み間違いがあり、「えー」といったフィラーも不自然だったが、直近で聞いたものはかなり自然になっていた。とにかく情報を入れて大まかな概要を知りたいときに便利だという評価である。進行役も自分で作ってみたいと応じた。

AIの進化と、シーズン2をいったん閉じる判断

進行役は、この1年でAIの機能が大きく増えたと感じている。今後1年でまた変われば、自分たちの支援内容も変わるかもしれないという。現在は、ChatGPTで調べものをさせる作業の自動化などを試している。ただ、今後どうなるかは出てくるツール次第だと見ている。

二人はこの1年弱、AIを使ったスタートアップ紹介、進行役の言葉でいう「AIエンパワードな」紹介を続けてきた。しかし、この1年でAIの性能が変わり、自分たちにできることも変わってきている。そこで、考える時間と仕込みの時間を取るため、シーズン2はいったん終了とした。

AIは起業の「最初の一歩」を具体化できるか

出演者が個人的に実現したいのは、起業の最初の一歩の精度を上げることだ。AIがそこに使えると非常にありがたいと考えている。しかし現状には不満もある。たとえば「Aというプロダクトを作りたい」と相談すると、AIは「Bという製品を作っている会社に価格をヒアリングする」といった行動を提案してくる。出演者は、そうした提案は実際にはできないものが混ざると苦笑しながら指摘する。

進行役も、ぼんやりした仮説をうまく検証したり、実行可能な単位に砕いたりする性能はまだないと感じている。出演者は、自分の背景情報や前提をもっと伝えれば変わるかもしれないと述べる。それに対して進行役は、情報を与えてもまだなかなか難しいという印象だと答えた。出演者の整理では、知識や情報がない状態で相談すると、提案される最初の一歩が決定的なものにならないか、実現が難しいものになりがちだという。曖昧なものを入れると曖昧なものが返ってくる、という点で二人の認識は一致している。

道具の面での悩みも話題になった。進行役は、ChatGPT Proに週単位の回数制限が入り、使いづらくなったと話す。いちいち切り替えるのも手間だという。用途によって挙動が違うこともあるうえ、進行役はClaudeやほかのエージェント系ツールも使っている。どのAIを何に使うか悩ましいと述べる一方で、次々に出てくるツールをスタートアップ支援にうまく生かすことにもう一度取り組みたいとも語った。

AIと専門家・現場での対話をどう組み合わせるか

進行役の見立てでは、科学的な計算や関連情報のまとめはAIの得意分野で、現時点でも手伝ってくれる。課題はその先にある。曖昧な仮説を処理し、ステップバイステップで道筋を示すところまでAIがどう進むかは分からないという。しかも起業家は結局、自分で行動しなければならない場面が多い。進行役は、どの言葉で探せばよいか、どのあたりが探索範囲として適切かを見つけるには人の話を聞きに行く必要があると指摘する。プロンプトに入れる検索語を探すような作業にも、現場での対話が欠かせないという。こうした人との対話とAIを組み合わせられるとよい、というのが進行役の考えだ。

出演者は自身の論文執筆の経験を引く。AIに先行研究を読み込ませると、かなりよい仮説が出てくる。しかし指導教員と話すと「これはこうだから、こう修正しては」と意見をもらえ、内容が大きく変わることがある。その機能をどう実現するかが難しい点だという。

進行役はこれを受けて、そうした領域ではまだ専門家のほうが知識を持っていると述べる。AIですべてができるなら、OpenAIやAnthropicはマーケティングでも圧倒的な成果を出しているはずだという。そうなっていない以上、その問いはまだ解けていないというのが進行役の見方だ。

変化する競争環境と、日米の資本規模の差

進行役は、スタートアップを取り巻く環境の変化にも触れた。AIで解決できる課題の範囲が広がり、ディープテック系に取り組める人は増えている印象がある。しかし、そこからさらに踏み込んで本当の課題を見つけに行くには、まだ時間がかかる。

一方で、別の意味での難しさも増していると進行役は言う。ソフトウェアはすぐに作れてしまうため、作るのにかかる時間差を生かして参入障壁を築くやり方が、純粋なソフトウェアでは成り立ちにくくなっている。その場合はセールスやマーケティングで障壁を作ればよいとしつつ、こうした時代や環境の変化を捉えたうえで、あるべきスタートアップ像と支援の姿を考えなければならない時期だと述べる。

出演者は、アメリカを見ているとスタートアップが資本のゲームになっていると指摘する。IdeaCastで紹介した企業の中にも、シード段階で数十億円を調達しているところがあり、日本では厳しいと感じたという。進行役は、その中で日本のスタートアップが勝っていけるのか、勝てる領域はどこにあるのかを考える必要があると応じた。アイデア紹介にとどまらない支援策を提供したいという。

視聴者の反響と、個社を深く調べて得た学び

出演者は、起業家以外にも番組を聞いている人がいると知り、嬉しかったと話す。自治体の関係者も聞いているという。進行役も、こうした感想は日頃の会話や直接会った際によく聞くと述べ、引き続きフィードバックが励みになると話した。

締めくくりに出演者は、IdeaCastが自分自身の大きな勉強になったと語った。「どこそこが資金調達した」というニュースはよく目にする。しかしそれだけでは、どんな事業をしているのか、創業者がどんな経歴なのか、最初に何をしていたのか、その業界の課題は何だったのかは分からない。番組のために企業を調べたことで、起業家と話す際に「こういう会社は最初にこんなことをしていた」「この業界にはこういう課題がある」と話せるようになったことがありがたかったという。

進行役は、個々の企業をきちんと理解しようとするとかなりの量を読まなければならないと補足する。今回はNotebookLMを活用し、1社あたりおよそ50記事を目標に読み込んだ。情報が多い会社もあれば少ない会社もあったという。

日本ならではのイノベーションモデルへ

進行役は最後に、スタートアップの環境が変わりつつあることに改めて触れた。最近ブログ記事にも書いているように、日本ならではのイノベーションモデルを考えなければならない時期だと考えているという。そのために考える時間を取り、提供する情報の中身も変えていきたい。ただし答えはまだ出ていないので、議論できる相手がいれば一緒に議論したいと述べた。

カンパニークリエーションに取り組む人が増えていることを、進行役は素晴らしいと評価している。そのうえで、その次の仕組み、次のスタートアップのモデルや支援のあり方を考え、議論していきたいという。

今後の形は決まっていない。シーズン3になるのか、別の番組のシーズン1になるのか、FoundXのメンバーが話すビデオポッドキャストになるのか、あるいは悩みをひたすら話す番組になるのか。どうなるかは分からないが、二人は番組のフォローを続けて待っていてほしいと呼びかけ、シーズン2を終えた。