自作EVカートで筑波サーキットの30分耐久に挑む:イチケンのCQ EVミニカート・レース参戦記
イチケン / ICHIKEN電子工作系YouTuberのイチケンは、CQ出版が運営するEVミニカート・レースに初めて参加した。会場は実際の筑波サーキット2000で、自作のEVカートで30分間走り、周回数を競う。動画では、インバータとモータの組み立てから、バッテリー容量に合わせたセッティング、回路とモータの改造、レース当日の走行と結果までを順に紹介している。目標は優勝ではなく完走に置かれていた。
参加の経緯と必要な機材
参加のきっかけは、『トランジスタ技術』で知られるCQ出版から「EVミニカート・レースに出ませんか」と誘われたことだという。話を聞くうちに面白そうだと感じ、参加を決めた。
レースに出るには、車体と、それを動かすインバータとモータが必要になる。車体はCQ出版からキットが販売されており、組み立てればレースに出られる状態になる。インバータとモータもキットとして用意されていて自分で組み立てられるが、CQ出版は組み立てセミナーも開いている。イチケンはこのセミナーに参加し、モータとインバータを組み立てた。セミナーは2日間で、座学と実習で構成される。座学ではモータの動作原理やインバータの制御法を講師から学び、実習では組み立てと動作確認を行う。
1日目:インバータの組み立て
インバータは、モータを回すための駆動回路である。基板には表面実装部品があらかじめ実装されており、受講者はスルーホールのIC、抵抗、コンデンサ、パワー半導体などをはんだ付けする。モータの磁束を検出するホールセンサ基板も組み立てる。手順はキット付属のマニュアルに書かれており、その通りに進めれば難しくないという。
制御はマイコンで行い、そのコードも提供されている。そのため、モータの制御方法やモータに流れる電流の調整を自分で変更できる。イチケンによれば、レギュレーション上、インバータにはほとんど制限がない。電圧が48V以下なら、このキットをそのまま使っても、キットをベースに改造しても、キットを使わず独自のインバータを使ってもよい。コントローラ部分はかなり自由に作り込めるということだ。
組み上がったインバータでモータを回すと、一発で動いた。その後、電流が最も少なくなるようにホールセンサの位置を動かし、進角を調整して1日目を終えた。
2日目:アウターロータ型モータを手で巻く
EVカートのモータはアウターロータ型で、小型ドローンに使われるブラシレスモータとほぼ同じ構造だと説明される。外側の回転子に磁石があり、中心の固定子に銅線を巻く。
まず回転子の鉄心の内側にフェライト磁石を貼る。磁石は表と裏でS極とN極が決まっているため、向きを間違えるとモータとして使えなくなる。イチケンは横に置いた方位磁石で磁極を確かめながら作業した。
続いて固定子に銅線を巻く。量産品なら機械で巻くが、一点ものなので手作業になる。線径は1mmあり、手で巻くにはかなり力が要る。イチケンのコツは、銅線のボビンを足で押さえ、固定子を手で持ち、線に適度なテンションをかけながら巻くことだという。ただし、セミナーで巻いた巻き数はかなり適当に決めたもので、実際にカートへ組み込む際には巻き直すことになる。
モータについては、レギュレーション上このキットを使う必要がある。一方で、巻線の太さ、巻き方、結線方法、コアや永久磁石の材質は変更してよい。そのため作り方のパターンは無数にある。イチケンは、勝つために必要なのは電気エネルギーをできるだけ高い効率で機械的出力に変換するモータを作ることであり、そこはノウハウが問われる部分だろうと述べている。
完成したモータを前日に組んだインバータで回すと、こちらも一発で問題なく動いた。セミナーの後には、CQ出版の倉庫にあったEVカートにも試乗させてもらった。実際の運転感覚を掴み、自分たちのカートに活かせる点は活かすという狙いである。
車体の組み立てと試走の目的
インバータとモータを組んだ後、EVカートはほとんど放置されていた。レースの1か月ほど前になって時間がないことに気づき、焦りながら準備を再開した。車体ができていなければ試走も調整もできないため、かなりギリギリだったと振り返っている。
車体は鉄フレームに車輪などを取り付けていく構造で、イチケンは「でかいラジコン」のようだと表現する。1人で撮影しながら組んで4〜5時間かかったが、作業量としては2〜3時間程度だろうという。床で作業したが、作業台の上でやるほうが明らかに効率が良いとも付け加えている。
機械部分が完成した後、インバータとモータを仮組みして動作を確認した。配線は走行前にきちんとまとめればよいので、この段階では仮の状態である。モータはまだセミナーで組んだままだったため、レース仕様の巻き数と結線にするため何度か巻き直した。
ぶっつけ本番では良い結果にならないと考え、試走も行った。目的は運転に慣れることに加えて、次の点を確かめることだった。レースに近い負荷をかけても車体に問題が起きず安全に走れるか。モータとインバータが長時間動いても安定して動作を続けられるか。さらに、バッテリーの持ち、加速性能、モータ電流をどこまで制限するかといった性能に関わるセッティングを詰めることも目的だった。
完走条件から逆算したセッティング
レース時間は30分で、優勝車両の70%以上の距離を走ることが完走の条件になっている。ゆっくり走っていては完走扱いにならないため、バッテリーの持ちと、インバータ・モータのセッティングが重要になる。
バッテリーのレギュレーションは厳密に決まっており、鉛バッテリーの場合は1個3,000g以下のものを2個まで使える。この限られたエネルギーをできるだけ効率よく使う必要がある。
イチケンは過去のレース結果から、平均時速30km/h程度なら完走扱いになると見て、平均30km/hで走れるセッティングを目標にした。モータと車輪はチェーンでつながっているため、ギア比も重要な調整項目だという。
具体的には、バッテリーのデータシートにある放電特性グラフ(横軸が放電時間、縦軸が電圧)を使った。30分放電し続けられる電流を読み取ると、約13Aになる。つまり、時速30km/hで走っているときのバッテリー電流が13Aに収まれば、30分走れる計算になる。問題は13Aで本当に30km/hが出るかどうかで、そのためにモータの巻き方やギア比を変えていく。時間が限られていたため、モータの試作は数回しかできなかったが、なんとかこの条件に近づけたという。
インバータの改造:MOSFET交換と防湿コーティング
インバータでは、スイッチング素子のMOSFETを交換した。狙いはオン抵抗を下げることで、キット付属品の3.3mΩから、より高性能な品種に替えて1.1mΩにした。ただしゲートドライブ回路はそのままなので、ゲートチャージが増えた分だけスイッチング損失が増える可能性があるとイチケンは指摘する。今回はノイズを出しても問題ない環境なので、ゲート抵抗をギリギリまで小さくしてスイッチング損失を減らす手もあった。しかし、ゲートドライブICが耐えられないようなので断念した。
空きスペースには手持ちの電解コンデンサを追加した。これについてイチケン自身、メリットはあまりないと思うが、やれることはやっておくという考えだと説明している。
最後に基板へ防湿コーティングを施した。基板カバーも作ったが、走行環境はかなり過酷で、ほこりや水分を含んだゴミが付着して回路に悪影響を与えるかもしれない。付着しても問題が起きにくくするための対策である。
モータの改造:線径を太くして銅損を半減
モータでは銅損を減らす方針をとった。キット付属の銅線は直径1mmだが、これを直径1.4mmに変えた。巻き数は変えないので、固定子のスロットに巻ける限界ギリギリの太さを選んだという。
イチケンの説明によれば、直径1mmのときの巻線抵抗は約100mΩ。直径1.4mmにすると断面積が約2倍になり、抵抗は半分の約50mΩになる。これで銅損は半分になり、平均電流13Aなら約8Wの節電になるという。
ただ、筑波サーキットは平坦ではなく上り坂もある。平均13Aでも、場面によっては30A、瞬間的には100Aが流れることもある。100Aを想定すると、巻線を太くしたことで銅損は1,000Wから500Wに下がる計算で、かなり効果の大きい改造だと述べている。
ほかに、走行中にバッテリー残量を見るための電圧計と、バッテリー電流を測る電流計も付けた。電流計はBluetooth付きのクランプ型で、スマホでモニターする。イチケンは「一番簡単なソリューション」と呼んでいる。
レース当日:ブレーカーのトリップ
レースの運営はCQ出版、主催は日本電気自動車レース協会である。現地では車両を整備し、簡単に動作を確かめて20mほど試走した。あとはスタート直前までバッテリーを充電した。
スタートは好調だったが、ホームストレートの坂を上がるあたりでブレーカーがトリップした。キット付属のブレーカーは定格50Aだが、レギュレーションでは当日配布されるレース用ブレーカーは30Aと定められている。そのため当日にセッティングを微調整する必要があり、レギュレーションを読んでいないと引っかかる点だとイチケンは言う。イチケンは事前に読んでいたので、マイコンの設定で加速時の電流を下げていたが、それでも調整が足りなかった。スロットル調整が難しくなったため、しばらくはブレーカーが落ちてもすぐ戻せる姿勢で運転した。
スマホで見るバッテリー電流はかなり大きく、瞬間的に100Aを超える場面もあった。ただ、ブレーカーの動作特性上、瞬間的な過電流なら落ちない。イチケンは、本来ならブレーカーの動作特性図をよく読み、加速時に過電流の動作時間ギリギリまで電流を流せば、かなり良い走りができるだろうと述べている。
スリップストリームと最高速の限界
走行中、列になって走るグループが現れた。専門学校・筑波自動車大学校のチームで、空気抵抗を減らすためにスリップストリームを使っているようだった。このEVカートはレギュレーションで空力パーツが禁止されており、ドライバーもむき出しなので空気抵抗がかなり大きい。複数台で参加していれば、こうした戦略がとれる。イチケンもこのグループの後ろにつき、空気抵抗を減らすことにした。ただし、近づきすぎると事故の危険があるため、一定の距離は保った。
最高速は約35km/hで、下り坂ではもう少し出る程度だった。コースが空いたときに追い抜きを試みたが、スロットルを全開にしても最高速がそれ以上伸びない。イチケンは、バッテリー電圧とモータの巻き数が合っていないためだと考え、追い抜きはせず後ろを走ることにした。ときどき速いカートに抜かれたが、それらはリチウムイオンバッテリーを積んだアンリミテッド部門の車両で、バッテリーが違うだけで相当速くなるという。
終盤のバッテリー切れと結果
後半になるとバッテリー電圧がかなり下がり、速度も落ちてきた。上り勾配はきつくなり、特に最終コーナーを抜けたホームストレートの上り坂が最も厳しい。速度はじりじりと落ち、最後はこの坂を登れなくなった。体を揺らして反動で登ろうとしたが進めず、最終周を走り切れないまま終了した。
結果は11位で、完走扱いとなった。周回数は7周、ベストラップは3分49秒、平均時速は30km/hで、狙い通りに近い数字になった。イチケンは、初参加としてはなかなか上出来で、完走を目標にしていたと振り返る。一方で、レースに出るような車ではラップタイム60秒程度が多いようなので、それと比べるとかなりゆっくり走っていたことがわかるとも述べている。
振り返りと来年への課題
誤算は、想定より電力消費が多く、最後にバッテリー切れで走れなくなったことだった。イチケンは、最後まで走り切るには走り方を変えるか、モータの効率を上げるしかなさそうだと分析する。走り方については、惰性で走る時間を増やすことや、加速をゆっくりにすることに効果がありそうだという。また、今回はインバータとモータの制御を詰める時間がなく、バッテリーのエネルギーを有効に使えなかったことも結果につながったとしている。
モータにもさらに改善できる箇所をいくつか見つけているとのことで、イチケンは来年、完走するだけでなく最後まで走り続けられるカートにしたいと話して動画を締めくくった。
この動画はJLCPCBの提供でお送りします。こんにちは。今回は筑波サーキットで開催されたEVミニカート・レースに出場してきましたので、そちらのレポートをしていきたいと思います。
実際の筑波サーキット2000で自作のEVカートで走って、周回数を競うというものです。EVカートを作る様子から実際にレースに出るところまでを動画で紹介していきます。その前に今日のスポンサーの紹介です。どうぞ。
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まず初めに なぜEVカートレースに参加することになったのかの説明から始めます。トランジスタ技術でおなじみのCQ出版から、EVミニカート・レースに出ませんかというお誘いがありまして、いろいろ話を聞いていくうちに、これは面白そうだということになり、参加することに決めました。
参加するにあたって、EVカートの車体とそれを動かすためのインバータやモータが必要になってきます。EVカート自体はCQ出版からキットが発売されていて、これを組み立てることでレースに参加可能な車体にすることができます。この辺りのキットやそのようなものは概要欄のリンクにまとめていますので、興味のある人は確認してみてください。
さっそくですが工作の方に入っていきます。EVカートの心臓部であるモータとインバータをまずは組み立てます。こちらはキット品となっていて、自分で組み立てることもできるのですが、CQ出版の方で組み立てセミナーを開催しています。そのため 私もこのセミナーに参加して、モータとインバータを組み立ててきました。
このセミナーは2日間あり、座学と実習で構成されています。座学部分では、モータの動作原理やインバータの制御法などを講師の方からレクチャーしてもらいました。実習の方は、インバータとモータの組み立て、組み立てたものの動作確認です。というわけで 実際に組み立てている様子をお届けします。
1日目はインバータの組み立てです。インバータとは、モータを回すための駆動回路のことです。こちらが基板です。表面実装部品は最初から実装済みとなっていて、スルーホールのIC部品や抵抗、コンデンサ、パワー半導体などをはんだ付けしていきます。その他にはモータの磁束を検出するためのホールセンサ基板などを組み立てていきます。
このように はんだ付けをしていきました。組み立て方の手順はキット付属のマニュアルにあるので、書いてある通りにやっていけば簡単に進められます。制御はこちらのマイコンでやっています。マイコンのコードも提供されているので、モータの制御法やモータに流れる電流の調整などは自分で出来るようになっています。
ちなみに EVカート・レースのレギュレーションを見てみると、インバータ部分の制限は ほぼないに等しくて、電圧が48V以下であればこの組み立てキットを使っても良いですし、キットをベースに改造することも認められています。さらにこのキットを使わないで独自のインバータを使うことも認められています。そのためコントローラ部分の改造の範囲はかなり幅広くできるようになっています。イチケンも動画の後半でインバータの部品を変えたりして少し改造しています。
実際のインバータが組み上がりましたので、モータが回るかを確認しました。なんと一発で動作しました。このようにモータはきちんと安定的にくるくる回っています。これは今 進角の調整をしているところです。ちょうど電流が一番少なくなるようにホールセンサの位置を調整しました。セミナー1日目はこれで完了です。
セミナー2日目はモータの座学と組み立て実習です。EVカートに使うモータはアウターロータータイプであり、小型のドローンに使われるようなブラシレスモータと構造はほとんど同じです。外側の回転子部分に磁石があって、中心にある固定子に銅線を巻いていきます。
まずは回転子の部分から組み立てていきます。回転子の鉄心の内側にフェライト磁石を貼り付けていきます。表・裏でS極・N極となっているので、間違えないように注意です。ここで失敗してしまうとモータとしては使えなくなってしまいます。画面右の方に置いてある方位磁石で磁極の向きを確認しながらやりました。
次に固定子に銅線を巻いていきます。量産のモータでは機械で巻いていくのが普通ですが、こちらは一点ものなので手作業で巻いていきます。銅線の太さは1mmなので、手で巻くときはかなり力が必要です。巻くときのコツとしては、銅線のボビンを足で押さえながら固定子を手で持って、銅線に適度なテンションをかけながら巻いていくとうまくいきます。
ここで巻いているモータの巻き数は結構適当に決めていますので、実際のEVカートに組み込むときはもう一度モータを巻き直すことになります。EVカートのレギュレーションでは、モータはこのキットを使う必要があるのですが、巻線の太さや巻き方、結線方法、コアや永久磁石の材質については変更可能となっています。そのためモータの作り方のパターンは無数にあります。
レースに勝つために必要なのは、電気エネルギーを機械的な出力に変換するのですが、そこでなるべく変換効率の高いモータを作ることです。この辺りは なかなかノウハウのある部分かと思います。
このようにモータが完成しました。組み立てたモータについても動作確認をします。使うインバータは前日自分で組み立てたものです。回った。いいですね。
モータの巻線を巻くのがかなり大変でしたが、一発で問題なく動作しました。
セミナーの後にCQ出版の倉庫に保管されていたEVカートも試運転させてもらいました。実際のフィーリングを掴んでみて、自分たちが作るカートに活かせるものは活かしていこうという作戦です。ここまでで車体の電気部分の組み立ては完了です。次は車体本体を組み立てていきます。
場面が変わりました。インバータとモータの組み立てから、EVカートについては ほとんど放置していました。レースの1ヶ月くらい前になって、ようやく時間がないと気づいて、若干焦りつつ準備を開始しています。車体を組み立てておかないと、試走や調整など いろいろできませんからね。結構ギリギリだったと思います。
車体はこのように鉄フレームでできていて、そこに車輪などをくっつけていくタイプです。でかいラジコンみたいな感じです。組み立てていきます。今回は1人で、そして撮影しながら組み立てていますが、だいたい4,5時間ぐらいかかりました。作業量的には2,3時間くらいで組み上がるものかと思います。あと床で作業をしているのですが、作業台みたいな上でやった方が効率は明らかに上がります。
車体のメカ部分が完成したら、インバータやモータ部分の仮組みをしていきます。電気の配線などは実際に走る前にしっかりとまとめておけば良いので、とりあえずの仮組みです。
このように組み込んだ状態で、モータなどが問題なく動作していることを確認しました。モータはセミナーで組み立てたものから変わっていませんので、レース仕様の巻き数、結線にするため何回か巻き直していきます。
次は試走です。この状態でぶっつけ本番でレース出場しても多分良い結果にはならないので試走します。試走の目的は 運転に慣れることはもちろん、レースに近い状態の負荷を与えた場合でも車体に問題が起きず安全に走行できるか、モータやインバータが長時間の動作をしたときでも安定的に動作継続できるか、バッテリーの持ちや加速性能、モータに流れる電流をどれくらいまで制限するかといった性能に関わる部分のセッティングを煮詰めていくという目的があります。
今回レースに出場するわけですが、とりあえずの目標としては完走できることとしています。試走が終わったら どのような方針でセッティングを詰めていくかを確認しました。
ここからはセッティングについて話していきます。今回レースに出場するわけですが、とりあえずの目標としては完走できることとしています。レースのレギュレーションを見てみると、レース時間は30分で、優勝車両の70%以上走行することが完走の条件です。そのため ゆっくり走っていては駄目で、ある程度早く走行しなければ完走扱いにはなりません。そのため バッテリーの持ちとインバータとモータのセッティングがかなり重要になってきます。
バッテリーについてはレギュレーションがしっかりと定まっています。鉛バッテリーの場合は1個3,000g以下のものを2個まで使用することができます。そのため 有限のエネルギーをなるべく効率よく使う必要があるわけです。
セッティングの方針は このように決めました。過去のレースの結果を見てみると、おおよそ平均時速30km/h程度であれば完走扱いとなるようです。したがって今回は平均時速30km/hで走行できるようにインバータとモータをセッティングしていきます。余談となりますが、モータと車輪はチェーンで繋がっているので、ここのギア比もかなり重要なセッティング項目です。
まず初めにバッテリーのデータシートを見ていきます。このグラフは放電電流を流したときに、どれくらいの時間バッテリーが放電し続けられるかを示しています。横軸が放電時間、縦軸がバッテリーの電圧です。レース時間は30分なので、だいたい このあたりです。バッテリーに流れる電流が13A程度であれば30分間放電可能です。ということは時速30km/hで走行しているときにバッテリー電流が13Aであれば、30分間は走行できるということです。
問題は13A流したときにきちんと時速30km/h出てくれるかです。この条件で走行できるようにモータの巻き方を変えたり、ギア比を変えていくわけです。今回は使える時間が限られていたので、モータの試作は数回しかできていませんが、何とかこの状態に近くなるように持っていきました。
ここからは改造について少し話していきます。主にモータとインバータについてです。まずインバータの回路についてですが、スイッチング素子であるMOSFETを交換しました。これについてはオン抵抗の小さなMOSFETを使うことが目的です。キットに付属していたMOSFETのオン抵抗は3.3mΩです。これをさらに高性能なものに交換することで、オン抵抗を1.1mΩまで小さくしました。
ただゲートドライブ回路はそのままなので、ゲートチャージが増えた分スイッチング損失が増える可能性があります。今回はノイズなどを撒き散らしても問題ないので、ゲート抵抗をギリギリまで小さくしてスイッチング損失を減らすこともできます。ですがゲートドライブICが耐えられないようなので断念しました。
また電解コンデンサを追加できるスペースがありましたので、手持ちの電解コンデンサを追加で実装しています。これについては 追加することによるメリットはあまりないと思いますが、とりあえずやれることはやっておこうというスタイルです。
最後は基板に防湿コーティングをしました。基板カバーも作ったのですが、環境としてはかなり過酷であり、ほこりや水分などを含んだゴミなどが付着して回路に悪影響があるかもしれません。そのため仮にゴミなどが付着しても問題を起こす可能性を低くするための改造です。
次はモータを改造しました。今回はモータの銅損を減らすアプローチをとります。もともとキットに付属している銅線の太さは直径1mmだったのですが、直径1.4mmのものを使うことにします。直径を変える前後で巻き数は変えないので、固定子スロットに巻ける限界ギリギリの太さに選定しました。
直径1mmの場合、モータの巻線抵抗は100mΩ程度です。直径1.4mmにすると断面積は2倍になりますので、モータの巻線抵抗は半分の50mΩになります。こうすることで、モータで発生する銅損を半分にできます。平均電流13Aでは約8W程度の節電効果があります。
ただ筑波サーキットは平坦ではなくて上り坂もあります。平均すると13Aですが、場合によっては30A、瞬間的には100A流れることもあります。100Aを想定すると、巻線を太くすることで銅損は1,000Wから500Wまで低下するので、かなりインパクトのある改造となります。
その他の改造としては、走行中にバッテリー残量を見るための電圧計をつけたり、走行中のバッテリー電流を測定できるように電流計もつけたりしました。電流計については、Bluetooth付きのクランプタイプのもので、それをスマホでモニターするという一番簡単なソリューションです。
というわけで レース当日になりました。レースの運営はCQ出版ですが、主催は日本電気自動車レース協会です。これは現地に行って車両を整備している様子です。簡単に動作を確認した後に20mぐらい試走などもしています。あとはレースが始まるギリギリまでバッテリーを充電しておきます。
というわけで レース開始です。スタートしました。スタートは好調です。
この後 ホームストレートの坂を上がるあたりでブレーカーがトリップしてしまいました。ブレーカーを再度投入して加速します。キットに付属しているブレーカーの定格電流は50Aですが、レギュレーションをよく見てみると、レース当日に配布されるレース用のブレーカーは30Aです。そのため 当日にセッティングを微妙に変更する必要があります。このあたりはレギュレーションを読んでおかないと引っかかる部分です。
イチケンは事前にレギュレーションを読んでいたので、マイコンのセッティングを調整して加速時の電流を下げるように設定しましたが、それでも調整不足だったようです。スロットルの調整が難しくなったので、しばらくはブレーカーがトリップしてもすぐに戻せるように体勢を変えました。
スマホでモニターしているバッテリー電流は結構流れていて、瞬間的には100A以上流れているところもあります。ただブレーカーの動作特性上、瞬間的な過電流であれば落ちません。本来であればブレーカーの動作特性図をよく読み込んで、加速時は過電流の動作時間ギリギリで電流を流すようにすると、結構良い走りができると思います。
しばらく走っていると、このように連なって走っているグループが現れました。これは専門学校 筑波自動車大学校のチームで、空気抵抗を下げるためにスリップストリームを活用しているみたいです。このEVカートはレギュレーションで空力パーツを付けることは禁止されています。そのため 複数チームで参加している場合は、このような戦略をとることが可能です。実際ドライバーはむき出しの状態なので、空気抵抗もかなり大きいです。
せっかくですので このグループにくっついていって空気抵抗を減らすことにしました。ただギリギリまで近づいていくと事故になる可能性があるので、ある程度の距離は確保します。あとはひたすら走っていくという感じです。最高時速は だいたい35km/hぐらいです。下り坂では もう少し早くなるかなといったところですね。
前のグループにくっついていって、コースが空いているときにたまに追い抜かそうとしています。ですがスロットルを全開にしても最高速がこれ以上上がりません。バッテリーの電圧とモータの巻き数が合っていないせいだと思います。そのため追い抜きとかはせずに、おとなしく後ろを走ることにしました。
たまに追い抜いていく速いカートがありますが、あれはリチウムイオンバッテリーを積んでいるアンリミテッド部門のカートです。バッテリーが違うだけで相当速くなります。
レースも後半になってきました。バッテリーの電圧がだいぶ低くなってきて、速度も遅くなってきています。上り勾配のところだと 結構きついです。最終コーナーを抜けてホームストレートに入ります。ここの上り坂が一番きついのですが、登れるか不安です。
このように じりじりと速度が落ちてきて、最後は登れなくなってしまいました。体を揺らして反動で登ろうとしますがダメです。結局最後の周は走り切ることができずに、そのまま終了となりました。
こちらが結果です。11位で完走扱いとなりました。初参加にしては なかなか上出来かと思います。一応完走を目標にしていましたからね。周回数は7周でした。ベストタイムは3分49秒です。レースに出るような車では、ラップタイム60秒くらいが多いようなので、それと比べると、どれくらいゆっくり走っているのかがわかるかと思います。平均時速は30km/hでしたので、割と狙った通りになっています。
思ったよりも電力の消費が多く、最後はバッテリー切れで走れない状況になってしまいました。最後まで走り切るには走り方を変えたり、モータの効率を高くするしかなさそうです。走り方については、例えば惰性で走る期間を多くするとか、そのあたりですね。加速をゆっくりにするのも効果はありそうです。
今回はインバータとモータの制御を煮詰めていく時間がなかったので、バッテリーのエネルギーも有効活用できていなかったのも、この結果に繋がっています。モータについても さらに改善できる箇所はいくつか見つけているので、来年は完走かつ最後まで走り続けられるようにしていきたいと思います。というわけで最後まで動画のご視聴ありがとうございました。
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