パワー半導体の後工程を追う:シーマ電子で見たバックグラインドからタイバーカットまで

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概要

電子工作系の話者イチケンは、山梨にあるシーマ電子を訪れ、パワー半導体製造の「後工程」を取材した。前回は東芝デバイス&ストレージの加賀工場で、パッケージの中に入るチップを作る前工程を見学している。今回は、完成したチップを製品で見かけるパッケージの形に仕上げるまでを追う。

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シーマ電子は半導体の試作と評価を主な業務とする会社である。今回見学したのは量産品ではなく少量の試作品の工程なので、手作業の部分が多い。話者は、そのおかげで普段は製造装置というブラックボックスの中で起きていることが目で見て分かると説明している。後工程の流れは、バックグラインド、ダイシング、ダイアタッチ、ワイヤーボンディング、樹脂封止、個片化の順に進む。

バックグラインド:ウェハ裏面を約100μmまで削る

出発点は、前工程を終えてデバイスが出来上がっているウェハである。後工程は、このウェハの裏面を研磨するバックグラインドから始まる。

研磨の前に、専用の装置でウェハの回路面にバックグラインドテープを貼る。回路面を吸着して固定し、研磨で出る削りカスなどから回路を守るためのテープである。粘着剤には紫外線硬化型が使われていて、研磨が終わったら紫外線を当てて剥がす。量産品ではテープの貼り付けも剥離も全自動で行うのが一般的だという。

インゴットから切り出した直後のウェハは、8インチの場合で厚さ725μm程度ある。削った後の厚さは半導体の種類によって異なり、パワー半導体なら100μm程度、メモリなどはさらに薄くする。薄くなるほどチップが割れやすくなるので、扱いには十分な注意が必要になる。

装置にウェハをセットすると、あとは自動で進む。工程は荒削り、本削り、洗浄の3段階で、荒削りでおおよその寸法まで削り、本削りで狙った厚さに仕上げてから洗浄する。加工時間は条件によって変わるが、数十分程度である。装置の中にはウェハを削る部分があり、そこに砥石が入っている。

削り終えた裏面はかなりツルツルしている。「削る」と呼んでいても、実態は研磨に近いからだ。話者によれば、この表面粗さは後でリードフレームに接合する際の接合性や信頼性に関わってくる。

テープの貼り替えとダイシング

次のダイシングは、ウェハを「ダイ」と呼ばれるチップ一つ一つに分割・切断する工程である。その準備として、まずバックグラインドテープに紫外線を当てて粘着力を弱める。次に、先ほどと同じ装置でテープの種類だけを替えてダイシングテープを貼り、最後にバックグラインドテープを剥がす。紫外線照射で粘着が弱まっているので、テープはきれいに剥がれる。

ダイシング装置の中には極薄の砥石ブレードが入っており、これを高速回転させてウェハに当て、切断する。ブレードの砥粒には人工ダイヤモンドが使われている。切断は基本的に水を吹き付けながら一直線に行う。

ダイシングで注意すべきなのが「チッピング」である。シリコンチップの端に欠けや割れが生じる現象で、起きると完成品の電気的特性が悪くなったり、機械的強度が下がって信頼性に大きく影響したりする。量産では歩留まりの悪化につながる。チッピングには砥石の粒径、切削条件、テープも関係するが、シリコン自体がもろい材料なので、わずかなことが原因で欠けが起きる。そのため、ブレードの回転速度や移動速度などの条件設定にノウハウがあるという。切り出したチップは、ダイシングテープに貼り付いたままの状態で次の工程に渡される。

ダイアタッチ:TO-247リードフレームへのはんだ接合

ダイシングテープからチップを取り外し、リードフレームや基板に実装する工程を、ダイアタッチまたはダイボンディングと呼ぶ。今回使ったのはTO-247パッケージのリードフレームである。チップは足の付いたフレームの中央にある平らな「ダイパッド」に載る。接合材料は目的に応じて使い分け、板はんだ、ペーストはんだ、焼結材などがある。多くのパワー半導体では、このダイパッドにドレインまたはコレクタがつながっている。

シリコンのウェハにはそのままでははんだが付かない。そこで本来は、バックグラインドの後に接合用の金属膜を成膜しておく。これを「バックメタル」と呼ぶ。ダイボンディングは、リードフレーム、はんだ、バックメタル済みのチップの順に重ねて加熱すれば完成する。

実演では、まずペーストはんだを使う方法が示された。少量多品種の試作向けの手動印刷装置を使い、ステンシルにペーストはんだを載せてヘラでリードフレームに印刷する。話者は、この作業はプリント基板へのはんだ印刷とほぼ同じだと述べている。なお、この工程は撮影の都合でクリーンルームの外で行われた。

チップの搭載にはダイボンダーを使う。機械の先端でダイシング後のチップを吸着し、基板やリードフレームに載せていく。映像に映ったダイボンダーは今回とはまったく異なるパッケージを扱っていた。手作業で載せることもでき、その場合はかなり注意深く丁寧な作業が求められる。

リフローとボイドの問題

はんだとチップを載せたリードフレームは、リフロー炉に通してはんだを溶かし、チップとダイパッドを接合する。炉内は窒素雰囲気で、この点もプリント基板と同じである。炉から出てきたチップはよく接合されているが、表面にはフラックスが残っている。このまま次の工程に進むと、フラックスが原因で不具合が出る。

話者は、洗浄の前にリフロー工程の課題を補足した。フラックス入りのペーストはんだを使うと、接合部に「ボイド」と呼ばれる、はんだで接合されていない空洞ができる。リフロー炉内で加熱されたフラックスの溶剤が蒸発してガスになり、それが溶けたはんだに巻き込まれるためである。ボイドがあるとチップからリードフレームへの放熱経路が狭くなって放熱がうまくいかず、接合強度も下がり、結果として信頼性が低下する。

では、フラックスを使わなければよいかというと、そうはいかない。フラックスがないと金属表面の酸化膜を除去できず、リードフレームとチップの接合強度が落ちるからだ。

フラックスを使わないギ酸リフロー

この二つの問題を解決する実装方法として紹介されたのが、ギ酸リフローである。実演はクリーンルーム内で行われた。ギ酸リフローは、フラックスを使わずにはんだ接合する方法で、酸化膜や酸化した金属を還元するためのフラックスが不要になる。はんだもペーストではなく、ペレット状のものを使う。

話者によれば、ギ酸リフローならフラックス由来のボイドはゼロになり、ボイドの発生そのものを抑えた接合ができる。パワー半導体は、チップで発生した熱を効率よくリードフレームに逃がす必要があるため、ボイドの少ない接合が特に求められる。専用装置の中でギ酸雰囲気を保ちながら加熱した結果、フラックスなしでもはんだはよく濡れ広がり、通常のリフローで見られたフラックス残渣もなかった。

薬液洗浄とリンス

話は通常のリフロー品に戻り、フラックスの除去に移る。除去方法はいくつかあるが、今回は洗浄液を使った。リフロー後のリードフレームを治具にセットし、中で液が沸いている洗浄装置に丸ごと浸す。洗浄の度合いは薬液の種類、浸す時間、温度で変わり、おおむね数十分から数時間かけてフラックスを除去する。

薬液洗浄の後は、薬液を落とすためのリンスを行う。リンスは2回あり、1回目の後によく液を切ってから2回目の槽に移す。2回目のリンスの後に乾燥させれば、次の工程に進める。

ワイヤーボンディング:パワー半導体では太いウェッジボンディング

ワイヤーボンディングは、チップと外部電極をワイヤーで電気的に接続する工程である。ダイアタッチで接続していない残りのゲート端子と、ソースまたはエミッタ端子をここでつなぐ。

方式にはボールボンディングとウェッジボンディングがある。ボールボンディングは直径数十μm程度の金・銀・銅のワイヤーを使い、ロジック系のICでよく使われる。ウェッジボンディングはアルミや銅のワイヤーを使うことが多く、ワイヤーはずっと太く、最も太いもので500μm程度になる。パワー半導体には大電流が流れるので、太いワイヤーを使えるウェッジボンディングが選ばれる。

今回のウェッジボンディングでは、アルミワイヤーに荷重をかけながら超音波を加えて接合していた。撮影のため速度をかなり落とした設定で動かしており、量産ラインのウェッジボンダーはもっと速く動くそうだ。ボンディングが終わると、ようやくパワー半導体らしい形になる。この後は一度外観検査を行ってからモールド工程に進む。見学では、金ワイヤーを使ったボールボンディングの装置も見せてもらった。ウェッジボンディングと比べるとだいぶ高速に動いていた。

プラズマクリーニング

モールド封止の前には、プラズマでクリーニングを行う。樹脂とリードフレームの密着性を高めるためである。装置にワークを入れるときは丁寧に置く必要がある。手を放して底にぶつけると、ボンディングワイヤーが外れることがあるからだ。ボタンを長押しすると洗浄が始まり、終わるまでしばらく待つ。処理後の見た目に変化はないが、表面はきれいになっているという。

モールド封止:トランスファーモールド

モールド封止は、チップをエポキシ樹脂などで固めて外部環境から保護し、耐久性と信頼性を持たせる工程である。樹脂で固めることで、チップを物理的に守るとともに、電気的な絶縁も確保できる。

封止方式には主にトランスファーモールドとコンプレッションモールドの2種類があり、今回の装置はトランスファーモールド型だった。ワイヤーボンディングを終えたリードフレームを金型に入れて閉じ、ペレット状のエポキシ樹脂を加熱して溶かし、加圧してリードフレームが収まっている空間に流し込む。話者は、材料段階のモールド樹脂を見るのは珍しく新鮮だったと述べている。動画では省略されているが、実際には金型に離型剤を塗るなどの準備も必要になる。話者によれば、量産されているパワー半導体もこれと同じトランスファーモールド方式で作られている。

レーザー刻印とタイバーカット

パワー半導体の表面にある型番やメーカー名は、レーザーで刻印されている。量産品ではモールドの後のこのタイミングで刻印し、試作品では個片化した後に刻印する場合もある。今回は「イチケン×シーマ電子」のような文字を彫った。

最後の加工はタイバーカットで、リードフレームの余分な部分を切り落とす工程である。油圧マシンの金型にセットして切断すると、よく見かけるパワー半導体の形になる。

検査と歩留まり

完成後は各種の検査を行う。量産品の場合、主に外観検査と電気検査がある。外観検査では外観に不備がないかを確認する。車載向けや外観に厳しい顧客向けでは全数検査を行い、民生品では抜き取り検査で済ませることもある。電気検査は半導体が正しく動作するかを確認するもので、民生品でも全数検査を行う。

歩留まりについて、話者はパワー半導体の後工程の歩留まりはかなり良く、90%台後半、ほぼ100%に近いと説明している。

話者は、量産工場と違って工程をかなりオープンに見られたと振り返り、見学を締めくくった。