「決算書から逆算して物件を買う」――家賃収入2億円の大家が語る、融資を受け続けるための考え方

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概要

1〜2棟は買えたが、その後融資が止まってしまう。不動産投資家の間でよく聞くこの悩みに対し、静岡県を拠点に23棟343室を保有し、年間家賃収入2億200万円に達したというMDさんは、自身の答えを「決算書からの逆算」と表現する。本人の言葉では、「決算書は物件を買ってからできてくるものではなく、いい決算書を作るために物件を買う」。本稿では、楽待プレミアムに初登場したMDさんが語った融資の捉え方、独自の「融資可否の式」、そしてこの戦略にたどり着くまでの経緯をまとめる。

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金利が下がり、財務体質が強くなったという実感

番組冒頭でMDさんは、去年と今年で3つ金利が下がっていると話した。MDさんの説明では、金利は金融機関が負うリスクの裏返しである。リスクが高い相手に貸すなら焦げ付く可能性があるため高い金利を取り、リスクが低いと判断されれば金利は下がる。金利が下がったことは、金融機関から見たリスク評価が改善したことを意味する、という理屈だ。

そのうえでMDさんは、数年前の自社と比べて現在の財務体質は「圧倒的に今の方が強い」と述べる。MDさんはこの力を「継戦能力」、つまり戦い続けるための能力と呼び、それをさらに「バンカビリティ」と「マーケタビリティ」の2つに分けて考えているという。ただし、この2つの中身についての詳しい説明は、今回の字幕の範囲では語られていない。

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融資の話題で見落とされている「おかわり」の視点

MDさんによると、不動産投資家が融資を語るとき、論点はおおむね3つに分かれる。融資をつけること、融資をより多く引くこと、そして融資を繰り返し受けることだ。どの銀行で融資が出たか、どういう物件なら手出しなしのオーバーローンで引けたか、といった話は多いが、「どうすれば融資が途切れずに続くのか」はあまり語られていないとMDさんは指摘する。

MDさん自身はマーケティング畑の出身で、マーケティングでいう「トライアルとリピート」になぞらえて融資を捉えている。新規を取り続けることより、いかに「おかわり」をもらうか。過去6年ほどは、この繰り返し融資を受ける方法を掘り下げてきたという。今年は計20回セミナーに登壇し、その過程で自分の理論が構造化・体系化されてきたと話している。

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買う前に決算書の着地を試算する

通常の流れでは、物件を買って融資を受け、期末が締まると税理士から決算書が出てきて、それを銀行に持ち込んで評価が決まる。MDさんのやり方はこの順序を逆にする。物件を買ったら決算書がどこに着地するかを購入前に試算し、いい決算書になるように物件を選び、融資条件を決めてから買う。

MDさんの説明では、満室時の賃料、経費、金利、減価償却は買った瞬間に決まる。したがって、いい決算書を作れる物件も、作れない物件も、購入時点で決まってしまう。満室想定などの入居の前提さえ外さなければ、思い描いた決算書ができることが分かったうえで買っているので、自分で作った「出来レース」になる、とMDさんは表現した。

聞き手が、一般企業でも着地見込みは立てるが、不動産はそれが特にイメージしやすいのに皆やっていない、という点を突いているのかと確認すると、MDさんは「その通り」と応じた。不動産ほど今期の着地見込みを金融機関に説明しやすいビジネスはない、というのがMDさんの見方である。

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融資が止まるのは借り手側の問題

この逆算の考え方は、1〜2棟で融資が止まる問題に直結するとMDさんは言う。金融機関はそもそもお金を貸したい存在であり、貸してこそ商売になる。特に今は金利のある世界に戻り、通常の貸し出しでもきちんと利益が取れるようになっている。それでも借りられないのなら、問題は借り手の側にある、というのがMDさんの立場だ。

では借り手は何を整えればよいのか。MDさんが示したのが次の式である。

融資の可否 = 金融資産 ×(収支 + 保全)× 法人財務・信用

MDさんの説明を順に追うと、まず金融資産は、ある程度持っていなければ初期費用も払えないため当然必要になる。必要な額は、買いたい物件の規模によって変わる。次の「収支」は、持ち込んだ物件がきちんと回るかどうか。「保全」は、借り手が返済できなくなったときに金融機関がいくら回収できるかを指す。最後の「法人財務・信用」は、法人で購入を進めたときに、その法人自体にどれだけの評価や信用があるか、そしてそれをどれだけの期間続けてきたか、という要素だという。

掛け算であることの意味と、比重の移り変わり

MDさんが強調したのは、この式が足し算ではなく掛け算だという点だ。金融資産があり、物件の収支も良くても、法人の財務と信用がダメなら、掛け算なので全体がダメになってしまう。足し算なら話は違う、とMDさんは言う。

さらに、評価の重点は段階によって移る。初期、特にアパートローンでは、属性と金融資産が重く見られ、それに持ち込む物件の収支と保全を掛け合わせて判断される。しかし棟数が増えるにつれて、借りたいと言っている法人がトータルでどうなのか、という見方に変わる。MDさんの言葉では、購入・運営する物件が増えるほど、式の比重は「右に移っていく」。つまり、法人財務・信用の比重が大きくなっていくということだ。1〜2棟で止まる理由は、この右側の要素にあるという見立てにつながっている。

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2011年、本業のリスクに備えるセーフティネットとして始めた

ここから話は、MDさんがこの戦略にたどり着くまでの経緯に移る。最初に不動産投資を始めたのは2011年、首都圏に住んでいた36歳のときで、外資系企業のマーケティング部長に就任した頃だった。外資系の部長職はやりがいのある仕事だが、結果を出せなければ職を辞さなければならない。いわゆる「アップ・オア・アウト」、上がるか出るかの世界だった。

本業でリスクを取って挑戦すれば、当然失敗する可能性もある。それを恐れていては結果が出ない。だから挑戦の代償である失職に備えるセーフティネットを張りたかった、というのが最初の動機だとMDさんは振り返る。

このとき買ったのは、神奈川県小田原市の築40年のRC物件だった。価格は1億円、利回り20%で、家賃にすると年2000万円。ただし購入時は30室中18室が空いている、6割空室の物件だったという。MDさんはこの物件を半年で満室にし、年間700万円のキャッシュフローが出るようになった。この再生の詳しい経緯は、話せば2時間かかるとして今回は割愛された。

当時はこれで十分であり、規模を拡大することには意識が向いていなかった。セーフティネットができて良かった、で終わっていたとMDさんは言う。

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2018年に一度すべて売却し、2020年にゼロから再開

2018年、MDさんは物件を売却し、不動産投資をいったんゼロに戻した。理由は、事業部長から外資系企業の社長を目指す挑戦を、年齢的にもしなければならない時期に来たためだという。不動産投資をしている場合ではなく、すべてをそこに懸けて勝負するために、集中できるよう全部切った、とMDさんは説明する。

しかし2年後の2020年、MDさんは不動産投資を再開する。社長昇格の目がなく、キャリアの天井が見えたことがきっかけだった。当時、娘は2歳。社会に出るまであと20年、父親として守らなければならないが、自分はすでに40代後半になっている。何か別のことをしなければならないが、突拍子もない新しいことを始めれば失敗のリスクも高い。ほぼ確実にやれば成功でき、家族に残せる収益基盤を作れるものは何かと考えた結果が不動産だった、とMDさんは語る。売却時に作った金融資産をベースに、2020年に再開した。

再開後は2年4カ月で家賃収入1億円を超え、そこから丸6年が経った現在は2億200万円に達しているという。

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「分からない」と言う先輩投資家たちと、科学としての融資

2011年当時は買い進めるつもりがなかったため、決算書から逆算する手法は使っていなかった。転機は2020年の再開時だ。娘に何かを残したいという思いから規模の拡大に目を向けたものの、世の中を見ると1〜2棟で融資が止まった人がたくさんいた。そうした先輩投資家に、なぜ止まったのかを尋ねると、皆口を揃えたように「分からない」と答えたという。

MDさんはそこから、融資はそれほど難しく、ブラックボックスなのだと感じた。ただ、物事には必ず理由がある。マーケティングはよく「アート・アンド・サイエンス」と言われ、ロジックを詰めた先で人の気持ちに刺さるかどうかは芸術の領域になる。一方で融資については、銀行には定性的な判断もあるものの、定量的な判断の方が多い。だから融資は科学であり、再現性のある形で捉えられるはずだ、とMDさんは考えた。投資家の多くが分からないことを自分が理解できれば、強い武器になる。そう考えて、なぜ皆が1〜2棟で止まるのかを掘り始めたのがスタートだったという。

掘り下げていった結果、MDさんがたどり着いたのは、答えは法人の決算書と、どうやら「債務者区分」というものにあるらしい、という点だった。MDさんはこれを、自分にとってのスタートであり、理解し始めた入り口だと表現している。決算書と債務者区分が具体的にどう融資の継続につながるのか、また冒頭で触れたバンカビリティとマーケタビリティの中身は、今回の範囲では本格的には語られず、この入り口の提示で区切られている。