「異常気象」をどう捉えるか——森田正光氏が語るエルニーニョ、温暖化、AI予報、正しい避難
PIVOT 公式チャンネル台風の発生が相次ぎ、西日本では猛暑、千葉では記録的な豪雨に見舞われた今年の夏は、本当に「異常気象」だったのか。PIVOTの佐藤氏が、50年以上気象解説を続けてきた気象予報士の森田正光氏に聞いた。森田氏はこの対話を通じて、まず言葉の定義をはっきりさせることを重視した。エルニーニョの仕組みから温暖化の影響の度合い、生成AIによる予報の可能性、そして「避難」という言葉の誤解までを、専門家が知っていることとまだ分かっていないことを分けながら語った。
「異常」とは30年に1回の出来事
森田氏によれば、気象の専門家の間では「30年に1回の出来事」を異常と呼ぶ決まりになっている。その基準で見ると、8月に台風が10個ほど発生したこと、西日本で最高気温40℃以上の日が集中したことは、異常にカウントしてよいと森田氏は言う。千葉の大雨については、30年どころかもっと遡れるほどの異常な大雨だったと評価した。
ただし、30年に1回の出来事を場所ごとに数えていくと、毎年どこかで異常気象が起きていることになる。そのため、一般の人が思う「異常」と専門家の「異常」は少し違うと森田氏は指摘する。英語でいえば「アブノーマル」ではなく「アンユージュアル」、つまり「いつもとちょっと違う」くらいの意味であり、とんでもないことが起きているという感覚とは別物だという。専門性を持つ人間が定義を曖昧にしたまま話すと議論が分からなくなるので、今日はそこをしっかりさせたい、と森田氏は最初に述べた。
モンスーンジャイアとエルニーニョ
今年の夏に大雨が多かった原因として、テレビでは「モンスーンジャイア」という言葉がよく使われた。森田氏によれば、これは珍しい現象ではなく、年に2〜3回起きることもある。日本列島のはるか南の海上に、台風のような小さな渦よりもずっと大きい、数千キロ規模の渦ができる現象で、西から吹いてくるモンスーンの風と東からの風がぶつかるところで循環が生じるという。
そうした循環があるところに、今年はエルニーニョが起きた。森田氏は、今年の夏はエルニーニョで説明できると述べる。しかしテレビの天気コーナーは2〜3分、ワイドショーでも10〜20分程度で、エルニーニョとは何かという定義から説明する時間がない。その結果、メディアはその時々の流行り言葉だけを出すことになる、と森田氏は見る。今年はそれがモンスーンジャイアだった。だが元を辿ればエルニーニョに行き着く。日本列島にとってはエルニーニョとラニーニャが非常に重要で、この概念を知っているだけで、その年に何が起きたかがおおよそ分かるようになるという。
「神の子」エルニーニョの語源
森田氏は太平洋の海面水温の図を示しながら、南米ペルー沖を中心とした広い海域の水温が高いか低いかで、エルニーニョかラニーニャかが決まると説明した。高い方がエルニーニョ、低い方がラニーニャである。
言葉の由来はスペイン語だ。「エル」は定冠詞、「ニーニョ」は男の子で、「エルニーニョ」は特別な男の子、つまりイエス・キリストを指す。一方「ニーニャ」は女の子を意味する。ペルー沖は下から冷たい水が湧き上がる湧昇流の海域で、普通の年は寒流系の魚しか取れない。ところがエルニーニョが起きると暖流系の魚が取れるようになり、地元の漁業者はこれを神の思し召し、神の子が暖流系の魚を恵んでくれたと考えた。そこからエルニーニョという言葉が生まれたと森田氏は説明する。地元の人々は太平洋を何千キロも渡る現象だとは思っておらず、「今年はいつもより暖かい」という程度の感覚だった。
1950〜60年代ごろから世界の海の状況が分かってくると、この現象はペルー沖だけでなく日付変更線あたりまで広がる大規模なものだと判明した。気候学者は地元の言葉をそのまま借りてエルニーニョと名付けた。その後、逆に冷たくなる時期もあることが分かり、男の子に対して女の子、ということでラニーニャと呼ばれるようになった。もともとラニーニャという言い方は存在しなかったのである。
森田氏は、気象はもともと大気の学問で、空気のことしか考えていなかったと振り返る。海が大気に影響しているとはなんとなく分かっていたものの、詳しく解明されたのは戦後、それも1960年代ごろからだという。
東風の強弱がエルニーニョとラニーニャを決める
ではなぜエルニーニョは起きるのか。森田氏によれば、赤道付近で上昇した空気が高緯度側で下降する大きな循環(ハドレー循環)があり、地表付近に降りてきた空気は地球の自転の影響で東風になる。そのため南米の赤道付近では、自転している限り常に東風が吹いている。変わるのは風の強弱だけだ。
東風が吹き続けると、表面で温められた水は西へ運ばれ、インドネシア側に溜まる。実際、海面の高さもインドネシア側の方が南米側より高いという。佐藤氏が「暖かい水が膨張するのか」と尋ねると、森田氏は膨張ではなく流されているのだと答え、それほど地球のエネルギーは強いと述べた。
何らかの理由で東風が弱まると、西に溜まっていた暖かい水が東へ逆流し、ペルー沖の水温が相対的に高くなる。これがエルニーニョである。逆に東風が強まると表層の水がさらに西へ押しやられ、足りなくなった分を補うように下から冷たい水が湧き上がる。これがラニーニャだ。つまり根本的な原因は、海の上の東風が強いか弱いかのどちらかにすぎないと森田氏は整理する。
エルニーニョもラニーニャも大きな自然現象の一部であり、3〜4年に1回程度、行ったり来たりしている。気象庁のエルニーニョ監視速報を数十年分見ても、凸凹しながら往復しているだけだと森田氏は言う。
それでもなぜ「異常」と感じられるのか。森田氏は、仮に4年に1回エルニーニョが来るとしても、暖かい年と寒い年が交互に来るので、同じ種類の年は普通の人の感覚では8年に1回、場合によっては12年に1回になると説明する。10数年に1回となると、12年前のことは覚えておらず「今年は違う」と感じてしまうのではないか、というのが森田氏の見立てだ。
「スーパーエルニーニョ」は定義のない言葉
話題になっている「スーパーエルニーニョ」について、森田氏は気象予報士としてずっと迷惑に感じてきた言葉だと率直に語った。理由は定義がないからだ。エルニーニョは、監視海域の海面水温が基準より0.5℃以上高い状態が6か月以上続くという定義がある、と森田氏は説明する。一方スーパーエルニーニョは学者が言い出したもので、1.2℃以上とする人もいれば1℃とする人もいる。気象庁が正式に使うことも、少なくとも現段階ではないだろうと森田氏は見ており、皆が曖昧なまま使っているだけだという。
とはいえ、今年のエルニーニョがこれまでのものと比べて最大規模であることは間違いない、と森田氏は明言した。過去の大規模な例として佐藤氏が1983年、1997年、2016年を挙げると、森田氏もうなずいた。ただし、エルニーニョのときに典型的な天気のパターンがあっても、スーパーエルニーニョだからといってそれがより強く出るとは限らず、必ずしも連動しないという。
今年の夏に何が起きたか
エルニーニョの年の日本の天気について、森田氏は次のように説明した。普通の年は、水温の高いインドネシアやフィリピン付近で上昇した空気が、日本の南の海上あたりで下降して高気圧をつくる。そのため日本列島は高気圧に覆われ、夏は暑くなる。エルニーニョの年は海水温の高い場所が東にずれるので、太平洋高気圧も東にずれ、湿った空気が入りやすくなって雨が多くなる。1982年の長崎豪雨、1983年の山陰豪雨のころに、エルニーニョが注目されたという。
今年もスーパーエルニーニョで高気圧が東にずれたが、そのずれ方が興味深かったと森田氏は言う。本来なら東にずれるはずが、北側で高気圧が強まり北海道がかなり暑くなった。さらに分裂した高気圧が西側にもあったため、西日本も非常に暑くなった。東日本だけは雨が多く、これが千葉の豪雨の原因になったと森田氏は見る。
千葉豪雨の2日前には、台風15号が茨城県に初めて上陸し、西へ進んで日本海で熱帯低気圧になった。台風15号自体の雨はそれほどでもなかったが、大量の水蒸気を残していった。そこへ上空の寒気が入って線状降水帯が発生した。普通の線状降水帯はせいぜい半日程度で終わり、場所も移っていくが、今回は同じ場所で降り続いたという。
森田氏が重要だと強調したのは、台風15号が東から西へ進んだことだ。日本付近の台風は偏西風に乗って西から東へ進むのが普通で、茨城への上陸はほとんど例がない。台風の発生場所がいつもと違い、上空の風も日本列島付近で東風になっていたなど、条件が重なった。その大元を辿るとスーパーエルニーニョに行き着くのではないか、と森田氏は述べた。ただしこれは研究途上の話だとも付け加えている。
イベントアトリビューションという手法
森田氏が最新の研究分野として紹介したのが「イベントアトリビューション」である。異常な出来事が起きたとき、温暖化の影響がどのくらいあったのかを調べる手法だ。コンピューターのシミュレーションで、最初に与えるデータ(初期値)を変え、温暖化していなかったらどうなったか、スーパーエルニーニョがなかったらどうなったか、といった仮定の計算を何通りも行う。
今回の千葉の豪雨については、まだ確定した結果は出ていないと森田氏は断ったうえで、いろいろなところを見ると温暖化の寄与は15〜20%ぐらいではないかと言われ始めている、と紹介した。温暖化がなかったら、大雨自体はあったとしても1〜2割ほどはこれほどひどくならなかったのではないか、というのが現段階だという。森田氏は、気象は常に変わっていくもので、これまでの知見と整合させて事実だと確定したときに初めて言うのが科学だと述べている。
「1℃の上昇」は想像以上に大きい
それでも、気候変動は原因として考えるべきなのか。森田氏は「もちろんです」と答えた。3年前の夏の暑さは日本列島全体で30年に1回の出来事だった。去年もそうで、今年も西日本はそうだった。30年に1回の出来事が何年も連続すれば、もはや異常とは言えない。そこで次に出てくるのが気候変動という考え方だと森田氏は言う。気候は階段のようにポンと上がり、その状態が常態化して、また次の段を上がる準備をする。かつて気候変動は何千年、何万年の単位で語られていたが、数十年単位でも変わりうることが分かってきたという。
世界の平均気温の推移を示すグラフでは、1890年代は現在より0.5〜1℃低い。産業革命から現在までの上昇は約1.5℃(森田氏は1.43℃だったかと記憶をたどった)だ。「1℃くらい」と思われがちだが、森田氏は1℃はとんでもないことだと強調し、次のようなたとえを示した。
1か月の平均気温が1℃高いということは、30日分で合計30℃の余分な熱を持っているのと同じだと考える。その30℃を好きな日に上乗せできるとすると、最高気温30℃の日に10℃足せば40℃になる。まだ20℃残っているから、翌日もまた40℃にできる。1年なら365℃分になる。平均で1℃上がるというのはそういう意味であり、思っている以上に大きな災害に結びつくことがある、と森田氏は説明した。
懐疑論にどう答えるか
佐藤氏は、もっと長い時間軸で見れば氷河期もあり、今の上昇は波の一部にすぎないという意見もあると問いかけた。森田氏は、数万年のスケールの話をこの100年の話に持ち込むのは尺度が違うと答えた。人類が今の姿になったのは約20万年前、農耕の始まりは1万数千年前、産業革命以降の近代は150年ほどで、人間はごく新しい時代に生きているという。
グラフには懐疑論の根拠になりうる箇所もあると森田氏は認める。1970〜80年ごろには気温がいったん下がり、当時は根本氏の「地球は寒冷化する」という趣旨の本がベストセラーになって、本屋は寒冷化一色だった。森田氏は、この時期は太陽活動などで説明がつくとしつつ、そういう時代があったこと自体は事実だと述べた。また2000〜2010年ごろは、二酸化炭素を出し続けているのに気温がほとんど横ばいで、温暖化していないのではという説も出た。
それでも、1960年代ごろから二酸化炭素による温度上昇を示した真鍋淑郎氏が約5年前にノーベル賞を受け、二酸化炭素が増えると気温が上がるという考えは強固になったと森田氏は言う。ネパールでの事例にも触れ、氷河が緩んできているという話もあるとして、大変なことが起こり始めているのではないかという感覚を多くの研究者が持っていると述べた。ネット上の反応はさまざまだろうと断りつつ、大まかには95%ぐらい人為的な要因が温暖化に関与しているというのが妥当なところだと森田氏は考えている。
過去にも温暖な時期はあった。森田氏は平安から鎌倉時代の例を挙げ、「家の作りやうは夏を旨とすべし」という言葉や、池を設けて涼をとる寝殿造りに、当時の京都の暑さが表れていると語った。湖に堆積した花粉や年輪の研究からも、その時代が暖かかったことは裏付けられているという。バイキングの移動やグリーンランドの名の由来についても、暖かかった時代と結びつける説があると紹介した。気候が上下する要因としては、地軸の傾きのわずかなずれによる日射の角度の変化や火山噴火があり、6500万年前の恐竜絶滅のように隕石や火山で気温が下がることもある。
しかし、現在の気温上昇を自然要因だとするのは言いにくい、と森田氏は言う。気温が上がっていること自体を否定するのは相当何も見ていない人で、本当の懐疑論者は気象庁のデータまで疑うが、それなら気象庁に代わってやってくれと言うしかない、と森田氏は語った。
温暖化で台風は強くなるのか
森田氏によれば、気温が1℃上がると、空気が持てる水蒸気の量(飽和水蒸気量)は約7%増える。そのすべてでなくとも一部が雨として降るだけで、地球規模では大変な量になる。大雨の量が増えたことは人為的な影響と考えるのが妥当だという。
一方で「温暖化すると台風が強くなる」という説明については、分かりやすいので言われがちだが、まだ中心的な説ではないと森田氏は注意を促した。名古屋大学の坪木氏らが台風25号でドロップゾンデを投下して観測するなど研究は進んでいるが、まだきちんと解明されておらず、そんな単純なものではないだろうという。
それでも今年の台風の多さは際立っている。森田氏は自身が経験した1959年の伊勢湾台風を引き合いに出した。1959年9月26日の時点で伊勢湾台風は15号だったが、今年の9月26日時点ではすでに26号である。年間平均27〜28個のなかでの10個の差だから非常に多い、と森田氏は述べた。
51本の予想進路——アンサンブル予報の仕組み
収録時点で次の台風26号が近づいていた。気象庁の予報円は、翌週の水曜日ごろに沖縄近海にかかるところまでしか示していない。森田氏は、前夜の初期値で計算された51本の予想進路を示し、そのうち本州に近づくものが少なくないことから、20〜30%ぐらいは本州の南に来る可能性があると述べた。台風予報は気象庁しか出してはいけないため、自分たちは台風予報としては発表しないが、こうした資料を参考に可能性を考えているという。
51本の線は、いわば51台のコンピューターの「人格」、Aモデル、Bモデル……がそれぞれ出した答えだと森田氏は説明する。最初のデータを少しずつ変えて一斉に計算させ、どのメンバーが当たったかを踏まえて修正を加えていく。これが気象庁の全球アンサンブル予報だ。51という奇数である理由を、森田氏は「偶数だと多数決に馴染まないからではないか」と、自分ではそう思っているという言い方で推測した。
こうした予報は「数値予報」と呼ばれ、日本の気象庁の予報の主力である。森田氏は、投げたボールの落下地点のたとえで説明した。最初のデータが正確で、風などの外部要因がすべて分かっていれば、落ちる場所は物理法則で計算できる。人間ではとても追いつかない量の計算をコンピューターでやってきたのが数値予報で、その延長線上の完成形が現在の51通りのアンサンブル予報だという。
生成AIによる予報は何が違うのか
これに対して生成AIによる予報は、考え方がまったく違うと森田氏は言う。過去の台風のデータを全部入れ、今の台風はこれまでのどのケースに一番近いかを判断する。森田氏は、最初の絵と最後の絵があれば間をつないでしまう技術や、囲碁で人間に勝ったアルファ碁を例に挙げた。かつての囲碁・将棋の研究は局面ごとに評価値を計算して有利な手を選んでいたが、やがて勝ったパターンを大量に読ませる方が早い、という場面認識のような方向に変わった。物理法則で解いてきたものを、経験値をすべて踏まえた手法に置き換えるのが生成AIの予報だ、というのが森田氏の理解である。森田氏は自分は研究者ではなく、間違いがあるかもしれないと断ったうえでこう説明した。
佐藤氏が「外れたときに原因が分からない」ということかと尋ねると、森田氏はそれがAIの一番の問題点だと同意した。力学的なモデルなら、3桁と3桁を掛ければ大体1000前後だろうと見当がつくように、直感的に分かる部分がある。生成AIではそうした直感的な部分が分からなくなるのではないか、と森田氏は述べた。
それでも森田氏は、今年の春ごろに参加した研究者の会で、まだ公式には出していないが内部で行っている生成AIの台風予報の方が当たるという話を聞いたという。やがては生成AIによる予報が出てくるだろうと森田氏は予想する。昔は3日先ぐらいしか分からなかった台風の情報が今は2週間ほど前から出ているが、これからは1か月ぐらい前から大まかに分かる時代になるのではないか、と語った。
この冬は暖冬か大雪か
エルニーニョの影響が残る今冬は暖冬で雪が少ないと言われるが、実際はどうか。森田氏はまず、雪の予報は非常に難しいと強調した。雨は降水量が100ミリか200ミリかを予測すればよく、相対的には簡単だ。しかし雪は気温によってまったく変わる。東京の場合、2℃より高ければ大体雨になり、1℃から0℃ぐらいだと大雪になることがある。同じ降水でも雨ならただの雨、雪になれば大雪になる。その境目は今のコンピューターでも難しく、人間に分かるはずがない、と森田氏は言う。
日本海側の雪も単純ではない。寒気が強ければ大気が不安定になって大雪になりやすいが、近年は日本海の海水温が上がっており、雪になるか雨になるか、湿った雪か乾いた雪かで数値が大きく変わる。降水量は多いのに雪は少なかった、あるいは降水量が少ないのに雪はたくさん降った、ということが起こりうるという。
さらに太平洋側では、降水量が多いことと気温が低いことは連動しないことが多く、むしろ気温が高いときに降水量が多くなるという。「今年の雪はどうか」と聞かれたとき、森田氏は相手がどの雪のことを聞いているのか、どういう状況での質問なのかを考えながら答えているという。多くの人は東京の雪を思い浮かべるが、東京の雪も分からない、というのが本音だと語った。
命を守る「避難」とは何か
最後に佐藤氏は、異常気象に備えるために日々何に気をつければよいかを尋ねた。森田氏は「今ここに台風が来たらどうするか」と問い返し、建物の中にじっとしているのが一番いいと答えた。停電など外部インフラの問題はあるものの、東京23区では災害が起きるたびに修繕が入り、40〜50年かけて対策が積み重ねられてきた。アンダーパスなど危険な場所も、人の多いところから順に改善されてきた。まだ残っている場所はあるが、30年前、50年前を知る立場からすると非常に安全になったと森田氏は言う。世界的にも稀な安全な都市だとし、崖の近くなど一部を除けば、気象災害については自宅にいるのが一番安全だと述べた(地震は別だと断っている)。
そのうえで森田氏が最大のポイントとして挙げたのは、自分がどこに住んでいるか、今安全な場所にいるかどうかである。テレビは最も危険な人に向けて「川を見に行かないで」などと伝えざるを得ないが、受け手はその情報を自分の状況に照らして、今この状況は自分にとって安全かどうかを判断してほしいという。森田氏は台風25号の大雨の日に大手町にいて、わずか5メートル歩くだけで土砂降りだったが、外に出なければ安全だったと振り返った。電車も昔より計画運休などで止めるようになっている。
判断の手段として、森田氏はスマートフォンで気象庁の「キキクル」(危険度分布)を見ることを勧めた。自分のいる場所の周囲に崖や川があるかを把握したうえで、今どれほど切迫しているかを確認できる。そして警戒レベル4や5で「避難」と言われたとき、多くの人がその言葉を誤解していると森田氏は指摘する。避難とは「難を避ける」ことであり、その場にとどまるのが一番安全ならとどまるべきなのに、避難所へ移動するイメージばかりが広まっている。背後に崖があり逃げようがない人は優先的に避難所へ行くべきだが、誰もが避難所に向かえばパンクしてしまう、と森田氏は訴えた。テレビが避難所ばかり映すことにも責任があるかもしれない、とも述べている。
行政も数年前から、まず自分の身を守ることが大事だという方向に発信を変えたが、それを冷たいと受け取る人もいる。森田氏は、まず自分で考え、自分で判断できなければ友人など助けてくれる人に相談すればより安全な選択ができると言い、そうした共同体をつくることが大事だと語った。国や自治体もそうしたイベントを行っているが参加者が少なく、空回りしている。報道は報道で放送に集中し、仕組みづくりは公務員に任せきりになっている。その間が分断されていて、グラデーションでつながっていない。それが日本の問題として自分がいつも思っていることだ、と森田氏は結んだ。
今年の夏は本当に異常気象だったのか?
1959年の9月26日の段階で15号ですよ。今年9月26日の段階で26ですよ。だから、その大元を辿っていくと、スーパーエルニーニョだったんじゃないの。
スーパーエルニーニョは何なんですか?
あれもね、僕ら気象解説者からすると迷惑な言葉。
迷惑なんですか?
誰も言わないけど、なんでかっていうと、そんな定義ないんだもん。
災害、異常気象に備える方法としては、どんなことを気をつけて日々生活していったらいいと。
自分の住んでるところが一番大事なの。自分がどこに住んでるか、安全なところに今いるかどうかが最大のポイントなんですよ。
皆さんこんにちは。PIVOTの佐藤です。今回は「今年の夏は本当に異常気象だったのか」をテーマにお話を伺います。ゲストにお迎えしたのは、お天気といえばこの方、気象予報士の森田正光さんです。よろしくお願いいたします。
森田さんといえばお天気。森田さん、お天気ですか? ずっと見てましたっていう感じなんですけれども、ニコニコしてもいられないぐらいですね。今年の夏、いろんなところで災害であったり、暑いというのもあったりですとか、本当にそれで人が亡くなってるということがたくさん起きていましたけれども、今年の夏、本当に異常気象だったと言えるんでしょうか?
何を異常かっていうのがポイントなんですけれども、我々の中では異常というのは30年に1回の出来事を異常って言おうとなってるんですね。そういう意味で言うと、例えば台風が10個ぐらい8月に発生しちゃったりとか、いくつも来たりとか、そういうのは異常にカウントされていいのかなと思いますね。あと西日本で非常に酷暑日、40度以上の日が集中した。これも結構異常かなと。
ただ、そういうふうに30年に1回の出来事をカウントしていくと、毎年どこかで異常気象が起きてるので、一般の方が異常と思う異常と、我々が思う異常とはちょっと違う。英語で言うと、そもそもアブノーマルではなくてアンユージュアリー。アンユージュアリーっていうのは、いつもとちょっと違うよぐらいの意味なんですね。だからアブノーマルとか、とんでもないことが起きてるという感覚とは違う。
切り取ってみれば、ちょっとずつ、やっぱり30年みたいな出来事がどこかしら何かで起きている。
そうですね。例えば今年、千葉豪雨というのが起きましたが、あれも大雨の現象としては30年どころか、もっと遡れるぐらいの異常な大雨だったんですよ。だから、ああいうものこそ本当にそういう意味では異常と言えるんだけれども、とはいえ、じゃあそれに、西日本どうなの、東海どうなのっていうふうに、いっぱい事例があるわけですよね。その場所で起きたことといえば30年に1回だけれども、比べるとそうでもないっていうことでしょうかね。
何が異常なのかというと、ちょっと原因を含めていきたいんですけれども。
そういう言葉って、最初に言葉ありきじゃないけども、定義が必要なんですよね。我々、専門性を持つ人間は、その定義をぐちゃぐちゃにして喋ると、わけわかんなくなるので、そこのところだけはちょっとしっかりしてやりたいと思いますね、今日はね。
ぜひよろしくお願いします。じゃあ、まず今年の夏、たくさん雨を降らせた原因っていうのは何だったんでしょうか?
モンスーンジャイアって聞いたことあります?
それ、テレビを見ていて知りましたっていう感じなんですよ。
モンスーンジャイアって別に珍しいことではなくて、やっぱり何年かとか、1年の中でも2回、3回起きることがあるんですね。期間は1、2週間なんですけども。簡単に言うと、西太平洋というか、日本列島のはるか南海上ですごく大きな渦巻き。小さな渦巻きは台風だったりするけども、それよりも数千キロメートルのオーダーとか規模を持った渦巻きが時々できるんですよね。
これ、なんでできるかというと、モンスーンという、ずっと吹いてくる風と北東の風がぶつかる。そのぶつかるところが循環していくみたいな、大きなスケールの話になっていくので割愛しますけども、とにかく日本列島のはるか南海上に大きなひとまとまりの渦巻きのことをモンスーンジャイアって言うんです。そういうような循環があるところに持ってきて、今年エルニーニョが起きたんですよね。
またこれ、エルニーニョだけで説明する場合もありますよね。
そうですね。今年の夏の、エルニーニョが原因です。
なんでかっていうと、テレビの天気というのは大体2分ぐらい、2分から3分ぐらいで説明を加えて、ワイドショーなんかで10分とか20分やることがあるけども、それでも全部言いきれないんですよね。そうすると、エルニーニョって言ったって、エルニーニョって何よって思いません?
習ったことがあるような気はする、地理で、みたいな。
そう。だからエルニーニョの定義から始めないといけない。地球があって、日本列島はどこかというと、北の方にちっちゃく。左上の、そこに日本列島があるから。この赤いところが高いところですが、どれほどの広い範囲かわかるでしょ? 日本列島のはるか、わーっと広い範囲で。左側の、西って言おうとした方。
大丈夫です。西で大丈夫です。
いや、画面左側。テレビ的に言うと、左側がエルニーニョで、右の方がラニーニャなんです。青くなってるでしょ。だからまずエルニーニョとかラニーニャって何よっていうと、今赤いところが、ペルー沖とか言ってるけども、あそこの部分が赤いか青いか、高いか低いかで、エルニーニョ、ラニーニャだって決めてる。海水温の高い方がエルニーニョの定義で、青く見える方、低い方がラニーニャの定義。ここまでオーケーですね。
ここまでオーケーです。ここまでは教科書で勉強した気がします。
そもそもで言うと、ラニーニャっていう言い方なんかなかったんですよ。
そうなんですか。
そうなの。大昔は。エルニーニョとラニーニャは、言語を言うと、エルニーニョっていうのは、エルっていうのは冠詞だから、特別なって言うでしょ。ニーニョは子供。ラニーニャは女の子。エルニーニョは男の子、ラニーニャは女の子っていう、そういう名前なんですね。エルニーニョっていうのは特別な男の子。何を特別な男の子って? 特別な男の子ですよ。
何でしょうね。イエス・キリストのことなの?
イエスなの。神の子だから。だからエルニーニョのことを神の子ってする文章もありますよね。
エルニーニョのところ行きますよ。エルニーニョのところ行くと、赤道のところずっと行くと、ペルー沖のところはもう赤というか、ピンクから紫になるか、ものすごい濃いところがありますよね。ペルー沖で最初、言葉が始まったんです。
スペイン語なのか。
ペルーはペルー。そう。これスペイン語ってわかる人、そもそもインテリだから。
そんなことないです。
まさに。ペルーで、その頃のペルーの漁業の人たちは、あそこって下の方から冷たい水がどんどん湧き上がるところなんですよ。湧昇流という言い方をしますけど、下から冷たい水がどんどん湧き上がってくるところが普通の年なんですよ。だから普通の年はすごい冷たい、寒流の魚しか取れない。
ところがエルニーニョが始まると、暖流系のカタクチとか、そういうような暖流系の魚が取れるようになって。普段取れない魚だから、その地元の人たちは、これは神のおぼしめしだ。
いいこと。
そう。特別な海になってると、今年は。それで神のおぼしめしってことで、神の子、エルニーニョ。イエス・キリスト、イエス様が我々にあったかい暖流系の魚を恵んでくれたというか、そういう意味でエルニーニョって言葉が生まれたんです。
だから実は、太平洋何千も渡るような現象と思ってないから、地元の人は。ただ単に、今年エルニーニョだよね、いつもより、高いぜ、みたいな、こういう感じだったんですよ。ところがその後、1950年代、60年代ぐらいからかな、世界の海のことがわかるようになると、このエルニーニョと地元の人たちが言っていたことは、実はペルー沖だけではなくて、ずっと太平洋全体、もう東太平洋の半分以上、日付変更線ぐらいまで広がるものすごい大きな現象だってことがわかってきて。それでそのままその言葉をもらって、学者、気候学者がエルニーニョってつけたわけ。
その後調べていくと、いやいや冷たい時もあるよっていうことがわかったわけ。それが右の画面ですよ。じゃあ冷たいのどうやって言ったらいいの? じゃあエルニーニョの反対だから女の子でしょ。ラニーニャでしょって言って、ラニーニャが言われだしたんです。だから最初はエルニーニョっていう言葉ありきです。それも地元の人がそう言ってただけ。あったかい暖流系の魚取れるよね、神様のおかげですよねとか言って。
理解しました。じゃあ、もう次の概念としてできたっていう。
はい。それが実は、海のことなんか、気象っていうのは大気の気だから、空気のことしか考えてなくて。それは海も関係してるよねとは思っていたけれども、海がそんな大気なんかに影響を与えてるなんてことを思ってなかったのが、すごい勢いで研究が進んで、海じゃん、重要なのは。
そんな最近の出来事なんですか。
大昔から、例えば100年以上前から。大昔ってそんなもんですよ。100年以上前からそういうことはなんとなくはわかっていたけれども、詳しいことがわかったのは戦後ですよ。それも1960年代ぐらいから。それまでは気象っていうと、海ではなくて大気のオメガブロックとかね。モンスーンジャイアでもいいけど、そういう言葉になってくるわけですよね。なってくるっていうか、そういう言葉が理解されるようになってくる。
だからマスコミ、変だけども、その時代時代を追従してきて、その一部の流行り言葉だけを出してるわけ。今年有名になったのがモンスーンジャイアだよ、みたいな。
でも、その元を辿るとここにいた。
そう。日本列島の場合は、このエルニーニョとラニーニャっていうのがとても重要。この概念を知ってるだけで、気象に対する考え方、今年何が起こったかが大体わかるようになる。じゃあ、これなんで起こるのって話でしょ。さっき海があったかいって言いましたね。
この地図の一番左側は、右側のところ、南米って書いてあります。南アメリカ大陸、南米大陸。左の方はインドネシア。上のところは太平洋の表面。太平洋の表面の水があったかいか冷たいか。左の方があったかい、右が冷たいになってますが、なんでかっていうと、平常時、普通の年にはいつも東風が吹いてる。なんで東風が吹いてるかっていうと、ハドレー循環っていうのがあって、赤道であったまった空気が上の方に行くと、南半球もそうなんですが、その北側で下降流になるんですね。
その下降してきた気流というのは、地上付近になると、上に昇った空気がまた地上付近に降りてくると、地球が自転してくる影響で東風になるんです。だから常に南米の赤道付近というのは、東風が吹くのが当たり前なんです。常に吹いてます。
常に吹いてます。
実は東風がこの後弱まるっていうけど、必ず東風が永遠に吹いてる。
自転している限り。
そうです。
そうか、そういうことです。強いか弱いかだけだ。なるほど。
東風が吹いてますね、常時。東風が吹いてると、表面であったまった水はすぐに左の方、画面左の方に持っていかれるから、あったかい水はインドネシアの方に溜まるんです。だから常にバーっと吹き続ければ、あったかい水はそのままずっと。表面は常にこうやってやれてるわけだから、左の方が溜まるでしょ。だから実際に海水面の高さも、インドネシアの方が高いの、南米よりも。
そうなんですか。あったかい水は膨張するってことですか?
膨張するんじゃなくて、こう流されてるから。
流されてる。
そうやって流れるから。それぐらい地球のエネルギーっていうのは強いわけ。これがいつもの年です。
いつもの年。
で、ですよ。真ん中、エルニーニョが起きた時、どういうことが起こるかというと、東風が吹いていて何かの拍子で、これまたいろんな理由があるんだけど、一応何かの拍子って言いますね。何かの理由で東風が弱くなると、左側に溜まっていたあったかい水がざーっと逆流するでしょ。流れてくる、太平洋の。そうすると相対的に南米のペルー沖の海水温が高くなるじゃないですか。あったかい水が戻ってくるんだから。そうですよね。そうすると南米、ペルー沖の暖水塊ができたということで。
そうか。それで特別な魚が取れる。
つまり海水温が高くなったということだから。ペルー沖の海水温がなんで高くなったかっていうと、東風が弱まったから。それで、じゃあここで逆を考えましょうか。常に東風が吹いてるんだけども、この東風がもっと強くなったらどうなりますか?
冷たい水が押し出される。また水が押し出されて表面が少なくなるから、冷たい水が、表面が多くなるんで。
そう。表面が減りますよね。どんどんこちらにやると、この辺減りますよね。そうすると、そこのところに下の方から水が湧き上がってくるじゃないですか。足らなくなってるから。下の方から水が上がってくるってことは、下の水は何よっていうと冷たい水だから、ラニーニャになる。だからエルニーニョとラニーニャっていうのは、実は根本的な原因は、海の上の空気が東に吹いてるか、その風が弱まったかのどっちかなんですよ。強い時はラニーニャになるし、弱まるとエルニーニョになる。普通の時はそれなりにという。これやってるだけなんですよ。
なるほど。
だからそうやって考えていくと、エルニーニョもラニーニャも大きな自然現象の一部だねってことがわかりますよね。
じゃあ、こう繰り返しているということですね。
そうです。もう必ず3、4年に1回ぐらいエルニーニョが起きたり、ラニーニャが起きたり。もちろん毎年同じ状況で変わらないので、多少のずれはあるけども、基本的にはもう行ったり来たりしてるだけ。この数十年、エルニーニョ監視速報っていうのがありますけども、あれ見ると本当にデコボコしながらも、なんだかんだで行ったり来たりですよ。
そうですね。じゃあ果たして、その行ったり来たりなのに、なぜ異常気象だとこう言われたのかっていうところなんですけど。
ものすごい単純に4年に1回、4年に1回、オリンピックみたいに来るとしますよ。ところがエルニーニョとラニーニャは違うのは、エルニーニョの時にはあったかい水じゃん。あったかい魚がいっぱい取れるよ。ラニーニャの時は取れないよ。4年に1回、4年に1回だけど、普通の人の感覚は8年に2回。下手したら次の時だと12年に1回じゃん。そうすると10数年に1回って、10数年っていったら若い時だったらほとんど自分の青春の真っただ中じゃん。10数年に1回の出来事が起きたとしたら、これちょっと違うんじゃねえのとか思わない?
なるほど。
統計がはっきりした時には、だからそういうことじゃないですかね。4年に1回なんだけど、次の4年後は12年後だったりするから。そうすると12年前のことを覚えてなくて、また寒い場合も、ラニーニャの場合も12年に1回のことだから、今年違うよ、みたいな。
なるほど。ただ今年の夏というか、これからエルニーニョを超えたスーパーエルニーニョがやってくるという話がありますけれども、このスーパーエルニーニョは何なんですか?
あれもね、僕ら気象解説者からすると迷惑な言葉。
迷惑なんですか?
誰も言わないけど、なんでかっていうと、そんな定義ないんだもん。最初は元々エルニーニョだって、本当の一部の人しか知らない現象だったでしょ。それが気象庁の監視ができた頃だから、30年ぐらい前かな。その頃からだんだん言われだして、その後ラニーニャが言われるようになって、それでまたスーパーエルニーニョ、覚えなきゃいけないじゃん。
言葉が増えていく。
そう。でもスーパーエルニーニョは、まだ定義がはっきりしていなくて。
そうなんですね。
エルニーニョっていうのは0.5度以上。監視海域って言いますけれども、日付変更線までの赤道の海が0.5度以上高いのが6か月以上続くっていう、ちゃんとしたのがあるんだけど、スーパーエルニーニョは学者が最初に言い出したことなので、1.2度以上と言ったり、1度だったりとか、いろいろあるので。しかもそれ、きちっとして、気象庁がこれ使いましょうって、将来は知りませんよ。少なくとも現段階では気象用語というか、気象のきちっとした言葉ではないので、本当のこと言うと、みんな曖昧な形でスーパーエルニーニョだ、スーパーエルニーニョだって言ってるだけだよね。
きちんとした、エルニーニョみたいな定義はまだないけれども、それよりもさらに海水温の上昇具合が大きいっていうところで使っている。
それはもう間違いないですね。これまでのエルニーニョに比べると、過去に何回かあるんですが、2回あるんですが、最大規模のエルニーニョってことは間違いないですね。
最大規模ということで言うと、1997年がスーパーエルニーニョとして、かなり。
1983年は大冷夏だったりとか、冬がものすごい寒かっただったかな、確かね。
そうですね。83年、97年、2016年ということになっている。
そうです。それぞれにエルニーニョの時にはどうなるとかっていう、モデル的な天気があるんですけども、エルニーニョだと大体暖冬。スーパーエルニーニョだとじゃあそうかというと、必ずしも連動してないので、それでちょっとなとか僕ら思ったりするんですけどね。
その暖冬っていうのは、日本だとっていう考え方。
そうです。極東域ですね。これはなんでかっていうと、エルニーニョっていうのは、何度も言いますが、ペルー沖の海水温が高い。ペルー沖の海水温が高いということは、そこで蒸発した空気が、その北側で下降気流となって高気圧を作るんです。インドネシアの方で海水温が高い普通の年だと、インドネシアの上がっていった空気はずっとそのまま上げて、北の方に落ちてくると、位置的にはちょうど日本列島でしょ。
インドネシアが高いのが普通の年だから、インドネシア、フィリピンでもいい。フィリピン付近で海水温が高いところを上がっていくと、ずっと上がった空気が下の方に降りてくるところは、日本の南海上ぐらいなんですよね。だから日本列島、高気圧だから暑くなりますね、夏は。そういうことは言えますね。冬は逆に後退するから寒くなる。これがエルニーニョじゃなくて、普通の年の典型。
エルニーニョの時は、夏の高気圧が東にずれるわけだから、湿った空気が入りやすくて、日本列島の夏になるっていうことは言えます。
暑いし、雨も多い。
暑くはない。暑くはないけど、高気圧がずれるので、湿った空気が入りやすくなるので雨が多くなりますね。だから普通の年は夏が暑いけれども、エルニーニョの時は太平洋高気圧が東の方にずれるので、湿った空気が日本列島に入りやすくて、それで雨が多い。
そうか。
1983年がちょうどその年で、確かあれ、山陰豪雨が1983年ですね。82年が長崎、83年が山陰豪雨で、その頃エルニーニョだっていうふうに注目されたんですよね。
なるほど。だから1983年って40年ぐらい、40年だ。
40年ぐらい前から、もうそういう意味で注目されてましたね。
じゃあ、その時と比べてと言いますか、今年の夏は?
今年はね、スーパーエルニーニョでしょ。スーパーエルニーニョで同じように東の方に海水温の高いところが移って、高気圧もずれたんですよ。ところが今年のずれ方がとても興味深くて、本来なら東にずれるはずだったのが、実は北側の方で高気圧が強まったんです。だから北海道の方は結構暑くて。それからもう一つ分裂して西の方にあったので、西の方もものすごく暑くなった。
そうでしたね。
ところが東日本だけは、スーパーエルニーニョの影響かと思うんですけど、多分あると思うんですけども、すごい雨が多くて。それが千葉の原因だったんです。そもそもで言うと、千葉の2日前に台風15号がとんでもないコース通ったの覚えてます? 初めて茨城県に上陸して、それで西の方に行って、日本海で熱帯低気圧になったんですけども。
茨城県に上陸するの初めてって話題になって。
そうですよ。その2日後に千葉が来てる。台風15号ではそうでもなかったんですよね。雨が降ったけども。でも台風15号がものすごい水蒸気を持ってきて、その水蒸気が残っているところに上空の寒気が入ってきて、大雨になって。それがきっかけになって、千葉県だけ線状降水帯が、本来の線状降水帯だとせいぜい半日とかで終わるんだけども、ずっと続いて、同じ場所に。普通は作り替えられていくんだけど、今回の千葉の場合は同じ場所で降り続いたというケースなんですよね。
だからあれ、元々辿ると台風15号が一因になってるんですね。ここで重要なのが、その台風15号、東から西へ行ってるんですよ。
そうか。日本を。
日本は普通、西から東。九州の方に上陸して。
そうですね。偏西風も、それこそ日本の上空を流れている。
そう。まさに偏西風に乗って東の方に行くっていうのが普通なのに、真逆ですよ。夏は元々、さっき言ったぐるぐるになったりするのもあるとはいえ、東から西に行く、茨城に上陸したなんてほとんどない。そういうことから、今年の台風の位置がおかしい。台風の位置がおかしいのは、台風の発生場所がちょっと違う。それから上空の風がいつもとは違って、日本列島のところで東風吹いてるとかね、そういう条件が重なったわけですよね。だからその大元を辿っていくと、スーパーエルニーニョだったんじゃないのっていうところに行けると思いますね。
なるほど。
これは今まさに研究中で、イベントアトリビューションっていう、今最新の学問があるんですよ。お聞きになったことある? イベントアトリビューションっていうのは、例えば何かの異常な出来事。イベントアトリビューションだからね。いつもと違うような異常なことが起こった時に、それがどれぐらい温暖化の影響があったのかっていうのを今調べるのが、最新というか先端なんですよ、気象学の。
じゃあどうやってやるのっていうと、それこそシミュレーションというか、コンピューターの活躍がすごく広くなっていて。初期値っていって最初にデータを与えてやるんですね。もし温暖化してなかったらこういうふうになってたのに、今この温暖化のデータから入るとこういうふうになったと仮定して、もしここに最初の原因がなかったらどうなのよってことを、もう何通りもやってるんですね。温暖化がなかったら、例えばスーパーエルニーニョがなかったらっていう仮定ができるじゃないですか。そうやって辿り着く方法がイベントアトリビューションという手法なんですね。
それによると、今回まだ確定が出てないと思うんですけども、いろんなところからちょっと見たりすると、15から20%ぐらいあるんじゃないのっていうのが。これ、ばっと出されてるわけじゃないんですけども、そういうようなのが言われだしてる感じ。だから温暖化がなかったら、1割から2割ぐらいはこういうことは、こんなひどいことは、大雨があったとしてもこんなことにはならなかったんじゃないのということが、今言われてるという段階ですよね。
なるほど。まだ言われてる段階なんですけど、私もスーパーエルニーニョなんだと思ってます。
スーパーエルニーニョは、スーパーエルニーニョを作った人からしたらスーパーだから、我々は、ちゃんとした言葉じゃないし、みたいな。でもそうだよねっていう。だから気象って常に変わっていくじゃん。あらゆることがそうなんですが、それについて、これまでの知と合わせていくっていうんですかね。整合させていって、本当に事実だって確定した時に言うのが科学じゃないですか。
そうですね。ちょっとずつ紐解けてきましたが、これが先ほども何年かに1回はある現象だとなると、そんなに驚くほどのことじゃないんじゃないかと思うところもありつつも、ここまでやはり雨の被害とかがこれまでなかったと思うと、その原因として気候変動みたいなものっていうのは考えるんですか?
もちろんです。大体30年に1回の出来事を異常気象というふうに言いましたよね。でもその30年に1回の出来事が、例えば3年前の夏の暑さって、あれ30年に1回なんですよ、日本列島全体が。去年もそうでした。そして今年はというと、今年も東日本はそうでもなかったけど、西日本はそうですよね。そうすると30年に1回っていう出来事が、何年も連続するようになるわけ。
その30年に1回が、いくら部分が違うとはいえね、合体しても大きな面で見たら、30年に1回の出来事が頻発したら、30年に1回で異常って言えないよね、みたいな。そういう時に次の出演として気候変動っていうのがあるんですね。だから気候が階段のようにポンと上がったんじゃないの。そこが常態化していって、また次の階段を上がるための準備してるわけですね。ポンと上がっちゃうと気候変動ですよ。
元々は気候変動っていうのは何千年とか何万年という単位で言ってたんだけども、今みたいには本当に数十年単位でも変わりうるっていうのがわかるのが、今お見せいただいたこのグラフ。これ見ると、0.0のところが大体2000年ぐらいのところ、ちょうど真ん中に引いてありますけども、それよりも100年ぐらい前、1890年代って今よりも0.5度とか1度低いんですよ。
そうですよね。
これ、ちょっとこのグラフの前に、1度低いとか0.5度低いというのを言うと、0.5度かとか1度かってすごく言われるんですよ。
日々の気温で、じゃあ20度か20.5度かっていうと、確かにそんなに変わらない、みたいな。
言われるわけだから、考え方をまず払拭してもらいたい、今聞いてらっしゃる方。1度っていうのはとんでもないこと。
そうなんですね。
産業革命から今、1.5度ぐらい。産業革命、150年ぐらい前、200年としてもいいけども、100数十年経って1.5度とか言って、1.43度だったかな。とにかく1.5度高くなって。1度かよねっていうと、1度って大したことないと本当に思うわけ、直感的に。
この辺の目標とかも、1.5度以内に収めましょう、みたいな。
まさに1.5度以内。それで今危ういっていう、今の状況です。こういうふうに考えてもらうといいんですよ。確かに今日1日、20度も21度もあんまりわかんないから。3度違うと多少わかるけど、1度ぐらいだったらわかんないよね。ところが1か月の月平均気温っていうことで考えましょうか。
はい。
1か月は30日だとしますね。それで1日1度、月が30度違うということは、1日1度、全部が1度高いわけだから、単純に1日1度高いとします。1か月30日の中で1度高いってことは30度。本来なら高くならない温度を30度、自分がもらったとします。その30度を、例えば今日夏だとして、今日30度の温度の時に、その30度を自分が持ってて、好きな時にその30度を付け加えられるわけ。
そうすると今日、佐藤さんが朝起きて20度ぐらいで、昼間30度ぐらいだった時に、僕はちょっと出したろうかなと思って。30度はちょっとやりすぎだから、ぽっと乗っけたろうかって言ったら40度ですよ、その日だけ。それでまだ20度持ってるから、次の日、じゃあ50度やったろうかって、また40度ですよ。それで尽きちゃったのに、みたいな。それ、そういうことが平均値が30度高いってことの意味なんですよ。1年だったら365度あるんですよ、持ち分が。すごくない?
そうですよね。それは蓄えてるってこと。
蓄えてるから、それだけ上がったってことだから。
平均すると1度上がったというのは、そういう意味だということですね。
だから思ってる以上に大きな災害にも直結することがあるんですね。そういうのを研究してるのがイベントアトリビューションですよね。
このグラフ、平均気温の差というのを、偏差を見ていくと、なんとなくずっと上がっていってるなっていう感じはするんですけど、もっと伸ばしたら、氷河期とかあったじゃない、みたいな。そんな話とかまでいくと、気候変動はない、今は波の一部だというようなこともありますけど、そこに対してはどう?
それもよく聞く話で、オーダー違うでしょっていう。オーダーって長さ。長さが数万年のことを、この100年ぐらいの話に持ってきてどうするのよって思いません? 今、人間って20万年ぐらい前から今の形になったと言われていて、農耕が始まったのが大体1万年ぐらい前、1万数千年前。我々の近代が始まった、近代っていうのは産業革命以後だとしても150年ぐらい、そんなもんですよね。
よく近代の定義として、電波を出したか出さないかっていうのがあるんですって。電波を出してるかどうかで。それだったら本当に数十年の歴史だから、ものすごい新しいところに生きてるわけ。ものすごい新しいところに生きてるのに、このグラフ見ると1.5度ね、マイナス1度から今プラス0.5だから、1.5度ぐらい上がってます。さらにこれ読み解くと結構面白いことがあって。1970年代のところ、1970年から80年ぐらいのところ、ぼこっと下がってない?
下がってますね。
その頃に『地球は寒冷化する』っていう本がベストセラーだった。根本さんの本で。その頃、本屋も寒冷化一色ですよ。だから温暖化の今、懐疑論の人たちは、そういう時代もあったじゃないっていうふうに言うんですね。でもこの時はいろいろ、太陽活動とかそういうようなことで説明ができるんですけども、とにかくそういう時代があったことは事実なんですね。
2000年と比べると、0.7度ぐらいかな。そんなもんなんですけどもね。でも平均値だともっと低いかね。もっと低いっていうのは、0.4、0.5度の範囲の中に収まってると思うんですけども。でもその1970年代に、地球は寒冷化する、このままではどうなるとか、そういう話があったんですね。だからそういう意味で言うと、これぐらい上がったっていう人たちの言う気持ちはわかるけども、ただ一つだけ違うことがあるの。
それは何かというと、この2000年ぐらいのところ、ちょっと見ていただきます。2000年から2010年ぐらいのところ。なんか横に平べったくなってると思います、温度が。二酸化炭素をずっと出してるにもかかわらず、あの辺り温度の変化がほとんどないよねっていうので、実は温暖化してないんじゃないのっていう説の。
1970年代からずっと上がってるから、これ温暖化だって。真鍋先生がノーベル賞取ったでしょ。今から5年ぐらい前ですかね。真鍋先生が取ったのは、1960年ぐらいから、50年代、60年ぐらいから、二酸化炭素によって温度が、二酸化炭素が吸収して温度が上がるってことを言われて、それでノーベル賞取られたんです。そういうことで言うと、二酸化炭素が上がるから温度が上がるっていうのは共通認識になってた。
この前はヒマラヤでね。
そうですね。ネパールでありましたけど。
あれも氷河自体が緩んできたって話ですよね。だからそういうようなところにまで影響が出始めていて、大変なことが起こり始めてるんじゃないのというのが、今多くの研究なさってる人たちはそういう感を持ってますよね。
だから陰謀論っていうのがあるけど、陰謀論っていうのは一部の人たち、大体ネットだから、これを見てる人も違うだろうって反応はあるともちろん思いますけども、大まかなくくりで言うと、やっぱり95%ぐらいは人為的、人間が温暖化に関与してるんじゃないのというのが妥当なところだと思ってますね。
なるほど。さまざまなこういうデータから解析していくとってことですね。
はい。過去、温度が低い時とか、確かに高い時もあるんですね。有名なのは鎌倉時代。平安から鎌倉時代。『家の作りは夏を旨とし、冬はいかようにも住まる』という。要するに冬はあったかいからなんとかなると。夏の暑さをしのぐために寝殿造りというね、家の中に池を作って涼しい風を。あれ、当時の京都の暮らしを言ってるんですけど、また京都は盆地だから暑かったんでしょうね。
そういうふうにして、実際にその頃暑かったというのは、湖の中に溜まった花粉だとか、そういうのの研究があるんですよね。他にも年輪とか、そういうので、その時代にあったってことは事実なんですね。だから世界的に、バイキングがいますよね。南の方にやってきたのも、その頃あったかいから。あと北か、北の方に行ったのも、あったかい海になって海が開けてたとか、そういう説があって。グリーンランドっていうのも、本当にグリーンがあったというね。それで名前がついたとか、いろんな文献資料はあるんですよね。
だから大きな流れで上がったり下がったりするのは、それは太陽の角度が23度半なんだけど、本当はすりこぎ運動とか、ちゃんとしてるんじゃなくて、ちょびっとずれてる、軸が。それで太陽の当たる角度が違ったりとか、あと火山の噴火。火山が噴火すると、やっぱり温度が下がりますよね。
下がるんですか。
下がる下がる。一番有名なのは恐竜の絶滅じゃないですか。6500万年前。隕石でね。あれは隕石とか火山とか、そういうので。だからそういう要因によって温度が下がったり、気候に影響を与えることは事実だし、いっぱい歴史的な証拠もあると思うんですけども、今この温度の上昇に関しては、自然要因だという人はちょっと言いにくいよね、みたいな。上がってることは事実です。上がってることを否定する人は、陰謀論者の中の相当何も見てない人。
もしくは本当の意味での懐疑論者は、気象庁のデータまで疑いますからね。そういう方たちは、じゃあ気象庁に成り代わってやってくれって言うしかないんですけども。それは別として、このデータを見て人間が関与してないって考えるのは、考えにくいって言った方がいいんですかね。
その考えにくい、その上にもう一つ、温度が上がったことによって、いろんなコンピューターが今進んでいるので、シミュレーションなんかによって、どうもこういう現象も何割かは。全部は、その大きな現象そのものをそのせいにするわけにはいかないけども、それが大雨が降るきっかけになったこととか、その量が増えたっていうのは、やっぱり人為的な影響だと考えるのが妥当ですよね。
なるほど。
そもそもで言うとね、気温が1度上がると、水蒸気の、飽和水蒸気量って言うんだけども、水蒸気の持てる量が7%ぐらいアップするんですよ。
となったら降る雨の量が増えるっていう。
そう。7%、水蒸気の量が、単純にそのまま上がらなくても、一部でもそれが増されたら、地球規模で言ったら大変な量になるじゃないですか。
それだから台風とかも強く、威力というかも増すっていうことになる。
これは諸説はあって、単純に言えない。もちろんそういう研究もあって、今実際に今回の25号で、名古屋大学の坪木先生とかね、ドロップゾンデ落としてやったりとかしてますよね。だから今その研究が進んでるところですけれども、温暖化すると台風が強くなるってすごいわかりがいいから言っちゃったりするけど、それはまだではないですね。中心的な説ではない。
主は何なんですか?
わからないじゃん。
まだ解明されてない、ちゃんと。
解明されてない。そんな単純なもんじゃないだろうという。とはいえ今年ね、確かに8月、今だって26号でしょ。
多い。多いですよね。
だって僕、伊勢湾台風経験してますが、伊勢湾台風15号ですよ、1959年。1959年の9月26日の段階で15号ですよ。今年9月26日の段階で26ですよ。1959年よりも少なくとも10個多いじゃん。しかも100個の中の10個じゃないでしょ。大体平均すると27、8個の中の10個ですから。すごい多いじゃん。
この先もちょっと、短期予報、長期予報みたいな、この先のこともちょっとお伺いしたいんですけれども。直近、また台風がやってくる、26号が。
今言えるのは、沖縄近海のところに来週の水曜日ぐらいに予報円がかかってるっていうのが最新。これ多分、放送される時には結果出てないけども、20%から30%ぐらいは、そのうち本州の南に来る。だから結果、これ見てる人はわかるはず。その黒い線が51本あります。
その黒い線、まだ言っておきますが、気象庁の台風の予報円は書いてないですよ、そこまで。気象庁の予報円は日本の真上だけなんだけど、その51本の線の、何本ぐらい本州に近づくやつない?
結構あります。もうまるっと北海道まで、本州を突き抜けて北海道を突き抜けてっていうのもある。
それはちょっとほっといて。
でも本州に向かっているのは結構ある。
少数じゃないでしょ。
はい。
これは台風になる前の予想図みたいな感じですか?
いや、それは昨日の夜のイニシャルっていうか、昨日の夜のデータでやってますので。今手に入れられる一番新しいやつ。
こういうのを見て予報されるわけです。
予報はそうですね。台風予報は気象庁しかやっちゃいかんので、台風予報についてはやんないけど、そういうのを参考にして、そういう可能性もあるかなとか考えながらしてるんですね。
なるほど。
それは何かっていうと、その一本一本が、コンピューターの人格を考えて、Aさん、Aコンピューター、Bコンピューター、Aモデルでもいい。Aモデル、Bモデル、Cモデルって51人いるんですよ、そこに。なんで51かっていうと、50だと偶数でしょ? 偶数だと多数決に馴染まないから。本当かどうか知らないけど、そう思ってるんですけど。
その中の51通りを、いろんな最初のデータを少しだけ変えてやるわけ。もしここでこういうことがあったらどうなる、こういうことがあったらどうなるって言って、一緒にバーッと走らせるわけ。
なるほど。
それで競争させて、その中のどのメンバーが当たるのか。このメンバーがこういうふうに当たったか、前回の時はこれこうだったからって言って、修正を加えて。それで今、一番新しい気象庁のモデル、アンサンブルって言うんですけども、それでやったのがそれ。
それはAIとはまた違う?
AIはね、また違う。また違って、新しく面白いんだ。こっから30分ぐらい。
ありがとうございます。
これは力学的な、数値予報っていうふうに言うのが、コンピューターによる予報って言ってますが、数値予報って我々言ってます。計算させて予報させるのを数値予報、コンピューターの予報でもいいですが、それが日本の今、気象庁の予報の主力。
ここまでオッケーですね。数値予報って何かというと、物理的な法則。物理は、例えば一応分かりやすいのは、ボールを投げました。野球のボールでもビーンと上がってました。このボールが上がったら、このてっぺんまで行って、やがてずっと落ちてくる。でも、ちょっとした打ち方の角度によって、こっち行ったりあっち行ったりしますよね。
だけど、ここの初期っていうんだけど、一番新しいデータが正しくて、外側の外部要因、風、全部分かってたら、正確に落ちる場所が分かりますよね。予想できる。こういうことを一生懸命やってきたのが、これまでの数値予報なんですよ。コンピューターで、人間なんて比じゃないぐらい、やばいほどそういう計算をやって。それの延長線上の完成形態が、今の51通り。
ところが生成AIは全く違う。生成AIは、今まで台風がこういうふうにやってきたでしょって、その台風のデータを全部入れた。その全部入れた中で、こういう傾向の時には、今この台風は、今までの結果の中のどれに一番近いでしょうか、みたいな。すでにあるデータから。
よくあるじゃない。絵なんかでもそうだけど、最初の絵と最後の絵をつなげていくやつがありますよね。これまでのコンピューターだと一枚一枚入れていくみたいなやつが、もう最初と最後があれば全部つなげちゃうみたいな。
それで一番いいのが、AlphaGoってご存じでしたか? AlphaGoって、コンピューターが最初に囲碁で人間に勝ったっていう。あの後、ああいう局面を、将棋もそうなんですが、ああいう局面を今まで行っていって読んで。例えば、ある局面、50手なら50手やった時の局面が、相対的にどれが一番有利かなってことを、その時の評価値っていうのを持ってきて、それで計算させるわけね。
計算させて、この評価値が高いから勝つ確率が10だから、こちらの評価値にしようってことをやってたのが、これまでの囲碁とか将棋の研究で。それがだんだん進んでくると、生成AIとかだと、そんな最上の手って、手なんか止まることあるわけだから、そのパターンを、勝ったパターンをバーッて読ませた方が得でしょ、みたいな。そういう場面認識みたいな状況になってきた。
なってきたって、勝手にというか、僕はそういう理解してる。研究者じゃないので、間違いがあるかもしれないけど、大まかに言うと、そういう力学的な法則で解いてきたものを、そうではなくて、今までの経験値とかそういうものを全部踏まえてやった方が早いでしょっていう。
なるほど。
だから、その違った時に原因が分からないって、そういうことなんです。
まさにそれが今も、AIの疑問っていうか、一番問題点ですよね。
そう。そこだと思いますよ。だから、とてもそれはよく分かる。力学的なことって本当によく分からないんですよ。ただ、力学的なプログラムで走らせてるから、この式のここがこういう、だから大まかな答えは分かるじゃない。3桁と3桁を足したらさ、大体1000は超えないだろうとか、1000、ここら辺の範囲だろうと分かる。だから直感的に分かる部分があるけども、生成AIだとそういう直感的な部分は分からなくなるんじゃないですかね。
分かりました。なんとなく違いが。
そういう生成AI、ここ聞いて。その生成AIで、つい本当に最近って、今年の春だったかな、研究発表までいかないけど、そういう会があって行ってきたんですよ。そうしたら、今まではそのまま生成AIによる台風情報をやってないんだけども、ここのところ内輪ではやってるわけ。そうしたら、そっちの方が当たるという研究報告を聞いたわけ。研究者からね。
だから、やがては、今見ていただいたのは力学的な法則によるものだけれども、これからはおそらくAIによる、あのみたいなのが出てくると思います。
そうすると、今でも2週間ぐらい前からもう出ちゃってるけども、昔は本当、3日先ぐらいしか分かんなかったですよね。今もだいぶあれだけど、これからは多分、1か月ぐらい前から大まかにできるということは分かる時代になるんじゃないですかね。分からんね。すごいことと思ってね。僕らの世界っていうか、どの世界もそうかもしれないけど。
なるほど。分かりました。この冬、今まだエルニーニョの影響は残るであろうという中で、暖冬で雪が少ないんじゃないかみたいな、エルニーニョといえばというのはありますけれども、実際どうなると今予測されていらっしゃいますか?
雪は個別性があって、日本海側の雪と太平洋側の雪と違うんですよ。だから雪って言った場合、東京の人は東京の雪のことしか考えないわけ。
東京にベースは今あるので、東京かなと思う。でも新潟とやっぱりそうですよね。スキーに行った時とか、新潟におばが住んでるのもあったりして、よく冬は雪降るし、土地ってやっぱりありますよね。その雪がなんとなく少ないっていうのは、それこそ平均してみたらっていう感じで、やっぱりドカ雪みたいなのが降る可能性は全然あるっていうことですか?
本当の気持ちで言うと、そもそも雪の予報ってものすごく難しいんですよ。なんでかっていうと、雨は簡単ですよ。簡単って言ったらおかしい、相対的に簡単。なぜか、100ミリ、200ミリ。ところが雪の場合だと、大雪かどうかって気温によって全然違うんですよ。
2度より高ければ大体雨になるし、2度より低い、1度ぐらいから0度ぐらいだと、東京の場合だと大雪になったりして、ゼロから下がったら本当に量的にも増えたりするんだけど。だから0度から1度ぐらいの、その辺りって、もし雨に振れたら何も降らない。降水だけ、雨だけ、多少みぞれがあるぐらい。ところが雪になったら大雪になるわけ。今のこのコンピューターだって無理なのに、普通の人間が分かるわけないじゃんっていうのは。
なるほど。
日本海側の雪も単純に言うけども、日本海だって結構大変で。なぜかというと、上空の寒気が強いと確かに大気不安定で大雪になりやすいんだけれども、日本海の海水温が近年上がってるので、この今言ったような雪になるか雨になるか問題がある。湿った雪になるかそうじゃないか。それによって全然数値が違うんですよ。だから降水量は多くても雪の量は少なかったとかね。
全体的に見てね。
逆に降水量は少ないのに雪はすごい降ったとか、そういうことが起こり得る。雪の種類が違うだけで。そんなのを簡単にみんな、今年の雪どうなのって聞かれるから、時々さ。
失礼しました。
いやいや、ちょっと考えるでしょ。僕らはそれを答える義務があるから、あれなんですけど。本当のことを言うと、聞かれた時にどの雪について言ってんだろう。でも大体は東京の雪だろうと思うから、東京の雪が多いか少ないかで、東京の雪だって分かんないよね、みたいな。雪の降る機会が、降水量が多いか少ないかだったらね、降水は今年多いんじゃないのとか。
降水量が多いけども、気温が高かったら雨じゃん。気温が低かったら大雪になるじゃん、みたいな。そこに気温のファクターを入れると、降水量が多いことと気温が低いこととは、太平洋側では連動しないことが多いんですよ。気温が高い時に降水量が多くなるから。
なるほど。
そういうことを考えて、この方にはどういうふうに答えたらいいのかなと思って、いつもしゃべってるでしょ。
そうなんですね。
誰もがあるか知らないけど、僕自身はそうですよ。だから、どういう状況でその質問を問いかけられたかによって。なんか分かるでしょ? 同業者だから。
そうですよね。最後に、あと30秒でどうですかって言われたら、そう答えるしかないところもあるかもしれないけど、難しいというのがすごく理解できました。いろんなファクターがあるということ。
そうなんですよね。
なるほど。そんな中で、まずは雨、その先に雪っていうのがあるかもしれないですけど、災害、異常気象に備える方法としては、どんなことに気をつけて日々生活していったらいいと。
これもね、またあれなんですけど、皆さん、例えばですよ、ここの場所で今台風が来たとしますよ。どうしたらいいですか?
建物の中にいる。
ずっといて、ぼーっとしてるのが一番いいじゃん。ぼーっとしてるって言ったらおかしいけど。外側のインフラの停電とかね、そういう問題があるけれども、大体は東京の23区ぐらいのところは、災害が起こるとそこに手当て、修理が入ったりとかね、こういう問題があったということで直してもらえるんですね。そういうのの集大成が、もうこの40年、50年やってきたわけ。この東京っていう都市は。
だから、世界的にもまれな安全な。そう言うとね、ちょっとあんまり世間的には引かれるので言わないけども、本当に安全な都市なの。アンダーパスとかも、被害とかがあった場所は、できるだけ修理、人の多いところからされてるから。もちろんまだ残ってますよ。だけど30年前、50年前を知ってる僕らからすると、すっごい安全になってるわけ。
だから本当のことを言うと、東京は一部の崖地とかそういうのは別ですよ。そういうところ以外は、自分の家にいるのが一番安全なの。地震は違うけれども。地震は違うけども、気象災害において。ほぼ東京23区の、特にこの都心の6区とか10区でもいいんだけど、そこら辺については。だから本当に、自分の住んでるところが一番大事なの。自分がどこに住んでるか、安全なところに今いるかどうかが最大のポイントなんですよ。
それをテレビの方では皆さんに伝えないといけないから、一番安全じゃない人、例えば川を見に行かないでっていうのは川が近くにある人で、僕ら見に行こうにも見に行けないじゃん、みたいな。川どこにあるんだ、じゃないけどね。そういう感じじゃないですか。だから、そういうところで報道がするのはやむを得ないことだと思うけども、その情報を自分の中に入れる時に、自分の場合とか、自分をもう一回取り戻そうよと。自分にとって今この状況は安全なのか、安全じゃないか。
先日、台風25号で大雨降りましたね。あれ、たまたま僕は大手町にいたんだけど、わずか5メートル歩くのに土砂降りですよ、みたいなね。そういうこともあれば、でも大体そこに出なければ安全ですよね。電車もそういうことを考えながら運行してるし、昔よりもちゃんと止めてくれるしというか。
そうですね。計画運休はかなり進んだなと感じます。
そうなんですよね。だから、一番大事なのはまず自分がどういう状況になるかということを把握することで、それはスマホを使ってもいいし、誰か隣に人がいたら相談してもいいし。それが最大じゃないですかね。
なるほど。だから逆に予報を見て、都市じゃないところにいる、例えば山の近くだったりとか、そういう自分のいる状況をとにかく。旅行してるとかもそうかもしれないですけれども、その場で自分の身の安全を一番に一個考える。
その時もね、とってもいい武器があって、武器っていうか、スマホの中に気象庁というか、気象庁のキキクルを見れば、そこの地名で、自分のいる場所が大体見れば分かるでしょ。崖があるとか、そこは全部把握、大体見れば分かるところを把握した上で、なおかつその状況がどういう、今切迫してる状況かどうかで、レベル4とかレベル5っていう場合、避難とかあるけれども。
レベル4でもそうだけど、それも避難っていう言葉自体を皆さん誤解していて、難を避けるという字じゃないですか。難を避ける。つまり、そこにいるのが一番安全だったらそこにとどまるべきなのに、どこかに移動する、避難所に移動するイメージばっかりなので、それをとにかくやめてほしい。
避難所はもう本当に最終的な、そこの後ろに崖があってさ、もう逃げるにしても逃げられないっていう、そういう方たちはもちろん優先的に行くべきだと思うけども、誰でも何でも状況を見ずに行くって言ったらパンクになっちゃう。そこをね、本当に変えたいんですよ。
避難って確かに避難所っていうイメージがあります。
だから、テレビもその避難所ばっかり映したりとかするじゃん。責任あるかもしれないけど。本当の意味はそうじゃないから、何年か前、数年たってるのかもしれないけど、そういうふうに気象庁とか他の役所も、まず自分の身を守ることが大事だよねっていうふうにシフトして、そういうふうに発信するようになって。そうすると、それは冷たいとかね。
なるほど。
どこまで父権主義と言っていいのかどうか分かんないけども、どこまで人に頼るんだって。そうじゃなくて、まず自分で。自分が駄目なら、友達、必ず助けてくれる人がいるから、そういう人たちに相談なりすると、より安全な選択ができるじゃないですか。そういう共同体と言ってもいいけど、そういうようなものをまず作っていくっていうことが大事で。
国だとかも多分そういう方向でやってると思うんだけども、そういうイベントなんかをそういう方向でやってるのに、すごい空回りしたりしてますよね。参加者が少ない。そういう時にこそ逆に佐藤さんみたいなプロ、こういう方がいいよっていう、そこが分断されてるの、日本の場合は。
分断されてるっていうのは、本当にそういう仕組みを作れるのに、その仕組みを頼るのと、報道は報道、放送とかそちらの方に集中しちゃって。実際にちゃんとそういう仕組みを作らないといけないところは、公務員の方にお任せしちゃってるから。
そう。自助、共助と、そういうことだけ言いながら。
言いながらね。それもあれだけど、自助は自助、そこにグラデーション、最初の0、1の話じゃないですけど。それがね、とても僕自身はいつも思ってることなんです。
少しでもそのギャップを埋めていけるように、ぜひしていただいて、その先の災害を少しでも減らすところにも、またお力をいただけたらと思います。今日は本当にありがとうございました。ではまた、ぜひよろしくお願いします。ありがとうございました。
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