小さく始めるだけでは足りない:大きな構想と最初の仕事をつなぐ「楔(ウェッジ)戦略」

YouTubeで開く ↗
概要

FoundXの番組「FoundX Review Startup IdeaCast」は、海外を中心としたスタートアップの事例をAIで分析し、戦略や事業の組み立て方を紹介している。番組は冒頭で、AIで情報を整理しているため一部の情報が古い、または誤っている可能性があること、企業評価や投資判断を目的としないことを断っている。今回は分析編の1ページ「大きな物語、小さく鋭い楔」をもとに、楔(ウェッジ)戦略を扱った。

19分で読めます

解説役がこのテーマを選んだ理由は二つある。大きな事業を構想するほど最初に必要なものが多く見えて動けなくなる。逆に、すぐ売れる受託業務を受けていると、そこから抜け出せなくなる。この二つのあいだで、どの小さな仕事から始め、それをどう大きな構想に近づけるのか。「小さく始めましょう」の先を考えるのが今回の狙いである。

2:31

楔は売上ではなく「能力を獲得する装置」

スライドでは、楔を「売上ではなく能力を獲得する装置」と位置づけている。最初の市場を選ぶときに、そこでどんな能力が得られるかを考えておくとよい、というのが解説役の見方だ。

進め方は3段階に整理されている。1つ目は「絞る」こと。支払い意思が明確で、成果を測定できる課題に絞って参入する。2つ目は、隣接市場に入って制御点(コントロールポイント)を握ること。最終成果を左右する中核能力、データ、運用ノウハウなどを獲得する段階である。3つ目は、獲得した能力を最終目的地となる構想へ移す(トランスファーする)ことだ。

そのためにはまず、最終構想の実現に必要な能力を要素に分解する。そのうえで一部ずつ獲得していく連続的なロードマップを描き、それに合う初期顧客を探す。初期市場の売上が小さくても大きくても、そこで能力が培われるかどうかを見るべきだという。

解説役は注意点も挙げた。同じ業界であっても、必要な能力が共通しないことがある。逆に、まったく別の業界で培った能力が自分の最終目的に使えるなら、業界を変えて入るのも一つの方法かもしれないという。初期顧客に固有の部分と、再利用できる能力とを切り離して管理しながら進める。これが今回の全体像だと説明された。

能力が残ったかをどう測るか:Vantaの例

聞き手は、能力を獲得できたかどうかをどう判断するのかと尋ねた。解説役は、まず学びがあるかどうかだが、それだけでは測定できないと答えた。具体的な指標として、次の3点を挙げている。

  • 学びの結果、次の案件の見積もりや検収までの時間が短くなっているか
  • 前回の成果物を、顧客情報を持ち出さずに再利用できるか
  • 創業者以外の担当者でも同じ品質を出せるワークフローやプロセスが整っているか

時間が短縮された、品質が上がった、あるいは品質が安定した。こうした変化が見られれば、能力が残ったと言えるのかもしれないという。

例として挙がったのが、セキュリティ・コンプライアンス業務を支援するVantaだ。解説役によれば、Vantaは「オズの魔法使い」型に近い、コンサルティングに近いところから始めた。最初は製品を作らず、SOC 2監査を表計算ソフトで自分たちで実施した。その後、複数社で共通の統制やルールを使えることを確かめてからソフトウェア化した。この経緯はFirst Round Reviewの記事にまとめられているという。完成品を最初に作るのではなく、複数社に使える能力を先に積み上げた例として紹介された。

6:13

構想の大きさと資源の乏しさのギャップを埋める

次の論点は、大きな構想と手元の乏しい資源との断絶をどう埋めるかである。建設、海洋、宇宙、エネルギーのような巨大市場は、実績や実行能力の証明を求める。しかしスタートアップには、それを証明する機会がない。

そこで、失敗の範囲を限定した案件を選び、実際の現場での学習と初期売上を両立させる。それを次の資金調達に向けたトラクションとして積み上げる。完全なものを最初から作るのでも、構想と無関係な受託をするのでもなく、ロードマップを描いたうえで小さく失敗しながら実環境で学ぶ。解説役はこれをポイントに挙げた。

この観点では、最初の顧客は売上の源泉であると同時に、自分たちの不確実性を減らす手段として選ぶことになる。技術が未完成でも、提供する対象や状況を絞り込めば、今すぐ届けられる価値(MVP的なもの)はあるはずだという。ただし、お金をもらっているという事実だけで良い案件だと判断してはいけない。能力を獲得できる案件かどうかを見極めながら進めることが大事だとした。

聞き手が「売上の金額や規模ではなく、別のポイントが評価されるということか」と確認すると、解説役は売上とエビデンスの価値を区別する必要があると答えた。誰が何に対して支払ったのか、検収されたのか、リピートがあるのか。投資家はそうした点を見ているはずだという。技術が動くかどうかより、どんなエビデンスを作り、それが次にどうつながるかを考えるべきだ、というのが解説役の主張である。

例として挙がったのはZiplineだ。医薬品などを急いで届けるドローン自律配送のスタートアップで、機体を売るだけでなく、設計・製造・運用を組み合わせた配送サービスとして医療物流から参入した。ただしそれは最初の楔にすぎず、最終的には米国での食品や医療用品などの家庭向け配送を狙っている、と解説役は説明する。ニッチだがニーズの高い領域から入り、徐々に用途の異なる領域へ広げていく例として位置づけられた。長期構想にある複数の不確実性を、どの順番で減らすのか。限定された条件でも顧客が価値を感じる製品やサービスを出せるのか。それが重要だとまとめた。

10:07

技術ではなく成果を売るための事業設計

続いて、技術ではなく結果を売るための境界設計が論じられた。解説役は、これまでの回でも繰り返し出てきた話として、垂直統合に近いことが必要になる場合があると述べる。ツールを売ることと、結果や成果を届けることはかなり違う。顧客がツールだけを買うと、その後に設定、調整、運転保守などの作業が発生する。技術を納品して終わり、というケースはあまりない。

そのため、最終的にどこまで自社で担うかはさておき、一度フルスタックで固めて成果を直接提供する。そのほうが一部の顧客には受け入れられやすく、導入も早いのではないか、と解説役は分析する。楔としては重く見えるかもしれないが、という留保つきである。

その際に重要なのが設計変数の捉え方だ。汎用品や物理的な運搬は外部を活用し、顧客成果を左右する制御点は自社に残す。顧客側の導入リスクを削る代償として自社が設備投資などの重い資本負担を背負うことになるが、それでスピードを買う。これまでの事例でもよく見られたパターンだという。具体例は、製造業向けロボット自動化のFormicだ。ロボットを納品するのではなく、稼働責任を引き受け、運用まで含めて工場に提供している、と紹介された。

聞き手は、工場や設備をどこまで所有すべきかを尋ねた。解説役の答えは、所有しているかどうかより、制御できているかどうかで判断するというものだ。成果の品質を左右する部分を自分たちでコントロールでき、改善できるかどうかがポイントになる。契約、監視、判定、検収などを外部に委託しても品質をコントロールできるなら、所有は不要だ。所有によって品質や納期を大きく変えられる場合は、所有してもよい。所有の負担を避けた結果、改善やコントロールができなくなるなら、所有したほうがいいかもしれないという。

13:31

楔が刺さる市場、弾かれる市場

楔戦略が機能する市場と、そうでない市場の整理も示された。成立しうる条件として挙がったのは次のような状況である。

  • 既存の代替手段に明確な限界があり、局所的であっても今すぐ支払う顧客がいる
  • 現場の例外処理が多く、一度フルスタックの能力を持てば手放されにくい
  • 初期のデータや許認可が、次に移転できる能力になる
  • 運用データ、品質保証の権限、顧客設定が自社に残る

一方、成立しにくい条件もある。顧客が自社の運用能力に満足していて、単なるツールの乗り換えしか求めていない場合だ。ツールから入ること自体は可能だが、それ以上の能力を獲得しにくい。案件ごとに現場条件や規制がまったく異なり、常にフルスクラッチの対応が必要な場合も難しい。元請けやプラットフォームの力が強すぎて価値をすべて吸収される場合も、楔戦略はうまくいかないかもしれないという。ほかに、顧客成果を自社で直接測定できるか、検収プロセスに直接関与できるかも判断材料に挙がった。いずれにせよ、ロードマップ上の能力を育てられるかどうかが重要だという。

聞き手は、「現場の例外処理が多い」ことは成立する理由にも、しない理由にもなりうるのではないかと指摘した。解説役は、例外への対処法を自社の能力として再利用できるなら良い条件であり、毎回違う処理が必要ならそれは毎回の負担になると答えた。判断の基準は例外の件数ではない。新しい種類の例外が増え続けるかどうかを見て、参入障壁になるのか、スケールしない理由になるのかを見分けるべきだという。

事例はBuilt Roboticsだ。既存の建設機械に後付けする自律化技術を使い、大型太陽光発電所の杭打ちなどの用途を提供している。解説役によれば、建機で何でも自動化するのではなく、作業パターンのある領域に絞って始めている。以前紹介したテラファーマと比べ、どこまでを請け負い、何が顧客側に残るのかを見ると面白いかもしれないという。参考資料として、焦点を失うことへの警戒を説いたNFXの少し古い記事「エントロピー」も紹介された。

17:06

競争優位(モート)はデータ量ではなく「判断・介入・失敗」の蓄積

モート(競争優位)について、解説役は楔戦略の観点から次のように述べた。インプットとしてのデータを集めるだけでは足りない。下した判断の内容、人手の介入がどれだけあったか、失敗した理由まで蓄積できるかがポイントになるのではないか。データの絶対量よりも、適用力や能力を移転できるかで考えるとよいという。

課題を解決するほど例外データや運用ノウハウがたまり、手順の標準化やAIによる自律化が進み、原価が下がる。その結果、別の用途への展開やスケールが可能になる。これはよくあるパターンだと解説役は言う。学習の回し方を考えながらモートを設計することが、楔戦略では非常に大事だとした。

聞き手が「データが多ければいいわけではないということか」と確認すると、解説役は必ずしもそうではないと答えた。データ量がものをいう領域もある。ただ、データに必要な情報が含まれているか、再利用する権利があるか、実際の改善につながっているか。これらのほうが量より重要だという。少量の良質なデータや別の設計で競合が追いつく可能性もあるため、量だけでなく質と次へのつながりを見なければモートにはならない、というのが解説役の考えだ。

ここで点検ロボットのGecko Roboticsが例に挙がった。解説役によれば、同社は点検後の意思決定まで扱っているようだという。水中作業や電力設備の点検を手がけ、取得した情報を保守の判断につなげている。データを集めるだけでなく、顧客の意思決定に生かせるかまで見据えてデータを取り、実際に生きているかを確認する。その点が学べるところだと説明された。

20:20

ディープテックにおける「大きな物語」と最初の楔

これまでの回で紹介したディープテック企業を例に、大きな物語と楔の結びつきが整理された。

テラファーマは、火星のインフラ構築という大きな物語を掲げている。最初の楔はテキサスでの土木工事で、建機の改造や遠隔操作による請負作業を行った。Starcloudの最終構想は軌道上のギガワット級データセンターだが、最初の楔はH100を搭載した小型衛星でのエッジ計算だ。計算結果を地上に下ろすところから始めた。海洋スタートアップのUlyssesは、海洋のOSや数万台規模の自律機体群を最終構想に持つ。その手前で、まず浅瀬での海草再生プロジェクトを受託した。

大きな構想を掲げ、そこにたどり着くための能力を分解し、1本目はここから入る。解説役は、これがディープテックで大きな物語を実証していく方法の例だとした。

聞き手は、Starcloudはまだ商用段階ではないかもしれないが、それでも楔として扱えるのかと尋ねた。解説役は、リスク検証にはサプライサイド(技術側)とデマンドサイド(需要側、商業性)の二つがあると説明した。Starcloudはおそらく最初に技術側の検証を選び、宇宙で本当に計算ができるかというリスクを確かめたのだろうという。商用面ではまだ高く売れていないかもしれないが、技術的には検証できたと言える、という見方である。

22:49

各社は何を検証し、どんな能力を残したか

続いて、各社が初期事業で蓄積している能力が整理された。

Ulyssesは海草再生から入り、水中で機体を確実に稼働させる能力と、実際に再生効果を上げる能力を得たのではないか、と解説役は見る。技術面で物理作業ができるかを検証し、初期売上も上げた。将来の構想にはまだできていない部分も多く、それは今後の資金調達とともに検証されていくパターンだという。

テラファーマがテキサスの土木工事で検証したのは、現場を遠隔で管制・コントロールできるか、現場に人手がどれだけ介入したか、繰り返すごとに工事原価がどこまで下がるか、だとされた。今後は人の介入率が下がっているかを見ていくことがポイントになるかもしれないという。

Starcloudについては、H100での計算を通じて、GPUが生む熱を宇宙で放熱できるか、放射線への耐性があるかを検証した。今後は宇宙輸送費の低下のように自社でコントロールできない要素も見ながら、次にどのリスクを検証するかを考えていく段階だという。

Lunar Energyは家庭用蓄電とAIによる最適化を検証しており、家庭内のDR(デマンドレスポンス)制御を実証し、電気代削減の実績も出たと紹介された。次は経済的メリットを確実に出しながらスケールできるかを検証することになるのではないか、と解説役は述べた。能力を分け、一つずつ検証していくのがポイントだという。

聞き手は、獲得した能力が本当に強みとして使えるかをどう確かめるのかと尋ねた。解説役は、能力があるからといって優位性になるわけではないと認めた。競合や代替手段と比べて顧客の成果や導入期間が改善しているか、新しい用途や領域で既存の仕組みをどこまで再利用できたかを見る必要があるという。

追加の事例も挙がった。Saildroneは無人の水上艇で海洋観測を行い、機体を自社で保有・運用・保守する。顧客はミッションと成果物を指定するだけの「アズ・ア・サービス」型で、自社で成果を納品しながら能力を蓄えている。Astranisは小型の高軌道通信衛星を手がけ、商業通信に加えて政府向け用途も増やしている。全世界を一度に狙うのではなく、地域の通信需要に絞っているようだという。Lunar Energyについては、投資家のB Capitalが「Why we invested in Lunar Energy」という記事を出している。投資理由の文章を読むと、投資家がどこをモートや能力として見ているかの参考になるという。

27:32

完璧なAIを待たず、人手も使って成果を届ける

次のスライドのテーマは「完璧なAIを待つな、泥臭く現場で回せ」だ。解説役によれば、最初は人間が作業しているパターンが比較的多い。AIを完成させてから始めるのではなく、泥臭いサポートや人的サポートを前提にしてでも顧客に成果を届けきれるかを確かめ、そのうえで進める。以前の回で触れたタッパーウェアの例のように、既存機器の改造や人間の介入でできることはやって即座に収益化し、その後に自動化していくやり方もあるという。失敗範囲を限定しつつ有料で実施し、需要のリスクを検証しながら進めるのがポイントだ。

ただし、それが改善につながっているかは見続ける必要がある。作業時間が短縮しているか、品質が上がっているか、例外処理が減っているか。単に実施を繰り返すのではなく、能力が蓄積されているかを確認すべきだという。一方で、最初の楔には必ずしもAIや自動化が入っていなくてもよい、とも述べた。

聞き手は、どこまで進んだら次へ移るかをどう判断するのかを尋ねた。解説役は、一律の基準はないと前置きしたうえで、目安を挙げた。ユニットエコノミクスのように採算が合うか、顧客の求める品質を満たしているか。さらに、新市場向けの開発をするときに既存顧客への品質を落とさずに済む余力が生まれているか。余力が生まれているのは何かが改善された証拠だからだ。ただし、自分たちの作業を顧客に押し付けて余力を作っているだけなら、それは自動化ではない。自社の改善によるものかを確認する必要があると注意した。

例として、溶接を中心に製造を支援するPath Roboticsが紹介された。溶接用の認識・制御セルに遠隔支援の仕組みを組み合わせ、工場全体を運営するのではなく溶接工程を請け負っている。完全な自律化ではなく、人手の介入を伴いながら顧客の工程に入っているという。解説役は、同社が約7,100万ドルを調達した後、2024年に1億ドルを調達したと紹介した。

30:51

楔の罠:初期市場での成功が足かせになる

楔は有効な手段だが、初期市場での成功が長期構想への移行を妨げることもある、と解説役は述べた。挙げられたのは三つの形だ。

一つ目はブランドの固定化である。最初の市場での自社の定義が強すぎると、市場の認知が固まり、本来の巨大市場に展開するときの障壁になる。二つ目はモデルの硬直化だ。初期市場に最適化した結果、KPIや価格設定が定着し、新しい経済性への移行を阻む。三つ目は資金のブリッジの問題である。最終目標と初期事業のあいだで資金と能力の橋渡しがうまくできず、中間の事業が自立する前に資金が枯渇するおそれがある。初期市場をうまく選ばないとそこに固定されて成長できなくなるため、初期と長期構想のバランスを意識して進める必要があるという。

聞き手は、初期市場が思ったより魅力的だった場合はどう判断すればよいかと尋ねた。解説役の答えは、最終的にどちらが大きくなるかで決めればよい、というものだ。手前の1本目が予想以上に大きくなりそうなら、そこにとどまってもよい。避けるべきは、惰性で初期市場だけを狙っている状態である。目先の売上を追うなら目先の市場に最適化したほうがいい面はある。しかし、それが意思決定の結果なのか、目の前だけを追った惰性なのかは考えておく必要がある。次の市場へ進むための投資枠と、足元の事業を維持する運転資金とを切り分けておくことも挙げた。

組織の問題にも触れた。新規事業に移ろうとすると、受託チームと製品チームが仲違いすることはよくあるという。最終的にここに向かうためにこれをやっている、と説明できる計画を持っていないと、長期構想には移れない。移らなくてもよいが、今の市場では一定以上大きくならないと考えるなら、大きな構想に向けて一歩進まなければ大きくはならない可能性が高い、と解説役は述べた。参考として、2022年の環境変化を受けてSequoiaが出した「Adapting to Endure」も紹介された。資本市場の変化を認識し、資金余力を持って持続可能な事業構造にすべきだと説いた内容で、こうした環境変化も踏まえて楔にどこまでとどまるかを考える必要があるかもしれないという。

34:55

能力の横展開とプラットフォームへの進化

最後の論点は、能力の横展開とプラットフォーム化である。最初は受託と反復から始まり、採算の確認と改善を経て隣接市場へ移る。さらに大きくするときの選択肢の一つがプラットフォームだ、と解説役は述べた。同じ仕組みで動いたという技術的な達成にとどまらず、外部のパートナーにも使ってもらえる基盤になるところまで描けるかを考えておく必要があるという。

そのためには、APIをどう提供するか、パートナーに施工などを任せるなら教育や品質基準をどう設定するか、といった整備が必要になる。自社の直営サービスと、プラットフォームを利用する外部企業が並存すると競合関係に陥るおそれもあり、それをどう管理するかも考えておくべきだという。最初は統合から始め、後にアンバンドルしていくのであれば、どこから、どのタイミングでアンバンドルするかも考えておく必要がある。

聞き手は、能力が蓄えられたら最初の市場から撤退する判断もありうるのかと尋ねた。解説役は、それはよくあることだと答えた。名前は思い出せないとしつつ、合成生物学のスタートアップが消費者向けの事業をすべて外し、プラットフォーム側に移った例を挙げている。蓄積した能力が最終的に必要なものかを見定めて、バンドルとアンバンドルを判断するのが大事だという。参考として、VCのEclipseが2024年頃に出した、ハードウェアスタートアップがどう失敗したかを含めて考えるポイントをまとめたプレイブックも紹介された。

37:46

まとめ:最初の一歩は、次の挑戦を楽にしているか

解説役は全体を振り返り、最初の楔が次の挑戦を楽にしているかという観点で見直すとよいと述べた。技術だけでなく結果を売る形で参入し、質の良い実環境データを取り、お金を払ってもらえるかを検証する。大きな構想やビジョンを必要な仮説と能力に分解し、検証の順番を決め、取れるものや再利用できるものから獲得して拡張する。能力の移転を測るときは、売上が増えたかだけでなく、次につながっているか、大きな手直しなしに別市場へ行けるか、改善や検収の質が上がり時間が短くなっているかを見る。

最後に、セルフチェックとして次の問いが示された。

  • 初期市場で業務を実行するこ冨田、将来の制御点を自社に残せているか
  • 案件を重ねるごとに、工数や例外処理が明確に減っているか
  • ツール提供だけで同じ価値を出せるなら、バンドルしたものをアンバンドルできるか
  • 初期市場での成功が、長期構想につながっているか

聞き手は、計画が大事だと感じたと話した。どこに行きたいかという大きな物語に加えて、どんなロードマップで能力を獲得するか、その順番に整合性と理由があるかを踏まえて最初の一歩を決めるべきだと理解した、場当たり的にではなく最終地点を描いてから最初を決めることだ、と述べた。解説役はこれに応じ、大きな構想と足元がつながっているか、それを説得力をもって示せるかが起業家に問われているのだろうと話した。それができれば大きな資金調達にもつながるかもしれない。初期市場を売上の入り口としてだけでなく、次の事業をつくる入り口として使えないか、という問いで番組は締めくくられた。