効率は高いのに発熱が大きいUSB充電器「STABILIST 65W」を分解して確かめる

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概要

電力変換効率が高い充電器は内部損失が少ないので、発熱も少ないはずだ。話者(イチケン)はそう予想してSTABILISTの単ポート65W USB充電器を測定したが、効率は価格帯の中でかなり良い一方、フルパワー時の温度は想定よりずっと高かった。本記事では、効率測定、温度測定、分解の順に、この食い違いの理由を話者がどう読み解いたかをたどる。

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入手の経緯と製品の素性

話者はAmazonで面白いUSB充電器を探していて、この製品を見つけた。レビュー評価がそこそこ高く、激安ではないが安めの価格で、「クラス最小・最軽量」とうたっていたので、分解用に購入したという。

外観は折りたたみ式プラグを備えた、よくある単ポート65W充電器である。話者はベストセラーのAnker Nano II 65Wと並べてサイズを比べている。ただし「クラス最小・最軽量」は発売時期の2024年4月頃のデータだと注意を促す。2026年現在の65W単ポートクラスで最小級なのは、CIOのNovaPort SOLO Ⅱ 65WやUGREENのNexode Air 65Wだと話者は述べる。

製品の裏には、中国メーカーらしい名前が英語で書かれている。調べると、充電器やUSBケーブルを作る工場だった。話者は、この工場が製造委託先だろうと推測する。USB充電器では、工場が売る既製品にブランドのラベルを貼り、中国以外の市場で販売する例がよくある。これがODMと呼ばれる形態である。このブランドが企画や設計にどこまで関わっているかは分からない。ただ、製品ページにはTDKの部品を使っていると書かれているので、部品の選定は指定しているのかもしれない、と話者は見ている。

出力面では、PD充電とPPSに対応する。PPSの電流上限は3.25Aである。話者は、PPSで5A流せる充電器もあると付け加えている。

電力変換効率は価格帯の中で上位

効率とは、コンセントからの交流電力を、USB充電に使う直流電力へどれだけ無駄なく変換できるかを示す指標である。効率が高いほど充電器内部の損失が減り、発熱も減る。多くの利用者は気にしない項目だが、本体サイズに影響するので実は重要だ、と話者は説明する。

測定結果では、効率は出力の全域で高かった。最高効率は20V出力時の92.3%である。話者によれば、65Wクラスでは91%を超えると性能は割と良く、92%を超えるとかなり良い部類に入る。さらに、出力が低い領域でも効率は90%を超えていた。話者は、低負荷でも高効率な充電器は実はあまりなく、珍しいタイプだと評価している。コンセント電圧200Vでの最高効率は93.1%だった。

話者の総評は、2,980円で買える充電器としてはかなり上位に入る性能だ、というものである。

フルパワー連続運転で端子面が93℃に

効率が良かったので、話者は温度もかなり良い結果になると期待していた。しかし結果は予想に反していた。

65Wのフルパワーで90分連続運転し、サーモグラフィーで測ると、最も熱い面はUSB端子のある面で93℃だった。それ以外の面は70℃台である。話者は、端子面の93℃は明らかに高すぎるとしつつ、70℃台は最近のUSB充電器ではよくある温度だと述べる。

温度分布を見ると、表面の温度ムラが大きい。話者はこれを、内部の熱を筐体表面へ均一に逃がせていない兆候と読んでいる。話者の説明では、この種の小型充電器の放熱は、表面からの自然対流が6〜7割、放射が残りの3〜4割を占める。そのため、表面温度を接触温度の規格上限ぎりぎりまで均一に上げたほうが、放射による冷却を有効に使える。一方で、充電器内部の放熱材料はかなり高価なので、コストを見ながら充填材の量を調整することもあるそうだ、と話者は付け加えている。

半分の負荷なら55℃

50%負荷の32Wで連続動作させた場合、最高温度は55℃だった。話者は、充電器を常にフルパワーで使うのはノートパソコンの充電くらいで、バッテリーが満充電になればその後の給電電力は下がることが多いと指摘する。そのうえで、32Wでこの程度の表面温度なら問題ないだろうと判断している。

サーマルスロットリングは確認できず

次に、最も熱くなるUSB端子面に熱電対を貼り、65Wを引き出し続けて温度の推移を記録した。温度は開始直後から上がり始め、60分ほどで飽和した。最高温度は91℃である。

話者は、この温度になれば充電器側で出力を絞るサーマルスロットリングを働かせてほしいと考えている。しかし今回の実験条件では、スロットリングは起きなかった。100%負荷試験中にPDO(充電器が提示する給電条件)を監視しても、供給電力を下げるようシンク側へ要求する動きはなかった。話者は、この充電器は内部温度に関係なく、要求された電力を出し続ける作りだと推測する。実際に過熱で止まるとすれば、電源ICの過熱保護によるものだろう、と見ている。

分解:金属板で包み、熱伝導材で密着させる構造

中身は、筐体にすっぽり収まっていたユニットを引き抜く形で取り出せた。ユニットは金属板で一周ぐるりと巻かれている。話者は、安い価格帯なのでもっと簡素な作りを予想していたが、見た目はかなりお金がかかっていそうだと述べる。

この金属板について、話者は放射ノイズのシールドの意味もあるだろうとしつつ、今回は主に放熱のためと見ている。内部の発熱源から金属板へ熱を伝え、さらに筐体表面へ広げる役割である。基板と金属板の間には青い熱伝導材が挟まっており、部品の凹凸を吸収して熱を効率よく伝える。このシートは実際かなり厚手だった。

一方、金属板がない正面部分には変圧器がある。サーモグラフィーで最も熱かったUSB端子付近には熱伝導材が付いておらず、変圧器が露出していた。話者は、変圧器の熱が筐体に直接伝わったことが、端子面の93℃の原因だと結論づけている。

全体の設計について話者は、部品同士をかなり密着させて小型化し、熱の面でも密着させてよく伝えるものだとまとめる。熱伝導シリコンゴムで部品を固定しつつ熱的につなぎ、温度を均一にする構成である。

電解コンデンサの配置と寿命

話者が問題視したのは、電解コンデンサの扱いだ。熱伝導シリコンゴムが電解コンデンサの防爆弁を塞いでいた。話者によると、USB充電器は「本当に何でもあり」で、こうした設計は珍しくないという。

さらに、電解コンデンサは発熱の大きい変圧器のすぐ隣にあり、シリコンゴムで熱的につながっている。フルパワー時の変圧器は表面で90℃を超えていた。話者は変圧器自体を100℃くらいと推定し、ノートパソコンのようにフルパワーで充電・給電する使い方では、充電器の寿命は確実に短くなると見ている。

一方で話者は、この配置に別の意図がある可能性も挙げる。電解コンデンサの中身はアルミで熱を伝えやすいので、それを経路に使って充電器全体へ熱を広げる設計思想かもしれない、というものだ。スマホのように最大30W程度しか使わない場合は、温度上昇も寿命も気にするほどではないとする。また、充電器は3〜4年で買い替えられることが多いので、そもそも長期使用を想定していない設計かもしれない、とも話者は述べる。いずれにしても、65Wフルパワーでの連続使用は避けたほうがよい、というのが話者の判断である。

使用ICはSOUTHCHIPのリファレンス構成

主要ICはすべてSOUTHCHIP製だった。

  • 一次側のパワー半導体:オールインワンタイプのSC3057
  • 二次側のドライブIC:SC3503
  • USB PDコントローラ:SC2151A

回路はSOUTHCHIPが提供するフライバックコンバータのリファレンス回路そのままだと話者は言う。充電器を作る側にとっては、回路がソリューションとして用意されていて使いやすいのだろう、と見ている。日本のルネサスも一次側のフライバックコントローラ、二次側の整流コントローラ、PDコントローラを手がけており、Belkinの充電器で採用されている。それでも、こうした製品を見るとSOUTHCHIPは相当強い、と話者は感じている。ルネサスには頑張ってほしいとも述べている。

結論:小ささで選ぶなら候補、それ以外なら他にも選択肢

話者の結論は次のとおりである。短時間ならフルパワー65Wで使っても問題ないが、長時間の使用は勧めない。50%負荷程度で長く使う用途には合っている。ただ、その用途なら1,000円台後半で買える65Wマルチポート充電器もある。小ささを重視するなら十分に候補に入るが、サイズで選ばないなら他の選択肢のほうが多い、と話者は締めくくっている。