パワー半導体の後工程を追う:シーマ電子で見たバックグラインドからタイバーカットまで
イチケン / ICHIKEN電子工作系の話者イチケンは、山梨にあるシーマ電子を訪れ、パワー半導体製造の「後工程」を取材した。前回は東芝デバイス&ストレージの加賀工場で、パッケージの中に入るチップを作る前工程を見学している。今回は、完成したチップを製品で見かけるパッケージの形に仕上げるまでを追う。
シーマ電子は半導体の試作と評価を主な業務とする会社である。今回見学したのは量産品ではなく少量の試作品の工程なので、手作業の部分が多い。話者は、そのおかげで普段は製造装置というブラックボックスの中で起きていることが目で見て分かると説明している。後工程の流れは、バックグラインド、ダイシング、ダイアタッチ、ワイヤーボンディング、樹脂封止、個片化の順に進む。
バックグラインド:ウェハ裏面を約100μmまで削る
出発点は、前工程を終えてデバイスが出来上がっているウェハである。後工程は、このウェハの裏面を研磨するバックグラインドから始まる。
研磨の前に、専用の装置でウェハの回路面にバックグラインドテープを貼る。回路面を吸着して固定し、研磨で出る削りカスなどから回路を守るためのテープである。粘着剤には紫外線硬化型が使われていて、研磨が終わったら紫外線を当てて剥がす。量産品ではテープの貼り付けも剥離も全自動で行うのが一般的だという。
インゴットから切り出した直後のウェハは、8インチの場合で厚さ725μm程度ある。削った後の厚さは半導体の種類によって異なり、パワー半導体なら100μm程度、メモリなどはさらに薄くする。薄くなるほどチップが割れやすくなるので、扱いには十分な注意が必要になる。
装置にウェハをセットすると、あとは自動で進む。工程は荒削り、本削り、洗浄の3段階で、荒削りでおおよその寸法まで削り、本削りで狙った厚さに仕上げてから洗浄する。加工時間は条件によって変わるが、数十分程度である。装置の中にはウェハを削る部分があり、そこに砥石が入っている。
削り終えた裏面はかなりツルツルしている。「削る」と呼んでいても、実態は研磨に近いからだ。話者によれば、この表面粗さは後でリードフレームに接合する際の接合性や信頼性に関わってくる。
テープの貼り替えとダイシング
次のダイシングは、ウェハを「ダイ」と呼ばれるチップ一つ一つに分割・切断する工程である。その準備として、まずバックグラインドテープに紫外線を当てて粘着力を弱める。次に、先ほどと同じ装置でテープの種類だけを替えてダイシングテープを貼り、最後にバックグラインドテープを剥がす。紫外線照射で粘着が弱まっているので、テープはきれいに剥がれる。
ダイシング装置の中には極薄の砥石ブレードが入っており、これを高速回転させてウェハに当て、切断する。ブレードの砥粒には人工ダイヤモンドが使われている。切断は基本的に水を吹き付けながら一直線に行う。
ダイシングで注意すべきなのが「チッピング」である。シリコンチップの端に欠けや割れが生じる現象で、起きると完成品の電気的特性が悪くなったり、機械的強度が下がって信頼性に大きく影響したりする。量産では歩留まりの悪化につながる。チッピングには砥石の粒径、切削条件、テープも関係するが、シリコン自体がもろい材料なので、わずかなことが原因で欠けが起きる。そのため、ブレードの回転速度や移動速度などの条件設定にノウハウがあるという。切り出したチップは、ダイシングテープに貼り付いたままの状態で次の工程に渡される。
ダイアタッチ:TO-247リードフレームへのはんだ接合
ダイシングテープからチップを取り外し、リードフレームや基板に実装する工程を、ダイアタッチまたはダイボンディングと呼ぶ。今回使ったのはTO-247パッケージのリードフレームである。チップは足の付いたフレームの中央にある平らな「ダイパッド」に載る。接合材料は目的に応じて使い分け、板はんだ、ペーストはんだ、焼結材などがある。多くのパワー半導体では、このダイパッドにドレインまたはコレクタがつながっている。
シリコンのウェハにはそのままでははんだが付かない。そこで本来は、バックグラインドの後に接合用の金属膜を成膜しておく。これを「バックメタル」と呼ぶ。ダイボンディングは、リードフレーム、はんだ、バックメタル済みのチップの順に重ねて加熱すれば完成する。
実演では、まずペーストはんだを使う方法が示された。少量多品種の試作向けの手動印刷装置を使い、ステンシルにペーストはんだを載せてヘラでリードフレームに印刷する。話者は、この作業はプリント基板へのはんだ印刷とほぼ同じだと述べている。なお、この工程は撮影の都合でクリーンルームの外で行われた。
チップの搭載にはダイボンダーを使う。機械の先端でダイシング後のチップを吸着し、基板やリードフレームに載せていく。映像に映ったダイボンダーは今回とはまったく異なるパッケージを扱っていた。手作業で載せることもでき、その場合はかなり注意深く丁寧な作業が求められる。
リフローとボイドの問題
はんだとチップを載せたリードフレームは、リフロー炉に通してはんだを溶かし、チップとダイパッドを接合する。炉内は窒素雰囲気で、この点もプリント基板と同じである。炉から出てきたチップはよく接合されているが、表面にはフラックスが残っている。このまま次の工程に進むと、フラックスが原因で不具合が出る。
話者は、洗浄の前にリフロー工程の課題を補足した。フラックス入りのペーストはんだを使うと、接合部に「ボイド」と呼ばれる、はんだで接合されていない空洞ができる。リフロー炉内で加熱されたフラックスの溶剤が蒸発してガスになり、それが溶けたはんだに巻き込まれるためである。ボイドがあるとチップからリードフレームへの放熱経路が狭くなって放熱がうまくいかず、接合強度も下がり、結果として信頼性が低下する。
では、フラックスを使わなければよいかというと、そうはいかない。フラックスがないと金属表面の酸化膜を除去できず、リードフレームとチップの接合強度が落ちるからだ。
フラックスを使わないギ酸リフロー
この二つの問題を解決する実装方法として紹介されたのが、ギ酸リフローである。実演はクリーンルーム内で行われた。ギ酸リフローは、フラックスを使わずにはんだ接合する方法で、酸化膜や酸化した金属を還元するためのフラックスが不要になる。はんだもペーストではなく、ペレット状のものを使う。
話者によれば、ギ酸リフローならフラックス由来のボイドはゼロになり、ボイドの発生そのものを抑えた接合ができる。パワー半導体は、チップで発生した熱を効率よくリードフレームに逃がす必要があるため、ボイドの少ない接合が特に求められる。専用装置の中でギ酸雰囲気を保ちながら加熱した結果、フラックスなしでもはんだはよく濡れ広がり、通常のリフローで見られたフラックス残渣もなかった。
薬液洗浄とリンス
話は通常のリフロー品に戻り、フラックスの除去に移る。除去方法はいくつかあるが、今回は洗浄液を使った。リフロー後のリードフレームを治具にセットし、中で液が沸いている洗浄装置に丸ごと浸す。洗浄の度合いは薬液の種類、浸す時間、温度で変わり、おおむね数十分から数時間かけてフラックスを除去する。
薬液洗浄の後は、薬液を落とすためのリンスを行う。リンスは2回あり、1回目の後によく液を切ってから2回目の槽に移す。2回目のリンスの後に乾燥させれば、次の工程に進める。
ワイヤーボンディング:パワー半導体では太いウェッジボンディング
ワイヤーボンディングは、チップと外部電極をワイヤーで電気的に接続する工程である。ダイアタッチで接続していない残りのゲート端子と、ソースまたはエミッタ端子をここでつなぐ。
方式にはボールボンディングとウェッジボンディングがある。ボールボンディングは直径数十μm程度の金・銀・銅のワイヤーを使い、ロジック系のICでよく使われる。ウェッジボンディングはアルミや銅のワイヤーを使うことが多く、ワイヤーはずっと太く、最も太いもので500μm程度になる。パワー半導体には大電流が流れるので、太いワイヤーを使えるウェッジボンディングが選ばれる。
今回のウェッジボンディングでは、アルミワイヤーに荷重をかけながら超音波を加えて接合していた。撮影のため速度をかなり落とした設定で動かしており、量産ラインのウェッジボンダーはもっと速く動くそうだ。ボンディングが終わると、ようやくパワー半導体らしい形になる。この後は一度外観検査を行ってからモールド工程に進む。見学では、金ワイヤーを使ったボールボンディングの装置も見せてもらった。ウェッジボンディングと比べるとだいぶ高速に動いていた。
プラズマクリーニング
モールド封止の前には、プラズマでクリーニングを行う。樹脂とリードフレームの密着性を高めるためである。装置にワークを入れるときは丁寧に置く必要がある。手を放して底にぶつけると、ボンディングワイヤーが外れることがあるからだ。ボタンを長押しすると洗浄が始まり、終わるまでしばらく待つ。処理後の見た目に変化はないが、表面はきれいになっているという。
モールド封止:トランスファーモールド
モールド封止は、チップをエポキシ樹脂などで固めて外部環境から保護し、耐久性と信頼性を持たせる工程である。樹脂で固めることで、チップを物理的に守るとともに、電気的な絶縁も確保できる。
封止方式には主にトランスファーモールドとコンプレッションモールドの2種類があり、今回の装置はトランスファーモールド型だった。ワイヤーボンディングを終えたリードフレームを金型に入れて閉じ、ペレット状のエポキシ樹脂を加熱して溶かし、加圧してリードフレームが収まっている空間に流し込む。話者は、材料段階のモールド樹脂を見るのは珍しく新鮮だったと述べている。動画では省略されているが、実際には金型に離型剤を塗るなどの準備も必要になる。話者によれば、量産されているパワー半導体もこれと同じトランスファーモールド方式で作られている。
レーザー刻印とタイバーカット
パワー半導体の表面にある型番やメーカー名は、レーザーで刻印されている。量産品ではモールドの後のこのタイミングで刻印し、試作品では個片化した後に刻印する場合もある。今回は「イチケン×シーマ電子」のような文字を彫った。
最後の加工はタイバーカットで、リードフレームの余分な部分を切り落とす工程である。油圧マシンの金型にセットして切断すると、よく見かけるパワー半導体の形になる。
検査と歩留まり
完成後は各種の検査を行う。量産品の場合、主に外観検査と電気検査がある。外観検査では外観に不備がないかを確認する。車載向けや外観に厳しい顧客向けでは全数検査を行い、民生品では抜き取り検査で済ませることもある。電気検査は半導体が正しく動作するかを確認するもので、民生品でも全数検査を行う。
歩留まりについて、話者はパワー半導体の後工程の歩留まりはかなり良く、90%台後半、ほぼ100%に近いと説明している。
話者は、量産工場と違って工程をかなりオープンに見られたと振り返り、見学を締めくくった。
今日はパワー半導体製造の後工程を見るために、山梨にあるシーマ電子にやってきました。前回、東芝デバイス&ストレージの加賀工場に訪問して、パワー半導体製造の前工程の部分を見てきました。この工程は主に、パワー半導体のパッケージの中に入っているチップを作るための工程です。
今回見ていくのは後工程といって、完成した半導体のチップを実際の製品で見かけるパッケージの形にしていく工程を見ていきます。
シーマ電子は主に半導体の試作評価を売りにしている会社です。その中でもパワー半導体の後工程部分がどのように行われているかというのを、今回は特別に見せてもらえることになりました。
というわけで実際にパワー半導体の後工程を見ていくのですが、その前にスポンサーの紹介です。どうぞ。
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ここに半導体の工場で前工程を通ったウェハがあります。ウェハ上には既にデバイスが出来上がっている状態です。このウェハに色々な加工をしていくことで、後工程が進んでいきます。その加工というのは、バックグラインド、ダイシング、ダイアタッチ、ワイヤーボンディング、樹脂封止、個片化です。
今回見ていくパワー半導体の後工程ですが、量産品とは違って、少ない数量の試作品です。そのため手作業でやる工程が多くなっています。そのため半導体製造装置というブラックボックスの中で何が行われているのかを、実際に見てわかるようになっています。
半導体の後工程は、ウェハの裏面を研磨するところから始まります。これをバックグラインドと呼びます。研磨を始める前に、まずはウェハにバックグラインドテープを貼り付けます。この装置を使います。
これはウェハ上に作った回路を吸着して固定するためのものです。こうすることで研磨をするときに発生する削りカスなどから回路を守ります。このように貼り付けていきます。
こちらのテープの粘着力を発揮するために紫外線硬化型粘着剤を使っていて、バックグラインドが終了した後は紫外線を照射して剥がします。ちなみに、こちらのテープを貼って剥がす工程は、量産品の場合は全て自動で行うのが一般的です。
バックグラインドテープを貼り付け終わったら、次は実際にウェハの裏面を削っていきます。インゴットから削り出したウェハの厚みは、8インチウェハの場合、725μm程度です。半導体の種類によって削った後の厚みは変わってくるのですが、例えばパワー半導体の場合100μm程度、メモリなどの場合はさらに薄く削ります。ウェハは薄くなってくるとチップが割れるリスクがあるので、取り扱いには十分注意します。
では実際にやっていきます。このウェハをセットして、これですね。この中にさらにセットしていくと、これで後は自動的にバックグラインドが始まります。
バックグラインド工程としては、荒削り、本削り、洗浄の3ステップです。荒削りで大体の寸法まで削ったら、本削りで狙った厚みまで研磨していきます。その後、洗浄します。加工時間は条件などによって色々変わるのですが、だいたい数十分程度で終わります。
実際にバックグラインド装置の中を見ると、このようになっています。ここがウェハを削る部分です。この中に砥石が入っています。砥石もこのような見た目をしています。削るのが完了した後は洗浄されて出てきます。
削った後のウェハの裏面はこのようになっています。ちょうど研磨が終わったので、装置を出して。結構薄くなっているので慎重に取り扱います。このようになっています。削ると言っていますが、実際は研磨に近いので、この表面部分は結構ツルツルしています。この表面の粗さは、この後の工程で出てくるリードフレームへの接合や信頼性に関わってきます。
バックグラインドが終わったウェハがこちらにあるのですが、ここまで来たら次の工程のダイシングに移ります。ダイシング工程というのは、ウェハをダイと呼ばれるチップ状に一つ一つ分割・切断する工程のことです。
ダイシングを始める前に、今度はダイシングテープというものをウェハに貼り付けていきます。ですが、さらにその前に、先ほど貼り付けたバックグラインドテープに紫外線を当てて粘着を弱めていきます。これは剥がしやすくするためです。
こちらにある装置ですが、ここにこのように入れていって、あとは閉じると、これで紫外線の照射が始まって、テープが剥がしやすくなります。
バックグラインドテープに紫外線を照射し終わりました。ここからダイシングテープを貼り付けていきます。先ほどとテープの種類は変えてあるのですが、同じ装置にこのように置いて、あとはテープを貼り付けていきます。このようにダイシングテープを貼り付けました。
ここからは先ほど貼り付けたバックグラインドテープを剥がしていきます。このように紫外線を照射したので、粘着力がかなり弱くなっています。綺麗に剥がれます。ここまで終わったら、次のダイシングに進んでいきます。
ダイシングは、こちらの装置を使ってやっていきます。中にはこのような形状の極薄の砥石ブレードが入っていて、それを高速で回転させて、ウェハに当てて切断します。こちらは見てみると本当に薄いです。これは砥粒として人工ダイヤモンドを使っているものです。基本的に水を吹き付けながら、一直線に切断していきます。
ダイシングの時に気をつけなければいけないのがチッピングです。チッピングというのは、シリコンチップの端の部分に欠けや割れが発生する現象のことです。チッピングが発生すると、完成した半導体の電気的特性が悪くなったり、機械的強度が低下し信頼性に大きく影響します。量産時では歩留まりが悪くなります。チッピングは砥石の粒径や切削条件、テープにも関係はありますが、シリコン自体がもろい材料のため、わずかなことが原因で欠けなどが起こります。このようなものがチッピングですね。そのためブレードの回転速度や移動速度など、その辺りに色々ノウハウがあります。
こちらがダイシングが終わった後のウェハです。切り出したチップはダイシングテープに張り付いたままです。このような状態です。わかりますか。
次はダイシングテープからチップを取り外して、リードフレームや基板などに実装する工程に入ります。この工程はダイアタッチとか、ダイボンディングと呼ばれています。
今こちらに手に持っているのは、TO-247パッケージのリードフレームです。このパワー半導体の足の部分に見覚えがあるかと思います。実際にパワー半導体が載るのは、ここのダイパッドと呼ばれる平らな部分です。つなげる材料は目的によって変わるのですが、板はんだや、このようなペーストはんだ、焼結材などを使います。大体のパワー半導体は、このダイパッドの部分にドレインかコレクタが繋がっています。
こちらのダイシング後のウェハですが、このウェハにはんだはくっつかないので、本来であればバックグラインド後に、ウェハやはんだ等の接続のために金属を成膜します。これはバックメタルというものです。ダイボンディングの工程ですが、リードフレーム、はんだ、バックメタル済みのチップの順番で置いていって、加熱するとダイボンディングの完成です。
では実際にこちらの機材を使いながら手順を見ていきます。まずペーストはんだを使う場合を紹介していきます。こちらのペーストはんだの印刷装置で、手作業でペーストはんだをリードフレームに印刷していきます。少量多品種の試作だからこそ、このようなものを使っています。
このようにステンシルにペーストはんだを乗せて、ヘラを使ってリードフレームにペーストはんだを印刷していきます。この辺りはプリント基板へのペーストはんだを印刷する工程とほとんど同じです。ちなみに今回は撮影の都合上、クリーンルームの外でこの工程をやっています。
こちらがペーストはんだの印刷が終わったリードフレームです。この後はダイボンダーという装置を使ってチップを載せていきます。こちらがダイボンダーを使ってチップを載せている風景です。使っているパッケージは全く異なるのですが、ダイシングした後のチップを機械の先端で吸着して、基板やリードフレームの上に載せていきます。
手動でやるとこのようになります。ペーストはんだ印刷済みのTO-247パッケージの上にチップを載せていきます。手動の場合はかなり注意深く、そして丁寧な作業が要求されます。
リードフレームの上にはんだとチップを載せ終わりました。この後はリフロー炉を通してはんだを溶かして、チップとダイパッドを接合します。では流していきましょう。このように流していきます。ちなみにリフロー炉の内部は窒素雰囲気です。この辺りもプリント基板と同じです。
このようにリフロー炉から、チップ接合済みのリードフレームが出てきました。よくくっついていると思います。ですが、こちらにはまだフラックスが残っている状態です。このまま次の工程に行くと、フラックスが原因で不具合等が出てしまいます。フラックスを除去するために洗浄の工程に行きたいのですが、その前にリフロー工程についてもう少し補足していきます。
今見てきたやり方は、フラックスが含まれたペーストはんだを使っています。フラックスが含まれていると、チップの接合部分にボイドと呼ばれる、はんだで接合されていない空洞ができます。なぜボイドができるかというと、フラックスがリフロー炉内で加熱されると、フラックスの溶剤が蒸発してガスが発生します。ガスがはんだの溶けているところに巻き込まれると、ボイドができます。ボイドができてしまうと、チップからリードフレームへの放熱経路が小さくなり、うまく放熱ができませんし、接合強度も低くなってしまいます。その結果、信頼性が低下することになります。
フラックスを使わなければ良いのではないかと思うかもしれませんが、そういうわけにもいきません。これはフラックスを使わないと、金属表面の酸化膜が除去できずに、リードフレームとチップの接合強度が低下するからです。そのため、これらの問題を解決するチップの実装方法として、ギ酸リフローがあります。ここでは詳細に説明できないので、場所を変えて説明していきます。
クリーンルーム内に移動してきました。ギ酸リフローはフラックスを使わないで、はんだ接合をする方法です。酸化膜や酸化した金属を還元するためのフラックスが不要になります。使うはんだもペーストはんだから、ペレット状のはんだになります。ギ酸リフローですと、フラックス由来のボイドがゼロになって、ボイド自体の発生を抑えた接合ができるようになります。特にパワー半導体の場合、チップで発生した熱を効率よくリードフレームに逃がしていく必要があります。ボイドがあると放熱性が悪くなるため、ボイドの少ない接合が求められます。
ギ酸リフローを実際にやってみます。専用の装置の中でギ酸雰囲気を保ちながら加熱していきます。ギ酸リフローが完了したものがこちらです。フラックスを使っていませんが、はんだがよく濡れ広がっています。リフローはんだの時にあったようなフラックス残渣もありません。
話が少し膨らんでしまいましたが、リフローが終わったもののフラックスを除去していきます。フラックスを除去する方法は色々あるのですが、今回は洗浄液を使った方法をやります。
こちらの治具に、先ほどリフロー炉を通したリードフレームを入れていきます。先ほどセットしたものを、この洗浄装置の前に持ってきました。この蓋を開けると、このような状態で、中でグツグツしてるのですが、このようにジャボンと入れてしまいます。この洗浄についてですが、薬液の種類や浸す時間とか、温度によって洗浄の度合いが変わってきます。だいたい数十分から数時間程度、このようにしてフラックスを除去していきます。
こちらの薬液を使った洗浄が終わりましたので、この薬液を落としていきます。リンスというものですね。このように開けて、薬液が入ったものがあるのですが、こちらに入れて、ジャボンと、このようにリンスをしていきます。
1回目のリンスが終わったのですが、2回目のリンスもあります。このようによく水を切って、そして次のリンスの槽へ入れていきます。2回目のリンスが終わった後に乾燥させれば、次の工程に進むことができます。
次はワイヤーボンディングの工程です。これはパワー半導体のチップと外部電極をワイヤーで電気的に接続する工程です。ダイアタッチで接続していなかった残りのゲート端子とソース・エミッタ端子を繋いでいきます。
ワイヤーボンディングにはボールボンディングとウェッジボンディングという方法があります。ボールボンディングはワイヤーの直径数十μm程度で、金・銀・銅のワイヤーが使われます。ボールボンディングですが、ロジック系のICでよく使われます。次にウェッジボンディングですが、これはアルミワイヤーや銅ワイヤーがよく使われます。ワイヤーの直径ですが、ボールボンディングと違って結構太いですね。一番太いと500μm程度あります。パワー半導体の場合は大電流が流れるので、ワイヤー直径の太いウェッジボンディングを使うのですね。
この後ろにあるのがウェッジボンディングの装置です。今回のウェッジボンディングの場合では、アルミワイヤーに荷重をかけつつ、超音波を印加してワイヤーを接合していきます。半導体チップの電極とリードフレームをワイヤーで繋いでいっています。これは動画撮影のために、速度をかなり遅くしたセッティングで動作しています。量産ラインのウェッジボンディングの場合は、もっと速く動くそうです。
ウェッジボンディングが終わったものがこちらにあります。ここまでできてようやく、パワー半導体らしい形になってきました。このボンディングが終わった後、一旦外観検査に入って、その後モールド工程に進みます。
せっかくなのでボールボンディングも見せてもらいました。金のワイヤーを使っています。先ほどのウェッジボンディングと比べると、だいぶ高速に動いています。
こちらにワイヤーボンディングまで終わったものがありますが、この後の工程に入る前に、一度プラズマでクリーニングをします。この後の工程はモールド封止ですが、その前にプラズマでクリーニングすることで、樹脂とリードフレームの密着性を向上させるためにやります。
これをこのように開けて、これを中に入れていきます。これをやるときですが、結構丁寧に置いていきます。パッて離して地面にバンと激突すると、ボンディングワイヤーが外れてしまう場合があるため、結構丁寧にやっていきます。
セットし終わりました。ここのボタンを長押しすると、プラズマの洗浄が始まります。このまま洗浄が終わるまでしばらく待ちます。プラズマでのクリーニングが終わりました。人間の目ではわからないですが、綺麗になっています。
次はモールド封止工程です。これはICチップをエポキシ樹脂などで固めることで、外部の環境から保護して、耐久性や信頼性を持たせる役割があります。この黒いのがモールド材料のエポキシ樹脂です。このようにモールド材料で固めることで、チップを物理的に守ることができますし、電気的な絶縁を確保することもできます。
樹脂封止のやり方には、主にトランスファーモールドとコンプレッションモールドの2種類があります。今回の装置ですが、こちらはトランスファーモールドタイプです。金型の中にワイヤーボンディングまで完了しているチップ付きのリードフレームを入れます。金型を閉じて、そこに熱で溶かした樹脂を注入していきます。材料にはこのようなペレットを使います。材料段階のモールドを見るのは珍しいので、新鮮な印象を受けます。加熱して溶けたペレットを加圧して、そしてリードフレームが収まっているところに流し込んでいきます。
この動画では準備段階など色々省いていますが、実際には離型剤を金型に塗ったりといった準備も必要になってきます。
そしてモールドで固めたものがこちらです。実際の量産されているパワー半導体も、これと同じトランスファーモールド方式で作られています。
次はレーザー刻印です。パワー半導体をよく見てみると、表面に型番やメーカーの刻印がありますよね。あれはレーザーを使って刻印しています。量産製品の場合はこのタイミングでやりますし、試作品の場合は、これをバラバラにした後にやる場合もあります。今回はイチケン×シーマ電子のような形で彫りました。
次はタイバーカット工程です。ここまで来ればもうあと一歩です。これはリードフレームの余計な部分をカットするための工程です。こちらの油圧マシンを使ってカットしていきます。このように金型のところに入れてカットしていきます。
そしてカット後のものがこちらです。皆さんがよく見かけるパワー半導体の形になりました。
この後は色々な検査工程を実施していきます。量産品の場合についての話ですが、主に外観検査と電気検査をしていきます。まず外観検査は、外観に不備がないかを見ていきます。車載関係や外観に厳しいお客様の場合は全数検査をします。民生品などは抜き取り検査で済ませることもあります。電気検査は半導体がしっかりと動作しているかを見ていきます。こちらは民生品であっても全数検査を行います。
歩留の話ですが、パワー半導体の後工程の歩留自体はかなり良くて、90%台後半、ほぼ100%に近いくらいです。
というわけで、今日はパワー半導体の後工程が一体どのようになっているのかを見てきました。量産品の工場と違って、かなりオープンに見ることができたかと思います。シーマ電子に興味のある方や、パワー半導体の前工程について興味のある方は、概要欄にリンクが貼ってあるので、そちらをぜひ見てください。それでは最後まで動画をご視聴ありがとうございました。
最後にイチケンからお知らせです。今回このような工場見学をしてきたのですが、自社の工場を紹介して欲しいなど、人材採用の関係で職場体験動画を作ってほしいという要望が最近多くなってきています。イチケンとしても、そのような動画の制作は大歓迎ですので、概要欄にある問い合わせフォームからぜひご連絡いただければと思います。ぜひお気軽にご連絡ください。
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