シカゴの心臓外科医・北原大翔の1日:ロボット支援バイパス手術と「一人で回す」働き方

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概要

米国シカゴで心臓外科医として働く北原大翔さんの1日に、チャンネル主のトマホークさんと京都大学医学部の学生「もご」さんが同行した。トマホークさんの紹介によれば、もごさんは日本の病院実習で卒業取り消しになった経験を持つ。そのもごさんをシカゴまで連れて行き、海外の病院で実習させてみるという企画である。2人がシカゴ大学を調べたところ世界ランキングは15位で、京大より上だと悔しがってみせる場面もある。動画は手術の見学を軸に、米国の外科医の勤務形態、日本とのチーム医療の違い、学生から見た感想までを扱う。

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早朝5時半、サイバートラックでの迎えと通勤

撮影が始まったのは深夜0時38分で、北原さんは朝5時半に宿泊先まで迎えに来る予定だった。実際にテスラのサイバートラックで現れ、車は自動運転で走る。北原さんによると、最近のテスラは自動運転で走れる場面が多い。毎週木曜日に勤務しているインディアナ州のメソディスト病院までは約50分かかるが、そのうち40分ほどはほぼ何もしなくてよいという。

勤務の自由度とオンコールの実態

同行の目的について、もごさんは自分の研究テーマである「働き方」を見たいと話す。北原さんの説明では、勤務は基本的に週5日で土日は休み。1週間は手術のある日と外来の日で構成され、外来では診察室で患者を診て手術するかどうかを決める。それ以外の日には決まった業務がない。例えば月・水・金が手術で火曜が外来なら、木曜は特に予定がなく、行っても行かなくても誰も確認しない。自分のやるべきことがなければ出勤しなくてもよく、何時に来るかも決まっていないという。

当直はないが、夜間の急患に対応する「オンコール」がある。4〜5人の外科医で回し、1か月のうちおよそ1週間を担当する。担当中に夜中の緊急手術が必要になれば電話がかかり、30分以内くらいに病院へ向かう。北原さんの自宅はシカゴ大学から30分ほどの場所にある。呼び出しの頻度は、多い週で2〜3回、少ない週は0回で、平均すると週1回程度だと北原さんは話す。

術前の準備:同意書とカルテ確認

病院では、まず手術を受ける患者に説明する。患者のサインが入った書類に北原さんも説明済みのサインをすると、患者が手術室へ送られる。北原さんは、アメリカの人はカメラのような珍しいものがあると必ず話題にしたがり、日本人なら触れないようなことでも「これは何?」と聞いてくると笑う。

続いてカルテを確認する。対象は当日手術する患者、前日に手術した患者の状態、それ以前に手術してまだ入院している患者である。

冠動脈バイパス手術とダビンチの使い方

北原さんは紙に図を描いて当日の手術を説明した。心臓の表面には冠動脈が走り、その先の心筋に血液を送っている。冠動脈のどこかが狭くなると血流が減り、その部分の心筋が「アンハッピー」になる。そこで行うのがバイパス手術だ。高速道路の渋滞箇所を避けて別の道路をつなぐのと同じで、狭い部分はそのままにして、別の血管を狭窄の先につなぐ。今回は胸の内側にある血管を胸壁から剥がし、冠動脈につなぐ。当日は2か所の狭窄に対し、2本の血管でバイパスを作る予定だった。

通常は胸を大きく開けて手術するが、この日はロボットを使う。1cmほどの穴を3つ開け、そこからロボットのアームとカメラを入れて操作するため、傷を小さくできる。手術は2段階に分かれる。まずダビンチで胸の血管を2本剥がし、剥がし終えたらロボットを外す。次に胸を少しだけ開け、冠動脈への縫合は北原さん自身が直接行う。術前には画像で、どこにつなぐかの目星をつけておくという。

もごさんは、日本では手術方針を決める際に10〜15人が集まるカンファレンスで発表するため、ここまで少人数で決めることはないと比較した。

術中に血流を測る機器

手術前、北原さんは業者から機器の説明を受けていた。バイパスに使う血管を「グラフト」と呼び、その血流を術中に測る装置だという。装置の先端のくぼみに血管を挟むと、どれだけ血液が流れているかが分かる。十分に流れていれば問題ないが、ほとんど流れていなければ吻合部に問題がある可能性があり、その場でつなぎ直せる。手術後に血流不足が分かっても再手術は難しいので、術中に確認できれば安全性が上がる、と北原さんは説明する。複数の会社の製品があり、そのうちどれを購入するかを検討している段階だという。

手術室には布で覆われたダビンチ本体があり、中にアームが収まっている。離れた場所にある「コンソール」は操縦席のようなもので、術者はそこに座って操作し、その動きがロボットに伝わる。

手術の見学

手術中の音声はほとんど聞き取れないが、見学した2人は映像の迫力に圧倒され、ずっと「かっこいい」と言い合っていたという。北原さんによると、ダビンチを使うときはモニターを見やすくするために手術室を暗くする。ロボットを使わない手術では暗くしない。トマホークさんは、この技術に到達するまでには何十年もの修行が必要だろうと感想を述べている。

予定変更:体格の大きな患者と足の静脈

もごさんは途中から手術内容がよく分からなくなったと話し、トマホークさんも途中で何かが変わったように見えたという。北原さんの説明はこうだ。予定どおり胸の血管2本はどちらもきれいに剥がれ、状態のよい血管が取れた。しかし患者の体が大きく、特に横幅があった。左側の血管は予定どおりつなげたが、右側の血管は目標の位置まで全く届かなかった。何とかしようと試みたもののうまくいかず、急きょ足から静脈を採取した。その静脈で右側の血管を延長し、目標に届くようにしたという。

手術後の仕事:コンサルトへの対応

手術が終わると、他科から「手術が必要な患者がいる」という相談(コンサルト)がメッセージで届いている。北原さんはそれを確認し、手術が必要か、どの程度急ぐかを判断して返信する。この日は3人ほどの相談に答えた。さらに、本来は外来で診る予定だった患者が、手術とは関係なく体調不良で来院していたため、その場で診察した。

もごさんは、1人が担う役割の大きさに驚いた。日本ではコンサルトが来るとまず会議を開く流れになりがちだが、ここでは1人で解決しようとしている、という指摘である。北原さん自身も、本当はほかにもやるべきことがあるが、時間が遅れるので切り上げなければならないと話していた。

日本と米国のチーム医療の違い

もごさんは、日本なら4〜5人の医師が担うことを1人でやっているのではないかと尋ねた。北原さんの説明では、日本の外科手術は執刀医、その向かいに立つ第1助手、場合によってはさらに第2助手の2〜3人で行うことが多く、全員が医師である。例えば外科なら執刀医と第1助手が外科医で、第2助手に研修医や後期研修医がつく。米国では外科医1人に、PA(フィジシャン・アシスタント)などの助手がつく。当日は「ジェニー」という人物が北原さんの第1助手を務めた。医師が2人入ることもあるが、珍しいという。

北原さんは、日本の医師も能力的にはPAのような職種があれば同じようにできると考えている。ただ、そうした職種がないため手伝う人がおらず、外科医がやるしかないのだという。

手術後に患者の家族と会うと「疲れているでしょう」と声をかけられ、患者の母親からハグされたというエピソードも紹介された。

夜の寿司店と「外科医とは何か」

1日の締めくくりに一行が訪れたのは、ロゴも看板もない隠れ家のような寿司店である。大将の金丸さんは東京で18年修業したと紹介され、カツオ、メジマグロ、ヒラメなどが出された。北原さんたちはシカゴで最もおいしい寿司店だと考えているという。

トマホークさんが「北原さんにとって外科医とは」と尋ねると、北原さんはそれについて考えたことはあるが答えはなかったとし、「手術を仕事にする人、それ以上でもそれ以下でもない」と答えた。トマホークさんが、北原さんに憧れる日本人はたくさんいると伝えると、北原さんはそうなれるようにもっと頑張りたいと応じた。

翌日、もごさんの感想

翌日、もごさんは前日にぐったりしていた理由として、立ちっぱなしが苦手なことを挙げた。それでも学ぶことは多く、日本と海外の違いを強く感じたという。一つは、日本にない医療職の存在である。フィジシャン・アシスタントは看護師と医師の中間の職種だと説明を受けた。また、看護師らしき人が私服で聴診器を下げているだけで、かなり自由で楽しそうに見えたとも語る。

もう一つは教育制度である。北原さんから聞いた話として、米国では研修の段階ですでに専門領域が決まっている。日本では2年間の初期研修を経てようやく決まり、もごさんは実習の2年と研修の2年を合わせた4年間を「無駄」だと考えていると述べた。

トマホークさんは、わざわざシカゴまで連れてきてつらい思いをさせただけなら悲しかったが、得るものがあったならよかったと話す。そして、視聴している学生に向けて、これをきっかけに海外留学を考え、北原さんに連絡してみてはどうかと呼びかけた。トマホークさんによれば、学生が留学に来ることは北原さんの夢でもあるという。